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魔王「何この子超弱い!」
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/1/3(火) 00:25:15 ID:GoOVcwF126
勇者「あ、あああああなたが魔王ね!!」
魔王「・・・1人でのこのこと殺されに来るとは殊勝な事だ。
ふむ、まさか勇者がこんな歳若い娘とはな・・・ククク」
勇者「う、うるさい!ここで会ったが百年目!世界に平和を取り戻すために
あなたを倒してみせる!」
魔王「いいだろう。倒せるものならしてみるがいい。・・・さぁかかってくるがよい!」
勇者「言われなくとも!てやー!!!」

ズルッ
ドテッ

勇者「ふぎゃっ」
魔王「えっ」



565:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 01:26:04 ID:g.AV2R2.bU

−−−




戦士「は、はぁ!?旅に出るぅ!?ちょっと待てよ!聞いてねえぞそんなの!!」

賢者「言ってないからな」

戦士「うるっせえ!お前には聞いてねえ!勇者本気か!?しかも一人って…オレもついてく!」

勇者「駄目。コレは私の戦いだから。戦士くんは付いて来ないで」

戦士「えっ…」

魔法使い「戦士はいいとして、本当に一人で大丈夫なの?遠足じゃないのよ?死ぬかもしれないのよ?」

勇者「大丈夫。大丈夫だから。そんなに心配しないで。…ちょっと時間かかるかもしれないけど、必ず帰ってくるよ。世界も救うから」

戦士「ちょっと時間がって…どれくらいだよ…」

勇者「分かんないよ。そんなの」


566:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 01:26:21 ID:g.AV2R2.bU

魔法使い「賢者…」

賢者「…俺も、昨日聞いた時驚いた。勿論反対したよ。一人じゃ危ない、俺も付いて行くって。だけど、何度言っても聞き入れてくれなかった。もう何を言ったって無駄さ」

魔法使い「…むぅ。…勇者、危なくなったら絶対に帰ってきてよ?貴女の身に何かあったらあたし…」

勇者「大丈夫だよ、魔法使いちゃん。安心して。私、絶対にやり遂げてくるから」

戦士「…大丈夫か?」

勇者「大丈夫だってば。もーしつこいなー」

戦士「だ、だってよ…」

勇者「だってもじゃないの。私が大丈夫って言ったら大丈夫なんだから」

戦士「それが信用出来たら苦労しねえよ!!お前弱いんだからさ!!」

勇者「ひ、酷い!」

賢者(いや、事実だ)


567:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 01:26:44 ID:g.AV2R2.bU

勇者「…よいっしょ、と」

賢者「荷物大きいな」

勇者「えへへ…。必要なもの詰め込んでたらこんなになっちゃった…」

賢者「要領が悪いな」

勇者「なっ」

賢者「そんなに大荷物だと敵から狙われやすいぞ?」

勇者「その時には盾にするから大丈夫だよ」

賢者「そういう問題じゃないだろ…」


568:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 01:27:01 ID:g.AV2R2.bU

勇者「じゃあ、行ってきます!」

賢者「…あぁ」

魔法使い「気を付けてね」

戦士「う…」

勇者「あ…忘れてた。…戦士くん」

戦士「…何?」

勇者「…」スタスタスタ

バチンッ!

戦士「いっ!!?」

魔法使い「!?ゆ、勇者!?平手打ちって…!?えっ…!?」


569:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 01:27:24 ID:g.AV2R2.bU

勇者「ごめんね。どうしても、許せない事があったから」

戦士「は?はぁ!?どういう…!」

勇者「スライムさん達、忘れないでね」

戦士「へっ…!?」

勇者「じゃあ、今度こそ行ってきます!」

戦士「お、おいっスライムさん達って…!!」

魔法使い「…行っちゃった」

賢者「足速いな」

戦士「なぁ!?スライムって何!?」

賢者「忘れたのか?薄情者め」

魔法使い「万死に値するわ」

戦士「はぁあああ!?」


570:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 01:27:45 ID:g.AV2R2.bU

魔法使い「…っていうか、あたし達はお咎め無しなのかしら」

賢者「…まぁ実際に手を出したわけじゃないし」

魔法使い「あたし達全員の分のが戦士への平手打ちに込められていたとしたら…」

賢者「戦士、悪かった」

戦士「だから、何がだよ!」

賢者「…後で、話してやるよ」

賢者「話した後は、花を供えに行こう」


571:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:04:40 ID:g.AV2R2.bU
−−−

