少女は走る 走る
その白い足は止まる事を知らない
その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない
その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる
腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする
辿り着いたのは、とある井戸
その向こうは、彼女の世界
719: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 07:29:36 ID:HpksKtXyz2
男「…これから、どうしようか」
山鼠「……あ?」
男「今日はこの城で泊まるとしてだ。
明日から白兎連れてとうするか…」
白兎「……」
山鼠「…んなもん明日決めればいいだろ」
男「そうかね。白兎大丈夫か、怖くないか?」
白兎「…えぇ…」
この城には、さっきまで沢山の人達が居たはずなのに
今では全く人の気配がしませんでした
門を守るトランプ兵も、城を掃除するメイドも、ビルも女王も
720: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 09:14:21 ID:0JTMROl5ps
男「……ここでいいか」
山鼠「お、ベッドが2つ」
男「…誰も居ないみたいだし、いいんじゃない」
山鼠「まだ夜まで時間あるぜ」
男「あぁうん、飯漁ってくるから
待っててくれよ」
男「白兎もここ最近何も食ってないんだろどうせ」
白兎「……え、あ、はい…」
男「……」
男「…じゃ」
721: 名無しさん@読者の声:2011/8/13(土) 11:21:14 ID:l1GoSPKBsY
私怨
722: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 15:43:28 ID:R0seOgtGOQ
男「…飯…厨房かな…どこだっけか」
男「……本当に…!」
本当に誰も居ないな、と言おうとしたその時、目の前に人影が
壁にもたれかかった見覚えのある姿
男「…ビルさん?」
ビル「……おや」
男「…大丈夫ですか?」
ビル「…えぇ」
男「この城には人は必要ないと言うもんだから、どっかに行ったのかと…」
ビル「そう簡単に離れられる所ではございませんから、この城は」
ビル「…ここ以外に私の居場所なんて、ありませんし」
男「……」
723: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 16:11:21 ID:R0seOgtGOQ
ビル「どうかしましたか…?」
男「あ、城の食料をくすねに厨房を探してて」
ビル「……あの、私一応城の人間なんですが」
男「あ」
ビル「もの凄い自白ですね」
男「あ、わわ」
ビル「…まぁ別にもうこの城に主も盗みを咎める人もいませんし」
ビル「このまま真っ直ぐ、突き当たりで左ですよ」
男「…!」
ビル「どうぞ、いくらでも」
男「どうも!」
724: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 17:04:29 ID:uz77L901sc
男「大漁だ大漁、どっこいせ」ドサッ
山鼠「すげー量だな」
男「腹が減っては戦はできんよ」
山鼠「誰と戦うんだよ」
男「ほら白兎、お前の好きなにんじんだ」
白兎「……」
山鼠「…シロ?」
白兎「…いらない、です…」
男「……」
白兎「食欲…ありませんし…」
男「食え」ズイ
白兎「……」
男「飯食わなきゃ明日から保たないぞ」
白兎「……明日から?」
男「あぁ、明日からな」
白兎「……」シャク
725: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 20:42:38 ID:0JTMROl5ps
男「…美味いだろ?」
白兎「……」シャクシャク
男「……」
白兎「……」ポロポロ
山鼠「…おい」
白兎「…う…ぅあ…ああぁ…」ポロポロ
男「……」
山鼠「お、男!」
男「…辛いなら、好きに泣けばいいよ」
男「俺はもう寝るから、うん」ゴロン
山鼠「…シロ、俺達は気にしないから
甘えたい時は言ってくれよ?」ゴロン
男「2つベッドあんだから、こっち使わないで向こう行けよ」
山鼠「俺が何処で寝ようが勝手だろ」
726: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 20:50:03 ID:YROlhhOGxU
白兎「…あの…」
男「ちょっと視線がずれてるけどどうした」
山鼠「早速甘えたくなったか、へへ」
白兎「…うん、甘えると…言いますか…」
白兎「…私が、男さんと一緒に寝たいです……」
山鼠「」
男「あーん?」
白兎「…駄目…ですかね…?」
男「だってよ」
山鼠「ぅえ!? あ、や…えっ!?」キョドキョド
男「何キョドってんの」
白兎「…今夜だけ…今夜だけでいいですから…」
山鼠「あ…うー」
727: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 20:58:45 ID:uz77L901sc
山鼠「む、むー…お、男が決めればいいだろ!」
男「出たよ無茶振り」
白兎「男さん…」
男「今夜だけならいいんじゃねぇの、白兎」
山鼠「……」
山鼠「あぁそぉ! いいよ俺があっちで寂しく一人で寝りゃいんだろ!
