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まる子「女子VS男子の野球対決!の巻」
Part2


26 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:22:33.12 ID:mET3pBoz0
城ヶ崎「そもそも、いつから見てたわけ?」
野口「最初から居たよ」
一同「えぇ!?」
野口「初めは様子見で終わるつもりだったけど」
野口「あんたらの気概が本物っぽいから出てきてあげた……それだけ」
たまえ「じゃあ、私達に打撃を伝授してくれるの!?」
野口「さあ、どうだろうね」
まる子「ちょっとあんた……」
野口「プッ……冗談だよ」
野口「一応、この場に適当なキーアイテムを持ってきてあげたよ」
一同「バドミントンの羽に……突っ張り棒(日用伸縮棒)……?」
まる子「アルミホイルまで」
たまえ「野球とは関係なさそうだけど……」
城ヶ崎「こんな物で上手くなれるっていうの?」

27 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:23:49.73 ID:mET3pBoz0
ピキィィン!
まる子によってトスされたバドミントンが勢いよく飛んでいく。
正規のバットよりもずっと細い棒(突っ張り棒)を使っているにも関わらず、的確に打ち返してのける野口さんに、一同絶句。
一同(す、凄い……あんな小さな羽を……)
野口「ただ単に一本の線を意識して振り抜いただけだよ」
野口「あんたらがやってるのは闇雲なダウンスイング。しかも間合いも糞もないドアスイング(大振り)」
野口「現時点じゃ空振り凡打の嵐だね」
俗に“ストレート”と呼ばれる、最も威力のある球種であっても、
地球に重力が存在する以上、進行するにつれて徐々に落下していく道理である。
放物線に対して振り下ろして当てようとすると、ボールとスイングが交差する点は一点に絞られてしまう。
これを素人が行うと言うのだから、必然的にボールをミートできる機会は激減する。
ダウンスイングのメリットとしては、ボールを地面に叩きつけてゴロにしやすい事。(特に軟球は跳ねる為)
それと、重力を利用することでバットのヘッドを最短距離で振り出せること、と言われているが、これは間違ってないようで間違っている。
そもそもは、かの王貞治が畳の上でダウンスイングを黙々行っている様子、また日本刀で紙を斬る様子(極端なアッパースイングを矯正する為の反復練習)がTV放送を通して世間の目に焼き付いたことで生じた誤解である。
「あの王貞治がダウンスイングを熱心に行っていたのだから、ダウンスイングこそ正しいのだ」と。
ダウンはダウンでも、それは“始動”に限った話である。
実際にその後の王貞治の試合映像を見ても、そのスイングはボールの軌道に対して水平線を描く綺麗なレベルスイングである。

28 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:26:10.82 ID:mET3pBoz0
野口「物理的に考えると、結局は凸面(点と点)の衝突なわけだから、
   軌道を線に置き換えて、バットの中心に当てる感覚を養わせればいい話……」
笹山「バットの幅を狭めることで、凸面のどの部分に当たっているのかがより明確化するのね」
野口「通常バットでも効果はあるけどね」
かよ子「このバドミントンの羽は?」
野口「安全性……強く当てても初速だけだから。取りに走る手間も省けて効率的」
かよ子「な、なるほど……」
たまえ「そっちのアルミホイルは?」
野口「それは……いざって時の切り札ってとこ」
一同「???」
野口「ま、野球のフォームは地道な反復練習で固めるもんだけど、
   感覚を一時的に馴染ませる作業だって決して無駄じゃぁないからね」
野口「付け焼き刃でも、どこまで昇華できるかはあんたら次第ってこと。クックックッ」
城ヶ崎「や、やってやるわ!」

29 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:27:42.07 ID:mET3pBoz0
数時間後。
一応、様子を窺いにきた男子達。
男子A「お、何だよあいつら、生意気に道具揃えてやがる」
男子B「見てみろよ、バットの持ち手が上下逆だぜ」
男子C「ド素人じゃねえか」
男子D「こりゃ余裕だな」
女子軍の奇抜な練習風景を見て、抱腹絶倒する男子軍。
最後に笑うのはどちらか。

30 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:30:24.08 ID:mET3pBoz0
試合前日、神社に参拝するかよちゃん。
[写真を見る]

31 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:31:57.78 ID:mET3pBoz0
ーー試合当日。
男子達「よく逃げずに来たな。それだけは褒めてやる」
まる子「ふん、あんた達こそ覚悟しな! こっちにゃ心強いエースがいるんだからね」
男子達「ほ〜、そいつは楽しみだ」
(ふん、素人のくせにハッタリかましやがって)
野口「……」
城ヶ崎「私たちが勝ったら土下座で謝りなさいよ!」
男子達「そっちこそ忘れんなよ!」
たまえ「い、いよいよだね……」
かよ子「ききき緊張してきたぁ〜……痛つつつ」
冬田「山根みたい」
かよ子「うん……今思った」
【ルール】
イニングは七回まで。
コールド、延長無し。

