少女は走る 走る
その白い足は止まる事を知らない
その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない
その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる
腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする
辿り着いたのは、とある井戸
その向こうは、彼女の世界
483: 名無しさん:2011/7/15(金) 22:54:01 ID:B4pYf22bqU
男「違う…違う…そんな意味じゃない…!」
婆鼠「…男さん」
男「…そんな事…知らなかったから…」
婆鼠「…受け入れなさい」
男「…死なせて…お願いだから…」
婆鼠「無理よ」
白兎「…あの」
484: 名無しさん:2011/7/15(金) 23:05:57 ID:bskeXDFV8Q
白兎の少女の声を聞いて、我にかえりました
そうだ。元はこいつのせいだったんじゃないか、と
白兎「…なんと言えば良いか分からないんですが」
白兎「その、男さんはアリスに『死』を与えてるって、凄い名誉な事だと思いますよ!」
白兎「『死』は生き物としての命の働きの中で最も重要な役割だって聞いてますもん!」
あぁ。この瞬間から、少年の遣り場の無い憤りの矛先は、全て白兎の少女に向けられました
485: 名無しさん:2011/7/16(土) 06:52:13 ID:1e0RqNmnOw
男「何?それどういうこと?」
男「アリスさえ良ければ俺はどうでも良いってこと?」
白兎「い、いえ…そういう訳では…その」
男「その最も重要な役割ってのが俺にはもう無いんだよ?」
男「誰の…誰のせいか分かってるか?」
白兎「…それは」
486: 名無しさん:2011/7/16(土) 07:05:42 ID:WeYS042/lU
少年には分かっていました
少年をこの世界に連れてきたのは彼女の手違いの為ではありますが
ここでこのか弱い白兎の少女を責めるのはあんまりにも酷であると
でも、少女への責める言葉が止まりません
口が、体が自分のものじゃないみたい
白兎「…約束」
男「…は?」
487: 名無しさん:2011/7/16(土) 07:14:20 ID:IjDuDJDKyo
白兎「そう、約束をしていたじゃないですか!」
白兎「男さんに生きることの良さを分かってもらうって!」
男「それが?」
白兎「その…も、もう死ぬことがないなら
生きる事を楽しむしかない…といいますか…」
男「……」
婆鼠「……」
婆鼠「白兎ちゃん…それは…」
男「…あぁ」
488: 名無しさん:2011/7/16(土) 07:20:58 ID:SBxlnoh5O6
男「教えてやる
お前が今俺に言ってる事がどれ程…」カチャ
白兎「…っ!」
婆鼠「男さん…!」
白兎「け、拳銃…?そんなもの何処で…?」
男「さっきの街で
こっちに来いよ白兎」
白兎「う、嘘ですよね?
わ、たしを撃つんですか…?」
男「……」スッ
白兎「ひっ!」
男「持て
お前が、俺を撃て」
白兎「……は?」
489: 名無しさん:2011/7/16(土) 07:30:11 ID:JZ308n9LZ6
男「握れ。引き金に指をかけろ。俺に向けろ。力入れろ。」ガシッ
白兎「やだ!嫌ですよ!なんで男さんを撃たなきゃならないんですか!」
男「いいだろ。アリスの二の次三の次の人間なんて」
白兎「それは、だって…!」
男「はやく」グイッ
白兎「やだ!放して!やだやだやだやだ!!」
男「…」ギュッ
ドンッ
490: 名無しさん:2011/7/16(土) 13:02:28 ID:23BYopFfCk
うわぁぁぁ
しえんしえん!
