尻「…はっ!!誰か居るのですか!?」
三蔵「見たところ20代そこらか。いや、肌の張りからすると、17、8かな」
尻「ああ…こんな人里どころか鳥の声さえ聞こえない不毛の地に、とうとう人が…!しかも声から察するに殿方…!」
三蔵「しかし無駄に毛深いな」
尻「ついに…ついにメチャクチャにされちゃうんですね…!この通りすがりの名も知らぬ殿方に性の捌け口にされちゃうんですね私のお尻…!あと毛深いとかヒドイ」
三蔵「うるさい尻だな…いくら仏の教えとはいえ、こんなのも助けるべきなのか…?」
尻「仏の教え…?僧侶さま…なのですか?」
三蔵「うむ。僧だよ。玄奘三蔵。…それにしても毛深いな…特に尻のあ」
尻「やめて!!…こ、これは失礼をしました…!仏に仕えるお方は、そのような煩悩は無いのですね!」
三蔵「いや俺ロリコンだから。女は10歳以下しか認めない」
尻「おい」
三蔵「下の毛とか意味わかんない」
尻「おいこら」
920: 名無しさん@読者の声:2015/1/6(火) 18:57:57 ID:wAyMVBUad6
もう八戒ちゃん大好きだwwww
921: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/10(土) 15:19:26 ID:PgTFdLJtyI
八戒「城内のそこらで、兵士や召使いが倒れておった。……揃って外傷は無いが、の」
フローレ「はい……ワタシ達も、廊下で横たわっているメイドを見つけました。息はあったので、手近な部屋に……」
八戒「……姫君。此処等では食事の際に、基本的には葡萄酒を共に飲むのじゃろうか」
フローレ「え?は、はい。そうですね、飲まない者の方が珍しいかと。……なんて言っておいて、ワタシは苦手で専らジュースなのですが……あの、それが何か……?」
沙悟浄「思ったより強めの毒だったみたいだね。アタイも少し腹にキてるし……悟空姐さん、大丈夫かい?」
悟空「ビックリするくらい大丈夫じゃないよ……」
フローレ「ど、毒……?あ、あの、一体何を」
三蔵「………よし悟空、八戒、悟浄、集合しゅーごー。あ、ちょっと身内の話なもんで、王子様とお姫様は大丈夫っす。二人とも離れてて離れてて」
フローレ「は、はあ……」
小龍「…………」
三蔵「……で、どうすんだよどう持ってくんだよ」
八戒「予想通りと言うか、まあそーゆー話じゃよな、コレ」
沙悟浄「どう転んでもあの姫さん、可哀想な結果になるよねぇ」
悟空「そのうえ王子様までニセモノだったとか、自殺しちゃわないかと私でも思うよ?」
沙悟浄「だよねぇ……八戒姐さん、なんか諸々都合良く収まる悪知恵、無いのかい?」
悟空「がんばってウチの頭脳っ」
三蔵「責任持てって言ったよな俺」
八戒「なんじゃワシに丸投げする為だけの会議かコレは。……むぅ………」
922: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/10(土) 15:20:22 ID:PgTFdLJtyI
フローレ「……み、皆様、どうされたのでしょうか。何か相談して居られるような」
小龍「……あの方達は……特に悟の……いえ、八戒さんは、中華では一、二を争う神算の持ち主です。……と、聞き及んでいます。何か策を練っているのでしょう、心配ないですよ」
フローレ「へえ……確かに見た目は幼子なのに、とても年下には思えない風格ですものね……」
八戒「………よし、コレで行こう。待っとれ」
三蔵「お、さすが悪巧みの天才」
沙悟浄「どうするんだろうね、早めに姫さんにネタばらししちまうとか?」
悟空「あ、それも良いかも。あの子なら誠心誠意謝れば許してくれそうだし」
三蔵「ん?いや、小龍の方に近寄ったぞ八戒」
沙悟浄「なんか演技でも仕込むのかね。だったら一回姫さんから離さないと……」
悟空「……なんだろ、シャオくんをジッと見つめて」
三蔵「何も言わず肩に手を置いて」
沙悟浄「力強く、コクンと頷いたね」
悟空「………………………………………………………え?おわり?」
沙悟浄「……あれ?もしかしなくてもあの人、え、マジで?」
三蔵「うわぁアイツ小龍に丸投げしやがった!なんだあの『あとは任せた』みたいな雰囲気!」
悟空「さ、さすがのシャオくんでも白目剥いてるよ『マジですか』って顔に書いてあるよかわいそう!」
沙悟浄「む、無責任にも程があるね……!うっわなんか良い顔して戻ってきたドヤ顔して戻ってきた」
三蔵「見た目幼女じゃ無かったらもう殴ってるかもしんない俺」
悟空「どうどう」
923: 名無しさん@読者の声:2015/1/10(土) 15:46:17 ID:qYKHfwxHDs
こんなにキュートな腐れ外道がいたとはwww
支援!