一人旅も楽じゃないな。想定の範囲内ではあるけれど、思うのと実際に感じるとのでは全く違う。
最初は、かなり苦労した。旅をし始めて、そう言えばと気付いたけど、料理もまともに作った事が無かった。はじめの頃の料理なんて酷すぎて泣きたくなるくらい。
今はもう大分上達した。最近では少し工夫なんかもしたりする。
と言っても、野宿だとそんな手間のかかる料理なんてしている暇なんて無いけれど。
魔法も沢山覚えた。火もマトモに出せなかった頃が懐かしく感じる。成長したんだなぁ私も。
旅の行く先々で、困難にぶち当たったり、おかしな人にも出会ったり、…あぁ一つ村を救ったな。
勇者らしい事もした。うん、本当に成長したと思う。…大分、時間かかったけれど。
強くなった。そう、私は思っている。まだまだ精進しなくちゃいけない所は山程あるけど、あの頃のいつも泣いていた私では無くなった。
未だに初対面の人と話す時は緊張しちゃうけど。根本的な所は変わっていなくて逆に安心する。
全てが全て変わったら、私が私じゃなくなるもの。それは、怖いから嫌。

「…見えてきた」

この旅の終着点が見えた。
アレだ。久しぶりだな。

「少し、廃れてる、な」

久しぶりに見た魔王城は少し暗かった。


572:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:04:56 ID:g.AV2R2.bU

側近「…おやっ、お久しぶりですね」

側近「えぇ…見ての通りですよ。自我は保っていますけど、少し身体に異変がね」

側近「…心配ですか。変わったと思いましたけど、やっぱり根本は変わっていないんですね。安心しました」

側近「…そうですか。いいえ、謝らないで下さい。分かっていた事です」

側近「世の中、全てが上手くいく程甘くありません」

側近「ハッピーエンドには犠牲がつきものですよ。…え?違う?」

側近「えぇ。ありがとうございます。魔王様だけでなく、僕達の為にも頑張ってくれて」

側近「大丈夫です。此処で消えても悔いはありませんよ。もう、こんな身体ですし」

側近「やっぱり、魔力が少ないと駄目ですね。凶暴化はしなかったから良かったものの、これじゃあ折角の男前が台無しですよ」

側近「…泣かないで下さいよ。僕が泣かせたみたいじゃないですか。…はい、はい」

側近「…こちらこそ、ありがとう」

側近「お元気で」


573:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:05:15 ID:g.AV2R2.bU

魔物の凶暴化というのは全員が全員そうなる理由では無いみたいだ。
魔力が元々少ない奴や運の悪い奴は急激に増えた魔力に耐え切れなくて身体に異変を起こし、前の身体を保てなくなって、肉塊へと変貌する。そんな奴も中には居た。
全部が全部そうなら勝手に自滅してくれて助かるんだろうけど、それは一部らしい。
基本はみんな凶暴化、獰猛となる。
この城の奴等も大分やられた。自我を最期まで保てない奴は、自我が切断される前に俺が殺した。そう言われていたからだ。
俺の魔力は尚も増え続けていくばかり。凶暴化も肉塊にもならないからそれはそれで良いんだろうけど、やはり軋む。身体のあちこちで悲鳴をあげてやがる。
人間から魔物になるにはリスクが大きすぎると、ぼんやりとした頭で思った。
簡単に死ねたらどんなに楽な事か、死ねない身体のくせに何度も死のうと思った。
でも、いつも寸前でやめた。今此処で死んだら、アイツに申し訳立たないから。
だったら死のうだなんて思わないで下さい、とアイツなら言うだろうな。
しかし…さっきから何やら外が騒がしいな。
招かれざる客人でも来たか?今日はもう頭が重たいからこのまま寝ておきたかったんだが。

