少女は走る 走る
その白い足は止まる事を知らない
その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない
その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる
腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする
辿り着いたのは、とある井戸
その向こうは、彼女の世界
687: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 07:15:27 ID:uz77L901sc
山鼠「は、はえぇよ馬鹿野郎!」バンッ
男「山鼠…」
山鼠「ハァ…ハァ…走らせ、やが…」ゼェハァ
山鼠「……あ!」
チェシャ「……」
鼠の少女は猫を見て、だいたいの状況を掴めたようです
山鼠「その…俺からも、頼む…!」
チェシャ「……」
山鼠「お前しかいねえんだよ…
シロがあっちに行く時、俺何も言えてねぇんだよ…」
山鼠「…あんな馬鹿でも大事な友達なんだよ!」
チェシャ「……」
688: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 07:23:29 ID:YROlhhOGxU
山鼠「…頼むよ…頼むから…」
チェシャ「顔を上げろよ山鼠ちゃん」
チェシャ「…そこまで言われちゃあ助けに行かなきゃね」フリフリ
男「!」
山鼠「ホントか!?」
チェシャ「嘘はつかないさ
でもいざという時は自分を優先させてもらうよ、それでいいんなら」
山鼠「あ、ありがとう!」
チェシャ「いい笑顔だね、こっちも嬉しくなってくるよ」ニンマリ
689: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 07:33:49 ID:YROlhhOGxU
男「い、いのか?」
チェシャ「いいも何もそれを聞いた初めから、助けにいくつもりさ
大事な不思議の国の友達だからね」フリフリ
男「…ごめん」
チェシャ「…君は卑怯だよ。自己中心的で他力本願だ」
男「……」
チェシャ「でもね、ボクは誰かに必要として貰える事が凄く嬉しい」
チェシャ「利害の一致って奴さ
さぁ時間もギリギリになって来たようだからね」
チェシャ「ちょっくら行ってくるよ」フリフリ
男「…ありがとう」
チェシャ「なぁに、すぐに帰ってくるから安心して待ってな」フッ
690: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 07:39:46 ID:Guo50azY9o
猫は不思議の国において、いわば道化です
道化は誰かを笑わせる為に
どれほど苦しくても悲しくとも常に笑顔を絶やさずに
チェシャ「……嘘だろ」
チェシャ「…ひひ…こんなに体力削られるかね…」
チェシャ「…ハァ…ハァ…三分も保たないぞこれは…」
目の前には力尽き、走るのを止めた兎の少女
691: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:12:23 ID:0JTMROl5ps
チェシャ「…やぁ白兎ちゃん…約束の時間くらい、キッチリ守らなきゃダメだろ?」
白兎「……」ピクッ
白兎「…その声は、チェシャ猫でしょうか」
チェシャ「…その声はって事は、やっぱり目は…ほとんど見えてないのかな?」
白兎「…ぼんやりと見えてます、アリスの声さえ聞ければ捜索は可能ですから」
チェシャ「まだ…アリスの捜索続ける気かよ…」
白兎「…当然です」
チェシャ「…面倒臭いね、ホント」ニンマリ
692: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:28:28 ID:eDhl4PA.B6
白兎「…どういったご用件で、次元を超えてまでいらっしゃったのですか?」
チェシャ「…とりあえずそんな皮肉を聞きにきたんじゃないぜ…」
白兎「…私を連れ戻しに来た、と?」
チェシャ「あぁそうだよ…もう女王の魔法もきれるからね…」
白兎「……」
チェシャ「…ビルの奴は、君が女王を看取れるよう、時間を決めてくれたのにね…」
チェシャ「それをみすみすフイにして…
女王の事、大事なんじゃ無かったのかい…?」
白兎「…分かりきった事言わないでください」ジリッ
693: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:37:21 ID:FAT/SEDfLU
チェシャ「…なら、これが最後のチャンスだ、今なら間に合うかもしれない…
…不思議の国に、帰るよ」
白兎「…余計なお世話ですよ」
チェシャ「……」
白兎「…大事な人に決まっているじゃないですか!」
白兎「女王様は大事なお方ですよ!