924: 名無しさん@読者の声:2015/1/11(日) 13:54:59 ID:0mw0hg7m2o
八戒ちゃん…
925: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/12(月) 23:42:20 ID:KExN5FUd7w
三蔵「……露出じゃもう堪えんからなコイツは、罰として何着せたろか」
沙悟浄「……いっそボロ纏わせてホームレス調にしてやるとかどうだい?」
悟空「……ナイスアイディアだけど、それだと私らが虐待してるよーに見えちゃうのがネックだね」
八戒「あーあー聞こえん聞こえん何も聞こえん」
小龍「……はぁ。………フローレさん。あの、片眼鏡の方………大臣さんの居場所へ、案内をお願い出来ますか」
フローレ「……え?あ、ああそうですね!ラーツの無事も確認しなくては!この時間なら執務室だと思います!こちらです!」
小龍「……無事の確認……そうですね……」
フローレ「?」
バタンッ!!
ラーツ「おおっ!?な、なんですか姫、そんな乱暴にドアを……おや、王子に皆様も。そう言えば先程から外が少し騒がしいですが、何かあったんですか?あ、鬼ごっこでもして遊んでました?」
フローレ「ほっ……よかった、お前は無事か……」
ラーツ「無事?って姫、またサーベルなんて持ち歩いて!いくら亡き父君様が、王家随一の剣士だったからと言って、レディーがそのような物騒な」
フローレ「こ、こんな時に小言など……王子?」
小龍「………フローレさん。何があっても、お気を強く持って下さい」
フローレ「え?え?」
926: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/12(月) 23:48:33 ID:KExN5FUd7w
小龍「………ラーツ、さん。もう、大体解っています、出来れば降参を。……命までは取りません………少なくとも私達は」
ラーツ「はい?なんの事でしょうか王子。それ何の遊びです?」
沙悟浄「しらばっくれんじゃないよ。妖気は感じないけどねぇ」
八戒「悪人の臭いは隠せぬ。特に尊厳も何も無い小悪党の臭いは、の」
悟空「よくも人のお腹ピーピーの大洪水にしてくれましたね!ちょっと痩せた気がするよありがとう!」
三蔵「単なる脱水症状だぞソレ」
小龍「…回りくどい手です。性格を疑う」
ラーツ「………あははは。なんかここまでバレバレだと清々しいですね。いやいや、毒入りワインは、城の者達を大人しくさせるための処置でして。貴殿方に通用するとは期待してませんでしたが、あは、あはははは」
フローレ「ラ、ラーツ……?」
ラーツ「しかしトロール兵どもはともかく、サンドワームやリザードマンまで簡単にやられるとは。いやはや、見くびっておりました」
フローレ「お、おいラーツ、お前何を言って」
ラーツ「東国に、正義の味方を気取った僧侶の一行あり……と聞き及んではいましたが。はは、けっこう闇の世界では有名なんですよ、貴殿方。しかし伝え聞く容姿とは大分違いますね、もっとモンスター丸出しな感じを予想しておりましたよ」
フローレ「いい加減にしろラーツ!さっきから一体どうしたと言うのだ!」
ラーツ「さっきから……?何も可笑しな事はありませんよ、姫。ラーツめはどうもして居りません。城の者達を黙らせたのも、異形の兵を皆様に差し向けたのも、貴女のよく知る、いつものラーツで御座います」
フローレ「なっ……!?な、なにをバカな……お、おい、ラーツ!?」
小龍「……落ち着いてください。近寄ってはいけません」
沙悟浄「……まだ、喋らせるのかい、コイツに」
八戒「……ここで張り倒しても、後々わかる事じゃ」
