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女旅人「なにやら視線を感じる」
Part8


525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:09:24.49 ID:fNXhvYIy0
床に膝をつき、特徴的なボサボサの髪を掻き分け、顔を覗き込む。
無精髭は生えているものの、安らかに眠るそれはどこか幼く見える。
いつも陥没している眼窩を隠していた眼帯は右手に握られていた。
私が、初めてこいつにあげた物。
そういえばこいつは大層喜んでくれていたな。 今も大切にしてくれているのだろうか。
ぼうっと考えていると、こちらに気付いた主人が近付いてきた。
女装主人「あら。 起きるの待ってるの?」
私「え、あ、いや、別に待っていたわけでは。 ただ見ていただけだ」
「ふーん」と言うと、主人はおもむろに男に近付き、
そして目にも留まらぬ速さで鳩尾に強烈な一撃を放ったのである。
ボサボサ頭「お゛ぶッ!?」

526 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:10:32.42 ID:fNXhvYIy0
主人の予想外の行動に私は唖然とするしかなかった。
ボサボサの頭をした男も咳き込みながら起き上がり、突然の事態に混乱していた。
ボサボサ頭「ゲホッ……、え、何、敵襲……!?」
女装夫人「女性を待たせちゃ駄目じゃない、坊や」
「え」と言いながら、私を見た。 私など女性扱いするほど女らしくもないだろう、と思っていると
ボサボサ頭はかなり驚いた様子でベッドから転げ落ち、そして壁に後頭部を打ち付けた。
こんな光景は前にも見た気がする。 これが「デジャ・ビュ」というやつか。
女装主人「二人ともお腹へってたら下にいらっしゃい、ご馳走するわよ」
そう言ってぱたぱたと部屋を出て行った。
とても急がしそうである。

529 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:12:25.13 ID:fNXhvYIy0
 旦
ママの強力な一撃によって目が覚め、そして目の前にいた彼女に驚いて
ベッドから転げ落ち、頭を打ち付けたために完全に覚醒した俺である。
ママとの会話で改めて彼女のことを好きであると確認したからか、
どうも彼女と二人きりというのはドキドキしてしまうものである。
当の彼女の顔までが赤く見えるのは、蝋燭の明かり加減のためだろうか。
彼女「今の、大丈夫だったか。 モロに入ったが」
俺「はは……まぁ、多分手加減されてたから大丈夫だと思う」
彼女「す、すまないな、私がここに居たばっかりに。 もう出て行くから、ゆっくり休んでくれ」
俺「あ、いやいや。 今ので完全に目ぇ覚めたし良いよここに居て」
そう言って、何気なくベッドに座るように促した。
彼女は少し戸惑いながらも、すとんとベッドに腰を下ろした。

530 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:14:24.73 ID:fNXhvYIy0
俺「えっ……と、もう熱とか大丈夫?」
彼女「ん、お蔭様でな」
俺「で、その熱の原因なんだけど、実は、その……」
彼女「スープに入っていたキノコだろう。 聞いた」
俺「……ごめん」
彼女「何故謝る。 知らなかったのだろう?」
俺「知らなかった、なんて免罪符にはならない」
彼女「お前は同じ毒に侵されながらも私をここまで運んでくれた。
    私にお前を責める理由はない、むしろ感謝したいことばかりだ。
    あのスープだって私の為に作ったのだろう。 だったら悪いのは私だ」
俺「いやだからだな、」
彼女は「私が悪い」と言い張った。 俺も「俺が悪い」と言い張った。
責任の擦り付け合いとは全く逆の口論――それは激化していき、
いつの間にか喧嘩にまで発展してしまう。 お互いに譲れないのである。

533 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:18:55.61 ID:fNXhvYIy0
彼女「じゃあお前があの矢に射られたかったと言うのか? とんだ酔狂ではないか!」
俺「俺は護衛だ! 護衛として雇われている身がなんで守られなくちゃいけないんだ!!」
彼女「雇い主には傭兵の品質を管理する義務がある!!」
俺「傭兵にそんなの必要ない!
   護衛である俺を庇うぐらいなら最初から俺なんか必要なかったんじゃないのか!?」
彼女「ッ、黙れ!! 貴様は私に雇われている身だ!
    私の勝手な行動に口を出される義理はない!! 何故、そこまで私に口答えするのだ!!」
俺「好きだからに決まってるだろうが!!」
「俺のせいで嫌な思いさせたくない」と言おうとしていたのだが――
その裏にあった本音を、勢いで、つい、ぽろりと、言ってしまった、のである。