「…折角、来たのにお出迎えは無いんですか」

「…悪いな。どうやら風邪を引いたみたいだ。明日にしてくれ」

「何を馬鹿な事を」


574:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:05:36 ID:g.AV2R2.bU

勇者「…来ましたよ。魔王さん。お久しぶりですね」

魔王「…そうだな。何年ぶりだ?10年か?20年か?…30年?」

勇者「5年ですよ。時間の感覚狂ってますね。ちゃんと頭のネジ回しといて下さいよ」

魔王「手厳しい発言だ。お前はそんな辛辣な言い回しをする子じゃなかったろうに」

勇者「5年も旅をすれば変わりますよ、多少は。…多少ですけれど」

勇者「大分待たせちゃいましたね。ごめんなさい」

魔王「いいよ。…いや、良くないか。俺の仕事が増えたし」

勇者「仕事?」

魔王「何でもない」


575:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:05:54 ID:g.AV2R2.bU

魔王「あの時のリベンジマッチか?悪いが今日はもう―…」

勇者「違いますよ。違います」

勇者「私が旅で出たのは、魔王さんを倒す旅ではありません」

勇者「魔王さんを助ける旅です」

魔王「…あぁ。あぁ…そうだったな…そうだった」

勇者「…知ってたんですか?」

魔王「…いや、知らないよ」

勇者「そうですか。なら、安心です」


576:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:06:20 ID:g.AV2R2.bU


魔王「それで?助けるって具体的にどう助けるんだ?」

魔王「その勇者の剣で一思いにぶっ刺す気か?まぁ今のお前なら出来そうだけど」

勇者「違いますってば。それじゃあ倒してるじゃないですか」

勇者「…貴方にかけられた呪いを解きに来たんですよ、魔王さん」

魔王「それは凄いな」

勇者「…もっと驚いて下さいよ」

魔王「ごめんな」


577:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:06:35 ID:g.AV2R2.bU

勇者「私、頑張ったんですよ。何回も挫けそうになりましたけど、何度も殺されかけましたけど、それでも頑張って此処まで来ました」

勇者「魔王さんは魔王だからわかりますよね?今の私、強いですよ?」

魔王「…あぁ、見たら分かる。見違えたよ」

勇者「へへ…ついでに身長も伸びれば良かったんですが」

魔王「いや、お前はそれでいいよ。それがいい」

勇者「何を言ってるんですか…もう」

魔王「変わってるようで変わっていない。勇者は勇者のままだ。安心した」

勇者「…ふふ、やっと名前で呼んでくれましたね。嬉しいです」


578:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:06:51 ID:g.AV2R2.bU

あの時側近さんから頂いた魔導書を開く。
その書物に記されている魔方陣を描く。記されている呪文を唱える。呪文の通りに剣を魔方陣に突き刺す。
熱風が吹きすさぶ。電気がバチバチと鳴る。確かにコレは魔王さん程の魔力が無いと出来ないな。
自分で唱えているのにも関わらず、物凄く、痛い。熱い。
掌が汗ばむ。風は止まない。地鳴りが響き始めた。
魔王さんはそれでもそこから一歩も動かずにジッと私を見つめている。
まるで魔法の修行中の弟子を見遣る師匠のように。
あぁでも私達はそういう関係だったな。懐かしい。何もかもが懐かしい。
呪文はもうすぐで終わる。コレが成功すれば、全ては。


579:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:07:07 ID:g.AV2R2.bU

スライムナイト「…何だか暖かい光に包まれている感覚です」

側近「昇天しかけなんじゃないのか?」

ナイト「私は側近さんのお御足で踏み潰されて昇天したいです」

側近「してやりたいけど、無理だ」

ナイト「それは残念です」

側近「…消えるってこういう感覚なんだな」

ナイト「じんわりですね。どうせなら思いっきりが良いです」

側近「そうだな…どうせなら、思いっきりが良かったよ」

側近「ま、悔いは無いからいいんだけど」


580:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:07:23 ID:g.AV2R2.bU

眩しい。
眩しすぎる。勇者の詠唱が終わったと思ったら目の前が真っ白になって。
それで、何がなんだか分からない内に眠りについていた気がする。
真っ白い光の中、か。何だか死んだような感じだな。
いや…死んだんだ。
亡くなったんだよ、俺は。
魔王だった頃の俺は、消えたんだ。
光の中に先代の魔王が居た。顔が歪んでるように見えた。
お前がかけた呪いは解けた。ざまあみろだな。
まぁでも魔王になったお陰で面白い奴と出会えたから、それは感謝している。
ありがとうは言わないけどな。


581:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:07:49 ID:g.AV2R2.bU

勇者「魔王さん!!魔王さん!!」

魔王「あ…、ゆう、しゃ…?」

勇者「ま、魔王さん…!」ホッ

勇者「よ、良かった…唱え終わったら急に倒れたから、失敗した、のかと、おもっ」ポロポロ

魔王「…泣くなよ。相変わらずだな。…俺は生きてる。って事は、失敗じゃなかったんだろう?」

勇者「はいっ…!はい…!戻りましたよ!魔王さん元の姿に戻れたんですよ…!あ、これ…鏡です…見て、ください」スッ

魔王「…ふん」パリンッ

勇者「あっ!ちょっと!何を!」

魔王「お前が失敗していないと、人間に戻れたと言うのなら、わざわざ鏡を見る必要なんて無いよ」

勇者「またそんな…!…言っておきますけどおじいちゃんみたいなお顔になってますからね」

魔王「えっ!?嘘!!?」

勇者「嘘です」

魔王「こいつ…」


582:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:08:12 ID:g.AV2R2.bU

魔王「よし…ん。あれっ…うおっ!?」ドターン!

勇者「わっ!どうしたんですか転けて!」

魔王「いや、立ち上がろうとしたんだけど…足が…」

勇者「…急に人間に戻ったから、身体がついていけてないんですね」

勇者「あぁ、そうだ。どうせならこのまま私の村に行きましょうか」

魔王「は?どうやってだよ?俺はこんな状態だし…」

勇者「甘く見てもらっちゃ困りますよ。転送魔法を使えばこんなの一発…えいっ!…あれ?」

魔王「おい」

勇者「あっ、あれ!?あれれ!?つ、つかえな…!?えっ?!」

魔王「…おい、まさか」

勇者「魔力が…無くなった…?」


583:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:08:32 ID:g.AV2R2.bU

魔王「減っただけじゃないのか…?」

勇者「で、でも…何か言ってみれば…なんか…魔力を感じないというか…!もしかして…さっきの魔法で…!?」

魔王「あの魔法そんなリスクあったのか…」

勇者「…いやっ、でも私にはこの鍛えあげられた身体が…ぎゅむっ!」ズテッ

魔王「…何か、デジャブだぞ。何も無い所で転けたな」

勇者「あ、あれ…ええ…何で…?」

魔王「…」

勇者「力も魔力も無くなってる…!」

魔王「…超弱い勇者、再びか」

勇者「えぇ!?」


584:🎏 ◆Gw31v9ceXw:2012/2/27(月) 03:08:52 ID:g.AV2R2.bU

魔王「まぁ…でも、俺が人間に戻った事により、魔物は居なくなったんだ」

勇者「…探したんですけれど、側近さん達を救う方法が見付からなくて…。ごめんなさい」

魔王「お前が謝る事じゃあないよ。よくやったさ」

魔王「でもまぁ…最期の挨拶、しておきたかったな」

勇者「…ごめんなさい」

魔王「過ぎた事は仕方無い。死んだら会えそうな気がするし、死んだ時にでも会いに行くさ」

勇者「縁起が悪いです…」

魔王「ごめんごめん」


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