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アルフォンス×オリヴィエ・ミラ・アームストロング

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Part2
841 :オリ×アル 7/11:2010/07/05(月) 02:40:20 ID:eHiFpWjj
数日後、セントラルシティのアームストロング本邸の玄関に花束を抱えたアルフォンスの姿があった。
通された寝室、ベッドの上のオリヴィエの腹部は記憶の中とは違いまろやかにふくらんでいる。
花束を受け取り、差し支えのない会話をいくつかして、人払いをした彼女は単刀直入に切り出した。
「アレックスに聞いたか」
「はい」
「まったく、あやつは何も考えずべらべらべらべらとしゃべりおって」
おかげで見物人が絶えずに困る、と彼女にしてはめずらしいため息をついて。
「ああそうだ、昨日はイズミが夫君と一緒にダブリスからやってきたぞ」
まだ男か女かもわからんのに服やらおもちゃやら抱えてな、と机の上に積まれたいくつもの包みを視線で指す。
そりゃ師匠はこの女性をちゃん付けで呼べる無二の親友だし大喜びだろうなーとその様子を想像し、
…アルフォンスはここにきた用件を済ます覚悟を決めた。
「その、貴女のお腹の中の子供の父親は」
刃のような鋭い視線に負けまいと背筋を伸ばして。
「僕ですね」
「さあな」
決死の問いをあっさりと返され、緊張していた肩がかくんと落ちる。
大きく膨らんだ腹に手を当て、唇に笑みさえ浮かべてオリヴィエはきっぱりと言い切った。
「私がこの腹で育て私が産む私の子だ。それ以上の事実は必要ない」
予想もしなかった冷徹な言葉に、アルフォンスは続ける言葉を失う。
…しばらく、時計の秒針が動く音だけがその場に響き続けた。
「もう話すことはない。帰れ」
「ですが」
「まだ何を聞きたい」
ふん、と不機嫌そうに鼻を鳴らして、一言。
「女だけに避妊を任せるから慌てることになる。自業自得だ馬鹿者」
言い放ち、オリヴィエは手元の呼び鈴を鳴らし現れた執事に「お客様はお帰りだ」と告げた。
アームストロング邸の前に軍用車から分厚い封筒を手に降り立った褐色の肌、赤い瞳を持つ独特な風貌の軍人が、
優秀な執事の有無を言わせぬ迫力により丁重かつ強引に玄関から追い出されてしまったばかりのアルフォンスに目を止める。
「もしかしてアルフォンス・エルリック君かい?」
「マイルズ大佐」
見知った顔にほっと息をつき、アルフォンスは差し出された手を握りかえした。
「お久しぶりです」
「ああ、珍しい場所で会うものだね」
「まあ、はい」
ここに来ている理由を追求されたらどう答えようか、と警戒する彼に何か気付いた様子も見せず、
マイルズはにこやかな笑みのまま言う。
「この時間なら今夜はセントラル泊りだろう? 後で酒でも飲もうじゃないか」

842 :オリ×アル 8/11:2010/07/05(月) 02:41:23 ID:eHiFpWjj
薄暗い照明、ジャズが会話の邪魔にならない音量で流れる小さな酒場。
壁際の二人用テーブルに陣取った彼らの下に、バーテンが透明な液体をなみなみと満たした、
おもちゃのようなごくごく小さなグラスを運んできた。
グラスを合わせ、マイルズがしたように一気にあおり飲み干したアルフォンスの喉が灼ける。
濃厚な酒精が熱の塊になって胃に落ちていく。
「きついだろう。…ブリッグズの氷酒、懐かしい味だ。新人が古参から受ける洗礼の水だよ」
同じ酒を飲んだはずなのにけろっとしているマイルズが激しくむせ続けるアルフォンスの背中を軽くたたいてやる。
バーテンが運んできた水のグラスを渡し、自分は別の蒸留酒をロックで注文した。
胃の中の熱が全身に染み渡り、特に頭がくらくらしてくるのを感じながらアルフォンスは喉を鳴らして水を飲み干す。
運ばれてきた酒を大人の余裕で口に運びながらマイルズが口を開いた。
「彼女の相手は君か」
いきなり核心をつかれたアルフォンスの動きがぴたりと止まる。
「な、なんで…」
「副官だからね、1年ほど前に彼女が君について調べていたことは知ってる。
で、特に親しくもなかったはずの君がわざわざ見舞いにだけくるというのも不自然だ」
アルフォンスの水のグラスの縁に自分の酒のグラスを軽く当てて鳴らし、マイルズは彼の耳に唇を寄せた。
「じゃあ言われただろう?『女だけに避妊を任せるから慌てることになる。』」
「『自業自得だ馬鹿者』」
声を揃えて言い、声の抑揚までありありと思い出した二人は揃っていたたまれなさに頭を抱える。
…そりゃそうですが確かにソノトオリデスガ間違いないですが、と深く激しく自己嫌悪しながら、
じゃあそのセリフを知ってるということは、と察して顔をあげ見つめるアルフォンスに複雑な笑みを返し、
マイルズは答えを告げた。
「相当前の話になるな」
「その時、の、…は…」
「…流れたよ」
「…すみません…でした」
ぐらりと崩れるように頭を下げ、ふらりと上げるアルフォンスの顔色は白く、額にじっとりと汗が浮いている。
グラスを握りしめている手に触れ、冷たくなっているのを確認したマイルズはカウンターの方に手を挙げた。
「顔色が悪い。悪酔いしかけてるな。宿に戻ろう」
「いえ、まだ大丈夫」
「酔っぱらいが大丈夫と答えるときはたいてい大丈夫じゃないんだよ坊や」