538 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:20:53.68 ID:fNXhvYIy0
しまった、と口を押さえるが今更口を封じても時既に遅し。
場の空気が凍り付く。
彼女は、掴んでいた俺の胸倉から右手を放した。
そして俺の顔に強烈な鉄拳を食らわせ、走って部屋を出て行ってしまった。
ああ、だめだ。 絶対に、完全に、完ッ全に、嫌われてしまった。
どうしよう。 死にたい。
しかし俺が自決するのを危惧してか暗器を含む武器全てをママに没収にされている。
どこかに殺傷力のあるものは――
いや、その前に、死ぬ前に。 彼女に謝っておかなければならない。
彼女を追い、走り出す。

541 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:22:29.03 ID:fNXhvYIy0
 旦
与えられた部屋に駆け込み、扉を閉じ、そしてそれに背を凭れしゃがみこむ。
何度深呼吸をしても脈拍が落ち着かない。
あいつはなんと言った? あいつは今、何と言った?
私を好きだと――そう、言ったのか?
馬鹿な。 馬鹿な。 馬鹿な。 そんな訳ない、そんなことあるはずが――
コンコン、と背後の扉が叩かれる。
思わずびくりとしてしまい、開けるべきか開けざるべきか戸惑っていると、
扉の向こうから「開けなくてもいい」と静かな声が聞こえた。

542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:24:09.81 ID:fNXhvYIy0
ボサボサ頭「ごめん、さっきのは俺のせいで傷ついて欲しくないって意味で……」
ボサボサ頭「……いや、やっぱり……さっきのは、俺の本音。
       ずっとそうだった。 でも黙ってた。 ……怖くて言えなかった」
ボサボサ頭「所詮俺は傭兵の糞野郎だから、言ったところでどうなるかなんか分かってた。
       ……言って、振られて、敬遠されて、一緒にしていた旅が終わるのが、怖かった」
ボサボサ頭「だからずっと黙ってた。 ……ごめん」
ボサボサ頭「でももういい。 言ってしまった。
       もう俺となんか居たくないだろ? 契約、切ってくれて構わない」
ボサボサ頭「俺はもうここを出るから……安心して身体休めるといい」
ボサボサ頭「旅、すごく楽しかった。 ありがとう。 それじゃあ」

545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:25:46.95 ID:fNXhvYIy0
脳が命令を下す前に、立ち去ろうとしていた男を引き止めていた。
隔てていた扉を開き、驚き固まる男の手首を引っ張り、強引に部屋に入れた。
そしてその手を掴んだまま、「本当なのか」と尋ねる。 声が、震えている。
私「私の、目を見て、もう一度、言って欲しい」
男は口をぱくぱくさせた。 そして深く深く深呼吸し、
そしてあの決闘の日のように真っ直ぐと私の目を見据えた。
ボサボサ頭「ずっと、す、好きだった」
なぜこんな大事なときに声が裏返るのか。 それはさておくとして――
その言葉に、何の偽りも感じなかった。 その瞬間、私の目からは滝のように涙が流れた。

549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:27:32.61 ID:fNXhvYIy0
私「…たしを、好きでいてくれるのか? こんな私を好きでいてくれるのか?」
私「こんなに我侭な私を、こんなに迷惑をかけてしまった私を、
  こんなに醜い身体をした私を、本当に、お前は、好きでいてくれるのか?」
ボサボサ頭「うん」
私「……っ、私も……、ずっと、ずっとずっと好きだった」
私「お前のことが、好きで好きで堪らなかった。 だけどずっと言えなかった。
  お前が私のことを嫌っているのではないかと、煙たがっているのではないかと思っていた」
私「怖かった。 私も、お前と離れることが怖くて、ずっと、言えなかった……っ」
  
