少女は走る 走る
その白い足は止まる事を知らない
その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない
その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる
腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする
辿り着いたのは、とある井戸
その向こうは、彼女の世界
628: 名無しさん@不思議の国:2011/8/4(木) 22:32:47 ID:kG2XMrY8s6
チェシャ「いーい景色だろう?
ボクの大好きな不思議の国が、全部見渡せる」
男「うん、まぁ綺麗だな」
山鼠「……」
チェシャ「…なんだい、そんな睨むなよ
仲良く行こうぜ仲良く」
山鼠「一回男を拉致っといて、よく言うな…!」
男「山鼠、あれは別にそういうんじゃねぇから」
チェシャ「ほら、君も男の心の広さを見習いなよ」フリフリ
山鼠「……ッ」
629: 名無しさん@不思議の国:2011/8/4(木) 22:36:20 ID:YROlhhOGxU
チェシャ「全く。偉く好戦的な鼠もいたもんだ」
チェシャ「猫相手に鼠が喧嘩を売るかね?」
山鼠「『窮鼠猫を噛む』って言葉、身をもって教えてやろうか」
男「落ち着け落ち着け」ドウドウ
山鼠「胸くそ悪いな、行こうぜ」
チェシャ「白兎ちゃんはいないのかい?」
山鼠「…」ピクッ
男「さっき人間界に出かけた。アリス探しに」
チェシャ「…ふぅん」
630: 名無しさん@不思議の国:2011/8/4(木) 22:44:13 ID:R0seOgtGOQ
チェシャ「そうかそうか、大丈夫なのかねー色々と」
男「大丈夫じゃない場合があるのか」
チェシャ「そりゃあね。女王の体ももう保たないだろ?
これが最後のチャンスな訳だし」
男「む…」
チェシャ「それに白兎ちゃんさ
素振りは見せないけど、ほとんど目見えてないぜ」
山鼠「なっ!?」
チェシャ「やっぱり気付いてなかったか」
チェシャ「心配させないように黙ってたんだろ、健気じゃないか」
631: 名無しさん@読者の声:2011/8/4(木) 23:26:11 ID:K4ESg4cJk.
男「マジで?」
チェシャ「マジも大マジ。ついでに言えば悪化の引き金を引いたのは君だ」
男「……マジで?」
チェシャ「山鼠ちゃんのお婆ちゃんの家での事、覚えてるだろ」
山鼠「……」
チェシャ「前話したよね?献上は精神的衰弱により進行が早まるって」
チェシャ「けーっこうショック受けちゃったみたいだよ?」フリフリ
男「う……」
山鼠「何でも知ってんだな、ストーカーかてめぇ」
チェシャ「君のお婆ちゃん程は知らないさ」
632: 名無しさん@不思議の国:2011/8/4(木) 23:30:03 ID:YROlhhOGxU
チェシャ「白兎ちゃんに目が行きがちだけど、勿論君もだ」
山鼠「……」
チェシャ「分かってるんだろ?
自分でももう長く無いって」
男「…山鼠」
山鼠「…そりゃあな」
チェシャ「だいぶよく頑張ってる方だけどね
精神の衰弱も殆ど無い」
チェシャ「普通の子ならとっくに病んでぽっくり逝ってるだろうが」
チェシャ「大口叩くだけはあるじゃないか」ニンマリ
山鼠「そりゃ誉めてんのか」
チェシャ「君が受け取ったままに」フリフリ
633: 名無しさん@不思議の国:2011/8/4(木) 23:34:01 ID:R0seOgtGOQ
男「山鼠…」
山鼠「……ふん」
チェシャ「もって後5日
そんなもんでしょ」
男「俺は…」
チェシャ「二人が居なくなったらどうすればーって?」
チェシャ「その時はボクが君といてやるよ、一人は寂しいだろうからね」
チェシャ「まぁ、ボクも何時消えちゃうか分かんないけど」ニンマリ
山鼠「余計なお世話だからすっこんでろ泥棒猫」
チェシャ「ならしっかり長生きしなよ、一分一秒でもね」
634: 名無しさん@不思議の国:2011/8/4(木) 23:51:54 ID:YROlhhOGxU
男「……お前って、なんつーか存在を操る能力あるんだろ?」
チェシャ「そんな恥ずかしい類のもんじゃないよ
献上の仕組みの裏をとった利用法なだけ」
男「じゃあさ、チェシャ猫が人間界に存在して、アリスを探しに行けないの?」
チェシャ「……」フリフリ
男「…何?」
チェシャ「…それはボクに消えろって言ってることになるんだが」
男「え」
635: 名無しさん@不思議の国:2011/8/4(木) 23:56:34 ID:eDhl4PA.B6
チェシャ「出来ないことはないよ?