ラーツ「そう。今日、姫を森で襲ったトロール兵……あれもワタクシの差し金。ここ一年で、傀儡にするには面倒な娘だと判断しましたのでね、もう邪魔なんですよね、姫」
悟空「うっわ典型的な悪いヤツだ」
三蔵「なんで古今東西、大臣ってのはクーデター起こすかね」
927: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/12(月) 23:50:30 ID:KExN5FUd7w
フローレ「く、傀儡……な、なあラーツ、何を、何を言って」
ラーツ「理解力の無い……そういうトコも苛々するんですよ貴女は。だぁかぁらぁ?モンスターを造り出して兵隊とし、国中にバラ撒いたのもワタクシ!あの日、城をドラゴンに襲わせ、モンスター兵の素晴らしさを理解しない馬鹿共を焼き殺したのもワタクシ!……あぁ、あのクソ王と妃は、食い殺させましたけどね?」
フローレ「……な……な………」
ラーツ「しかしまさか王子のニセモノがやって来て、それが件の偽善者集団とは。止めてくださいよ、せっかく一年かけて人心を掌握し、実質的に国王の権力を得たと言うのに……ああ邪魔邪魔!ぜんぶ邪魔!」
フローレ「……ニセ……モノ………違う、王子、王子は」
ラーツ「……ふん」
コロッ……
フローレ「……っっ!!」
ラーツ「返しますよ、それ。どっかの馬鹿餓鬼が後生大事に握り締めていた指輪。宝石としての価値は薄いし、お金にもなりませんから」
フローレ「……お、うじ、の……サン、ストーン……」
小龍「………もう、宣う台詞は尽きましたか」
ラーツ「………大方、ワタクシに勝てるつもりでいらっしゃる御様子。東の僻地でどれだけ有名か知りませんが……世界を知らぬ田舎者が、チンケな正義感を燃やして意気がるのも、もう不愉快です」
小龍「……正義だなんて、私の一番嫌いな言葉ですよ」
ラーツ「貴方も扱い易そうなら、傀儡になってもらうプランもあったんですけどねぇ………もう全員死んで下さい!邪魔!邪魔邪魔邪魔ジャマぁぁっっ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!
三蔵「うおっ!?」
沙悟浄「旦那様、掴まって!」
悟空「お姫さまも!そこ危ないコッチ!」
八戒「……召喚術か」
黒竜「グルルルルルルル……!!」
ラーツ「……ワームやリザードマンと比べて貰っては困りますよ?マスターの命令です、全て殺しなさい、ブラックドラゴン!!!」
黒竜「グオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
928: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/14(水) 12:48:26 ID:PK4ZEzZHf6
三蔵「うおお床崩れる崩れる!」
八戒「せっまい部屋で毒竜(西洋のドラゴン)なぞ召喚しおって……っと。ほ、丁度良く真下は大広間か」
悟空「お姫さまボーッとしてないで!どうするこの子どっか逃がす!?」
沙悟浄「いや、一人にしちゃうのはどうだろね。それに、ウダウダ考えてる余裕は」
黒竜「ヴルォォォオオオッ!!!」
ガキィィンッッ!!
悟空「……うん、無いね。うへぇ、馬っ鹿力ぁ……!」
三蔵「爪でかっ。迫力ものすげぇな。こえー」
悟空「サラッと言ってるように見えていつも通り腰を抜かしてるお師匠さまがカッコ悪い」
ラーツ「ほぉ……ドラゴンの爪を受け止めますか。驚愕です、素晴らしい」
沙悟浄「…随分落ち着き払ってるじゃないのさ、憎たらしい」
八戒「ま、仕方あるまい。何せこの毒竜」
ヴゥゥゥゥンッッ!!!
悟空「わひゃーっ!?」
ドガァンッ!!