漏れる嗚咽を止めたのは私自身ではなく、こいつであった。
未だに私が掴んでいる手で私の肩を抱き、もう片方で私の流れる涙をそっと拭う。
そしてその手をゆっくりと顎に沿わせ、軽くしゃくると、そのまま優しく唇を重ねた。

560 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:30:58.50 ID:fNXhvYIy0
 旦
さて、まさかの予想外ともいえる彼女からの告白――彼女も、俺が好きだと、
そう言われたおかげで勢いにまかせて唇が触れる程度であるが彼女とキキキキキスをしてしまった訳だが。
ドキドキドキドキといつもの二倍の脈拍が自身から聴こえる。
彼女の桃色の可愛らしい、そして柔らかな唇に勝手ながらファースト・キッスを奪ってもらった俺は、
プラスαとして唇を放した後の彼女の、赤らんだ顔+涙ぐんだ+上目遣いという超絶コンボによって
内心息絶え絶えであった。 彼女の可愛さは致死量を超えてしまった。 可愛すぎて生きるのが辛い。
この先どうすればいいのですか我が息子よ。 この童貞畜生めにどうか教えてやってつかあさい。
しかしそんな問いかけも虚しく返事は返ってこない。 当然である。 息子といえど、俺なのだ。
ああくそう、なんのための日々の妄想だったのだ! これだから童貞は!
しかし、やることがわからなくても、わからないなりに、頑張らなければならないのである。

564 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:34:22.30 ID:fNXhvYIy0
やることは分からない、分からないが、単純にもう一度、キスをしたいと思った。
顔を近づける。 彼女はそれを理解したように目を瞑り、低い身長を補うため背伸びをした。
舌を入れても彼女は抵抗しなかった。 絡め、放し、そしてまた絡め合う。
唇を貪り、更に強く絡め合うため彼女の頭の後ろに手を回す。 彼女も、俺の背中に手を回した。
熱く、荒い鼻息が互いの顔にかかる。 相手の鼓動までが伝わってくる。
唇を離すと、二人の間にねっとりとした白い糸が引いた。
彼女を軽く押す。 ベッドの縁に足を掛け、仰向けに倒れる。
そしてその上に、俺が覆いかぶさる。
耳まで赤くした彼女は、潤んだ目でじっと俺を見つめている。
服の中に手を滑り込ませる。 包帯の上から胸を撫でる。
柔らかな先端部に触れると彼女は熱い息を漏らした。

572 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:36:46.08 ID:fNXhvYIy0
これはもう、辛抱堪らん。 彼女の服に手をかけ、脱がそうとした。
すると彼女は「待ってくれ」と言い、俺の行動を制止させた。
彼女「……明かりを、消してくれないか」
俺「なんで」
彼女「こんな汚い身体なんか、見たく、ないだろ」
俺「前も言ったけどそんな事思ってない。
  傷だらけだけど、俺はむしろそれが魅力的だと思うし、美しいと思うよ」
彼女「でも」
俺「それに俺は、恥ずかしがる顔をじっくり見たいんだよね」
彼女「……ばか」

593 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:50:46.43 ID:UgANnxkm0
壁は壊すものではなく、乗り越えるものだと知った時
あなたはまた一歩成長するのだ

594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:54:35.33 ID:x2yjpU/P0
>>593
名言だが、俺たちには乗り越える勇気も壊す力もない

597 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:58:12.46 ID:fNXhvYIy0
―――――
―――

ママ「昨夜はお楽しみだったみたいね」
朝起きて、昼の部開店準備中の店に降りた俺にママが放った第一声である。
朝っぱらからなんてことを!と思うものの否定も出来ず、目をそらして苦笑いするしかなかった。
俺「も、もしかして、声、漏れてた?」
ママ「残念だけどお客さん賑わってて全然聴こえなかったわ。
   だから驚いたわぁ、さっき様子を見に行ったら一緒に寝てるんだもの」
ひとまず安心した。 もし俺以外に彼女の喘ぎ声を聞かれてなどいたら彼女はこの町を歩けなくなる。
そして俺にも、彼女のあの甘い声を俺だけのものにしたいと いっちょまえな独占欲があった。