32 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:33:22.94 ID:mET3pBoz0
女子軍オーダー
1(投)野口
2(遊)城ヶ崎
3(遊)笹山
4(捕)まる子
5(二)冬田
6(一)たまえ
7(外)かよ子
[写真を見る]

33 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:35:38.02 ID:mET3pBoz0
一回表、女子チームの攻撃。
まる子「野口さん、そんなヘボPやっちゃいな!」
城ヶ崎「ぶちかますのよー!」
一同「野口さーん頑張ってー!」
男子B(ピーピーうるせえな)
男子C(これだから女は嫌いなんだよ)
男子A「へへっ、ビビんなくてもいいぜ。少しは手加減してやるよ」
野口「……」
男子A「そらよっ」シュピッ
バシィーン!
初球。
その快音は、投球がミットに収まる音ではなく、
女子軍に1点をもたらす長打によるものだった。
野口「あ〜あ、嫌だね……少し詰まっちゃった」

34 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:37:18.35 ID:mET3pBoz0
女子チーム、先頭打者ホームランで1点先制。
一同「きゃー! 野口さん、やったやったぁー!」
男子A(ま、まぐれだろ。加減してたしな。出会い頭を叩かれただけだ!)
城ヶ崎「景気づけの一発ありがと」
野口「クックッ、相手は手頃な癖球だよ。手筈通りにやんな」
今のホームランで気が楽になったのか、
城ヶ崎さんは意気揚々と打席に立ち、投手めがけてバットを突きだした。
城ヶ崎「さあ、来なさい!」
城ヶ崎さんの打撃フォームは野口さんのそれと近似してはいるが、
より顕著に股関節を広げた、がに股気味のオープンスタンスだった。
男子達「ぎゃははははっ、何だあの構え! ゴリラ女だ!」
城ヶ崎「なっ!? 何ですって〜!!///」
城ヶ崎(は、恥ずかしぃ///……でも、そんなの今更じゃない!
    ここまで馬鹿にされた以上は何がなんでも打ってみせるんだからっ!)
一同「城ヶ崎さん頑張ってー!」
野口「お尻を突き出し過ぎだよ。ま、打てるなら自己流で構わないけどね」

35 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:39:52.81 ID:mET3pBoz0
城ヶ崎(元はと言えば私がいけないのよ。みんな止めてたのに、一時の感情で巻き込んで……。
    だから、言い出しっぺの私が塁に出て、チーム全体を盛り立てなくちゃ!)
“打たれた直後の初球を狙いな……”
野口さんの一言が脳裏に浮かび上がり、頷くように構え直した。
男子A「おらぁ!」ピシュッ
力んでいるのか、投じられたボールは若干甘いインコース。
それでも城ヶ崎さんは動かない。はやる気持ちを抑えながら、直前まで軌道を見定める為である。
バドミントンの羽を真芯で捉える感覚ならば、試合ぎりぎりまで研ぎ澄ませてきた。
誰よりも、独り責任を感じて、誰よりもだ。
城ヶ崎(引きつけて、引きつけて……)
グワァラゴワガキーン!!
ボールは右中間へグングン伸びていく。

36 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:41:23.58 ID:mET3pBoz0
一同「おおお、大きいよ!」
男子A(そんなっ!?)
野口「テニス研究会の時に思ったよ。なかなか良い上半身の使い方してるってね」
野口「押し手主導(トップハンド)の打ち方のほうが性に合ってると思ったけど、まさかこうも短期間でコツを掴むとはね」
今しがた城ヶ崎さんが実践してみせたバッティングは『トップハンド・トルク』。
瞬発的に全身の力を発揮してバットを加速させる始動様式のことを言う。
いきなり0から100の力を爆発させるイメージで、ボールをぎりぎりまで引きつけてコンタクトしなければならない為、むしろアベレージヒッター向きの型と言える。
手元で変化するムービングボール全盛の現代、特にMLBでは最もポピュラーな打撃スタイルとされている。
ちなみに、日本ではウェートシフト型という、体重移動や回転を枢軸にバットを加速させ、先端を遅らせてインパクトの瞬間に出力するスタイルが主流である。

37 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:43:29.61 ID:mET3pBoz0
一回表、女子チームは連続アーチで2点を先制。
冬田「頑張って笹山さん!」
まる子「流れは完全にこっちだよ!」
笹山「がんばる!」
男子A(何が頑張るだぁ? ド素人が調子乗りやがって!
    相変わらず持ち手が逆さまじゃねえかっ……!)
男子A「ナメてんじゃねえ!」ピシュッ
バシィ!
笹山「きゃっ!」
城ヶ崎「ちょっと、どこ投げてんのよ!」
たまえ「いま顔面狙ったんじゃないの!?」
まる子「危ないじゃないのさ!」
野口「ブラッシュ(威嚇)かい……初回から荒れちゃって無様だね」
まる子「笹山さん、大丈夫!?」
笹山「平気っ」

