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女「人様のお墓に立ちションですか」
Part8


166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/31(土) 14:40:56.20 ID:Pk3mqu+F0
女「私のせいで、男さん捕まっちゃうんですかね」
男「ちょっとはたいただけだから。先っちょだけだから」
女「とか言って思いっきり叩いちゃったやつですね」
男「それよりあんたこそ、夜7時のテレビの心霊動画特集に出されてスタジオで悲鳴あげられるぞ」
女「いつもは悲鳴上げる側だったのに。自分が悲鳴あげられると思うと地味に傷つきますね」
男「でも誰も信じないけどな」
女「そうですね。でも私が毎晩ここに出現するのがばれたら観光名所になってしまいます」
男「線香花火でも販売して一儲けしようかな」
女「不謹慎ですから誰もやりませんよ」
男「興味本位で幽霊見に来てるくせに」
女「まったくですね」

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/31(土) 14:49:31.24 ID:Pk3mqu+F0
女「今何時ですか?」
男「3時よりちょっと前」
女「いつも丑三つ時あたりに出現して、明け方あたりに意識が途絶えるんです」
男「寝てるだけじゃないの?」
女「まさか」
男「俺てっきり、紫外線に凄く弱い体質なのかと思ってたりもした」
女「太陽を浴びたら死ぬか、死んでるから太陽を浴びれないかの違いです」
男「大きい違いだな。なんで昼間は意識が途絶えるんだろう」
女「私が昼間を拒んだからじゃないですか」
女「死ぬときのこと、うっすら覚えているんです。まだやり残したことがあるって。でもそれを成し遂げたくないって」
女「だから一時的にこの世に戻ってこれたけど、誰もいない夜中限定になったんじゃないですか。なんて、荒唐無稽ですね」
男「深夜のラブレターだな」
女「深夜のラブレター?」
男「昼間に考えた方がいいのに恥ずかしくてできなくて、夜じゃないと恥ずかしくて書けない」
男「極めて人間の摂理に則った地縛霊なんだよ」
女「ふむふむ…」
男「だろ?」
女「地縛霊って言い方より、幽霊って言い方のほうがかわいいです」
男「おかしな所にこだわるな」

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/31(土) 19:56:45.00 ID:Pk3mqu+F0
男「どうして俺のことは触れるんだろう」
女「似た者同士じゃないからですかね」
男「似たもの?」
女「死に近い所」
男「やめろって」
女「たかが青春に失敗しただけのあなたですが、夜中に墓標に立ちションするくらいに追い詰められていたじゃないですか」
女「死の淵にいたんですよきっと。あなたなりの自傷行為がすでにはじまっていたんでしょう」
男「なるほど……確かにこんな話を聞いたことがある」
男「死にたいと思った時に、女の子はリストカットをするけれど、男の子は身体を傷つけるようなことはしない」
男「ただしめっちゃオナヌーをして発散しようとする」
男「ははは!!死にたい時に、女は自傷行為、男は自慰行為ってか!!やることは正反対じゃないか!!痛っ!」
女「あ、やっぱり叩けるんですね」
男「シモネタが嫌ならそう言って」

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/31(土) 20:07:41.41 ID:Pk3mqu+F0
女「それともう一つ判明してるのが、食べ物には興味が無くなったということです」
男「もしかしてずっと食べてないのか?」
女「そうですね。食欲がまったくわきません。もちろん水分補給も必要ないです」
男「じゃあ!!じゃあ一緒に立ちションできないじゃん!!!」
女「すると思ってたことに私が驚いています」
男「このケーキどうおもう?」
女「なんとも思いません。ふでばこを差し出されて『食べる?』って聞かれてるような感じです」
男「体力とかはどうなってる?全力で走り続けられる?」
女「それは生前と変わりません。疲れて息切れします。空を飛んだり、浮遊することもできません」
女「思うに、大きく2つのことを制限されているのでしょう」
女「生きるために必要な行為。人に触れる行為」
女「だから睡眠も必要ありません。まぁ消滅してること自体が睡眠代わりなのかもしれませんが」
男「でも今寝袋にくるまってる」
女「寝袋に人がくるまりたがるのは寝るためではありませんよ。寝袋にくるまりたいからです」
男「深い」