598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 18:59:21.16 ID:fNXhvYIy0
ママ「どうする、朝ご飯食べる?」
俺「いや、彼女がまだ起きてないし、しばらく待つよ」
「そ」とあいづちを打ちながら、ママは俺の顔を見てニコニコとした。
ああきっと話を聞きたいのだろうなと思い、彼女を待つ間馴れ初めを語ることにした。
俺「彼女、実はこの国の、」
ママ「正規軍の女隊長さんでしょ?」
俺「あら」
どうやら知っていたらしい。
まぁ、酒場の店主でありギルドマスターの一面も持つママの事だから、
彼女のような有名人の顔ぐらい知っていてもなんら不思議なことではない。
だったら去年ちょっとぐらい教えてくれたってよかったのになぁと思いながら話を続ける。

601 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:00:40.57 ID:fNXhvYIy0
俺「実は去年ここを発ってから、クマに襲われて行き倒れて離れ離れになったんだよ」
ママ「災難だったわね。 去年は木の実が不作だったからかしら」
俺「で、しばらく入院して、彼女のことは諦めて仕事を再開したんだ。 借金返すために」
俺「春にあった戦に当然彼女は参加してたんだけど、
  偶然その時俺も丁度参加してたんだよね。 この国の敵、連合軍側に」
ママ「あら、とんだ負け戦だったわね。 その目はその時?」
俺「いやこれはもっと後。 で、彼女と一戦交えて、その後いろいろあって俺は戦線離脱。
  戦終わった王都の酒場にて偶然再会、決闘やりなおして、それ以降一緒に酒を飲む仲に」
俺「しかも行き倒れている時の俺を助けてくれたのは
  偶然町を出るために通りかかった彼女(とその部下)だったらしいんだ」
ママ「へぇ〜、偶然に偶然が重なったわけ」
俺「そうそう。 嬉しい限りだよ本当」

604 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:02:56.82 ID:fNXhvYIy0
 旦
窓から差し込む眩しい朝日に目が覚める。
身体を起き上がらせた拍子に肌蹴た毛布から現れたのは、一糸纏わぬ姿の自分だった。
ああ、そうか、昨日はあいつと――……
思い出しただけで、顔が熱くなる。
性交自体は初めてではなかった。 昔傭兵のとき一度、五人の男に回されたことがある。
捨てられた後に残っていたのは、下半身の苦痛と、喪失感と、恐怖感と、屈辱感だけだった。
しかし今は、それらの一つも感じていない。 今あるのは、幸福感のみである。
恐ろしいと思っていた男の身体を受け入れることが出来たのは、あいつだったからに他ならない。
まさか、性行為というものに、ここまで魔力があるとは――
こんなものに溺れては、いつかは身を滅ぼすな、と思った。

606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:03:45.53 ID:fNXhvYIy0
私の横にあいつの姿はなかった。
代わりに、ベッドの横にある椅子の上に、脱ぎ捨てられていたはずの私の服が
丁寧に折畳まれ置かれていた。 あいつの仕業か。 変なところで几帳面なやつだ。
それを手に取り着込んでいく途中、胸や首筋に赤い点があることに気付いた。
虫にでも刺されたか? ……いや、違う。 これはあいつが吸い付いた痕か。
あいつめ、なんてものを残してくれたのだ。
廊下に出てあいつを探す。 一階に降りてみると、店の主人の小さな声が聴こえた。
この扉の向こうは酒場のスペースだろうか。

607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:05:38.97 ID:fNXhvYIy0
 旦
ママ「ずっと、好きだったものね。 いろいろと思うことあるんじゃない?」
俺「……そうだなぁ」
ママ「全部吐き出していいのよ。 お客さんの話を聞くのがあたしの仕事だから」
俺「お客さんって。 そんな寂しい扱いだったの俺」
ママ「息子って言って欲しい?」
俺「嫌だよちんこついた母親なんか」
ママ「誰が母親って言ったのよ、あたしは女装が好きなだけで女になるつもりはないのよ」
俺「はいはい。 ……えっと、じゃあちょっと聞いてくれるかな」
ママ「ふふ、どうぞ」