38 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:43:42.96 ID:JYs2pJNb0
脳内再生余裕なんだけど何これ

39 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:45:17.91 ID:mET3pBoz0
男子A「平気なら、もっかい喰らえ!」ビシュッ
笹山「んっ!」
パコンッ
笹山さんの打球は二塁線を破るヒットとなった。
男子B(おいおい、何がどうなってんだ……)
男子A(何で……何で当てられた!? あんなド素人に!)
上下(押し手と引き手)が真逆の素人持ち。
一見すると滑稽かもしれないが、城ヶ崎さん以外のドアスイング(大振り)を矯正する為の苦肉の策であった。
逆に配置された右腕が嫌でも脇を締める為、また窮屈な右肘を軸にバットを振り出せる為、素人でもスイングの軌道が固定されて幾分安定する。
一部では怪我の危険を懸念する声もあるが、それはあくまで無理矢理な手打ちから来るものだ。
有名所では元広島の前田智徳、現在ならば現西武の森友哉が高校時代の練習の最終調整として組み込んでいたことで知った方もいることだろう。

40 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:47:23.26 ID:mET3pBoz0
野口(本来こねるのは厳禁だけど、それは本格的な競技内の話……急造素人ならこれで十分だね)
野口さんの意図は何もスイング軌道を固定させるだけではない。
支点(軸)が内側にあるということは、
本来のドアスイングではまず出来ない
内角球を強く引っ張ることが可能だということ!
まる子「ほいさ!」パカッ【レフト前ヒット】
冬田「えいっ!!」パカッ【レフト前ヒット】
たまえ「えいっ!」パカッ【センター前ヒット】
かよ子「ええいっ!」ポコッ【遊ゴロ併殺】

41 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:49:43.94 ID:mET3pBoz0
一回表が何とか終了したものの、男子チームは致命的な状況に陥っていた。
暴投、捕逸、送球ミス等、ケアレスミスの頻発で大量得点を許してしまう。
その差12点。
男子A「くそっ!」
男子B「なっさけねーな。女ごときに何してんだ」
男子A「うるせえ! だったら次お前がやってみろ!」
男子C「まあまあ、落ち着けって」
男子D「打線で注意すべきは1・2番だな。あいつら素人じゃねえ」
男子E「球審目線で見てて判ったけど、あのコケシ女、只者じゃないぞ。
    木製バットの“しなり”を利用してやがった……!」
男子F「スイングスピードが尋常じゃないってことか……」

43 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:51:38.23 ID:mET3pBoz0
しかし、相手は女だ。
守備には慣れていないだろうからこちらにも十分勝機はある。
男子チームが想い描いた希望は、
野口「ふん……」シュビッ
ヒョロロロッ
ギュルルルッ
スパァーンッ!!【三者連続三振】
男子A「なん……だとぉ……」
男子B「同じリリースポイントで緩急を操るなんて……」
男子C「本当に小学生なのか……?」
早々に潰えた。

44 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:52:57.94 ID:mET3pBoz0
三回表、1死2塁
ポコンッ
城ヶ崎さんの打ち上げた外野飛球が犠牲フライとなり、野口さんが生還。
16対0
まる子「こりゃ間違いなく勝ったよ!」
野口「コールド制じゃないのが悔やまれるね」
かよ子「こおるど?」
笹山「寒いってことかな?」
野口「ブプッ!」
男子A「おい、このままじゃ負けちまうぞ!」
男子E「落ち着け」
男子A「落ち着けるか! 女子に負けたなんて噂がたってみろ、生き恥だぜ」
男子E「ひとつ、球審をしてて判ったことがある」
男子達「???」
男子E「あのキャッチャーだよ」ニヤッ

45 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/17(日) 23:54:34.08 ID:mET3pBoz0
四回裏、男子の攻撃。
相手はこの回ヒットを連発し、1死1,2塁のチャンスを迎えていた。
野口(……おかしいね)
野口(三回からやけに振り抜いてくるようになったよ)
野口(こりゃぁ確実に盗まれてるね……)
男子A「へっ、次にどんな球種が来るのか判ってりゃ」
男子B「あんなやつ屁のカッパよ!」
野口(それなら泳がせてカウント稼ごうかね)
男子達「打て打てー! 打ってこうぜー!」
ボスッ!【ライト方向ファール】
野口(今のステップ……明らかにチェンジアップを待ってたね)
男子達「打ってけ打ってけー!」