929: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/14(水) 12:51:37 ID:PK4ZEzZHf6
三蔵「悟空っ!おい吹っ飛ばされたぞアイツ!」
八戒「……かなり、強い。単純な膂力ならば、姉者すら凌ぐじゃろ」
三蔵「マジか。なんとなくだけど俺、あーゆー怪獣っぽいのってお前らから見たら楽勝なのかと思ってた」
沙悟浄「勝てなくは無いんだよ。オツムも獣だし、厄介な術を使うワケでも無いしねぇ。ただ完全にぶっ倒すとなると、骨が折れるね」
八戒「然りじゃ。毒竜は龍族の中でも、四肢強く戦闘向きのナリをしており、鱗の頑強さ、炎の耐性共に頭抜けておる。ワシならば迷わず逃げるのう、面倒極まりない」
沙悟浄「あれだよ旦那様、熊やら虎やらを素手で仕留められる達人って、人間にも居るだろう?かと言ってその達人にとって、熊や虎は油断できる相手じゃない、みたいな感じさね」
三蔵「おお、なんかわかってきた」
八戒「うむ七十点。その説明ならば合格じゃ悟浄。ほれ、師匠殿はワシが見とるから、お主も手伝うて来い。姉者との連携は良い鍛練になるぞい」
沙悟浄「いやまあ一人で任せるのも悪いし、行くけどさ……てゆーか満点おくれよ厳しいよ」
三蔵「お前はなんで楽しようとしてんだよ」
八戒「じゃってワシあーゆー手合い苦手じゃもん。先のミミズ程度の雑魚ならば良いが、話が通じん上にタフじゃとか、敵として趣味では無い」
三蔵「そこで放心状態の姫さんの前で固まってる忠臣に対して、戦いもせず申し訳なく無いのか諸悪の根元」
八戒「ワシが成り済まさせたからこそ、姫君の命も助かったと言うものじゃ。結果オーライじゃろ」
三蔵「結果出てねぇよ今必死で小龍が結果どーするか考えてるよ見ろよ目がグルグルになってるよ」
八戒「静かにテンパる小龍、面白いのう」
三蔵「おいこの君主そのうち滅びるから転職考えろ小龍」
930: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/15(木) 17:21:53 ID:965sdwRtHU
悟空「伸びて如意棒っ!」
沙悟浄「そこっ!喉元もらったぁっ!」
ガキキキキンッッ!!
黒竜「ゥルルルル……!!」
悟空「うわ硬っ。鱗ってゆーか鎧だねもう」
沙悟浄「んん……悟空姐さんで貫けないんじゃ、アタイが正面からってのは、ちとキッツいねぇ……っと、尻尾くるよっ!」
悟空「おっけ受け止める!回り込んで悟浄ちゃん!」
沙悟浄「あいよ姐さんっ!」
三蔵「……軽く、攻めあぐねてね?」
八戒「あぐねとるのう」
三蔵「そんっなに強ぇのか、あれ」
八戒「強いのう」
三蔵「……これでもか、ってくらいの楽観だな。俺が言うのもなんだが」
八戒「じゃって勝負なんぞヤる前から見えとるし。ほれ悟浄!そこは多少危険を侵しても潜り込まんか!逆に姉者は勇猛過ぎじゃ!良い機会なんじゃから、力押し以外の技も鍛えい!」
沙悟浄「……っさいねぇ、あの幼女……」
悟空「まあ悪びれて低姿勢になる八戒ちゃんとか気持ち悪いから別に良いけどね」
沙悟浄「あはは、だね。……さて、まだ掛かりそうかね?」
悟空「ムチャ振りどこじゃないからねー。も少し運動してよっか」
沙悟浄「ん。……ところで姐さん、もしマジでやるんなら、どんな具合だい?」
悟空「うーん……わかんないけど、倒そうとするなら、お城無くなっちゃうよ多分」
沙悟浄「あー、あーあー。うんやっぱシャオ待とう」
ラーツ「お喋りしながらとは、随分と呑気ですね?……の割には、我がドラゴンに、傷一つ付けることも出来ない御様子ですが」
沙悟浄「……ムッカつくねぇ……スカシた男、嫌いなんだよねアタイ。一発だけヤキ入れちゃダメかねアイツ」
931: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/15(木) 17:23:17 ID:965sdwRtHU
