ぼくの名前は
さよならいおん
「さよならいおん」
ぼくはそれしか呟けない
12: 1:2011/10/12(水) 18:25:57 ID:DjGow5sBJA
いぬ母「あの時はこんにちわんに弟が出来たみたいで嬉しかったわ…」
いぬ母「あれから5年くらいたって、毎日とっても楽しいわ…だけど、」
いぬ母「あなたをもう育てていけないの…!」
意味がわからなかった。
13: 1:2011/10/12(水) 18:26:52 ID:ldp/oNwss.
いぬ母「ごめんね…」
こんにちわん君のお母さんが泣いている。ガラリと玄関が開く音。「ただいま」とこんにちわん君のお父さんの声がした。お風呂場のほうから小さくだけどこんにちわん君の歌声が聞こえる。
そっか、ぼくは、ひとりぼっちになるのか。
14: 1:2011/10/12(水) 18:27:37 ID:ldp/oNwss.
いぬ父「さよならいおん、お土産だよ。」
こんにちわん君のお父さんが小さいリュックにお菓子をたくさん詰めた物とメモをくれた。ぼくはメモを握ってリュックをなるべくゆっくり背負った。
もうちょっと、もうちょっとだけここに居たい。
15: 1:2011/10/12(水) 18:28:35 ID:ldp/oNwss.
いぬ「さよならいおーん、お風呂あいたぜーって、なんで二人とも泣いてるの?」
いぬ母・いぬ父「……」
いぬ「なんでリュック背負ってるの?」
こんにちわん君の興味がぼくに移った。こんにちわん君はぼくが出ていく事を知らされていないのか不思議そうな顔をしてる。
16: 1:2011/10/12(水) 18:29:11 ID:DjGow5sBJA
いぬ「あ、なあ!明日も玉乗りしようぜ!」
らいおん「…」
いぬ「玉乗り楽しいよなあー!毎日やってる気がするけどwww」
いぬ母「こんにちわん…さよならいおんは…」
らいおん「!」
ぼくは急いでこんにちわん君のお母さんの口に手を当てて「言わないで」と合図した。こんにちわん君はぼくをじっと見ている。
17: 1:2011/10/12(水) 18:30:20 ID:DjGow5sBJA
らいおん「…さよな、らいおん……!!」
久しぶりに言葉を発した。なんだか辺りがぼやけて見える。生ぬるい水がほっぺをつたって行く。
きっとぼくは泣いているんだ。
18: 名無しさん@読者の声:2011/10/12(水) 18:31:09 ID:6leDSTZ1LQ
しエンマコオロギ
19: 1:2011/10/12(水) 18:32:06 ID:ldp/oNwss.
いぬ「……さよならいおん…?」
こんにちわん君が言い終わる前に、ぼくは走って家を飛び出した。お菓子が入ったリュックが揺れて重い。泣いているのに泣き声が上がらない自分が少し怖いと思った。
20: 名無しさん@読者の声:2011/10/12(水) 18:33:38 ID:OOPr.NLLso
(´;ω;`)っC
21: 1:2011/10/12(水) 18:55:45 ID:DjGow5sBJA
たくさん走った。なんで走ってるのか自分でもわからない。別に走らなくてもいいのに走った。涙が止まらない。足の裏が痛い。
こんにちわん君、ごめんね。明日は玉乗り出来ないや。だって足が痛いから。きっともう会えないから。
22: 1:2011/10/12(水) 18:56:38 ID:ldp/oNwss.
ドンッ
何かに勢いよくぶつかって転んだ。ぶつかった痛さがあまり感じられないのは足が痛すぎるからなのかな。
顔を上げようとするとその『何か』がゆっくりぼくに目線をあわせて口を開いた。
23: 1:2011/10/12(水) 19:00:17 ID:ldp/oNwss.
男の子「わあ、ごめんね。大丈夫?」
らいおん「!!!」
人間だ。ぼくのお父さんとお母さんを食べた人間だ。真っ暗闇の中、街灯でにこにこした顔が照らされてとても怖い。逃げなきゃ。はやく逃げなきゃぼくもきっと両親のように食べられてしまう。
24: 1:2011/10/12(水) 19:03:02 ID:ldp/oNwss.
男の子「どうしたの?ふるえてるよ?」
らいおん「!!」
人間の手がのびてきてぼくを撫でた。恐怖のあまり動けない。お母さんとお父さんが食べられてく光景を思い出してしまう。
男の子「きみ、ポンデライオン?」
25: 1:2011/10/12(水) 19:11:17 ID:DjGow5sBJA
人間の言葉が頭の中で繰り返される。ぼくはポンデライオンじゃない。似てるかもしれないけど全く違うんだ。
らいおん「さ、さよ、さよならいおん…!」
男の子「さよならいおん?なにそれwwwwww」
人間がゲラゲラと笑っている。逃げるなら今がチャンスだ。ぼくはふるえる足に力をいれて一生懸命走った。
26: 1:2011/10/12(水) 19:35:47 ID:DjGow5sBJA
人間の笑い声がどんどん小さくなっていく。それに比例して安心感が増していく。立ち止まって振り返ってみると誰もいなかった。ぼくは食べられずに済んだんだ。
一気に疲れが襲ってきてペタリとその場に座り込んだ。地面はとっても冷たくて気持ちがいい。
27: 1:2011/10/12(水) 19:36:35 ID:ldp/oNwss.
ぼくはとうとう一人になったんだと実感した。走った道を振り返っても誰もいない。本当に誰もいないんだ。こんにちわん君も、そのお母さんもお父さんも、いないんだ。
涙が出そうになったのを必死に堪える。
ぼくはこれからどうしよう
28: 1:2011/10/12(水) 19:37:09 ID:ldp/oNwss.
気持ちが落ち着いてきても何でぼくは捨てられたのか考えようとは思えなくて、これからどうしようということばかり考えた。
ずっと握ってた拳からメモが出てきた。握りしめてたことさえ忘れてたからちょっと驚く。
29: 1:2011/10/12(水) 19:37:50 ID:DjGow5sBJA
汗でシワシワになったメモを開いてみると、こんにちわん君のお父さんの文字で
『さよならいおんは大事な家族だ』と書かれていた。
じゃあなんでぼくを捨てたの?と思ったぼくの気持ちはもう届かない。でもそれの気持ちを上回るくらい嬉しいと感じた。嬉しいときなんて言うんだっけ。思い出せない。
30: 名無しさん@読者の声:2011/10/12(水) 19:38:43 ID:6BkTiQ0rv.
さよならいおん…(´;ω;`)
31: 1:2011/10/12(水) 19:51:57 ID:DjGow5sBJA
メモを丁寧に折りたたんでリュックの外ポッケにしまう。これは宝物になりそうだ。
リュックのチャックをジーッと開ける。中には大量のぼくの好きなお菓子と薄い毛布が1枚だけ入っていた。
毛布にくるまって空を見上げた。空がとっても暗くて広い。ひとりじゃ星の綺麗さもよくわからなかった。
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