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女「人様のお墓に立ちションですか」
Part5


101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 07:49:51.05 ID:wbL3LH25O
女「まだ続いてたんですかそれ」
男「ぐへへへ」
女「お手柔らかにお願いしますよ」
男「それじゃあ」
男「……連絡先教えてもらってもいい?」
女「できません」
男「 」
女「わたし、携帯電話持っていないんです」
男「ほっ」
女「驚かれるものかと思ってましたが安心されるとは」
男「君の友好電波基地局の圏外にいるのかと思って」
女「なんですかそれ」

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 07:53:09.17 ID:wbL3LH25O
男「とかなんとか言ってる間に朝日が出てきそう」
女「それじゃあお開きといたしましょうか」
男「おう。気を付けて帰って」
女「気を付けます」
男「また今晩」
女「はい、また今晩」

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 07:57:09.58 ID:wbL3LH25O
女「こんばんは」
男「こんばんは」
女「今日も寒いですね」
男「火が欲しいところだな」
女「今日もなにやら持ってきてるようですね」
男「中身は開けてからのお楽しみ」ガサゴソ
女「もう開け始めてますね…」

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 08:05:05.07 ID:wbL3LH25O
女「それって……線香花火じゃないですか!」
男「いけね。線香と間違えて買ってきちまった」
女「どんな間違いですか!」
男「しょうがない。今夜はこれで夜を凌ごう」
女「もう、相変わらずの不謹慎さですね」
女「よく見たら律儀に火消し用の水も何本か買ってありますし」
男「飲み物用は一本しかないから、あんたが飲み終わった後に出したのを俺が飲もう」
女「そして相変わらずの変態度合いです」

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 08:22:42.04 ID:wbL3LH25O
パチパチパチ…
女「うわぁ、懐かしいです」
男「冬でも花火ってできるんだな」
女「意外と火つきますね」
男「どうして冬に花火をする風潮がないんだろう」
女「やっぱり寒いからじゃないですかね」
男「火は寒い時につけるものなのに」
女「願い事はしましたか?」
男「願い事?」
女「線香花火の火の玉が落ちなかった時、込めた願いが叶うと言われているそうです」
男「初耳。どうしようかなぁ」ジュッ…
女「うふふ、もう落ちちゃいましたね」ジュッ…
男「そっちもな」
女「あら」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 08:31:55.29 ID:wbL3LH25O
女「今日も不謹慎な1日の終わりを迎えそうですね」
男「夏休みの宿題が終わってないことを夏休み開けに先生に伝える気分になってきただろう」
女「私はちゃんと夏休みの半ばにはほとんど終わらせていました」
男「えっ、なにそれ、なにそれ。賞金でもかかってたの?」
女「夏休みの友、ぐらいしか友達がいませんでしたからね。うふふ」
男「えっ、あっ、そうなんだ…」
女「冗談です。友達くらいいました。失礼な」

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 23:48:23.68 ID:xxaYDlGC0
男「夏休みの日記、みたいな宿題はどうしてたんだ?」
女「未来を描いていました」
男「か、かっこいい」
女「あの頃はまだ未来を描けていたんです」
男「切なくなるこというなよ」
女「あなたはどうしていましたか?」
男「そりゃあ最終日に30日分まとめて書いてたよ」
女「大変ですね」
男「それでも俺はまとめて日記を書くことを割と楽しんでいた」
男「日記の中では、俺は過ごしたかった夏休みを過ごすことができたからな」
女「切なくなること言わないでくださいよ」

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 23:59:48.34 ID:xxaYDlGC0
男「大雨の日に外で遊んだことにしてたのに先生に怒られなかったからな。どうせ見てないんだって思ったよ」
男「まぁ今思えば、40人近い生徒の宿題なんて目を通すこと自体とても大変なことだったんだよな」
女「私は精神年齢が高いので当時からそういう同情を抱いていましたよ。しかし驚いたことにですね、誤った未来を怒られたことがあるんです」
男「誤った未来を怒られたことがある、ってセリフ生きてる間に一度は言ってみたいな」
女「生きてる間に言えなかったら死んでから言えば大丈夫です」
男「俺はゾンビか何かか。それで、なんなんだ、その、"誤った未来"、ってやつぁ」
女「キザな言い方で聞くほど気に入ってくださってなによりです」

