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王「ろくな勇者いねえな!」
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1: :2013/5/8(水) 01:33:08 ID:YHEhymVdsU
王「魔王討伐のため、名高き勇者を募ったが、どのような者が集まっておる?」

大臣「現在、笑顔勇者・弱気勇者・知ったか勇者・川柳勇者の四名が集まっています」

王「ろくな勇者いねえな!」


2: :2013/5/8(水) 01:33:59 ID:YHEhymVdsU
王「えっ、俺の聞き間違いじゃないよね!?もっかい言ってみて!」

大臣「笑顔勇者・弱気勇者・知ったか勇者・川柳勇者の四名です」

王「間違いじゃなかったよ!これほど聴覚の正常を呪った日はないっすねえ!」

大臣「何かご不満でも?」

王「満足いただけるとでも!?名前からして戦う気ねえじゃん!どう魔王を討ち取る気だよ!?」

大臣「それは本人と対峙して感じとっていただきたく存じます」

王「何?こいつら今来てんの?」

大臣「そりゃあ募集したわけですから。さっそく来てもらいましょう」
3: :2013/5/8(水) 01:34:58 ID:YHEhymVdsU
笑顔勇者「お初にお目にかかります。笑顔勇者でございます」ピカー

王「眩しい笑顔ですねえ!カーテンから差し込む朝日を思わせたよ!」

大臣「どうです?この笑顔。とても清々しいですよね」

王「日常ならそうだけどねえ!残念ながら魔王討伐には向かないんだよねえ!」

笑顔勇者「王様、それは誤解です。私ほど魔王討伐に適した人材は他にいないと自負しております」ピカー

王「嘘つけよ!どうしたら笑顔で魔王が死ぬんだよ!?」

笑顔勇者「実は私の笑顔には悪しき者を死滅させる効果がございます」ピカー

王「……え?マジ?」

笑顔勇者「魔物など、悪が具現化したような存在に過ぎません。ならば、私の笑顔一つで全滅させてみせます」ピカー

王「おおう……そんな必殺機能があったなんて。じゃあちょっと任せてみようかな」

笑顔勇者「お任せください、王様!」ピカー

王「それじゃえっと……ごほん。笑顔勇者よ、魔王を討伐してくるのじゃ!」
4: :2013/5/8(水) 01:35:55 ID:YHEhymVdsU
翌日

大臣「笑顔勇者が一面で戦死しました」

王「はい嘘でしたー!ただのにやけ男だったんじゃねえか糞ったれ!」

大臣「勇ましく笑顔を振り撒いたそうですが、最期はスライムに倒され……」

王「勇ましく振り撒くもんじゃねえよ!スライムにやられるとか才能ないよねえ!」

王「大体何なの一面て!?何面とかそういう制度なの!?」

大臣「はい。魔王は十面にいるそうです」

王「遠いねえ!やっぱにやけるだけじゃ届かない遙かな頂っすわ!」

大臣「笑顔勇者の死は残念ですが前を向きましょう。我々にはまだ勇者がいます」

王「わりいな少しも残念に思わねえわ!嫌な予感しかしないけど、残りの勇者も見ていくしかねえな!」
5: :2013/5/8(水) 01:37:02 ID:YHEhymVdsU
弱気勇者「生まれてきてすみませんでした……」

王「前衛的な挨拶だねえ!初対面で存在を詫びられたの初めてだよ!」

大臣「かなり自虐的でしょう?これなら魔王も倒せるでしょう」

王「仕組みを教えろ!何がどうなったら魔王死ぬのか理解できねえわ!」

弱気勇者「すみません……指詰めてお詫びします」

王「怖いねえ!修羅場を潜ってきた奴の謝罪だよ、そいつぁ!」

弱気勇者「十本詰めれば許されますか……?」

王「そもそも詰めなくていいんだよ!俺それ見たらきっとトラウマになるだろうよ!」

大臣「ほら、弱気勇者には自分の空気に引きずり込む力があります」

王「いや、確かに必死になって止めたくはなるけど……」
6: :2013/5/8(水) 01:37:54 ID:YHEhymVdsU
大臣「魔物もある程度知能を持った生き物です。弱気勇者の態度を見たら、励ましてあげなくちゃ!ってなりますよ」

