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【参加自由】1レス勝負【2章】
[8] -25 -50 

1: 脳田林 ◆N6kHDvcQjc:2014/10/16(木) 20:04:50 ID:7lTINYd4eE
日程
月…題目候補をあげてもらう
火…題目投票と題目決定
水、木(20時まで)…参加募集、参加発表
金、土(20時まで)…レス投下
土、日…投票
ルール(暫定)
月…題目候補の日
火…題目決定投票(20時締切1人1票です)
水、木…木曜の20時までに参加表明を、時間過ぎたら参加不可。参加表明は匿名でも作者名でも作品名でも可
木の20時過ぎに参加者発表します
金、土…出来た人から順次レス投下。名前のとこに参加レス番号が有ると嬉しい。土曜の20時までに投下する。過ぎたら失格。
土、日…投票はレス番のみ、それ以外は無効票になります。
月曜日に結果発表。
>>2に続きます


376: 名無しさん@読者の声:2015/3/6(金) 21:52:55 ID:woploLDGNc
 水平線をするどく睨みながらニナは囁く。

「海の向こうには楽園があるの」

 はらはらこぼれるしずくが頬を流れ、雪いろの髪を伝って肩に落ちた。
 夜の海は冷気をたたえ月明かりに煌いている。厚着の私でさえ寒いのだから、ワンピース一枚のニナは芯まで凍えていることだろう。

「そこはすべての嘘が本当になる世界。到着したら、まっさきにこう宣言するわ。
 『アルトと私、そして優しいパパ。家族3人でずっと幸せに暮らしていく』……」

 この島から逃げられないことを私も、そしてニナもよく分かっていた。
 彼女をつなぐ枷はあまりに横暴で、毎日聞くに耐えない暴言を浴びせかける。私のお気に入りだった柔らかい髪が鼻をくすぐる感触も、奴は酒代と引き替えに奪っていった。

 昨日まで隠れていた背中に容赦なく潮風が突き刺さる。急に短くなった髪に戸惑っているのは彼女ではなく、むしろ私の方だった。
 出来ることならニナを抱きしめ、震える身体に熱を取り戻してやりたい。
 けれどそんなことをすれば、彼女を支える糸はぷっつりと切れてしまうだろう。だから気配を消し、口をつぐむ。親友が私を必要とするそのときまでは。

 あの男はニナを嘘つきだとののしった。空想など止めて現実をみろ。お前は一生ここから出られないんだ、と。
 その嘘がぎりぎりで彼女を生かしているなど、からっぽの頭には及びもつかないのだ。

 ニナは深く深く息を吸った。そして長い時間をかけて吐き出すと、振り向いて私に微笑みかけた。

「おいで、アルト」

 美しく澄んだ瞳を見て、首尾よく自分を取り戻せたことを知る。
 夢中でかけよる私の尻尾はきっと、ちぎれんばかりに振られているはずだ。

「ふふ、くすぐったいよ」

 ニナは嘘つきだ。そして、私も。

 おとなしく従順な「犬」を演じるのは、あの男に警戒心を抱かせない為だ。
 数年後。ニナを見る目に欲が滲んだ瞬間、狩人の牙は獲物の喉笛に食らいつき、羽虫にも劣る命を終わらせる。どす黒い朱に染まる獣は、友を守れた嬉しさに咆哮するだろう。

 けれど、今はまだ。

「アルトの毛並みはきれいだね。白銀に光ってる」

 背中をなでるニナの手は冷え切っている。

 そっと鼻先で触れた。少しでも温もりを与えられたら、いい。 
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