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/31(土) 20:16:31.79 ID:Pk3mqu+F0
男「物理学研究所とかにつかまったらエラいことになるな」
女「実験材料にされちゃいますね」
男「ものは触れる。でも人はすり抜ける」
男「でも人は衣類というものを身に付けているだろう?だったらコートや手袋に触れることはないのか?」
女「できないみたいです。誰かが脱いだコートには触れられるのですが」
男「壁を人間だと思いこんですり抜けることは?」
女「抜けれません」
男「確かに俺も性欲が凄い時期に弥勒菩薩半跏思惟像を裸の女だと思って抜こうとしたけどできなかった」
女「発想がずば抜けていることは認めます」

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/31(土) 20:23:40.20 ID:Pk3mqu+F0
女「私も色々実験してみました」
女「椅子に座っている人の椅子には触れられるけど、コートだとすり抜けてしまう」
女「小学生の帽子を持って被せてあげると、被せた感触がわかりそうになるあたりで擦り抜けてしまう」
女「人のお腹に顔を突っ込んでみても、身体の内側が見れるわけではなく真っ暗になる」
女「つまるところ、人の感触を感じる行為が必要ないとされているのでしょう」
女「生前の私が生きてきた世界というデータを体験してるといえばいいのでしょうか」
男「ゲームの世界に紛れ込んだバグのような存在かもな。女湯の建物に主人公がめり込んだことあったけどやっぱり視界は真っ暗だったよ」
女「それは残念でしたね」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/31(土) 20:49:16.02 ID:Pk3mqu+F0
男「気になってたんだけどさ。もしかしてあのお墓って」
女「はい。私のお墓です」
男「勘違いとかじゃない?」
女「フルネームも一緒ですし、確かに死ぬ前はこの街にいましたから」
男「どうやって死んだか覚えてる?」
女「あっ、死ぬなって思って、本気を出せば死ななくて済んだんでしょうけど、やる気が起きなくてそのまま死んじゃいました」
男「なんだそりゃ。やる気出せよ」
女「夏休みの宿題をちゃんとやらないあなたに言われたくないです」
男「もともと死にたかった人間に、死ぬ機会が訪れたって話だろ。電車に飛び降りて死ぬ人も、その日たまたま1番前に立ってたから飛び降りたわけで、二番目に立ってたら死ななかったんじゃないかなって思うよ」
女「私だって、自分に自殺願望があったとは思いませんでした。ただ、とても疲れていたんです」
女「こうやって地縛霊になってるからには、この世に強い執着があったのでしょう」
女「あの時ああしておけばよかったという後悔は一生抱えるほど強いエネルギーを持っているのに、それらを実行することはさらに強いエネルギーが必要なんですね」
男「俺の先日の告白もそうだったな。うちの親父も学歴コンプレックスなんだけど、学生時代はあまり勉強しなかったらしい。母さんも、痩せたいと言ってる割にはよくお菓子を食べてるよ」
女「程度の差こそあれ、みんな同じ気はしますね。幸せになる方法はわかっているのに、その方法を実行できないところ」

173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/01(日) 00:02:19.86 ID:rKfHwj1h0
あけましておめでとうございます。
明日続きを書きます。

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/01(日) 00:43:20.45 ID:7fE+MgBI0
あけおめ
ことよろ

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/01(日) 22:55:43.86 ID:rKfHwj1h0
男「これは、君の名前だったんだね」
女「そうです。決して、尿を飲むのが趣味のあなたの友人ではございませんでした」
男「はは、そっか。俺、あんたの墓標に立ちションしてたんだな」
女「そうですね」
男「なぁ、女さん」
女「な、なんですか」
男「本当に、ごめんなさい」
女「謝らなくてもいいですよ」
男「ううん。本当に、申し訳なかった」
女「私は私のお墓に愛着なんてまるでありませんでしたからね。自分で自分を成仏させるためにナンマイダを唱えていたくらいですもの」
男「謝りたいんだ。許されなくてもいいから」
女「だから許すも何もないですって。自己満足のためですか?」
男「自分のためだ。でも、満足なんてしない」
女「やっぱり悪いことはしちゃだめなんですよ。放尿なんてもってのほかです」
男「すまなかった」
女「もういいですって」
男「うん……」
女「丑三つ時で誰が見てなくとも、自分が見ているんですからね」
男「うん……」
女「わるいことは自分に跳ね返るんですよ」
男「うん……」
女「尿だけに!なんちゃって!」
男「うん……」
女「もう!!」バシッ!
男「痛っ!」

