ぼくの名前は
さよならいおん
「さよならいおん」
ぼくはそれしか呟けない
4: 1:2011/10/12(水) 18:14:12 ID:DjGow5sBJA
>>3 名前ミスりました。1です
5: 1:2011/10/12(水) 18:15:03 ID:DjGow5sBJA
らいおん「…さ、…さよならいおん」
ぼくが初めて言った言葉は「さよなら」だった。今もさよならしか言えない。
こんにちわん君は、さよならしか言わないぼくを気味悪がったりせずに仲良くしてくれた。
6: 1:2011/10/12(水) 18:16:51 ID:ldp/oNwss.
いぬ「こんにちわん!」
らいおん「!」
いぬ「玉乗りしよう!玉乗り!」
らいおん「…!」コクコク
ぼくは大きく顔を縦にふって意思表示をする。表情もうまく作れなくて微かにしか変わらない。さよならしか言えないぼくができる意思表示は『動き』だけ。
7: 1:2011/10/12(水) 18:17:50 ID:DjGow5sBJA
いぬ「うん、その調子!」
らいおん「…」
いぬ「わ!待てそっちに毛虫が!」
らいおん「!?」グラッ
バターンッ!
8: 1:2011/10/12(水) 18:19:22 ID:DjGow5sBJA
いぬ「うはww騙されてやんのwwww」
らいおん「…!!」
いぬ「ごめんwwwでもさwww」
らいおん「?」
いぬ「おまえ、ちょっと笑ってるよw」
ぼくはちょっとだけ笑えたらしい。こんにちわん君はとっても嬉しそうだった。
9: 1:2011/10/12(水) 18:22:24 ID:ldp/oNwss.
こんにちわん君といると笑えるのかもしれない。ずっと一緒にいればいつかはちゃんと笑顔を作れるかもしれない。
いぬ「もう帰ろうぜwお腹減ったし」
ぼくはこんにちわん君とかけっこしながら家に帰った。もう辺りは薄暗くて少し怖い気がした。
10: 1:2011/10/12(水) 18:24:44 ID:ldp/oNwss.
いぬ「ただいまー」
いぬ母「おかえりー」
いぬ「な!風呂入ろ!」
らいおん「!」コクコク
いぬ母「あ、さよならいおんはちょっと待ちなさい!」
ぼくはちょっと驚いた。いつも笑顔のこんにちわん君のお母さんが寂しげな空気を出していたから。
11: 1:2011/10/12(水) 18:25:27 ID:ldp/oNwss.
台所に呼ばれてぼくは座る。こんにちわん君のお母さんは笑顔で、でも気まずそうに口を開く。
いぬ母「あのね、最後まで聞いて欲しいんだけどね、」
らいおん「…?」
いぬ母「あなたがお家に来たのは2才になるちょっと前だったわね…」
12: 1:2011/10/12(水) 18:25:57 ID:DjGow5sBJA
いぬ母「あの時はこんにちわんに弟が出来たみたいで嬉しかったわ…」
いぬ母「あれから5年くらいたって、毎日とっても楽しいわ…だけど、」
いぬ母「あなたをもう育てていけないの…!」
意味がわからなかった。
13: 1:2011/10/12(水) 18:26:52 ID:ldp/oNwss.
いぬ母「ごめんね…」
こんにちわん君のお母さんが泣いている。ガラリと玄関が開く音。「ただいま」とこんにちわん君のお父さんの声がした。お風呂場のほうから小さくだけどこんにちわん君の歌声が聞こえる。
そっか、ぼくは、ひとりぼっちになるのか。
14: 1:2011/10/12(水) 18:27:37 ID:ldp/oNwss.
いぬ父「さよならいおん、お土産だよ。」
こんにちわん君のお父さんが小さいリュックにお菓子をたくさん詰めた物とメモをくれた。ぼくはメモを握ってリュックをなるべくゆっくり背負った。
もうちょっと、もうちょっとだけここに居たい。
15: 1:2011/10/12(水) 18:28:35 ID:ldp/oNwss.
いぬ「さよならいおーん、お風呂あいたぜーって、なんで二人とも泣いてるの?」
いぬ母・いぬ父「……」
いぬ「なんでリュック背負ってるの?」
こんにちわん君の興味がぼくに移った。こんにちわん君はぼくが出ていく事を知らされていないのか不思議そうな顔をしてる。
16: 1:2011/10/12(水) 18:29:11 ID:DjGow5sBJA
いぬ「あ、なあ!明日も玉乗りしようぜ!」
らいおん「…」
いぬ「玉乗り楽しいよなあー!毎日やってる気がするけどwww」
いぬ母「こんにちわん…さよならいおんは…」
らいおん「!」
ぼくは急いでこんにちわん君のお母さんの口に手を当てて「言わないで」と合図した。こんにちわん君はぼくをじっと見ている。
17: 1:2011/10/12(水) 18:30:20 ID:DjGow5sBJA
らいおん「…さよな、らいおん……!!」
久しぶりに言葉を発した。なんだか辺りがぼやけて見える。生ぬるい水がほっぺをつたって行く。
きっとぼくは泣いているんだ。
18: 名無しさん@読者の声:2011/10/12(水) 18:31:09 ID:6leDSTZ1LQ
しエンマコオロギ
19: 1:2011/10/12(水) 18:32:06 ID:ldp/oNwss.
いぬ「……さよならいおん…?」
こんにちわん君が言い終わる前に、ぼくは走って家を飛び出した。お菓子が入ったリュックが揺れて重い。泣いているのに泣き声が上がらない自分が少し怖いと思った。
20: 名無しさん@読者の声:2011/10/12(水) 18:33:38 ID:OOPr.NLLso
(´;ω;`)っC
21: 1:2011/10/12(水) 18:55:45 ID:DjGow5sBJA
たくさん走った。なんで走ってるのか自分でもわからない。別に走らなくてもいいのに走った。涙が止まらない。足の裏が痛い。
こんにちわん君、ごめんね。明日は玉乗り出来ないや。だって足が痛いから。きっともう会えないから。
22: 1:2011/10/12(水) 18:56:38 ID:ldp/oNwss.
ドンッ
何かに勢いよくぶつかって転んだ。ぶつかった痛さがあまり感じられないのは足が痛すぎるからなのかな。
顔を上げようとするとその『何か』がゆっくりぼくに目線をあわせて口を開いた。
23: 1:2011/10/12(水) 19:00:17 ID:ldp/oNwss.
男の子「わあ、ごめんね。大丈夫?」
らいおん「!!!」
人間だ。ぼくのお父さんとお母さんを食べた人間だ。真っ暗闇の中、街灯でにこにこした顔が照らされてとても怖い。逃げなきゃ。はやく逃げなきゃぼくもきっと両親のように食べられてしまう。
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