614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:08:19.93 ID:fNXhvYIy0
俺「まず去年、丁度一年前の今の時期町の酒場で見つけた彼女に俺は運命的な何かを
  感じたよ。 一目惚れすると同時に彼女が俺の何かを変えてくれるんじゃないかってね。
  それから彼女に話しかけるために彼女の後をつけた。 話しかけるなら彼女が望んだ
  時に話しかけたいからね。 だから彼女の研究とも言える。 この研究の時間は本当に
  楽しかった。 彼女の歩行速度。 彼女の歩幅。 歩くときの癖と、それによる足音。 手を
  振る角度。 歩くことで揺れる輝かしいまでに靡く髪とマントと、伸び縮みする大臀筋。
  彼女の呼吸音。歩いた後の彼女の髪の残り香。 少し汗の匂いの混じった、甘い香り。
  彼女の嫌いな食べ物。 彼女の好きな食べ物。 朝食と夕食のレパートリー。 一日に食
  べる量。 彼女が去った後に残された、彼女が食べていたと思われる骨付き肉の残り
  かすは有難く頂戴させてもらって大切に大切に舐めさせてもらったよ。 ごちそうさまです」
俺「彼女の行動のひとつひとつが、俺の中のナニカを刺激したんだ。 欠伸をする彼女。
  くしゃみをする彼女。 木の根に躓きそうになる彼女。 頭を掻く彼女。 伸びる彼女。
  髪を耳に掛ける彼女。 水を飲んで一息を入れる彼女。 休憩中に溜息を吐く彼女。
  というか、もう、彼女が存在するというだけで俺は常に元気になれたんだと思うんだよ」

615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:09:09.83 ID:fNXhvYIy0
俺「一緒に酒を飲むようになった彼女。 彼女はある酒場の常連客でね、ボトルまでキープして
  もらっているんだ。 その酒をよく飲ませてもらっていたんだけど、それはただのワインじゃ
  なくて、シードルも少し混ぜられた彼女オリジナルブレンドなんだよね。 他の酒を混ぜる事
  はよくあるけども、シードル、リンゴ酒を混ぜるってあたりいかにも彼女らしいよね。 その酒
  はもちろん美味しかったんだけど、なにより彼女オリジナルよいう事実に最も美味を感じた。
  酒を飲んでる間は無言のことが多かったけど、たまにお互いの話をしたりするんだ。その時
  の彼女の見せる表情といったら後ろを歩いていては絶対にみることのできないものだし、な
  により目の前の席に座っているものだから本当に近い距離なんだよね。 なんというか、もう
  凄く可愛いんだよ。 いつものつんとした鋭い目ももちろんいい。 だけど時折見せる無邪気な
  笑顔とか、柔らかい笑顔とか、人を見下して嘲笑う顔とか、心身ともに疲弊している顔とか、
  もう何から何まで可愛いんだよね。 本当に、彼女の顔はずっと見ていても飽きないんだよね」
俺「旅を始めるとき、彼女は眼帯をプレゼントしてくれたんだ。 これね。 彼女には内緒だけど、
  これ内側に日付を刺繍したんだよね。 記念日っていうのかな、とりあえず忘れないように。
  彼女に貰ったということと、それが貰うまで彼女のズボンのポケットもしくは彼女に握られて
  いたと思うとどうしても匂いを嗅がずにはいられなくなるよね。 もちろん大っぴらにはしない
  けどさ。 俺はプレゼントだと勝手に思ってるけど、彼女にとっては目の陥没が見苦しかった
  のかもしれない。 だけど、心配をしてくれているのかもしれない。 そうかんがえるとやっぱり、
  俺はこの眼帯を装着しているだけで幸せな気分に慣れるんだよ。 手放したこともほとんどない」