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/01(日) 23:16:14.96 ID:rKfHwj1h0
女「これで終わりにしてあげます」
男「……もっと叩いて欲しい」
女「いつもなら『もっと叩いてくださいまし!』ぐらいの勢いがありましたよ」
男「もっと叩いてくださいまし」
女「叩きません」
男「そうか」
女「代わりに、背中をさすってあげます」
男「…………」
女「男さんは、凄いですね」
男「凄いところなんてないよ」
女「ごめんなさいが言える人です」
女「あなたの人生の後悔の原因が"好き"の一言を言えなかったに集約されるのだとしたら」
女「私の人生の後悔の原因は"ごめんなさい"の一言を言えなかったことに集約されます」
女「男さん、あなたは線香花火の火の玉になんと願いを込めていましたか?」
男「あの子との過去が精算されますようにって。好きだという未来は考えてもいなかった」
女「そうだったんですか。実は私も、自分の抱えてるものについて願いを込めていたんです。こんな風に」
女「私の陰湿な嫌がらせが原因で学校を辞めてしまった先生に、謝りたい」

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/02(月) 00:12:34.33 ID:9Jex3eyg0
先生をいじめてたのお前かよwww

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/02(月) 00:19:23.61 ID:js092Jse0
男「女が!?だって、尊敬してたって……」
女「私の墓にお花を供えてくれる人、誰だと思います?」
男「女の家族じゃないのか?」
女「私には血の繋がった家族はもういないんです。中学生のある時期からは継母と、彼女の恋人の男性と3人で生活を送ることになりました」
女「実母がなくなった後に実父が再婚した相手が今の継母です」
女「最初は3人で暮らしていたのですが、二人の口論がやがて増えるようになりました。実父は心の病になって、二人は離婚をしました。実父が今どこにいるのかは知りません」
女「親戚も祖父母の家も私を預かれる状況ではありませんでした。私は赤の他人の男女の家に転がり込むような状況になったんです」
女「暴力こそふるわれないですが、継母から疎まれているのはありありとわかりますよ。自分を嫌っている大人に生活の面倒を見てもらう後ろめたさったら、凄いストレスなんです」
男「そのストレスがどうして先生に向けられたんだ」
女「先生にお願いしたんです。私の、お母さんになってくれませんかって。先生の家に住まわせてくださいって」
女「そんなことはできないと言われました。まぁ、当たり前ですよね」
女「そのあたり前のことが許せずに、私は先生を追い込むことばかり考えるようになりました」
女「男性関係についてあることないことを言いふらしました。いや、ないこと尽くしでしたね。ですが、ただでさえ美しい人でしたから、その悪評の真偽を確かめずに楽しもうとする女子生徒も、女性の教員も数多くいました」

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/02(月) 00:44:48.17 ID:js092Jse0
女「男さん。人が恨むのって、どういう相手に対してだと思いますか?」
男「嫌なことをしてきた人?」
女「やさしくしてくれた人です」
女「今まで与えてくれていた人が、与えてくれなくなった時に、どうして与えてくれないんだと恨んでしまうんです」
女「ここで男さんの質問に戻りましょう。私の墓にお花を供えてくれる人は誰なのか。そして、あなたが寝袋にくるまって待ってくれていた三日間、私は何をしていたのか」
女「お花をくれたのは私の同居人ではありません」
女「私は事実の意味を受け容れきれずに、お花を捨てていました。私なんかが受け取ってはいけないという気持ち、今更やさしくしてくれることに対する恨みの気持ち、また花を買って供えてきてくれるのでないかという歪んだ期待の気持ち」
女「夜中の3日感を費やして、その人の家をなんとか見つけることができました。もともと、昔近所まで行ったこともあったので」
女「けれど、怖いですね。おかしな言い方になりますが、それこそ死ぬほど怖いです」
女「いつでもできたんですよ。でも、ずっとやってこなかったんです。謝ることも、真実を尋ねにいくことも」
女「夜中にお墓に放尿してまで現実から目を背けていた人が、現実と向き合うのを見て、私の中の何かが観念してしまったんでしょう」
男「それじゃあ」
女「はい。私の墓にお花を供えてくれた先生に、謝りたいです。そして、何を考えていたのか、聞きたいんです」
女「男さん。来てくれるだけでいいんです。私と、一緒に先生の家まできてくれませんか?」
男「断る理由なんかない。幽霊部員のかよわい女の子を、ちゃんとエスコートしてあげないとな」
女「男さん……!」
男「よっしゃ。次は、あんたの日記を修正する番だな!」