王「仕組み聞いても魔王が死ぬとは思えんわ……」

弱気勇者「すみません……どうせ僕なんかはしりとりでル攻めされてればいいんだ……死にます……」

王「死ぬな死ぬな!一緒にルから始まる言葉考えてやるから!」

大臣「ほら、王様も弱気勇者に引きずり込まれたじゃないですか」

王「わかったよ認めるよ!こいつのペースにはまれば魔王もイチコロさ!」

大臣「それでは今回は弱気勇者に頑張ってもらいましょう」

王「大丈夫かいな……弱気勇者よ、魔王を討伐してくるのじゃ!」

弱気勇者「死んできます……」

王「だから死ぬなって!」
7: :2013/5/8(水) 01:38:44 ID:YHEhymVdsU
翌日

大臣「弱気勇者が逃亡しました」

王「死ねよぉ!戦場で散ってこいよぉ!」

大臣「昨日は死ぬなって言ってたじゃないですか」

王「自殺するような真似はすんなってことだよ!それは無駄死にだからな!」

大臣「勇ましく一面に挑もうとしたそうですが、帰宅を決意し……」

王「勇ましくねえだろ!こいつ結局一度も戦場に立ってねえべ!?」

王「本当もうこいつしりとりでル攻めされてればいいよ!俺が今からル攻めしてきてやるよ!」

王「行ってくるから住所教えろや!居留守使ったらピンポンダッシュで攻めたるわあ!」

大臣「そのような暇はありません。応募してきた勇者はまだいるのですから」

王「そもそもあいつは何で応募したんだろうなあ!?」
8: :2013/5/8(水) 01:39:39 ID:YHEhymVdsU
知ったか勇者「どうも、知ったか勇者です」

王「こいつほど落胆する肩書きもねえよな!何だ知ったか勇者て!?」

大臣「そうですか?知りもしないことをさも知ってるように振る舞うには高度な技術を必要としますよ」

王「だからぁ!?どう工夫しても魔王討伐には役立たねえよ!」

大臣「まずは実際に聞いてもらいましょう。王様、何か適当な言葉を訊ねてみてください」

王「え?じゃあ……プッシュオーバートライって知ってる?」

知ったか勇者「あー知ってる知ってる。あれでしょ、こないだから始まった新番組」

知ったか勇者「運動得意な芸人やタレントが、限界を超えてスポーツ系のギネスに挑戦しようっていうテーマの」

知ったか勇者「凄いよねあれ。こないだ武井壮が200m走の男子30代世界記録越えたやつなんか泣きそうになったもん」

大臣「……ね?」

王「いや、何がぁ!?」
9: :2013/5/8(水) 01:40:58 ID:YHEhymVdsU
大臣「なんかそれっぽいこと言って、あれ、これマジかな?って感じになりません?」