617 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:09:42.93 ID:fNXhvYIy0
俺「酔いつぶれた彼女を初めて背負ったとき、俺は地獄を見たよ。 それは背中に襲い掛かった。
  遠目で観ても分かるとおり、彼女の胸は他の女性に比べれば小さい分類なんだよ。 ほとんど
  が筋肉になってしまってるんだ。 でもその考えは浅はかだったよ。 背中に彼女を感じて分か
  った。 彼女も、胸は、ある。 胸の下部。 明らかに筋肉と言い難い柔らかな部分があったんだ。
  確かに小さい。 小さいけども、確かにそれは、その宝石は、そこに存在したんだよ。 それで、
  昨日。 俺は彼女の許可を得、初めてまじまじと見ることに成功した。 包帯を取り替えるときに
  だって観ることはできたけども、それは俺のプライドというか俺の中の紳士が許さなかったんだ。
  で、その、彼女のおっぱいなんだけど、やっぱり、小さいんだ。 でもそれって大変素晴らしい事
  だと思うんだよね。 彼女は騎士で、女を捨てていると思われているかもしれないけど、実はそん
  なことは決してないんだよ。 確かにあの筋肉に覆われた身体は女性らしいとは言い辛いけども
  それでも彼女は立派な女性なんだよ。 彼女は、その筋肉に覆われた身体が、身体を鍛える
  ことで小さくならざるを得なかった胸が、女性らしくないことを、本当は気にしている、とても可愛い
  女性なんだよ。 だからあのとき蝋燭の火を消すように頼んだんだと思うんだ。 俺はそんなこと
  気にしない、むしろそうやって気にしている彼女が非常に魅力的だと思うんだけどさ。 で、その
  彼女の胸はこう、後ろから乳輪付近を指で押さえて、それでゆっくりと揉みあげたんだけど、やっ
  ぱり後ろからやったのが良かったのか、凄く手に収まるような感覚が良いんだよ。 さっき地獄
  って言ったけど、それは悪い意味ではないんだ。 俺は、地獄のような、歓喜を味わったよ。 うん」

622 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:12:17.82 ID:fNXhvYIy0
俺「あ、それでね。 話はちょっと戻るんだけど旅の途中で――」
ママ「ああ、もう、いいわ」
俺「え、なんで? まだちょっとしか話してないんだけど」
ママ「いいから。 ……っていうか。 逃げなさい」
「へ、」と言いながら、ママの視線の先を追う。 と。
そこには、にっこりと笑う、彼女が立っていた。
もちろん目は、笑ってない。
サーッと一気に血の気が引くのがわかった。

626 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:14:12.14 ID:fNXhvYIy0
席から立ち上がり、後ずさる。
俺「おおっおおおおおはよう、どどどうかな体調は」
彼女「ああ貴様のおかげで順調だ、見ろ、肩ももう軽く回せる」
指を鳴らし、肩をぐるんぐるんと回しながら、俺に、一歩一歩近付いてくる。
俺「え、ええっと、その、あの、いつから、聞いていたのでしょうか?」
彼女「『じゃあちょっと聞いてくれるかな』辺りからだな」
俺「は、ははは、それって最初からって事じゃん超ウケル」
そう言った瞬間に、俺は彼女に背を向け店から出て抜け出そうとした。
しかしその試みは軽く打ち砕かれた。
彼女は目にも留まらぬ速さで走り、俺の目の前に立ちはだかる。
そして前方に走り続けようとする慣性を利用して俺を投げ飛ばした。

627 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:14:12.70 ID:UgANnxkm0
得意分野になると、とたんに饒舌になる・・・お前らそっくりや

630 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:15:34.28 ID:fNXhvYIy0
うつ伏せに倒れる俺を踏みつける。 地団太を踏むように何度も何度も踏みつける。
彼女「貴様! 貴様は!! 去年からずっと私を尾行けていたと言うのか!!!」
俺「げふッ! いや、それは、研究あぶッ!!」
彼女「ぬかせ!! なにが研究だ単にストーキングしていただけではないか貴様はッ!!」
俺「紳士d……!」
彼女「前、後ろに居たのは偶然だと言ったな!! あれも嘘だったのか、あァ!?」
俺「んう゛ッ!!」
彼女「ましてや、私の、私の……ッ! ち、……ッ、このぉッッ!!!」

634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:17:17.92 ID:fNXhvYIy0
俺「ごっ、ごめ……! し、死んじゃう!! 本当に死んじゃう俺!!!」
彼女「ああ死ね死んでしまえ!!!!」
俺「おごぉ゛ぉおおおおおおおおおお」
彼女は両脇に、俺の脚を挟んだ。
そして俺に跨り、美しいフォームの逆エビ固めが完成した。
俺「……ほっ……!」
俺「本望なりィィイイイイ!!!!」
 fin.

