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白兎「アリス! 私達のアリス!」
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1: 名無しさん:2011/6/9(木) 19:08:39 ID:Sk5yLArqZw
少女は走る 走る

その白い足は止まる事を知らない

その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない

その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる

腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする

辿り着いたのは、とある井戸

その向こうは、彼女の世界


759: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 19:36:21 ID:0JTMROl5ps
目の前の少女が、アリス

金髪で青い目

青いワンピース、白いエプロン

兎の少女が探し続けた
この国の住人達が待ち続けた少女

アリス「……誰?」

チェシャ「ボクはチェシャ猫だ
ずっと昔の、君の友達」

アリス「……友達?」

チェシャ「たった一度来ただけだ、覚えていないだろうけどね」

アリス「…えぇ、覚えていないわ
こんな気味の悪い所も、あなた達も」

男「……」
760: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 19:49:17 ID:kKLv8s9J86
チェシャ「酷い言われようだね」

アリス「本当の事だから」

チェシャ「ここの住人達は、君に命を分け与えてるんだぜ?
その言い草は無いだろ」

アリス「…そんな馬鹿げた話が」

チェシャ「あったとしたら?」

アリス「…良い迷惑よ」

チェシャ「……」

アリス「…本当に…良い、迷惑…!」
761: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 19:56:21 ID:YROlhhOGxU
アリス「誰がそんな事望んだの?
私の体は異常だったのよ?」

アリス「眠れないし目もろくに見えない、声も出せない」

アリス「治ってきてもまだまだ不完全で
そのうち見えて来た全てが怖かった」

アリス「捨てられた、拒まれた、目を背けられた!」

アリス「死んでやろうって、何度考えた事かしら!
何度自分を傷つけたかしら!」

アリス「死なないのよ!何回何十回何百回何千回首を吊っても!」

もの凄い剣幕で言葉を紡ぎます
762: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 20:13:55 ID:YROlhhOGxU
アリス「やっと!やっと死んだらここにいるのよ!?」

アリス「何が不思議の国よ!ふざけないで!」

チェシャ「……そうかい」

アリス「何も考えたくない…
何も感じたくない…」

男「……おい」

アリス「要らない…こんな体要らない…!
もう何も見たくない聞きたくない!」

男「おい!!」ガシッ
763: 名無しさん@読者の声:2011/8/16(火) 20:26:30 ID:FAT/SEDfLU
アリス「何よ…何なのよここ!
空も地面も汚い…
消えちゃえばいいのよこんな世界の色なんて!」

言った途端、空に広がる透き通るような水色

大地に広がる優しい緑色

チェシャ「……!」

まず最初に感づいたのは猫

アリス「歩きたくない…何も知りたくない…」

男「黙れよ…!ぶん殴られたくないなら喋るな…!!」ギュゥ

アリス「…ッ…」

チェシャ「…男君、手を放せ
そのまま喋らせろ」

男「聞くに耐えねえんだよ…こいつの言ってる事は!」

チェシャ「言うことを聞け」

男「……」パッ

チェシャ「ん、それでいい」ニンマリ
764: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 20:36:32 ID:Guo50azY9o
アリス「…要らない…みんな要らないの…」

男「…こんな奴を」

男「白兎はこんな奴を探し続けてたのかよ…!
山鼠はこんな奴の為に眠れなかったのかよ…!」

チェシャ「……」

男「チェシャ猫も何とか言えよ!」バッ

振り向いた少年の目の前に突きつけられた銃口

男「…あ?」

?「……どいてくれ」
ドンッと言う爆発音
撃ち出された鉛は、少年の額を貫きます
765: 名無しさん@読者の声:2011/8/16(火) 20:46:32 ID:eDhl4PA.B6
アリス「ひっ!?」

?「……邪魔だ」ドサッ

男「……」

チェシャ「…いきなりボクの友達を撃ち殺すなんて、穏やかじゃないね、狩人」

狩人「……死なないんだろ、そいつ」

チェシャ「まぁね」

男「……ふざけんな、くっそ痛いんだぞ」

チェシャ「男君は少し休んでな、熱くなりすぎだ」

男「…なんで、止めた」

チェシャ「アリスが喋るのを、かい?」

チェシャ「気付いたからさ、献上品の返却手段にね」

男「……?」

狩人「……」
766: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 20:53:51 ID:K4ESg4cJk.
チェシャ「とっても簡単な話だ」フリフリ

チェシャ「僕達の献上が始まった時のように、アリスが要らないと願ったものが返却される」

男「…!」

チェシャ「色なんて消えろと願った途端、景色が元に戻ったろ?
そういう事さ」

アリス「…何言ってるの…?」

チェシャ「君にもっと残酷になれって言ってるんだよ」ニンマリ

アリス「……?」

狩人「……もう沢山だ」
767: 名無しさん@読者の声:2011/8/16(火) 21:01:09 ID:Znc3UNM8h6
わわわわくてかっ!!
支援ー
768: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 21:08:54 ID:kKLv8s9J86
狩人「…こんなアリス…誰も求めてなんかいない…!」

