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白兎「アリス! 私達のアリス!」
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1: 名無しさん:2011/6/9(木) 19:08:39 ID:Sk5yLArqZw
少女は走る 走る

その白い足は止まる事を知らない

その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない

その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる

腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする

辿り着いたのは、とある井戸

その向こうは、彼女の世界


718: 名無しさん@不思議の国:2011/8/12(金) 23:01:17 ID:HpksKtXyz2
山鼠「…どうだ、落ち着いて来たか?」

白兎「…少しは…はい」

きっと嘘だろう。でも、ずっとここにいる訳にもいかない

男「…とりあえず、下に降りようか」

白兎「…は、い」


転ばないように、鼠の少女が手を引いて進む

螺旋階段は少年がおぶって降りる

この住み慣れた城の中ですら
誰かの力を借りなければ歩くことも叶わない

白兎「…ご…めん…なさい…」ボソボソ

男「……ん」

山鼠「…気にすんなって」
719: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 07:29:36 ID:HpksKtXyz2
男「…これから、どうしようか」

山鼠「……あ?」

男「今日はこの城で泊まるとしてだ。
明日から白兎連れてとうするか…」

白兎「……」

山鼠「…んなもん明日決めればいいだろ」

男「そうかね。白兎大丈夫か、怖くないか?」

白兎「…えぇ…」

この城には、さっきまで沢山の人達が居たはずなのに

今では全く人の気配がしませんでした

門を守るトランプ兵も、城を掃除するメイドも、ビルも女王も
720: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 09:14:21 ID:0JTMROl5ps
男「……ここでいいか」

山鼠「お、ベッドが2つ」

男「…誰も居ないみたいだし、いいんじゃない」

山鼠「まだ夜まで時間あるぜ」

男「あぁうん、飯漁ってくるから
待っててくれよ」

男「白兎もここ最近何も食ってないんだろどうせ」

白兎「……え、あ、はい…」

男「……」

男「…じゃ」
721: 名無しさん@読者の声:2011/8/13(土) 11:21:14 ID:l1GoSPKBsY
私怨
722: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 15:43:28 ID:R0seOgtGOQ
男「…飯…厨房かな…どこだっけか」

男「……本当に…!」

本当に誰も居ないな、と言おうとしたその時、目の前に人影が

壁にもたれかかった見覚えのある姿

男「…ビルさん?」

ビル「……おや」

男「…大丈夫ですか?」

ビル「…えぇ」

男「この城には人は必要ないと言うもんだから、どっかに行ったのかと…」

ビル「そう簡単に離れられる所ではございませんから、この城は」

ビル「…ここ以外に私の居場所なんて、ありませんし」

男「……」
723: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 16:11:21 ID:R0seOgtGOQ
ビル「どうかしましたか…?」

男「あ、城の食料をくすねに厨房を探してて」

ビル「……あの、私一応城の人間なんですが」

男「あ」

ビル「もの凄い自白ですね」

男「あ、わわ」

ビル「…まぁ別にもうこの城に主も盗みを咎める人もいませんし」

ビル「このまま真っ直ぐ、突き当たりで左ですよ」

男「…!」

ビル「どうぞ、いくらでも」

男「どうも!」
724: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 17:04:29 ID:uz77L901sc


男「大漁だ大漁、どっこいせ」ドサッ

山鼠「すげー量だな」

男「腹が減っては戦はできんよ」

山鼠「誰と戦うんだよ」

男「ほら白兎、お前の好きなにんじんだ」

白兎「……」

山鼠「…シロ?」

白兎「…いらない、です…」

男「……」

白兎「食欲…ありませんし…」

男「食え」ズイ

白兎「……」

男「飯食わなきゃ明日から保たないぞ」

白兎「……明日から?」

男「あぁ、明日からな」

白兎「……」シャク
725: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 20:42:38 ID:0JTMROl5ps
男「…美味いだろ?」

白兎「……」シャクシャク

男「……」

白兎「……」ポロポロ

山鼠「…おい」

白兎「…う…ぅあ…ああぁ…」ポロポロ

男「……」

山鼠「お、男!」

男「…辛いなら、好きに泣けばいいよ」

男「俺はもう寝るから、うん」ゴロン

山鼠「…シロ、俺達は気にしないから
甘えたい時は言ってくれよ?」ゴロン

男「2つベッドあんだから、こっち使わないで向こう行けよ」

山鼠「俺が何処で寝ようが勝手だろ」
726: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 20:50:03 ID:YROlhhOGxU
白兎「…あの…」

男「ちょっと視線がずれてるけどどうした」

山鼠「早速甘えたくなったか、へへ」

白兎「…うん、甘えると…言いますか…」

白兎「…私が、男さんと一緒に寝たいです……」

山鼠「」

男「あーん?」

白兎「…駄目…ですかね…?」

男「だってよ」

山鼠「ぅえ!? あ、や…えっ!?」キョドキョド

男「何キョドってんの」

白兎「…今夜だけ…今夜だけでいいですから…」

山鼠「あ…うー」
727: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 20:58:45 ID:uz77L901sc
山鼠「む、むー…お、男が決めればいいだろ!」