悟空「やめときなよ、シャオくんの邪魔になるかもだし。私ら脳筋コンビじゃ、上手いオチの付け方もわかんないんだから」
沙悟浄「悟空姐さんに言われるとなんか危機感を覚えるね、それ。勉強しようかねぇ……」
悟空「なんでさ失礼な!」
三蔵「……なに?手ぇ抜いてるってコトかアイツら?」
八戒「や、そうではない。二人とも全力で打ち込んでおるし、全力で動いておる。が、倒す算段はしておらぬ、と言う事じゃ。あれは時間稼ぎの場繋ぎじゃて」
三蔵「なんの時間稼ぎだよ」
八戒「んなもん小龍待ちに決まって居ろうが。小龍が出れば勝ち確定なんじゃから」
三蔵「へ?」
フローレ「………黒い……ドラゴン………叔父上……叔母、上…………王子……ローウン王子………」
小龍「……………」
フローレ「死んだ……?王子も、死んだ……?ラーツが……殺したの……?これは、何……?なんなの、これ……?」
小龍「……フローレ、さん」
フローレ「嫌っ!!!」
小龍「……っ」
フローレ「……もう………わからない………!王子が……死んだなら……居ないなら!貴方はなんなの……?」
小龍「……私は」
フローレ「王子だって言ったじゃない!帰ってきてくれたんでしょう!?死んでない!王子は死んでない!!貴方は王子でしょう!?ねえ!?……ねぇ……ローウン……なんでしょう……!?」
小龍「………………その者は、もう、生きてはいません」
フローレ「………う、う、うう……うぁ、うぁぁあ」
小龍「………悟空さん!悟浄さん!」
悟空「おっと、はいはーい」
沙悟浄「ん、終わりかい?」
小龍「………あとは、私が」
932: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/16(金) 17:59:23 ID:yH514xoAY.
ラーツ「………おや。選手交替ですか?夜明けまでには綺麗さっぱりとさせたいので、巻きで御願いしたいのですけども」
小龍「……同感です」
ラーツ「今度はニセモノさんですか。しかし本当によく似ている……瓜二つですよ。あの小憎たらしい糞餓鬼そっくり……ふふ、同じ様にグチャグチャにしてやりたくなります」
フローレ「……ラーツ…」
ラーツ「おやおや姫、まだそんな所で呆けてたんですか。ま、逃げたところで殺しますが」
フローレ「……なあ、嘘だと……嘘だと……」
ラーツ「まさか貴女、まだこれが悪い夢だとか思ってたりします?現実ですよ現実。フローレ姫の愛しい愛しいローウン王子は………ワタクシが顔面を切り裂き!手足を潰し!この手で心の臓を貫きました!現実は非情ですねぇ姫!あは、あははははは!!!」
八戒「……ふむ。完全に悪に呑まれとるの。手段としての悪行ではなく、其が行為そのものに悦る様になってしまっては、もう手遅れじゃな」
悟空「お兄ちゃんも大悪人だけど、あーじゃないなぁ」
沙悟浄「ま、ああなると悪党とは呼べないね。狂人の類いだよ」
三蔵「で、その狂人の相手、小龍だけで平気なのかよ」
八戒「ほ、意外と心配性じゃの、師匠殿。平気と言うたら平気じゃ」
沙悟浄「旦那様、アタイらずっと旅して来たけどさ。龍に襲われた事、あるかい?」
三蔵「へ?……ああ、そういや無いな」
悟空「龍の棲処になってるよーな山とかも、けっこう越えて来ましたよ実際」
三蔵「……どゆこと?」
八戒「襲われるワケが無いんじゃよ。ワシらには、小龍が居るのじゃから」
933: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/16(金) 18:01:21 ID:yH514xoAY.
フローレ「………ひ、い……あ、ああ……」
ラーツ「くく、くくくく……予想外に面白いですね。あの気丈で勝ち気な姫が、こうも言葉を失い狼狽するとは……一緒に掃除してやろうと思ってましたが、こんな姫なら飼うのも一興か……ドラゴン!姫を此方へお連れしなさい!」
黒竜「グルルル……ルァァア!!!」
ガギィィンッッ!!!