843 :オリ×アル 9/11:2010/07/05(月) 02:42:36 ID:eHiFpWjj
「ブリッグズの氷酒」の効果は絶大で、マイルズに肩を借り、
泊っているホテルの部屋にやっとたどりついた時のアルフォンスには完全に酔いが回っていた。
目の前は真っ暗、体はぐらぐら。手にも足にもろくに力が入らない。
「酒を飲むの自体が初めてだったか、そりゃ悪かった」
ベッドに座らされて渡されたミネラルウォーターのボトルを勧められるままに飲み干し、そのままひっくり返る。
「すみません、マイルズさん…」
「気持ち悪かったら我慢せずに吐きなさい。あととにかく水分を取ることだ」
上着を脱がせ、シャツの襟元とズボンのウエストをゆるめてやり、
マイルズはベッドの側に椅子を引っ張ってきて座り込んだ。
蒸留酒による悪酔いは体温を予想以上に低下させるおそれがある。しばらく見守っておいてやったほうがいいだろう。
そのついでに。
「さっきの話の続きだけどね」
返事はしなくていい、独り言のようなものだからと前置きしてマイルズは続ける。
「君とオリヴィエがなんでそうなったのかはだいたい想像がつく。襲われたな」
すねたように顔を向こうに向けるアルフォンスの肩をたたき、
恥ずかしがらなくていいぞー私の時と同じだからなと軽く笑い飛ばしてやる。
そして声音を真剣なものに変えて。
「だが悪いことは言わない、そのことは隠し通せ」
男の沽券に関わるとか、そういう問題ではなく。
「オリヴィエは絶対に君が子供の父親だとは言わない。誰にもだ」
「どうし、て」
「彼女が彼女だからだ」
「ブリッグズの北壁」の二つ名を持ち、将来大総統の座につくのはまちがいないだろうと目されている
アームストロング家の女当主にははっきり言って隠れた敵の方が多い。
その彼女と、「約束の日」の英雄「鋼の錬金術師」のまだ年若い弟が通じ、
子供を作ったという醜聞が知れ渡れば…その威力と影響のすさまじさは想像できない。
それでもオリヴィエはその地位と家名に守られるだろうが、
無名の青年でしかないアルフォンスを守るものは何もない。
「自分が引き起こした事態なら、泥はひとりで被る。それがオリヴィエなりの君への責任の取り方だ」
「責任なら、僕にも」
年若い彼の青い潔癖さを好ましく思いながら、マイルズはアルフォンスの額を軽く指で弾いた。
「そういうセリフは名実共にオリヴィエの側に並び立てるだけの大人になってから言うことだ」
少なくとも酒に飲まれているようじゃまだ早い。

