少女は走る 走る
その白い足は止まる事を知らない
その赤い目は風にぶつかり開け続けていられない
その長い耳は、たった一人の少女の声を捉えようとせわしく揺れる
腰にぶら下げた目覚まし時計の音は、その邪魔をする
辿り着いたのは、とある井戸
その向こうは、彼女の世界
269: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:14:03 ID:96TVUWlwC6
グリ「…も…もう大丈夫、もう平気だ…」バッサ
男「そうか。もっと虐…マッサージしてあげたかったんだがな…」
山鼠「本音がポロリしたよな今な」
グリ「すまないがこれ以上誰かを乗せては飛べないぞ」バッサバッサ
白兎「うん、本当にありがとうねグリフォンさん!」
グリ「うむ」バッサバッサ
男「また会ったら乗せてくれよ」
グリ「……お前とは出来れば関わりたくない…」バッサバッサ
270: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:17:03 ID:uo2scn7/PE
グリ「……こんな所に下ろしておいて言うのも悪いが」バッサバッサ
白兎「……?」
グリ「多分この山、熊がいるぞ…」バッサバッサ
白兎「うぇ!?」
山鼠「っ!」
男「…んあ?」
271: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:22:26 ID:tI7SKCVOJE
グリ「ま、まぁ後は下るだけだからな」バッサバッサ
グリ「出来るだけ速やかに山を抜けろ
ではな!」バッサ
白兎「あ…!」
山鼠「……野郎怖じ気づきやがったか」
白兎「しょ、しょうがないよ!
ここまで送ってくれたことをありがたく思わなきゃ!」
山鼠「けどよ…!」
男「はい!はーい!先生質問!」
272: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:23:26 ID:ayxDgaoNKQ
山鼠「あん…?」
男「熊って何?ヤバいの?
いや常識的に熊はヤバいんだろうけどさ」
山鼠「……おいシロ」
白兎「なぁに?」
山鼠「こいつに教えてねぇのか!」
白兎「う…や、また機会があれば言うつもりだったんだけどっ」
山鼠「優先順位考えろ馬鹿シロ!」
白兎「あぅぅ…」
男「……?」
山鼠「平和ボケした面しやがって…」
273: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:29:55 ID:C/EsOqUYxw
山鼠「いいか?時間もねぇからな」
山鼠「端的に教えっから耳かっぽじってよく聞け」
男「ん…」
山鼠「この不思議の国のタブーだ
今から言う三人は絶対に関わんな」
男「タブー…?」
山鼠「狩人、チェシャ猫、んで今問題の熊」
男「おぉ、熊…」
白兎「その三人はね、アリスへの献上で特に悪い影響を受けたの」
山鼠「影響ったって俺らみたいに、各本人が被害を受ける訳じゃねぇ」
山鼠「他人に被害を与えかねないから、タブーなんだよ」
274: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:37:54 ID:96TVUWlwC6
男「…タブー…」
山鼠「特に熊の野郎は、何よりその獰猛さが群を抜いてやがる」
山鼠「何が言いたいかってぇとだ…」
白兎「……!」ピョコ
男「……!」
山鼠「今すぐ逃げる、ぞ……?」
?「へぇ逃げる?誰からだ?どうやってだ?」
275: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:44:00 ID:Sk5yLArqZw
山鼠「…あ…ひ…?」カチカチ
?「…あ?言ってみなよ嬢ちゃんよ
餌が、俺から逃げられると思うか?」ノソ
男「……こいつが、熊?」
熊「あぁ、俺が噂の熊さんだが」
男「…熊が喋った」
熊「ガハ、そいつらだって喋ってんだろ」
山鼠「…ぁ…あ…」ガチガチ
白兎「…に…げなきゃ…!
や、山鼠ちゃん!男さん!」グイッ
熊「おい、誰が行っていいっつった餌ども」
白兎「…っ!」ビクゥ
276: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:46:13 ID:ayxDgaoNKQ
熊「…ぉお。やっぱり人間じゃねぇか」
熊「臭いでそうじゃねえかと思ったんだよ」
男「俺のこと?」
熊「ガハ
他に誰がいるんだよ」
熊「おめぇには罪は無いかも知れねーけどよぉ
悪いが人間は虫酸が走る程嫌いなんでね」
男「あぁそう」
熊「随分淡白な反応だなぁおい」
熊「ま、そういう訳で全身かっさばかして貰うぜ」ノソ
277: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:50:20 ID:H5eUe.tjLc
男「こいつら、白兎や山鼠はどうすんの?」
白兎「な、何を聞いてるんですか!?