黒竜「ゥルァッ……!?」
小龍「………やめろ」
ラーツ「……ほぉう。隠しナイフ」
小龍「………“フローレ”に、近付くな」
フローレ「………え……?」
ラーツ「は。剥き出しの正義感……ああ嫌だ。まるであの糞餓鬼本人ですよ。死人を相手にしているようで気持ち悪い」
小龍「……死人を相手にしてるんだよ、お前は」
ラーツ「……はい?」
小龍「…まさか“ボク”を忘れたとは言わせないよ、“ラーツ”。お前に顔を切り裂かれ、四肢を潰され。胸を貫かれた、このボクを」
ラーツ「……やめろ。何の真似だ」
小龍「…何の真似かは、こっちの台詞だ!」
ラーツ「っ!!」
小龍「父を殺し!母を殺し!城の仲間を殺し!……そして今また、ボクの大切な人を……フローレまでも手に掛けようだなんて、許さない!」
ラーツ「…な、なな、何を馬鹿な事を……!?」
フローレ「……ロー……ウン……?」
小龍「……ただいま、フローレ」
フローレ「お、うじ……王子……!」
934: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/16(金) 18:03:28 ID:yH514xoAY.
ラーツ「ふ、ふざ、ふざけるな!王子はワタクシが殺した!ソイツは、ソイツは王子じゃない!!」
フローレ「生きてる、生きてる……ワタシの王子……!!」
小龍「……ううん。ボクは、死んだ。殺された。……奴に」
ラーツ「ひっ……!!」
フローレ「…死んだ…って、だって、ここに」
小龍「…死んだボクにね。神様が、ふたつだけ、ワガママを許して、叶えてくれたんだ」
フローレ「ふた、つ……?」
小龍「…君に、フローレにもう一度逢うこと。そして」
ヴゥゥゥンッ……!!
小龍「……君を守る力を得ること」
ラーツ「ひ……なな、なんの芝居か知りませんが、も、もういい!殺せブラックドラゴン!全て喰い殺せぇぇえ!!」
黒竜「…グ……ゥルルゥ……」
ラーツ「……どうした!?命令を聞け!殺せ!そ、そうだ炎だ!地獄の黒炎で、全部焼き尽くせ!城なんて、モンスター兵を他国に売り込み、いくらでも稼いで建て直せる!やれ!」
黒竜「……ル、ルァァ……グァァァアッ!!」
小龍「……龍神形態……」
シュウウウウウウ……!!
黒竜「……グゥルゥ……!!?」
ラーツ「あ、あ、あああ、あ」
小龍「……これが、君を守る力………」
フローレ「………白い……ドラゴン………」
935: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/16(金) 18:08:59 ID:yH514xoAY.
小龍「………異形の竜よ」
黒竜「……ゥゥゥ…!!」
小龍「我に、牙を剥くか」
黒竜「……グルゥゥゥ……!!!」
小龍「種が頂点に、逆らうか……!!!」
ゴォォォォッ!!!
黒竜「グ、グゥゥルルッ!?……ゥゥン……!!」
小龍「……そうだ。還れ。二度と人間を襲うな」
ラーツ「な、何をしている!こんな、こんな変なドラゴンごとき」
小龍「…待て。……去る前に、塵の掃除をしていけ」
黒竜「アゥ……ゥルル……」
ラーツ「……お、おい?ど、ど、どうした?か、勝てないのか?に、逃げるなら、ワタクシ、ワタクシも」
黒竜「……ゥルルルルァァァァアッッ!!!」
ラーツ「よ、よせ!!来るな!!うあ、うあああああああああああああああ!!!」
八戒「……小龍は、龍神、竜王が一族、その純血種じゃ。窮鼠猫を噛むやも知れんが、猫は虎には噛みつかぬ。毒竜とは多少血が遠いからの、格の違いに直ぐには気付かんかったようじゃが」
沙悟浄「シャオが居るとね、そこらのノラ悪龍なんて、近付いただけで逃げちまうのさ」
悟空「ってコトですお師匠さま」
三蔵「あ、うん……それはわかったけどさ」
悟空「うん?」
三蔵「小龍のヤツ随分とファンタジーな感じで話進めたなおい」
沙悟浄「ちょっとムリヤリ感あるよね。いけるかね、あれ。あと台詞がクサイんだけども」
八戒「いやオナゴはこーゆーの好きじゃろ。まあ多少演技過剰なきらいもあるが、流石ワシの小龍じゃ。うむうむ、嘘は吐き通せば真となる!」
