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白兎「アリス! 私達のアリス!」
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1: 名無しさん:2011/6/9(木) 19:08:39 ID:Sk5yLArqZw
少女は走る 走る

その白い足は止まる事を知らない

その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない

その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる

腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする

辿り着いたのは、とある井戸

その向こうは、彼女の世界


689: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 07:33:49 ID:YROlhhOGxU
男「い、いのか?」

チェシャ「いいも何もそれを聞いた初めから、助けにいくつもりさ
大事な不思議の国の友達だからね」フリフリ

男「…ごめん」

チェシャ「…君は卑怯だよ。自己中心的で他力本願だ」

男「……」

チェシャ「でもね、ボクは誰かに必要として貰える事が凄く嬉しい」

チェシャ「利害の一致って奴さ
さぁ時間もギリギリになって来たようだからね」

チェシャ「ちょっくら行ってくるよ」フリフリ

男「…ありがとう」

チェシャ「なぁに、すぐに帰ってくるから安心して待ってな」フッ
690: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 07:39:46 ID:Guo50azY9o


猫は不思議の国において、いわば道化です

道化は誰かを笑わせる為に

どれほど苦しくても悲しくとも常に笑顔を絶やさずに


チェシャ「……嘘だろ」

チェシャ「…ひひ…こんなに体力削られるかね…」

チェシャ「…ハァ…ハァ…三分も保たないぞこれは…」

目の前には力尽き、走るのを止めた兎の少女
691: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:12:23 ID:0JTMROl5ps
チェシャ「…やぁ白兎ちゃん…約束の時間くらい、キッチリ守らなきゃダメだろ?」

白兎「……」ピクッ

白兎「…その声は、チェシャ猫でしょうか」

チェシャ「…その声はって事は、やっぱり目は…ほとんど見えてないのかな?」

白兎「…ぼんやりと見えてます、アリスの声さえ聞ければ捜索は可能ですから」

チェシャ「まだ…アリスの捜索続ける気かよ…」

白兎「…当然です」

チェシャ「…面倒臭いね、ホント」ニンマリ
692: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:28:28 ID:eDhl4PA.B6
白兎「…どういったご用件で、次元を超えてまでいらっしゃったのですか?」

チェシャ「…とりあえずそんな皮肉を聞きにきたんじゃないぜ…」

白兎「…私を連れ戻しに来た、と?」

チェシャ「あぁそうだよ…もう女王の魔法もきれるからね…」

白兎「……」

チェシャ「…ビルの奴は、君が女王を看取れるよう、時間を決めてくれたのにね…」

チェシャ「それをみすみすフイにして…
女王の事、大事なんじゃ無かったのかい…?」

白兎「…分かりきった事言わないでください」ジリッ
693: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:37:21 ID:FAT/SEDfLU
チェシャ「…なら、これが最後のチャンスだ、今なら間に合うかもしれない…
…不思議の国に、帰るよ」

白兎「…余計なお世話ですよ」

チェシャ「……」

白兎「…大事な人に決まっているじゃないですか!」

白兎「女王様は大事なお方ですよ!
でも…でも、それよりも不思議の国にはアリスが大事、それこそ私が命を擲っても足りないくらい…!」

チェシャ「……」

白兎「…男さんと山鼠ちゃんに『付き合わせてすみませんでした』って、伝えておいて下さい……」

白兎「私はもう、帰りません…」
694: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:53:58 ID:R0seOgtGOQ
チェシャ「……しょうがないね、そこまで言うなら…」

白兎「……」

この時初めて、道化の顔から笑みが消えました

チェシャ「……ボクは力ずくで連れて帰らなきゃいけない」

白兎「…出来るものなら」

白兎「何でか知りませんけど、今にもあなたが倒れそうじゃないですか」

チェシャ「……嘗めんな」フッ

猫の姿が消えた。

そう認識できたすぐ、兎の少女の意識は完全に途切れてしまいました
695: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:58:08 ID:FAT/SEDfLU
チェシャ「…あーあ、どうしてこうなっちゃうかな」

チェシャ「…また、嫌われちゃうかな」

人間界はもう夜
行き交う人々、街頭に集る虫共、夜空を駆ける鳥達

誰も猫と兎に気づかない

そして猫は兎を連れて、笑みだけを残してそこから消え失せた
696: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 09:11:19 ID:kKLv8s9J86
女王「……」

ビル「…もう、時間ですか」

女王「…ごめんなさい、ごめんなさいね…」

ビル「…最後のお茶ですよ、どうぞ」

女王「…ありがとう」

女王「……ちゃんと、女王としての使命、果たせていたかしら
…不思議の国のみんなに、何かを残すことが出来たのかしらね」

ビル「…えぇ、きっと」

女王「…なら、良かったわ
ビル、もっとそばに」

ビル「…もう、逝かれますか」スッ

女王「…あなたって、本当に、暖かいのね」

ビル「……私には体温などありませんよ」

女王「ふふ、心が暖かいのよ、そういう事に、しておきなさい…」
697: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 13:20:07 ID:e/Z68U8bwI
aaaaaaaaaaaaaaa
辛い辛い白兎ちゃんこれ間に合うのか