でも…でも、それよりも不思議の国にはアリスが大事、それこそ私が命を擲っても足りないくらい…!」
チェシャ「……」
白兎「…男さんと山鼠ちゃんに『付き合わせてすみませんでした』って、伝えておいて下さい……」
白兎「私はもう、帰りません…」
694: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:53:58 ID:R0seOgtGOQ
チェシャ「……しょうがないね、そこまで言うなら…」
白兎「……」
この時初めて、道化の顔から笑みが消えました
チェシャ「……ボクは力ずくで連れて帰らなきゃいけない」
白兎「…出来るものなら」
白兎「何でか知りませんけど、今にもあなたが倒れそうじゃないですか」
チェシャ「……嘗めんな」フッ
猫の姿が消えた。
そう認識できたすぐ、兎の少女の意識は完全に途切れてしまいました
695: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 08:58:08 ID:FAT/SEDfLU
チェシャ「…あーあ、どうしてこうなっちゃうかな」
チェシャ「…また、嫌われちゃうかな」
人間界はもう夜
行き交う人々、街頭に集る虫共、夜空を駆ける鳥達
誰も猫と兎に気づかない
そして猫は兎を連れて、笑みだけを残してそこから消え失せた
696: 名無しさん@不思議の国:2011/8/10(水) 09:11:19 ID:kKLv8s9J86
女王「……」
ビル「…もう、時間ですか」
女王「…ごめんなさい、ごめんなさいね…」
ビル「…最後のお茶ですよ、どうぞ」
女王「…ありがとう」
女王「……ちゃんと、女王としての使命、果たせていたかしら
…不思議の国のみんなに、何かを残すことが出来たのかしらね」
ビル「…えぇ、きっと」
女王「…なら、良かったわ
ビル、もっとそばに」
ビル「…もう、逝かれますか」スッ
女王「…あなたって、本当に、暖かいのね」
ビル「……私には体温などありませんよ」
女王「ふふ、心が暖かいのよ、そういう事に、しておきなさい…」
697: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 13:20:07 ID:e/Z68U8bwI
aaaaaaaaaaaaaaa
辛い辛い白兎ちゃんこれ間に合うのか
てかチェシャはもうおれの嫁な
これもう確定事項だから
sien
698: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 14:24:53 ID:PJNU6MCRko
なら山鼠は私にくださいな
続きが気になるよ〜(o゚∇゚)
支援!
699: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 15:07:53 ID:xHF2NwVH4U
なら、妾は男を
C
Щ(゚∀゚)<欲しい?
700: 名無しさん@読者の声:2011/8/10(水) 18:46:46 ID:uTNFzdRYy2
700げとおおおおおおお!!
701: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 06:32:49 ID:HpksKtXyz2
チェシャ「……ただいま」フッ
男「!!」
山鼠「シロは!?」
チェシャ「…ほら、受け取んな」ポイッ
山鼠「っとぉ!」ガシッ
男「…あ、ありがと!本当にありがとう!」
チェシャ「……」
チェシャ「…あぁ、君達の役に立てて嬉しいよ」ニンマリ
チェシャ「…流石に…もう疲れたや…」フッ
702: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 06:42:19 ID:K4ESg4cJk.
山鼠「…消えた」
男「白兎は?」
山鼠「寝てる…」
男「叩き起こすぞ、女王の所まで急いで……」
ボーンボーンと鳩尾に響くような12回の重い重い音
城の頂上に取り付けられた巨大な時計が12時を示す音
何故かその時不思議の国はとても静かで
その音は国中に響き渡っているようでした
それと同時に、兎の少女は目を覚ましました
703: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 06:52:00 ID:kG2XMrY8s6
白兎「…ぅ…あ」
山鼠「シロ!」
白兎「…山鼠ちゃん、ですか?」
男「……」
白兎「…そう、ですか
私は、不思議の国に…」
白兎「…なんで…なんでっ…!」
男「…女王に、会いに行かなくていいのか?」
白兎「……行きます」スッ
山鼠「お、おい…無理すんなよ…?」
白兎「あ、はは…大丈夫ですよ…」フラフラ
704: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 07:29:39 ID:iNLuW6B7Vg
兎の少女は重い足取りで螺旋階段へ
ガラス戸を開くと、蜥蜴の男
白兎「……あ」
ビル「…白兎、無事だったんですか」
白兎「…あの、女王様は…」
ビル「…つい先程、息をひきとりました」
白兎「…あ…?」ヨロッ
山鼠「シロ!」
兎の少女はまた、その場にへたり込んでしまいました
ビル「…主を失ったこの城に、労働力はもはや必要ありません」
ビル「城の従者は全員ここを離れ、好きに暮らすように。勿論あなたも」
兎の耳にはもう蜥蜴の声など入っていません
小さくうずくまり、嗚咽をこらえているのか、体が震えています
705: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 19:47:45 ID:kKLv8s9J86
男「……」
山鼠「……」
二人には、かける言葉がありません
白兎「……なんで…なん、で…!」
白兎「…なんで、放っておいてくれなかったん、ですかぁ…!」
山鼠「…だってそりゃ!」
白兎「女王様が亡くなられたのに…私はここでどうしたらいいんですか……」
白兎「…アリスも見つけられない…女王様にも会えない」
白兎「私はこれから…何の為に…」
706: 名無しさん@不思議の国:2011/8/11(木) 20:14:34 ID:FAT/SEDfLU
男「…その、あの」
男「…お前はアリスに、女王に固執しすぎだと、思うんだよ」
白兎「……」
男「…もうお前は自由なんだって」
男「これからは、俺や山鼠や、お前自身の為に生きれば……あ」
ふと少年の耳に届いた不協和音
ギリ…ギリ…と何かの軋むような
白兎「…きッ…いッ………ひィ…」ギリギリ
あぁ、これは兎の少女の歯軋りだったのか
まずい。今のこの子は、『まとも』じゃない。
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