悟空「シャオくんが一生懸命考えた設定にゴチャゴチャ言うのやめたげて」
936: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/17(土) 20:37:57 ID:m4upFD38RM
シュウウウウウウ……
小龍「……フローレ。……終わったよ」
フローレ「………王子……ワタシ……ワタシ……」
…ギュッ……
フローレ「……!」
小龍「……ごめんね。また君を、一人にしてしまう」
フローレ「……なんで………居てよ……ここに居てよ……ローウン……!」
小龍「……人は、甦らない………ボクはもう……この世には居られない……」
フローレ「…嫌だ……嫌だよ………ワタシひとりで、無理だよ……!」
小龍「……見てるから」
フローレ「う、うう」
小龍「見てるから。ずっと、空から、君を。……ボクのフローレ……」
フローレ「うあ、うぁぁぁぁん……!」
悟空「…グスッ……すごいね、純愛だね……」
三蔵「おい悟空、鼻毛湿らせてないでお前ちょっと城内見回ってこい。このラストで敵がまだうろついてたら締まんねーだろ」
悟空「感動ひとつさしてくれやしないよこのお師匠さまは……あれ、八戒ちゃんは?」
三蔵「『どうせ地下あたりに妖魔を造り出していたラボがあるはずじゃ』とか言って潰しに行った。お前も働け」
悟空「あーありそうありそう……で、悟浄ちゃんは何してるの」
沙悟浄「や、こう、うまーくシャオがキラキラと消えてくように幻術をだね?」
悟空「ああ……なんかシャオくんキラキラしてるな幻想的だなぁと思ったら。アシストご苦労様だけどタネを知っちゃうとなんだかなぁ……」
三蔵「えっとつまり、俺らは記憶喪失の男の子を保護してて、それが実は天国からやって来た王子様だった、ってコトにすりゃ良いんだよな。うん」
沙悟浄「だね。アタイらもビックリしてるフリしなきゃねぇ」
悟空「ウチには感動を共有できる人が居ないなあ本当」
937: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/17(土) 20:38:39 ID:m4upFD38RM
八戒「ふわぁぁ……寝不足じゃ……」
三蔵「流石に城に長居は出来ねーしな。かと言って城下で宿探すのもマヌケだし」
悟空「……お姫さま、見送りに顔出してくれなかったね」
沙悟浄「城の人間たちに、事の次第を説明してくれただけでも上々だろうさ。ってかアタイら以外は姫さんしか事情知らないんだしね、説明してくんなきゃ困るワケだけども」
小龍「……これで良かったのでしょうか」
八戒「良い。少なくとも、救えるだけの命は全て救うた。これ以上に良い顛末は有るまい」
沙悟浄「あのモノクル野郎がおっ死んで、辺りの邪気も消えたしね。アンタは良くやったよ、シャオ」
三蔵「まあ演技はクサかったけどな」
沙悟浄「アタイ尻がムズ痒くなっちまったよ」
八戒「ワシ後半見とらんのじゃけど、更にか?」
悟空「やめたげてってば!」
小龍「……悪意の無い者を欺くのは……少し、気が咎めるものですね」
八戒「……ほ。お主も、心が成長してきたのう」
沙悟浄「んじゃ成長しないダメ幼女は、とっとと今回の功労者の背中から降りようか?」
八戒「ぬおっ!?これ悟浄、姉弟子をレジ袋みたいに持つでない!……おい師匠殿、何じゃそのノートは」
三蔵「デザイン帳だ。今回のペナルティは選ばせてやろう。幼稚園児ルックと魔法少女コス、どっちが良い?」
沙悟浄「あ、旦那様旦那様、悟空姐さんがちっちゃくなった時用に、もう一着小さめの頼むよぅ♪」
八戒「そうじゃの、肩掛け鞄とか便利そうじゃし幼稚園……では無いわワシを着せ替え人形扱いするでない!ええい離せ悟浄ーっ!」
悟空「さらっと私にまで着せようとしないでくれないかな悟浄ちゃん……シャオくんもう馬から戻りなよ、お城見えなくなったし」
小龍「…はい。では」
ボワンッ
小龍「…まあ、山越えでも無いですし、悟能様も当分解放されないでしょうし……」
「これは驚きです。そんな魔法もあるのですね」