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 00:15:16.84 ID:yKC2d9/90
女「中学の時の宿題で、それこそ日記のようなレポートの提出の宿題が出されました」
女「小学生の頃にそうしていたように、私は夏休みの半ばにはほとんどの宿題を終えて、日記形式の宿題は未来の日付とともに想像で書きました」
女「想像した未来の内容が現実と違っていたので注意されました。それも、晴れの日が雨の日だったなんてものではありません」
男「雨の日が、晴れだった?」
女「それ全然レベル変わってないですからね」
女「星です。私が空想で描いた星の描写に疑いを持ってくれたんです」

110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 00:17:45.92 ID:yKC2d9/90
男「前に言ってた先生か?」
女「はい。担任兼理科の先生でした。途中までは素敵な人でした」
男「その人が生徒からいじめられるまでは、か」
女「いじめられ終わるまで、です」
男「?」
女「美人なのに近寄りやすさを出し過ぎていました。人はみな、自分より格上の存在を、隙あらば引きずり落とそうとしますからね 。特に、賢さと美貌に関しては」

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 00:31:46.66 ID:yKC2d9/90
男「人気が出るような気がするけどな」
女「人気者でしたよ。運動神経がかなりにぶいことが判明しても、むしろ好感度が上がっていました。矛盾するような言い方になりますが、完璧な人の欠点は、その完璧さにより拍車をかけるんです」
女「彼氏いるんですかー、って、色んな生徒から聞かれていました」
女「いなかったって言ってましたが、生徒の大半は信じていなかったみたいです」
男「そんな人を引きずり下ろそうなんて、やっぱり女子の世界は怖いんだな」
女「美人を悪口の対象にする傾向は確かにありますね」
男「じゃああんたも大変なんだな」
女「おやおや、言うようになりましたね。女慣れしてる人みたいです」
男「暗くてよかった。顔真っ赤だよ」
女「そーですか。まぁ、私もですけど」

112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 00:37:24.71 ID:yKC2d9/90
男「その人に嫉妬してる、リーダー格みたいな人がいたのかな」
女「続きが気になるところでしょうけど、もういい時間ですよ」
男「ちょっと早い気もするけどな。まぁ今日はお開きにしよう」
女「花火楽しかったです。お金は大丈夫でしたか?」
男「釣りはいらねぇ」
女「申し訳ないです。あいにく、手持ちが全くなくて」
男「気持ちがあれば充分よ」

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 00:44:58.01 ID:yKC2d9/90
男「なぁ」
女「なんでしょう」
男「こうやって、真夜中の墓地で2人で花火してるなんて、ありえない光景だよな」
女「珍百景にすら入りそうもありませんね」
男「もしかしたらさ。俺らという存在も、どこかの小学生が日記に書いた幻なのかもしれない」
女「…………」
女「冬だからその可能性はないですよ」
男「ロマンがないぞ!」
女「それじゃあ、私からも一つ」
男「なんだろう」
女「線香花火をしながらなんやかんやと会話してる時に、一つだけ火の玉が落ちませんでした」
男「まじか、すごいな。なんか願いを込めた?」
女「叶ってからのお楽しみです。おやすみなさい」
男「気になって眠れそうにないが、おやすみ」
女?男「また明日」

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 00:51:24.39 ID:yKC2d9/90
ずっと下げ忘れてたことに気づきました、ごめんなさい。
読んでくれている人ありがとう。
ここにはやっぱり、最終日に終わらせる人が多いんだろうなって、失礼なことを想像しました。
おやすみなさい。

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 00:55:07.09 ID:Uz/nUayFo
いやお前は作者なんだからsageんなよsagaれよ
おやすみ

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/28(水) 03:24:22.28 ID:N0RyNC+b0
凄く面白いし雰囲気好きだし期待