637 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:18:16.64 ID:zJ5uuZQs0
oh....BAD END......いやhappy end乙乙

638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:18:27.35 ID:UgANnxkm0
>>1
お疲れ様でした!面白かったよーww

640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:18:38.64 ID:mUL+kcil0
おつかれー
騎士ちゃん、こんな風に騒げる相手を見つけて幸せだろうな
ハッピーエンドでよかったよ
ところで、エロシーンはまだかね?

643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:21:07.48 ID:pj8/V5c90
これは続編希望」だな
ひさしぶりに面白いSSだった。乙!!

644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:21:11.14 ID:fNXhvYIy0
やっと投下終わったぜーフゥハハハー
支援してくれた人、保守してくれた人、読んでくれた人全てに感謝
童貞にエロシーンなんか書けるはずなかったんや!

645 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:22:20.05 ID:qjk4kN7Q0
さすが童貞

647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:22:29.94 ID:zJ5uuZQs0
童貞なら仕方ない

648 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:23:02.00 ID:pj8/V5c90
>>644
いや、書かないからこそよかったぞ

652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:25:38.94 ID:UgANnxkm0
ちょっと俺も好きな娘ストーキンg・・・もとい研究してくる

653 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:26:45.86 ID:GSXvTDL+0
よかったな
踏まれたい・・・愛のある踏みが叶ったじゃないか
( ;∀;)イイハナシダナー

656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:30:07.47 ID:q6a1pdwc0
面白かったわああああああああああ

657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:30:22.72 ID:V7QzBkRj0
稀に見る良作

658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:31:22.38 ID:/0XDsKCF0
>>1に感謝を述べざるを得ない


659 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:31:33.85 ID:H+1zJHuP0

久々にいいもの見させてもらった

660 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:31:59.47 ID:cksmbNGx0
すごくおもしろかった乙

661 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:33:09.54 ID:qNbX0sff0
いい作品だった!
他にSS書いたことあるみたいだけどできればタイトルおしえてくれ

662 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:34:37.79 ID:ecAmSaBm0
>>1乙
素晴らしかった

670 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:49:14.31 ID:fNXhvYIy0
この後
焼きリンゴ食べて仲直り。続編書かないけど
予定では、スレ立ててさる無効時間に70投下、
その後支援もなく20時間以上一人でもそもそ続けてひっそり落ちる予定だったんだけど
その期待をものすごい勢いで裏切られたよ。マジサンクス
今回もbadエンドにするつもりだったけどhappyにしてよかった

671 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:51:03.81 ID:wuUE3+uf0
>続編書かないけど
>続編書かないけど
>続編書かないけど
>続編書かないけど
>続編書かないけど
Say it ain't so, Joe!

673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 19:56:35.66 ID:Dd7JTLtl0
>>670
気になってるのそこじゃないけど騎士団云々とか何も問題なく
最終的に二人は仲良く暮らしました めでたしめでたし
でいいんだな!遊歴?とか言う期限の伏線が回収されず怖かったけどこの後も幸せなんだな!?

675 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 20:02:41.83 ID:fNXhvYIy0
>>673
なあなあエンドにしたのは各自の想像に任せるためだぜい

676 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 20:05:13.33 ID:Dd7JTLtl0
>>675
じゃあ自分の思うエンドにしておく、律儀に答えてくださりありがとう
改めてお疲れ様でした

677 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 20:05:51.87 ID:mUL+kcil0
>>675
続きはそれぞれの想像でってことか
まぁ、俺としては騎士団をほっとけるような女騎士ちゃんじゃないし
女騎士ちゃんをほっとけるようなボサ男でもないから
ボサ男は女騎士ちゃんの推薦で騎士団に入って守り続けるようなのを妄想しておくよ
女騎士の傍らに隻眼の戦士と隻腕の戦士
そしてそれを慕う部下達

680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 20:09:12.45 ID:RWDnsiS9P
乙でした!
俺の中では最近のssで1番面白かったよ!