てかチェシャはもうおれの嫁な
これもう確定事項だから
sien
698: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 14:24:53 ID:PJNU6MCRko
なら山鼠は私にくださいな

続きが気になるよ〜(o゚∇゚)
支援!
699: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 15:07:53 ID:xHF2NwVH4U
なら、妾は男を
C
Щ(゚∀゚)<欲しい?
700: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 18:46:46 ID:uTNFzdRYy2
700げとおおおおおおお!!
701: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 06:32:49 ID:HpksKtXyz2
チェシャ「……ただいま」フッ

男「!!」

山鼠「シロは!?」

チェシャ「…ほら、受け取んな」ポイッ

山鼠「っとぉ!」ガシッ

男「…あ、ありがと!本当にありがとう!」

チェシャ「……」

チェシャ「…あぁ、君達の役に立てて嬉しいよ」ニンマリ

チェシャ「…流石に…もう疲れたや…」フッ
702: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 06:42:19 ID:K4ESg4cJk.
山鼠「…消えた」

男「白兎は?」

山鼠「寝てる…」

男「叩き起こすぞ、女王の所まで急いで……」


ボーンボーンと鳩尾に響くような12回の重い重い音

城の頂上に取り付けられた巨大な時計が12時を示す音

何故かその時不思議の国はとても静かで

その音は国中に響き渡っているようでした

それと同時に、兎の少女は目を覚ましました
703: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 06:52:00 ID:kG2XMrY8s6
白兎「…ぅ…あ」

山鼠「シロ!」

白兎「…山鼠ちゃん、ですか?」

男「……」

白兎「…そう、ですか
私は、不思議の国に…」

白兎「…なんで…なんでっ…!」

男「…女王に、会いに行かなくていいのか?」

白兎「……行きます」スッ

山鼠「お、おい…無理すんなよ…?」

白兎「あ、はは…大丈夫ですよ…」フラフラ
704: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 07:29:39 ID:iNLuW6B7Vg
兎の少女は重い足取りで螺旋階段へ

ガラス戸を開くと、蜥蜴の男

白兎「……あ」

ビル「…白兎、無事だったんですか」

白兎「…あの、女王様は…」

ビル「…つい先程、息をひきとりました」

白兎「…あ…?」ヨロッ

山鼠「シロ!」

兎の少女はまた、その場にへたり込んでしまいました

ビル「…主を失ったこの城に、労働力はもはや必要ありません」

ビル「城の従者は全員ここを離れ、好きに暮らすように。勿論あなたも」

兎の耳にはもう蜥蜴の声など入っていません

小さくうずくまり、嗚咽をこらえているのか、体が震えています
705: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 19:47:45 ID:kKLv8s9J86
男「……」

山鼠「……」

二人には、かける言葉がありません

白兎「……なんで…なん、で…!」

白兎「…なんで、放っておいてくれなかったん、ですかぁ…!」

山鼠「…だってそりゃ!」

白兎「女王様が亡くなられたのに…私はここでどうしたらいいんですか……」

白兎「…アリスも見つけられない…女王様にも会えない」

白兎「私はこれから…何の為に…」
706: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 20:14:34 ID:FAT/SEDfLU
男「…その、あの」

男「…お前はアリスに、女王に固執しすぎだと、思うんだよ」

白兎「……」

男「…もうお前は自由なんだって」

男「これからは、俺や山鼠や、お前自身の為に生きれば……あ」

ふと少年の耳に届いた不協和音

ギリ…ギリ…と何かの軋むような

白兎「…きッ…いッ………ひィ…」ギリギリ

あぁ、これは兎の少女の歯軋りだったのか

まずい。今のこの子は、『まとも』じゃない。
707: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 21:00:31 ID:R0seOgtGOQ
山鼠「お…おい…!」

白兎「私の…私の大事な人が…生きる意味が全部無くなったのに…!」

男「……」

白兎「…今さら…それを全部捨てろと…!?
じゃあ私の今までは何だったんですか…!」

男「白兎…!」

白兎「…ふ、ざけないで…」

白兎「ふざけないでくださ………い?」バッ

勢い良く顔を上げた兎の少女

泣きはらして真っ赤っか

白兎「……あれ」
708: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 21:01:35 ID:FAT/SEDfLU
白兎「……あれ?」ゴシゴシ

白兎「……あれ……あれ?」

山鼠「…シロ?」

白兎「……や、山鼠…ちゃん…? 何処…?」カタカタ

山鼠「おい…お前…」


白兎「……目が…見えません…何も…」




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