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/02(月) 01:19:57.32 ID:js092Jse0
よろしくの一言が言えなくて、春。
すきですの一言が言えなくて、夏。
さよならの一言が言えなくて、秋。
ごめんねの一言が言えなくて、冬。
大丈夫。
大丈夫だよ。
きっと、大丈夫だよ。
全部、大丈夫になるよ。
P.S.
駄目でも、僕がそばにいてあげる。
次回「あ、あの!私一月近くお風呂に入っていないんですよ!」
たとえ何もかもが手遅れであったとしても。
好きとごめんの一言だけは、言う価値のある言葉なんだ。

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/02(月) 01:45:42.43 ID:js092Jse0
男「…………」
男「…………」
男「…………」
女「こんばんわ」
男「うわっ!!!!」
女「大きな声出さないでくださいよ」
男「1時53分!!丑三つ時まであと7分!!ちょっと幽霊が出るには早いぞ!!」
女「遅刻するよりいいじゃないですか。私が出現したのってどんな感じでした?」
男「気づいたら目の前にいたって感じ」
女「それにしてもやっぱり頭がぼんやりします。生きてた頃の起床後の感覚ほど寝ぼけてはないですが」
女「それよりも動画は撮影していましたか?」
男「そうだ!早めにまわして置いてたんだよ。見てみよう!」
男「再生……ちょっと早送りして……この辺だな」
女「うわぁ、我ながらドキドキします…」
男「もうそろそろかな……」
女「…………」
男「…………」
女「キャッ!!!」男「うぉっ!!!」
男「めっちゃびびった!!!」
女「い、いきなり現れましたね!!!」
男「ちょ、ちょ、もう一回みてみよ!」
女「はい!」
男「再生!」
女「…………」
男「…………」
女「出た!!」男「おわっ!」
女「すごい!!本物の心霊動画ですよ!!」
男「すげぇえええええ!!!まじか!!!」
女「本当どうなっているんでしょう。出現空間にも元素が存在するはずなので摩擦が生じると思うのですが…」
男「俺の寝てる寝袋の中に出現しないかな」
女「意地でもしません」
男「にしても本当にびびった。もう夜中に一人でトイレ行けないよ」
女「どの口がいいますか」

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/02(月) 02:12:28.30 ID:js092Jse0
女「やはり出現は丑三つ時周辺ですね」
男「困ったな。先生はさすがに寝てるだろうし」
女「私がインターホン押して呼びかけたら飛び起きてくれますかね」
男「ドアの覗き穴から亡くなった生徒が立っている姿が見えた時の先生の心情を10字以内で答えよ」
女「怖い漏れそう」
男「立ちション仲間が増えるな」
女「私なら絶対ドアを開けませんね。叫んで近所に助けを求めながら110番と119番に電話するレベルです」
男「やはり俺の出番か」
女「どうするんですか?」
男「ピンポーン。宅配便でーす」
女「それこそ暴漢か何かだと思われますよ」
男「ちわー、三河屋でーす」
女「夕方だと騙す作戦ですか」
男「深夜2時にいきなり訪れてもドアを開けてくれるシチュエーションって存在する?」
女「一人暮らしの女性ならまず開けないでしょうね」
男「彼氏と同棲してたら彼氏を利用できないかな」
女「うーん、どうなんでしょうか。ずっと同じところに住んでいるので結婚はしてないみたいですが」
男「もしも情事に耽ってたら近所の住人のふりして、おいうるせーぞ!!って怒鳴り込みにいく口実ができる」
女「そのあと私が現れて過去の過ちを謝罪すると」
男「駄目かぁ」