ただ向こうに居られるのは5分間程度」
男「…たった?」
チェシャ「それ以上居たら……うん」
チェシャ「ま、アリスを探すどころじゃないね」
チェシャ「女王の魔法が別格過ぎるんだよ
ボクに頼るのは諦めるんだね」
男「むぅ」
チェシャ「君に会えなくなるのも嫌だしね」ニンマリ
男「むぅ」
山鼠「…チッ」
636: 名無しさん@不思議の国:2011/8/5(金) 08:56:37 ID:Guo50azY9o
チェシャ「さぁもうおやすみ。とっくに子供は眠る時間だよ」
男「お前は?」
チェシャ「君たちとお話するのも楽しいけど、この夜景を独り占めするのが好きなんだ」
チェシャ「もう少しここでいるよ」
男「そうか」
チェシャ「楽しかったぜお二人さん」
男「またな」
山鼠「……あばよ」
チェシャ「ん」フリフリ
637: 名無しさん@読者の声:2011/8/5(金) 09:17:37 ID:K4ESg4cJk.
チェシャ「……」フリフリ
ガチャ
チェシャ「…今日は客が多いね。なぁビル」
ビル「……あなたでしたか」
チェシャ「なんだい、ボクじゃいけなかった?」
ビル「…いえ。おかしいですね、確かに気配はしたのですが」
チェシャ「…ボクの?」
ビル「いえ、この城の客人です
こんな夜遅く陛下にご迷惑をかけられては困りますから」
チェシャ「相変わらず陛下陛下だねぇ」
638: 名無しさん@不思議の国:2011/8/5(金) 09:27:10 ID:R0seOgtGOQ
男「……あれ」
山鼠「…なんでいきなり元の部屋のベッドに居るんだ俺達」
男「……チェシャ猫の仕業か
…お陰というべきかしら」ウトウト
山鼠「…ほら、もう寝ろ」
男「…暇だから起きといて欲しいんじゃないの?」
山鼠「いいよもう充分だ」
男「ん、じゃあまた明日ね」ポスッ
山鼠「あぁ…うん…ありがと」
男「……zZZ」
山鼠「馬鹿早えぇんだよ寝るのが」ポカッ
チェシャ「女王はもって、後何日?」
ビル「後2日…いえ、1日半くらいでしょうかね」
チェシャ「いよいよピンチだね、不思議の国も」フリフリ
639: ◆AlicexxO96:2011/8/5(金) 09:32:48 ID:R0seOgtGOQ
オハヨウゴザイマース!
おはようございます1です
とりあえず昨日の更新分はこれで終了
チェシャ猫編その二でしたん
夏はどうも寝落ちが多いですね恐ろしい…
……うん。特に書くこともないのでまた今夜お会いしましょう
ではでは
640: 名無しさん@読者の声:2011/8/5(金) 11:09:41 ID:sAQ2tc.KBk
シロちゃんと山鼠ちゃんもヤバかったのか…
てか女王様もあと1、2日って…
うわぁああ!!頑張って1さん!
641: 名無しさん@読者の声:2011/8/5(金) 19:29:54 ID:5zkEImsvYs
終盤に差し掛かってきたな…!!
しえんしえんしえん
642: 名無しさん@読者の声:2011/8/5(金) 19:55:00 ID:sAQ2tc.KBk
C
643: 名無しさん@不思議の国:2011/8/5(金) 21:06:33 ID:R0seOgtGOQ
鼠の少女は窓の外を見つめ続ける
夜明けは近い
地平線から陽が登る様を毎日のように見てきたのだから、それ位分かる
夜の猫の話に嘘偽りはない
間違いなく体中ガタがきている
別に怖くはない。
老いて寿命が尽きて亡くなるのも、今体力が尽きて亡くなるのも
何も変わりはしない
所詮アリスの前ではちっぽけな命だと自負している
起こさないように、少年の髪を撫でる
644: 名無しさん@不思議の国:2011/8/5(金) 21:24:24 ID:eDhl4PA.B6
こいつはどうなるんだろうか
ふと、頭によぎった疑問
別世界に連れてこられ
死を失い
自分達も失ったとき、少年はどんな気持ちなんだろうか
そうだ。自分にはそれが分かるはずだ
両親は戦争で死んだ
『彼らは英雄だった。名誉と共に散った』と伝えられた
英雄が居たはずのに、まだ戦争は不思議の国のどこかで続いている
645: 名無しさん@読者の声:2011/8/5(金) 21:27:04 ID:dmSJr6DPHc
よしきた支援
646: 名無しさん@不思議の国:2011/8/5(金) 21:33:28 ID:kKLv8s9J86
でも、それでもまだ祖母が居た
思えば自分はいつも愛されていたじゃないか
つまりはそういう事なんだろう
少年の為に生きよう。
顔も覚えていないアリスの為じゃない
愛した人の為に、生きよう
光が隈だらけの眼に差し込む
夜明けだ
山鼠「…朝だぜ、起きろ」ポスッ
男「……おてんとさん登ったばっかじゃねぇかよぉ」ムクッ
山鼠「いいから
な、今日は何処へ行こっか?」
647: 名無しさん@不思議の国:2011/8/5(金) 21:47:52 ID:R0seOgtGOQ
少女は走る 走る
その白い足は止まる事を知らない
その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない
その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる
腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする
でも、幾ら走っても幾ら耳を澄ませても、アリスは見つからない
秒針の音が焦りを生む
目ももうほとんど見えない
それでも決して諦める
少女は走る 走る
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