王「いや、だからぁ!?魔王討伐との関連性が行方不明のままだよ!」

大臣「ちなみに王様、正解は?」

王「え?プッシュオーバートライっていうのはラグビーでスクラム等で押し込んでトライすることだよ」

大臣「ほら、もう正解の方が安っぽくて嘘っぽい感じしませんか?」

知ったか勇者「同じスポーツ関連の単語じゃないですか。実質もう俺ので正解でしょう」

王「厚かましいな!間違いを通そうとする恥知らず共がぁ!」

大臣「……あっ、この厚かましさがあれば手段を選ばず的確に魔王を倒すでしょう」

王「てめえ俺のに乗っかったろ!?聴覚が正常ですからね!あっ、て言ったの聞き逃さなかったよ!」

大臣「もういいですからこいつに託してみましょう」

王「もう面倒臭くなってるだろ!?どうすんだ、まだ一人勇者残ってんぞ!?」

知ったか勇者「じゃあ俺行ってきますね」

王「まきに入ってるねえ!唐突に終わって軽く困惑してるよ!」

王「しゃあねえな!……知ったか勇者よ、魔王を討伐してくるのじゃ!」
10: :2013/5/8(水) 01:42:02 ID:YHEhymVdsU
翌日

大臣「知ったか勇者が三面でばれました」

王「何の報告だぁ!?何なの、知ったかしてんのが三面でばれたの!?」

大臣「勇ましく知ったかしましたが、ゴブリンに指摘され……」

王「ゴブリン案外物を知ってんだね!どうしよう、無駄にゴブリンの印象良くなったよ!」

王「で、知ったかばれたあのアホはどうなったんだよ!?」

大臣「ショックのあまり帰宅したそうですけど」

王「帰るなよ!命の限り戦ってこいよ!魔王まだ七面も後にいるんだぞ!」

大臣「まあでも知ったかするだけで魔王を倒せるわけないですよ」

王「俺それ言ってたよ!けっこう早い段階で俺がそれ言ってましたよぉ!」

大臣「気を取り直して次の勇者行ってみましょう」

王「俺の気持ちは掻き乱されたままだよ!」
11: :2013/5/8(水) 01:43:06 ID:YHEhymVdsU
川柳勇者「こんにちは私が川柳勇者です」

大臣「うん。見事に川柳になってますね」

王「だからぁ!?俺、もう何回だからって言ってる!?」

川柳勇者「魔王様どうか心を静めてよ」

王「静められるかぁ!てめえ、五文字にするために俺を魔王呼ばわりしただろ!?」

大臣「それほど五七五に当てはめるのは難しいんですよ」

王「知るかぁ!川柳勇者名乗るくらいなんだからそれくらいどうにかせえよ!」

川柳勇者「川柳のプロの私も無理な物は無理。字余り」

王「余りすぎだろ!よくそこまで余らせる勇気があったな!?褒めてやるよ!」

大臣「このように言の葉を操り、相手の心をも操る強き勇者です」

王「全然操れてねえよ!あと何か言の葉とか無駄に風流な表現しないで!むかつくから!」
12: :2013/5/8(水) 01:44:22 ID:YHEhymVdsU
川柳勇者「風流な言葉遊びを楽しむ余裕もないとか……。字余り」

王「うるせえな!てめえはもう少し五七五にとらわれろよ!」

大臣「このように言の葉を操り、相手の心をも操る強き勇者です」

王「それ二回目だよ!俺も同じこと言うけど全然操れてねえよ!操る気がねえんだよ!」

川柳勇者「心外だ言葉遣いのプロなんですけどねえこれでも。字余り」

王「今すぐ役所行って改名してこい!お前今日から字余り勇者な!」

大臣「王様、名前には名付け親の気持ちがこもってます。それを簡単に改名しろ等と……」

王「しかたねえだろ!これで川柳勇者名乗ったら詐欺だぜ!?」

川柳勇者「詐欺じゃないこれが私の川柳の形なのだ。字余り」

王「今の最後、「川柳だ」の五文字でいいだろ!自ら好機を逃してんじゃねえよ!」

川柳勇者「本当だ気付かなかった仮にもプロだと言うのに。字余り」

王「ごめん!わかった!もう魔王討伐行ってくれ!もうお前と一緒にいたくないわ!」

王「いいか、すぐ行けよ!?……川柳勇者よ、魔王を討伐してくるのじゃ!」
13: :2013/5/8(水) 01:45:14 ID:YHEhymVdsU
翌日

大臣「川柳勇者が役所に行きました」

王「あいつマジで役所行ったんか!?それで!?」

大臣「勇ましく手続きを済まそうとしたそうですが、順序が違ったらしく……」

王「役所行って手続き済まして改名、じゃないんだ!?」

大臣「何かまず家庭裁判所に申請する必要があるみたいです。審判の結果、正当な理由とされれば証明書もらえて役所で変更できるみたいです」

王「へー……いや、魔王討伐はどうなったよ!?」

大臣「改名しろと命令したのは王様ですよ」

王「確かに言いましたけども!何て言うかマジでやるとは思わんかったよ!」

王「魔王討伐より優先してやることじゃなくない!?何なの、俺が悪いのかよ!?」

大臣「改名で魔王討伐どころではなくなりましたよ。どうするんですか?」

王「いいよもう!魔王討伐の任を解くよ!帰って字余り川柳作ってろバーカ!」
14: :2013/5/8(水) 01:46:18 ID:YHEhymVdsU
大臣「大変です。募集した勇者がいなくなりました」

王「ろくな勇者いなかったな!時間の無駄でしかなかったわ!」

王「どうすんだよこれ!?もう勇者いねえじゃん!魔王軍にやられるのを待つかぁ!?」

大臣「ご安心ください。この世界にはまだまだ名高き勇者が存在します。引き続き募ってまた集まってもらいましょう」

王「どうせまたわけわかんねえのが来るんだろ!パトラッシュ、俺も何だか眠くなってきたよ!」

大臣「王様、お気を確かに持ってください。魔王軍の脅威に錯乱するのはわかりますけども」

王「俺はね、お前と勇者共に錯乱してんだわ!頼むよ、その内マジでショック死するかもよ!?」

大臣「王様にご安心いただけるよう、今度こそ素晴らしい勇者を集めてみせます」

王「マジ頼むわ!いい加減俺も威厳ある普通の王やりたいんだもん!」
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