491: 名無しさん:2011/7/16(土) 20:41:57 ID:hx2NZUpaHc
あああぁぁ
しえーんなぜか白兎ちゃんのほうが心配
492: 名無しさん:2011/7/16(土) 23:20:23 ID:SBxlnoh5O6
鼠の少女は何故か起きていました
正確には、寝ることはできないのですが
唯一の安息の地。祖母の傍に居るのに
得体の知れない一抹の不安が胸の内を巡り、休息を妨げていました
山鼠「……」スッ
孫鼠「クー…クー…」
山鼠「あいつらと婆ちゃん、話があるって…」
493: 名無しさん:2011/7/17(日) 00:35:13 ID:JZ308n9LZ6
山鼠「明かりが、まだ……」
山鼠「みんな……?」スッ
ドンッ
山鼠「…ぁ?」
目を疑わざるをえない光景
遂に幻覚を見始めたかと思うほど
白兎が少年を撃った
ただそれだけの、単純で最も有り得ない状況
飛び散った鮮血が鼠の少女の青いオーバーオールを塗り替えます
494: 名無しさん:2011/7/17(日) 00:45:35 ID:B4pYf22bqU
山鼠「…なに、これ…」
絞り出した声は二人には届かなかったようで
白兎「お、男さん!?い、痛くないんですか!?」
男「……」
男「…痛い…死にそうな程痛い…」
言った途端、少年の胃の中の物全てが逆流し、喉にまでせり上がってきたのが分かりました
男「っ……」
婆鼠「…お手洗いは、山鼠の居る扉を出て突き当たりよ」
男「……」ダッ
山鼠「あ…」
495: 名無しさん:2011/7/17(日) 07:36:07 ID:YgxuUT4qEk
うわああああああああああああああああ
496: 名無しさん:2011/7/17(日) 12:45:05 ID:1e0RqNmnOw
白兎「……」カタカタ
山鼠「シロ…何で…」
白兎「……」ガタガタ
山鼠「シロ!!」グッ
婆鼠「山鼠、よしなさい」
山鼠「っ…!」
婆鼠「事実を知らない話に、首を突っ込むのはいけないと教えたでしょう」
山鼠「事実も糞も見たまんまだろ…!
今シロがあいつ、を……」
山鼠「……なんであいつ、撃たれたのに平気なんだ…?」
白兎「……」ガクガク
497: 名無しさん:2011/7/17(日) 12:52:15 ID:WeYS042/lU
発砲の衝撃による手の震えが、恐怖による震えに変わり始めます
白兎「……ぁ」カクッ
山鼠「シロ!」
白兎「……わ、たし」
白兎「…何て、こと…」ズルズル
少女は這いずりながら、少年の篭もる部屋へ
全身が震えて歩くこともままならないのです
白兎「……ごめんなさい」ズルズル
498: 名無しさん:2011/7/17(日) 13:00:31 ID:1e0RqNmnOw
白兎「……」ピトッ
扉に耳を傾けると、少年の嘔吐と嗚咽ばかり聞こえます
白兎「…ごめんなさい…ごめんなさい…」ポロポロ
白兎「許して…ください…」
白兎「…ごめん、なさい…」ギシッ
山鼠「……」
山鼠「……これ、何?」
孫鼠「ぅー?」
婆鼠「…知らなくちゃならない事でも
知らない方が幸せな場合もあるのよ。ねぇ孫鼠ちゃん?」
孫鼠「えぅー」
499: 名無しさん:2011/7/17(日) 13:19:30 ID:1b/AplOPAI
婆鼠「そういえば、孫鼠も起きちゃったのね」
孫鼠「あぅ」
山鼠「婆ちゃん…俺、どうしたらいいの…」
山鼠「婆ちゃんなら、分かるんじゃ…」
婆鼠「…今、あなたに出来ることは無いわ」
山鼠「……ぅ」
婆鼠「これからも一緒に旅続けるのなら、足手まといにならないよう体を休ませなさい」
山鼠「……」フルフル
500: 名無しさん:2011/7/17(日) 16:03:37 ID:pXviymqEzo
500記念支援!
501: 名無しさん:2011/7/17(日) 21:46:41 ID:1b/AplOPAI
白兎の少女は一晩中泣き続けました
少年も一晩中籠もっていました
やがて夜はあけて
ガチャ
男「……」
白兎「…男…さん?」
男「…アリスが」
白兎「……え」
男「…アリスが帰ってくれば、献上は止まるんだっけか」
白兎「…ぁ」
婆鼠「かも知れない、ね
確証はないのだけれど」
502: 名無しさん:2011/7/17(日) 21:56:50 ID:zY8aT7nkmQ
男「……白兎」
白兎「…はい」
男「…死にたい死にたくないとかじゃなくてさ」
男「元の人間に戻して欲しい、俺は」
白兎「……」
男「アリスを連れ帰れ。協力はする」
白兎「はい…」
男「……酷い顔だな」プッ
白兎「なっ…!
人のこと言えませんよ!?」
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