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【参加自由】1レス勝負【2章】
[8] -25 -50 

1: 脳田林 ◆N6kHDvcQjc:2014/10/16(木) 20:04:50 ID:7lTINYd4eE
日程
月…題目候補をあげてもらう
火…題目投票と題目決定
水、木(20時まで)…参加募集、参加発表
金、土(20時まで)…レス投下
土、日…投票
ルール(暫定)
月…題目候補の日
火…題目決定投票(20時締切1人1票です)
水、木…木曜の20時までに参加表明を、時間過ぎたら参加不可。参加表明は匿名でも作者名でも作品名でも可
木の20時過ぎに参加者発表します
金、土…出来た人から順次レス投下。名前のとこに参加レス番号が有ると嬉しい。土曜の20時までに投下する。過ぎたら失格。
土、日…投票はレス番のみ、それ以外は無効票になります。
月曜日に結果発表。
>>2に続きます


494: あうあう:2015/5/30(土) 15:20:31 ID:0/CIuaqqIQ
「死んでるんですよ、多分」
病的な執念によって磨かれた床に立つ男が言った。
何故執念かわかるかと聞かれれば、それは男と私の足元を這う人物が答えである。
尤も、もはや彼には人権などないのだが。

彼が指で床を掃う度に、彼の福々しい顔が澄んだ床の反射で角度を変えて映る。
歳の頃は三十半ば。生え際がやや後退しつつある額が前に出ていて、俯くと額が床を擦っているかのように見えた。
ある種異様な光景を前にしても、男は一顧だにせず弁舌を走らせる。

「よく、物語などで肉体が死んでも精神が生きているという表現がありますよね。その表現をまるごとひっくり返したものと解釈して頂きたい」
男の背面で、専門的知識を前提に理解を求めるパネルがコンマ秒単位で切り替わる。
床を磨く音が切り替わる音と錯覚したのは何時からか。

元々刑務所に好意を持ってはいなかった。
社会見学が刑務所と決まった際には露悪的だとすら感じた。
刑務の果てに死んだ男。軽く多分と言っただけの判断で彼は人間から物になったという。
教化を目的に刑務が課せられると授業で習った。これが教化か。

「死んだ精神の器から新たに精神が育まれました。私は生まれ変わったのです」
高らかに唄い上げる男の瞳に初めて自我の光が宿る。
「しかしながら、かつての私ではありません。果たして私は生きているのでしょうか」

死んでるんですよ、多分。床の彼が口を挟んだ。
私の耳にサラウンドで笑い声が響く。
背けていた顔を男に向けると、やはり福々しい顔が喜びに揺れていた。
もちろん、私も福々しく笑った。清々しい。刑務所はもう要らないのだ。
495: 名無しさん@読者の声:2015/5/30(土) 23:36:28 ID:6oJ7HzFDwQ
 珈琲を置いた途端、悲鳴があがった。
「ぐわああああ」
 オフィスにわん、と反響するだみ声。
 うんともすんともいわないディスプレイとにらめっこしていた彼は、復旧しないと見るや、へなへなとくずれ落ちる。
「あとちょっとで入力終わったのにぃい〜」
「……不思議ですね。男の悲鳴とはどうしてこうも下品なのでしょう」
 嘆息にのせて毒を吐く。デスクに伏せていた涙目がぱっとこちらを向いた。
「相変わらず辛辣だなーケイちゃんは。ちょっとくらい慰めてくれたって」
「自業自得です、そんな古い型のパソコン使って。回路がもう死んでるんですよ、たぶん。社長に何度も「さっさと買い替えなこのボンクラ」って注意されてたくせに」
 腰をおろし、隣の無精ひげを軽く睨めつける。
「しょうがねぇだろお、これが一番しっくりくるんだから。キーの打ち加減が絶妙なんだ」
「物は大切に使う」がモットーの先輩は、誇らしげな表情で首元をちょん、と指した。
「このマフラーだって、小学生んとき母ちゃんが編んでくれたのを未だに使ってるんだぜぃ」
「話しかけないでもらえますか今忙しいので」
「……ケイちゃんおれ、身も心も凍傷になりそう」
 時刻は深夜一時すぎ。フロアで一括操作のエアコンは節電の為、とっくに電源を落とされている。
 夜気が窓の隙間からじわじわと侵入し、小さなオフィスの空気を冷やしていく。おかげで私と先輩、営業課の居残り二名はたいへん着膨れていた。コートの襟をぎゅっ、とかきあわせる。
「冬将軍が猛威をふるうこんな夜はさあ、暖かい飲み物が心にしみるよねぇ」
 チャンチャンコとマフラーを見事に着こなした先輩は、白い湯気が立ちのぼるカップを包み、しみじみとつぶやいた。
「ぼかぁ幸せだなあ。こんなにうまい珈琲が、一週間のうち五日も飲めるなんて」
 瞬間、口元が緩むのを感じる。
(おっと)あわてて唇をきゅっと引っ張った。
「……お褒めいただきどうも」
 無愛想を崩してはいけない。好きだと気づかれてもいけない。
 (既婚者に恋するのは、これで四回目)
 視線をぼんやりと先輩のカップへ。そこには彼が他人のものだという証が――。
(あれっ)思わず目を疑った。カップを包む先輩の指にあるはずの「モノ」が、消えうせていたのだ。
「あの……失くしたんですか、指輪」
 一瞬の間。そして。
「う……うわああぁあん」
 野太い悲鳴再び。
「出て行ったんだよお、昨日。「他に好きな男ができた」、「仕事人間がこんなにつまんないとは思わなかった」って吐き捨ててぇええ」
「……きっとすぐ帰ってきますよ」
(二度と戻らなければいいと思っているくせに)
 これはチャンスじゃない。今までの経験上、一度家族になった男女はそう簡単に離れたりしないもの。
 この気持ちは死んでいくべきなのだ。役目を終えたパソコンと、同じように。
「もうこの世の終わりだっ」
 その時。先輩の手が偶然、ブラックアウトしたパソコンをゴン、とたたいた。
「あれっ」「あっ」
 途端、よみがえるディスプレイの光。
「死んでなかった……」
「みたいですね……」
 呆然とつぶやく先輩の耳は、号泣の名残の朱に染まっている。それを見た瞬間、
(やっぱり……好きだ)
 押し殺した感情が、ぶわりと生き返った。
「ふわっ!?」
 体が勝手に動いたとしか思えない。気がつくと、後ろからぎゅっと抱きしめていた。
「け、ケイちゃん?」

「……珈琲、飲みませんか……毎日」
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