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/29(木) 10:21:54.48 ID:NiZv+Bmp0
男「こんばんわ」
女「こんばんわ」
男「今夜も真っ暗ですね」
女「今夜も手がかじかみますね」
男「よろしければ、私のズボンのポケットに手を入れませんか?」
女「えっ」
男「って言って手を入れたら、ポケットの底に穴が空いててノーパンっていう痴漢を考えたんだけど」
女「…………」
男「手を入れる間柄の人にしかできないというのが残念なところ」
女「……最低です」
男「度が過ぎたかな、これは失礼…」
女「まぁそういう冗談を言うくせに、いざ性に対峙した時はピュアな自分を捨てきれない浅はかなところがあるのは知っています」
男「うっ、冷たい言葉が心に刺さる」
女「寒いのはこちらの手ですよ…」
男「?」

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/29(木) 22:59:07.32 ID:NiZv+Bmp0
女「もうすぐ年明けですね」
男「その前にクリスマスイブがあるだろ」
女「そうでしたっけ」
男「その後にクリスマスがあるだろ」
女「そうなりますね」
男「そのあとに年明けだ。イベント続きでうんざりするよ」
女「クリスマスはお嫌いですか?」
男「クリスマスは嫌いじゃない。クリスマスに自分が嫌いになるだけだ」
女「片想いしてた人に今から連絡を取ってみたら?」
男「急だな。そしたらクリスマスに過ごす相手探しみたいに思われるだろ」
女「現実的な考えですね。まだ未練はありますか?」
男「もうほとんどないよ。夜中にお墓で立ちションする程度」
女「まぁ、重症じゃないですか。クリスマスを言い訳にしたら、年明けも言い訳にするし、年明けには受験を言い訳にして、4月からは浪人を言い訳にしますよ」
男「浪人前提かよ」
女「夜中に墓地で甘えてる人に現実はやさしくしてくれませんから」
男「この空間は俺にやさしいんだけどな」
女「そうですね。ここは非現実的な空間です。だから私も離れられないのでしょう」
男「嫌だな。この間の世界って言葉と一緒で、現実って言葉も"自分"という単語に置き換えられそうだ」
女「今の自分を愛している人は、真夜中のお墓に来くることはなさそうですね」

119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/29(木) 23:09:05.46 ID:NiZv+Bmp0
女「そういえば、クリスマスイブのイブってどういう意味だか知ってます?」
男「前日って意味?それともアダムとイブのイブと関係があったり?」
女「夜、って意味らしいです。24日の日没から25日の日没までがクリスマス。その間に訪れる夜は24日だけですので。ほら、今でもイブニングって英語があるじゃないですか」
女「いつの間にか24日の一日中がクリスマスイブだと思われるようになってしまったそうです」
男「へぇー、知らなかった。朝のニュース番組の特集みたい」
女「深夜の墓地の特集です。以上、現場からお伝えしました」

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/29(木) 23:49:57.99 ID:NiZv+Bmp0
女「そういえば、昔朝に見た番組で街頭インタビューしているものがありました」
女「『地球が滅びるとわかったら何をしますか?』というものでした」
女「それに対して町中の人は『昨日と同じように過ごす』と答えていました」
女「どう思います?」
男「本当のことかもしれないと思う」
男「世界が滅亡する系の小説だとさ、金属バットで街中のガラスを割ったり、綺麗な女性に襲いかかってる描写があってさ。そうなんだろうなぁって思いながら読んでた」
男「けれど、やっぱり今日に至るまでの選択の集大成が今日という一日なんだ。”死後も人々から愛されたいから”という理由で、病死や自殺を目前にした人は死を前にして大人しくしているわけじゃない」
男「明日世界中が粉々になってしまってしまうことが確実だとわかっていても、人は今までの生き方を死の直前まで捨てられないんだ。残り50年あって変えられないままなら、50秒後滅ぶとしても何もかわらないままなのだろう」
女「なんだか、襲いたいのに襲う勇気がない人が多いみたいな言い方に聞こえてしまいました」
男「今までの生き方を変えられないってだけだよ。ちゃんと愛されて生きてきて、その愛をそのまま守ろうとする人も多くいると思ってるよ」
男「あるいは、傷つけられて生きてきたのに、そのまま傷つけられたまま終えようとする人も」
男「そして、最後の日くらい、復讐してやり放題やってやろうって人も。けど、割合的にはかなり少ないんじゃないかって思う」
女「あなたはどうですか?」
男「わからない。けれど、ここに来るんじゃないかな」