844 :オリ×アル 10/11:2010/07/05(月) 02:43:36 ID:eHiFpWjj
アルフォンスは唇を噛んだ。言い返そうにも今のていたらくじゃ説得力も何もない。
肉体を取り戻し、それからはかなり順調かつなかなか有能に成長したと思っていたけれど。
結局自分はまだ周囲の大人に守られかばわれる子どもでしかないのかという自己嫌悪。
自分はまだ敬称でしか呼べない女性を、オリヴィエとためらいなく名で呼べる相手の大人の余裕と関係への嫉妬。
酔いのせいでぐらぐらする頭の中に、いろんな感情が渦巻く。
アルフォンスが小さく身震いしたのに気付き、マイルズは毛布を彼の胸の上まで引き上げてやった。
続ける。
「…私はね、オリヴィエほど利他的な人物を知らない」
己の意志と姿勢を貫きすぎる姿故にとてもそうは見えないけれど、
冷酷なまでの実力主義も苛烈で攻撃的な言動も旺盛な上昇志向も、その行動原理はすべて「守るため」だ。
対象はアメストリス国民であり、その手で育て上げた部下であり、情をかけた相手であり──
「オリヴィエは自分の誇りも幸福も、己が守ると決めた相手のためにならためらいもせず明け渡す。いつもだ」
利他的、という意外な単語に引きつけられたアルフォンスの心に、続くマイルズの言葉がすとんと落ちていく。
「すばらしい信念だけど…あまりにも厳しいね。彼女にも誰かにわがままを言う権利はあるはずだ」
うなずくアルフォンスの額に手を当て、顔色が普通に戻り体温も上がってきていることを確認した
マイルズは安心して立ち上がった。
「というわけで、後は任せた。今の私には妻がいるからもうオリヴィエには応えられないんだ」
ちょっと待て、そこまで勝手に打ち明けておいて、そして押しつけて帰るんですか。
反論しようにも、アルコールでぐるんぐるんになった頭と体ではとても追いつくことができるはずもなく。
ドアが閉まる音を遠く聞きながら、アルフォンスはつぶやいた。
「大人なんて、嫌いだ…」
冷酷で傲慢な女王が隠し持つ篤い情。
それを聞かされ知ってしまったら、このまま忘れて離れて終わってしまえばいいなんて思えない。
いや、終わらせたくない。
…これじゃまるで昔話の、氷の女王の鏡の破片を目に受けて彼女しか見えなくなってしまった少年のようだと苦笑する。
守るなんて不遜なことは言わないしできはしない。それなら、せめて認めてもらいたい。
そのために、自分はあの女性のために何ができる?
どうすれば、このまま関係を断ち切らずにいられる?
必死に考えを巡らせながら、彼はいつのまにか眠りに落ちていった。
そして彼は旅に出ることを選ぶ。
自分が、彼女が最も必要としているものを得るために。

845 :オリ×アル 11/11:2010/07/05(月) 02:45:15 ID:eHiFpWjj
アメストリスに戻ったら、いつも最初に彼女の下に赴くことにしている。
オリヴィエ・ミラ・アームストロング。
「ブリッグズの北壁」「氷の女王」の異名を他国にまで響かせるアメストリス国最高最強の守護女神。
自分が見て、入手してきた他国の最新の情報や知識、技術を手みやげに晩餐を楽しんだあとは、
やっとご褒美の時間だ。
飲み干した酒のグラスを起き、立ち上がってこっちにきたオリヴィエが、
椅子にかけたままのアルフォンスのふとももに腰を下ろした。
体をひねり、彼の首に腕を絡め顔を寄せる。
「このまえ、エドワード・エルリックがうちの双子を見てな」
オリヴィエ・ミラ・アームストロングが未婚のまま産んだ双子は
金色の髪と薄青の瞳を持つ厳しい眼差しの兄と、栗色の髪と金色の瞳を持つ面差し優しい妹。
カンのいい人間が見たら、その子たちが誰の遺伝子を持つかはすぐに悟れる事実。
「何か言われなかったか?」
彼女の肩を覆う見事な金色の髪に顔を埋め、アルフォンスは苦笑した。
「泣かれましたよ」
俺はあの女の餌食にするためにお前の肉体を取り戻したわけじゃないー、と、
わざわざ苦手な大砂漠を越えて自分がいるシンまでやってきて言うもんだから、
数年ぶりに殴り合いの兄弟げんかをする羽目になったのだ。勝ったけど。
聞いたオリヴィエがくっくっと楽しげに喉を鳴らした。
「私もアレックスを嘆かせた。同じだな」
…背筋をゆっくりとたどっていたアルフォンスの指がぴたりと止まる。
「何を考えている」
「いや、…そういえば貴女アレックス少将とは血がつながった姉弟でしたね、と思い出しまして」
盛り上がっていた気持ちがちょーっと覚めるというか。
その答えを聞いたオリヴィエがアルフォンスの耳に歯を立てた。
「いてて」
「私の前で他の人間のことを考えるな、馬鹿者」
胸元に降りかけていたアルフォンスの顔を上げさせ、瞳を合わせてささやく。
「私だけ見ていろ」
めったに聞けない彼女のわがままを可愛いな、と思いながらアルフォンスは彼の女神の口づけを受ける。
…まあ、他人には理解してもらいがたい関係だ。顔を合わせ、話をして、肌を重ねるのは年に数回。
しかも親子ほどの年齢差だし、オリヴィエは文句なしに美しいけど威圧的に過ぎるから
自分たちの関係に気付いた相手、とくに同性からは異口同音に「よくその気になったな」と冷やかし半分呆れ半分で言われるし。
オリヴィエ本人からも、
クセルクセス人の血統は珍品だから欲しかったんだとか
アームストロング家に優秀な錬金術師の血を取り入れたかっただけだとか
だからお前が私に義理立てする必要は全くないんだとか
そりゃもういろいろと身も蓋もないことを言われたけど。
…それでも冷めない気持ちは仕方がない。
きっかけはどうあれ、今、アルフォンスが彼女を誰より大切に想っていることは事実なのだから。


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