逃げますよ男さん!」
熊「……あぁ、ありゃ今晩の飯さ」
白兎「ひ…!!」
男「そっか」
熊「…俺を見て逃げる素振りを見せねぇのは、てめぇが初めてだ」
男「精々後世に語っておくれ。白兎」
白兎「は、い!」
男「山鼠連れて逃げて頂戴」
白兎「は、い?」
278: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:51:33 ID:jea4yQfMpw
白兎「の…残るつもりですか!?」
男「あたぼうよ」
白兎「ば、馬鹿ですか!?馬鹿ですかあなたは!」
白兎「下手したら…いや、下手しなくたって死にますよ!!」
男「阿呆か。こちとら元から死ぬつもりだっつったろうが」
男「前はお前に邪魔されたからな、仕切り直しだ仕切り直し」
白兎「し、仕切り直し…!?」
279: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:56:40 ID:AkYREPUZEc
男「大体つい最近知り合ったような奴だぜ俺
気にしねぇでいんだよ」
白兎「でも…でも…!」
男「山鼠」
山鼠「!」ピクッ
男「これでこないだの飯代はチャラな」
男「女の子共を庇って死ぬとか本望じゃねえか
はよ行け」
白兎「っ!」ダッ
280: 名無しさん:2011/6/28(火) 23:59:26 ID:Sk5yLArqZw
熊「……変わった人間だな」
男「よその奴とは覚悟が違う」
熊「なんだ、俺とやる気か」
男「違う、死ぬ覚悟が出来てんの」
熊「…ガハ」
熊「もっと理不尽だって訴えろよ
あんまりだって泣き叫べよ」
男「ダサいから嫌だ」
281: 名無しさん:2011/6/29(水) 00:03:55 ID:96TVUWlwC6
少女は走る 走る
その白い足に生え散らかした枝が食い込む
その赤い目は涙に濡れ開け続けていられない
その長い耳は、風に煽られ後ろに引っ張られる
背中に背負う少女もまた同じ様、顔を涙で腫らしている
二人は一人の少年を犠牲にして、山を抜けることが出来ました
282: ◆AlicexxO96:2011/6/29(水) 00:10:31 ID:tI7SKCVOJE
うわーどうしよう切り所がない…
ここで一旦ストップです
月麗SSさん終わったようで
お疲れ様でした
そこそこ書いてますね
書き溜めかなり消費しました
うー…寝ます
また明日必ず来ますんで!
それではおやすみなさい
283: 名無しさん:2011/6/29(水) 00:20:36 ID:Udx8e9GNrs
乙!
284: ◆AlicexxO96:2011/6/29(水) 20:49:18 ID:jea4yQfMpw
>>283
ありがとう!
さて本日も寝落ちに気をつけのんびり更新
285: 名無しさん:2011/6/29(水) 20:53:10 ID:C/EsOqUYxw
熊「昔話でもするか」
男「時間稼げるなら何だっていいよこの際」
熊「安心しな。お前を見捨てて逃げた奴らは、もう喰うつもりはねぇよ」
男「……」
熊「ただ、どぉぅしっても人間だけは許せねぇんでな」
男「…何でそんな目の敵にする」
熊「俺の嫁さんが人間に殺されたからさ」
男「……」
286: 名無しさん:2011/6/29(水) 21:02:14 ID:jea4yQfMpw
熊「つっても元凶はアリスだ
あの糞餓鬼も人間だった」
熊「たった一度ここに来て以来姿を見せねぇ」
男「……」
熊「お蔭で献上だとか訳わかんねぇことを言い出してよ」
熊「俺は『理性』を捨てた
熊としては必要ねぇもんだ」
男「…理性飛んでるようには見えないけどなぁ」
熊「ガハ、一日中イカレっぱなしはキツいぜ」
287: 名無しさん:2011/6/29(水) 21:09:11 ID:96TVUWlwC6
熊「嫁さんは俺の理性の代わりになるだのって『獰猛さ』を捨てたさ」
熊「俺が道を踏み外さないように、だとよ」
熊「俺には勿体ねぇ位の良い熊だった」
男「ノロケ?」
熊「そう聞こえるか
まぁそれなりに平和に暮らしてたよ
が、ある日俺達の前に人間が現れた」
熊「狩人だ」
288: 名無しさん:2011/6/29(水) 21:11:52 ID:AkYREPUZEc
熊「『アリスに必要ない』って、嫁さんを仕留めにきた」
男「必要、ない…?」
熊「嫁さんの献上してた『獰猛さ』はアリスにとって害にしかならないんだとよ」
熊「撃ち殺しやがったよ、可愛い可愛い嫁さんを
俺が出掛けてる間によぉ…」
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