938: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/17(土) 20:39:25 ID:m4upFD38RM
小龍「っ!?」
悟空「はへっ!?」
フローレ「ふふ、隣国へ出る道はこれひとつ。待ち伏せさせて貰いました。しかしネズミを白馬にする話は聞いたことありますが、人が化けるだなんて、不思議な魔法です…!」
悟空「うわあああシャオくん隠れてぇぇえ!」
小龍「…いや、もう、遅っ……!」
沙悟浄「ア、アレかい!?とりあえず一発気絶させて記憶を」
八戒「よ、よし悟浄ソレじゃ!」
三蔵「アレでもソレでもねーよやめろ!」
フローレ「ふふ……そんなに警戒しないで下さい、大丈夫、わかっております。サンゾー様、ゴクウ殿、ハッカイ殿、ゴジョウ殿。………そして、シャオロン様……で、良かったでしょうか」
小龍「……!」
八戒「……全て、見抜いておいでであったか?」
フローレ「……騎士気取りの男勝り、そんなワタシでも、一応は女。……この身を抱き締められれば、気付きます。……ああ、あの人じゃ無い、って」
三蔵「女ってすげぇな、俺なんてタワシと悟空の違いもわかんねーのに」
悟空「このシーンでぶち込まれてもスルーしますよ」
フローレ「……きちんとお礼を言いに来たんです。国の危難を救っていただき、本当に……本当にありがとうございました!」
沙悟浄「……ああ、いや、うん………怒って、無いのかい?」
フローレ「…何の怒りがございましょう。あの男の邪な野望を砕いてくれた。ワタシの命を助けてくれた。感謝しか……ございません」
沙悟浄「そ、そうかい?いやぁ姫さん人が出来て」
小龍「……私は、貴女を騙しました」
沙悟浄「ちょ、シャオ?」
小龍「…私は、貴女の大切な方を装い、騙しました。主が命とは言え、他に幾らでもやり様はあったでしょう。しかし、私は最後まで……貴女を欺く事を選んだ」
悟空「シャオくん……」
小龍「……何故、怒らないのですか。憤らないのですか。怨まないのですか」
フローレ「………だって、貴方はそれを選んでくれた」
小龍「……?」
939: ヨシュア ◆.frSdr10QQ:2015/1/17(土) 20:40:37 ID:m4upFD38RM
フローレ「ワタシが一番、ワタシの心が一番救われる方法を、とってくれた」
小龍「……そんなこと」
フローレ「貴方は、王子の振りをしていたけど……本気で怒ってくれた。守ってくれた。本気で、優しく、してくれた」
小龍「……申し訳…」
フローレ「謝らないで?……嬉しかったの。この人は、彼では無いけれど。この人を、ワタシの元へ導いてくれたのは、きっと、彼だと……きっと……!」
小龍「…フローレさん……」
フローレ「……スンッ……ダメですね。これからは、ワタシがこの国を引っ張っていかなくてはならないのに。……もう、この甲冑姿も最後です。もう、騎士でも……姫でも無く………王に、なるのだから」
小龍「……あ、あの」
フローレ「……ありがとう、シャオロン様。貴方にフローレは、救われました」
小龍「………っ」
フローレ「……もし、それでも。王子を騙った事を、それでも気に病むと言うなら………ひとつだけ。ワタシの願いを、聞いて頂けますか?」
小龍「…勿論です。私に出来る事ならば」
フローレ「……最後に……姫として、最後に、もう一度だけ。……ワタシの王子に、なってください……」
スッ……
フローレ「……ローウン………」
小龍「……ん、むっ……」
沙悟浄「ひゅう♪だいた〜ん♪」
悟空「こんな綺麗なキスシーン、シャオくんしか出来ないね!」
三蔵「言ってて悲しくなんねーのかお前は。……お、流石に不機嫌か、八戒?」
八戒「ふん。………ま、これくらいは、の。許してやるわい」
フローレ「……必ずや、良い国にしてみせます。貴殿方が、また、訪れたくなるような。……また、来てくださいね……きっと」
小龍「……はい。また……きっと」
〜西遊後伝・王子と姫騎士〜
『百花白龍物語』
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