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/30(金) 00:04:46.76 ID:5wohteYJ0
女「だけど、わかりませんよ。滅亡を前にしたあなたが、昨日までと同じあなたである保証なんてない」
男「そうかな。人間そんな簡単に変われたら苦労しないよ。悪い人間が良い人間に変わることが難しいのと同じくらいに、いやそれ以上に、良い人間が悪い人間に変わることも難しいことなんだ。って、なんだか自分は良い人間だって言ってるみたいになっちゃったけど」
女「犯罪者だって、ある日突然犯罪者になるわけじゃないですか。昨日までは犯罪者じゃなかったのに、今日積み重ねたものによってコップの水が溢れ出してしまうんですよ」
女「世界の滅亡や、自殺したいという気持ちが、その最後の大きな一滴に充分なり得るとおもいますよ。ある日まではお墓に来なかったあなたが、翌日にはお墓で立ちションをしていたように」
男「それは、そうだけど」
女「まぁ、ただでさえ寒くて暗いんですし、明るい話題に変えましょうか」
女「今さっきまで好きな人への想いを未練たらたらに思っていたあなたが、もう10秒後にはメールでデートの約束を取り付ける可能性だってあるってことですよ」
男「いつから恋のお悩み相談室になったんだここは」
女「他人の恋を責任持たずに楽しむのは多少不謹慎なことですから。私に不謹慎なことをさせるって言ってたじゃないですか」
男「人を呪わば穴2つだな。やばい、想像しただけで汗が出てきた」
女「穴があったら入りたいですか?」
男「墓穴だろうからやめておく…」
女「おお、じゃあさっそく今から運命を変えましょう!」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/30(金) 00:11:30.26 ID:EwPWsjfWO
男「人を呪わば穴2つだな。やばい、想像しただけで汗が出てきた」
女「穴があったら入りたいですか?」
男「墓穴だろうからやめておく…」
このへん妙に上手くて好き

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/30(金) 00:18:19.25 ID:5wohteYJ0
男「ちょ、ちょっとまって。今何時だと思ってるんだ」
女「メールは今作成して、明日のお昼に送信しましょうよ」
男「ラブレターは夜に書いちゃ駄目だって聞いたことがあるぞ」
女「伝わらなければ0点です。悪いことを伝えたらマイナス100点かもしれません。けれど、どうせ合格点である60点以上にしか意味はないんです。だったら昼間に書かないラブレターよりも、夜に書けるラブレターの方に価値があるんです。合格になるかはわかりませんが、選択としては正解です」
男「何年離れてると思ってるんだ。アドレスだってちょっとしたノリで交換したきりだ。向こうだっていきなり連絡きたら嫌だろう。ストーカーだって思われるかも」
女「嫌かもしれないって話はやめませんか。言ってたじゃないですか、不謹慎な存在になってやるって」
女「不謹慎とは慎みや考慮、思慮分別の欠如のことをさす言葉でしょう?」
女「まさに、恋愛のことじゃないですか」

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/30(金) 00:35:10.50 ID:5wohteYJ0
男「本当に、ちょっと、待ってくれよ」
女「いいですよ。何分待ちますか?」
男「文章を作成する気になるまで」
女「パソコンを使ってる時にたまに見られる、ずっと動かないダウンロードのバーみたいなのはやめてくださいね」
男「せっかく文章を作成しても、アドレスだって変わってるかもしれないし。多分そうだよ。他のSNSアプリでも知り合い欄に表示されないし。それに、恋人がいるかもしれないし」
女「他のSNSアプリで知り合い欄に表示されないから送らないんですか?恋人がいるかもしれないから送らないんですか?」
女「良い企画マンになれますよ。社会人一年目のOLを拉致してプレゼンでもしたらどうですか?『私が想い人に告白できない100の理由』」
男「……挑発して単純に乗るほど馬鹿じゃないぞ」
女「馬鹿になってくださいよ。思慮分別があったから、何もできずにいたんでしょう」
男「思慮分別があったらお墓で立ちションなんてしない」
女「お墓で立ちションできるならメールくらい送れます」
男「メールすら送れないからお墓で立ちションする目に遭ってんだ」
女・男「ぐぬぬぬ……」