狩人「…私が間違っていたのか?
お前の害になる献上はほぼ消した…
それなのに…!」

チェシャ「…おい」

狩人「…このアリスは、この国に居ても害にしかならない」ガチャ

アリス「…!?」

アリス「うっ…撃つの!?」

狩人「…何も要らないんだろう?
大丈夫だよアリス
私もすぐに後を追うから」

アリス「言ってる意味が…」

狩人「……ごめんねアリス」カチャン

アリス「や…やだっ!死にたくな」




チェシャ「……馬鹿が」
769: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 21:14:55 ID:kG2XMrY8s6
チェシャ「……」

男「…お、おい」

チェシャ「どこまで馬鹿なんだろうね人間は
自分勝手を直向きと勘違いしてるよ」

男「……」

チェシャ「…君くらいだまともなのは」

男「……」

チェシャ「参ったね、本当に参った」

不思議の国はアリスの為の国

アリスがいなくなってしまえば、必要の無い国

猫が空を見上げる

つられて少年も

色を取り戻したばかりの空に、大きな黒い穴が出来ていました
770: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 21:38:48 ID:R0seOgtGOQ
男「なんぞあれ…」

チェシャ「…不思議の国の眠りさ」

男「…眠り?」

チェシャ「アリスがいないなら必要が無いからね、眠るのさ」

男「……俺達はどうなるの?」

チェシャ「君はどうしたい?」

男「…どう、って」

チェシャ「君の『死』は最後の最後で返却された
山鼠ちゃんも『睡眠』を返却されて眠ってるだけ」

男「…!? 寝てるのか山鼠は!」

チェシャ「あぁ。ついでに、君達を人間界に送ってやる事も出来なくもない」

男「……!?」
771: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 22:03:04 ID:FAT/SEDfLU
チェシャ「送ってそれっきりなら、それ以上体力を削る事もないし可能なんだよね」

男「……」

チェシャ「どこぞの偉い人によれば
『どっちへ行きたいかわからなければ、
どっちの道へ行ったって大した違いはない』らしいけど」

チェシャ「ねぇ自殺志願者君。
君は生きたいかい?
まだ死にたいかい?」

男「…大丈夫、もう決めてる」

チェシャ「……」フリフリ

男「生きるよ、生きる」

男「まだ眠るには早いんだから」

チェシャ「…そう言うと、信じてたよ」ニンマリ

黒い穴が、不思議の国を飲み込んでいきます
772: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 22:17:46 ID:kKLv8s9J86
チェシャ「お別れのキス位、貰っても罰は当たらないかな?」フリフリ

男「当たらないんじゃない?」

チェシャ「冗談だよ
変わりに山鼠ちゃんを思いっ切り可愛がってあげな」

男「…そうする」

不思議の国が消えて行くのを見るのが怖くて、少年は目を閉じました

チェシャ「…次に目を開けたら元の世界だ」

男「…うん」

鼠の少女を抱えて



「「じゃあね」」

鼠の少女と人間の少年は不思議の国から消えました

猫は、不思議の国は、やっと眠りにつきます

チェシャ「おやすみ」
773: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 22:28:37 ID:Guo50azY9o



長い間起きていて
長い間寝ているような気がする

目を開くのが億劫で
顔をふかふかの地べたにうずめるのが心地良い

静かで、涼しくて
自分の手だけが熱を帯びている

あったかくて目を開けたら
愛しい人が傍で手を握ってくれていた

男「おはよう」

山鼠「……おはよ」
774: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 22:53:22 ID:0JTMROl5ps


妹娘「ねーお父さん?」

男「んー?」

妹娘「ピクニックってなにするの?」

男「暇なの?」

妹娘「うん!」

男「お姉ちゃんは?」

妹娘「難しい本読んでるの!」

男「そうかー」

山鼠「そこら辺を冒険しといで
色々見つかって楽しいぜ?」

妹娘「冒険?」

山鼠「そ。怪我しないようにな?」

妹娘「うんー!」タッタッ

男「放任主義っすな」

山鼠「過保護よかマシさ」ニッ
775: 名無しさん@不思議の国:2011/8/16(火) 23:01:38 ID:kKLv8s9J86
姉娘「…あんた何してるの?」

妹娘「冒険!」

姉娘「あんまり遠く行かないでよ?
迷子になったら面倒なんだから」

妹娘「はーい!」タッタッ

少女は走る 走る

草を踏みつけ 好奇心のままに

ジリリと目覚まし時計の音

音の鳴る方へ向かうと

妹娘「……白い、兎さん?」

白い耳を揺らして走る兎

追いかけて 追いかけて

辿り着いたのは、とある井戸

その向こうは、彼女の世界



白兎「アリス! 私達のアリス!」

〜fin〜
776: 名無しさん@読者の声:2011/8/16(火) 23:04:33 ID:kLQdZSsZjo
終わったぁ!寂しいけど、面白かったです!!個人的には芋虫だしてほしかったかな。

1乙!!!次回作に期待!!
777: 名無しさん@読者の声:2011/8/16(火) 23:18:33 ID:k5F7Lfj7MY
乙!(´;ω;`)

このマンガ欲しい!!すっごい楽しませてもらいました!ありがとうございました!
778: 名無しさん@読者の声:2011/8/16(火) 23:26:45 ID:TJWk.ac8Fw
乙!!

面白かった!!

誰かに漫画化してほしいなぁ〜

もちろん保管庫いきだよね?
次回作にも期待してるよ!
273.62 KBytes

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sage:


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