男「出たよ無茶振り」

白兎「男さん…」

男「今夜だけならいいんじゃねぇの、白兎」

山鼠「……」

山鼠「あぁそぉ! いいよ俺があっちで寂しく一人で寝りゃいんだろ!
いやまぁ寝れねーけどよ!」ケリッ

男「拗ねんな拗ねんな」

白兎「…ありがとう、ございます…」

男「どうせ向こうでも寝てないんだろ?」

白兎「……」コクッ

男「ならさっさと寝るぞ」

山鼠「ふんっ!」
728: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 21:21:37 ID:FAT/SEDfLU
男「…じゃあ山鼠、おやすみ」

山鼠「……」ツーン

男「……白兎も」

白兎「……はい、ありがとう、ございました」

男「……気にするな」


夜はゆっくりと更けて行きます

少年の静かな寝息が聞こえる

顔は見えないけれど、もう寝ているのでしょう

手探りで少年の頬に触れる

それはそれは良く眠っているようで

兎は消え入るように言葉をもらしました

白兎「……ごめんなさい」
729: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 21:30:43 ID:YROlhhOGxU
この国に連れて来てしまってごめんなさい

死を奪ってごめんなさい

迷惑をかけてごめんなさい

アリスを見つけれなくてごめんなさい

約束を守れなくてごめんなさい


頬から体をなぞり、少年の腰に手を下ろす

少年のズボンのポケット
そこに強引に突っ込んだ拳銃があることを
兎の少女は知っていました

起こさないように引き抜くのです、ゆっくりと
730: 名無しさん@不思議の国:2011/8/13(土) 21:48:51 ID:0JTMROl5ps
鼠のお婆さんの家の出来事、握った感触、撃つ時の衝撃

どれ一つとして忘れてなんかない

でも、もうお終い


白兎「…無理ですよ…」

白兎「…アリスも…女王様も…視力すら失って…」ポロポロ

白兎「…それでもまだ生きていける程…強くないですよ…」ポロポロ

少年は都合良く、まだぐっすりと眠っているようでした

白兎「……」カチャ

鼠の少女が気づいたのでしょうか

声を荒げて自分に呼びかけているような

白兎「山鼠ちゃんも…ごめんね…?」

山鼠「シロ!!」


兎の少女と、彼女が抱いた拳銃は
同時に声をあげて哭きました
731: 名無しさん@読者の声:2011/8/13(土) 23:26:21 ID:oHNyuPfZpg
あ、なっなにっ!?

ヤバい…白うさちゃんが…
紫煙支援
732: 名無しさん@読者の声:2011/8/14(日) 10:41:14 ID:vnsiBmoeJ6
う、うわあああああシロォォォォ!!!!(´;ω;`)
733: 名無しさん@読者の声:2011/8/14(日) 16:46:20 ID:e/Z68U8bwI
ああぁぁ・・・
一位おめでとうって言えない雰囲気・・・
シロちゃあああああああん!!!
山鼠ちゃんの最後の声が辛すぎる
734: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 20:30:45 ID:iNLuW6B7Vg



鼠の少女と人間の少年は
城を出て、また歩き始めました

次は目的地なんて無い自由な旅

そして一人少なくなった静かな旅

薔薇園を抜けて丘を下り、気の向くままにフラフラと

山鼠「…そうだ」

男「…?」

山鼠「婆ちゃん家、行ってみねぇか?
ここから近いはずだし」

男「…まぁ、良いんじゃないかね
場所覚えてる?」

山鼠「んと…確かね、向こうだった
あの山の方」
735: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 20:39:26 ID:0JTMROl5ps
山鼠「……」ガチャガチャ

男「……」

山鼠「……いねぇや」

男「…そぉかい」

山鼠「…まぁた引っ越したのか婆ちゃん」

男「しょうがないな…ほら、行くぞ」

山鼠「あぁう……ぅ?」ヘタッ

男「山鼠?何へたり込んでんだ」

山鼠「……」プルプル

山鼠「あー、駄目だ。足動かねえ」

男「あー?また我が儘モードかい」

山鼠「……また頼むわ、おぶってくれ」
736: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 20:56:24 ID:kKLv8s9J86
男「しゃーねぇなぁ」

鼠のお婆ちゃんの家も駄目

さぁ、いよいよ何処に行こうかな

湖なんていいかも知れない

洗濯中雨に降られたり、頭を撃ち抜かれたりと、良い思い出はあまりないけれど

あそこに住む友人にも会いたいし、何より

少年の服に染み込んだ、白兎の赤色をどうにかしたかった

そんな事を考えながら、鼠の少女の手を取る
737: 名無しさん@不思議の国:2011/8/14(日) 21:04:17 ID:iNLuW6B7Vg
男「……」ヒョイ

男「軽!」

山鼠「毎回同じこと言うなお前」

男「…いや、あれ?お前ここまで軽かったか?」

山鼠「…知らねえよ。自分の体重なんか自分じゃ分かんねえんだから」

男「……」

山鼠「……んだよ」

男「…お前、もう、限界だろ」

山鼠「……」

山鼠「……」チッ
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