いやまぁ寝れねーけどよ!」ケリッ
男「拗ねんな拗ねんな」
白兎「…ありがとう、ございます…」
男「どうせ向こうでも寝てないんだろ?」
白兎「……」コクッ
男「ならさっさと寝るぞ」
山鼠「ふんっ!」
728: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 21:21:37 ID:FAT/SEDfLU
男「…じゃあ山鼠、おやすみ」
山鼠「……」ツーン
男「……白兎も」
白兎「……はい、ありがとう、ございました」
男「……気にするな」
夜はゆっくりと更けて行きます
少年の静かな寝息が聞こえる
顔は見えないけれど、もう寝ているのでしょう
手探りで少年の頬に触れる
それはそれは良く眠っているようで
兎は消え入るように言葉をもらしました
白兎「……ごめんなさい」
729: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 21:30:43 ID:YROlhhOGxU
この国に連れて来てしまってごめんなさい
死を奪ってごめんなさい
迷惑をかけてごめんなさい
アリスを見つけれなくてごめんなさい
約束を守れなくてごめんなさい
頬から体をなぞり、少年の腰に手を下ろす
少年のズボンのポケット
そこに強引に突っ込んだ拳銃があることを
兎の少女は知っていました
起こさないように引き抜くのです、ゆっくりと
730: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 21:48:51 ID:0JTMROl5ps
鼠のお婆さんの家の出来事、握った感触、撃つ時の衝撃
どれ一つとして忘れてなんかない
でも、もうお終い
白兎「…無理ですよ…」
白兎「…アリスも…女王様も…視力すら失って…」ポロポロ
白兎「…それでもまだ生きていける程…強くないですよ…」ポロポロ
少年は都合良く、まだぐっすりと眠っているようでした
白兎「……」カチャ
鼠の少女が気づいたのでしょうか
声を荒げて自分に呼びかけているような
白兎「山鼠ちゃんも…ごめんね…?」
山鼠「シロ!!」
兎の少女と、彼女が抱いた拳銃は
同時に声をあげて哭きました
731: 名無しさん@読者の声:2011/8/13(土) 23:26:21 ID:oHNyuPfZpg
あ、なっなにっ!?
ヤバい…白うさちゃんが…
紫煙支援
732: 名無しさん@読者の声:2011/8/14(日) 10:41:14 ID:vnsiBmoeJ6
う、うわあああああシロォォォォ!!!!(´;ω;`)
733: 名無しさん@読者の声:2011/8/14(日) 16:46:20 ID:e/Z68U8bwI
ああぁぁ・・・
一位おめでとうって言えない雰囲気・・・
シロちゃあああああああん!!!
山鼠ちゃんの最後の声が辛すぎる
734: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 20:30:45 ID:iNLuW6B7Vg
鼠の少女と人間の少年は
城を出て、また歩き始めました
次は目的地なんて無い自由な旅
そして一人少なくなった静かな旅
薔薇園を抜けて丘を下り、気の向くままにフラフラと
山鼠「…そうだ」
男「…?」
山鼠「婆ちゃん家、行ってみねぇか?
ここから近いはずだし」
男「…まぁ、良いんじゃないかね
場所覚えてる?」
山鼠「んと…確かね、向こうだった
あの山の方」
735: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 20:39:26 ID:0JTMROl5ps
山鼠「……」ガチャガチャ
男「……」
山鼠「……いねぇや」
男「…そぉかい」
山鼠「…まぁた引っ越したのか婆ちゃん」
男「しょうがないな…ほら、行くぞ」
山鼠「あぁう……ぅ?」ヘタッ
男「山鼠?何へたり込んでんだ」
山鼠「……」プルプル
山鼠「あー、駄目だ。足動かねえ」
男「あー?また我が儘モードかい」
山鼠「……また頼むわ、おぶってくれ」
736: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 20:56:24 ID:kKLv8s9J86
男「しゃーねぇなぁ」
鼠のお婆ちゃんの家も駄目
さぁ、いよいよ何処に行こうかな
湖なんていいかも知れない
洗濯中雨に降られたり、頭を撃ち抜かれたりと、良い思い出はあまりないけれど
あそこに住む友人にも会いたいし、何より
少年の服に染み込んだ、白兎の赤色をどうにかしたかった
そんな事を考えながら、鼠の少女の手を取る
737: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 21:04:17 ID:iNLuW6B7Vg
男「……」ヒョイ
男「軽!」
山鼠「毎回同じこと言うなお前」
男「…いや、あれ?お前ここまで軽かったか?」
山鼠「…知らねえよ。自分の体重なんか自分じゃ分かんねえんだから」
男「……」
山鼠「……んだよ」
男「…お前、もう、限界だろ」
山鼠「……」
山鼠「……」チッ
738: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 21:11:44 ID:eDhl4PA.B6
山鼠「何下らねえ事言ってんだお前は」
男「…」ドサッ
山鼠「あだっ! おい、何で下ろすんだよ!」
男「…立ってみろよ」
山鼠「…は?」
男「自力で立ってみろ」
山鼠「…面倒くせぇ、そんな事よか」
男「山鼠」
山鼠「……」
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