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女「人様のお墓に立ちションですか」
Part13


245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 03:57:21.60 ID:G7ejXtln0
男「あの子が消えるまでの数日間、友達でも恋人でもない関係のまま、この世界への疑問とか、綺麗な景色についてとか、純粋な好奇心を満たす時間を2人で共有するのもとても魅力的な時間だとはわかっています」
男「けれど、好きな人には、ちゃんと好きだって伝えるべきなんだと思います」
男「非現実的な空気も好きですけど、恋人とカラオケに行ったり、ボーリングをしたり、手を繋いで星空の下を歩いたり。いかにも当たり前に見える幸せを、ちゃんと享受することが僕と女にとって必要なことだと思うんです」
男「人に触れられない女が深夜に安心して遊べる場所なんてこの辺じゃ限られていますけどね」
男「なにより、女が僕を受け入れてくれるかどうか……」
先生「いつ告白するの?」
男「明日の丑三つ時、女が現れたあとすぐです」
先生「さっそくなのね」
男「時間の大切さがわかったんです。少なくとも、残りの5日間は、人生で1番大切な5日間だと」
先生「振られて気まずくなっちゃったらどうするの?」
男「どうしましょうか。どうやったらその気まずさを解消できるのか、2人で2時間話し合うとか」
先生「いいわね、それ」

246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 04:04:49.30 ID:G7ejXtln0
先生「それじゃあ、明日にそなえてしっかり寝ないとね。家、ここから近いの?」
男「タクシーで30分くらいでした」
先生「タクシーで来たのね。お金持ってる?」
男「あー……少しは」
先生「あのは、最初から歩いて帰るつもりだったでしょ」
男「女といる時間はどうでもいいかなって」
先生「どちらも大切にしなさいよ。あの子といない時間も大切にすることが、あの子を大切にすることにも繋がるの。ゼロサムゲームってやつではないんだからさ」
先生「タクシー呼ぶわ。奢ってあげるから。いつかあなたが大人になったら同じことを誰かにしてあげなさい」
男「すいません、何から何まで」
先生「こっちのセリフよ。こちらこそ、今日の夜に心のどこかが救われた気がするわ」

247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 04:16:05.45 ID:G7ejXtln0
男「先生は今から仕事ですか?」
先生「休むわよ」
男「そ、そうですよね」
先生「徹夜して会社に行ったことは何度かあるのよ。有給も私用がある時以外は使わないようにしてるし」
先生「でも、今日は考えたいの。眠りたいの。それに、またちょっと泣きたいかも」
先生「生きているからね。つらいことも、大切にしたいの。時間を取って尊重してあげたいの」
先生「これでも私はね、夏休みの宿題、夏休みが始まる前に終わらせていたような人なの。自分のことだけを考えていればいい今の会社では余裕があるわ。こんな私をよく妻にしようと思ったなと、仕事中毒の彼に対して思うくらいにね」
先生「急ぎは善よ。残りの時間、2人で大切にしなさい。お礼やお詫びなんかいらないからね」

248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 04:21:25.67 ID:OzEWQ8yL0
いいなこの感じ

249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 04:24:12.54 ID:G7ejXtln0
先生「タクシーもう着いたみたいね。あそこの道路よ」
男「はい。今日はお世話になりました」
先生「気をつけて帰ってね。傘、返すのめんどうだろうし、持って帰っていいわよ」
男「そんな。ビニール傘でもないのに」
先生「いいっていいって」
男「……あっ、雨止んでるみたいですよ」
先生「ほんとだ」
先生「なんだか、夜でなければ、虹が見えそうな天候ね」
男「虹ですか」
先生「夜に虹が見えることもあるのよ。日本ではなかなか無いけどね」
男「初耳です」
先生「なんだか、似てるわよね。虹と幽霊って」
男「どういうところがですか?」
先生「無いようなのに、在るところが」

250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 05:12:08.81 ID:G7ejXtln0
お墓に菊が供えられるのには複数の理由に由ると言われる。。
実用性の面では、長い期間花が保ちやすく、枯れた花びらが散らかりにくいという理由に由る。
精神性の面では、菊は万病を避け、不老長寿をもたらす薬草として日本にもたらされてきたという言い伝えに由るとされている。
そんな菊に相応しい花言葉として「高貴」という言葉があてがわれている。
一方、色によって異なる花言葉については、触れられることはあまり無いのではないだろうか。
【数年越しの片想いに決着をつけた男】
黄色い菊の花言葉「破れた恋」
【恐怖を乗り越えて供花の理由を尋ねに行った女】
白い菊の花言葉「真実」
【そして、2人が迎える窮まりの丑三つ時は】
赤い菊の花言葉
最終話「あなたを愛しています」
さよなら、大好きな人。

251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 09:55:51.97 ID:HMrWC4/0O


252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 10:15:07.89 ID:aDvoMBEFo

さみしいなあ

253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 11:03:10.26 ID:wgBN0Ur3O

本当素晴らしい雰囲気

254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 11:30:35.47 ID:QysmMgqho


255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 12:30:28.30 ID:c+lazJ93o
乙乙

256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 13:31:57.30 ID:G7ejXtln0
12月27日 01:43
女「……おっと」フラフラ
男「大丈夫ですか」
女「あれ、男さん。こんばんわ」
男「こんばんわ」
女「今何時ですか」
男「1時43分」
女「昨日より早いですね」
男「そうだな」
女「ずっと待っててくれたんですね。寝袋もなしに」
男「もう墓場のニートは辞めたからな」
女「あの、昨日はありがとうございました。そして、消えたんですよね、私。先生に、別れの挨拶もできずに」
男「しなくていいってよ。仕事で忙しいからそんな暇ないって」
女「あの人らしい気遣いですね」
男「女。最初に確認しときたいことがあるんだ」

257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 13:44:01.70 ID:G7ejXtln0
男「女はおそらく今年中にいなくなるんだろ」
女「そうですね、無意識のうちにそう思っています」
女「未練があるからこの世に残ったけれど、この世への執着が許されるのは今年中まで。神様が決めたのかはわかりませんが、そういう制約が自分に課せられているのは感じます」
女「先生への謝罪も済ませられましたし、正直昨日消えちゃうんじゃないかって思ってたんですけど、思い過ごしだったみたいです」
男「だとしたら、31日午前の丑三つ時が最後の時間になるんだな。31日の深夜は、来年の1月1日だから」
女「はい。一日2時間だとしたら、あと10時間しかいられませんね」
男「その10時間の中でやりたいことはある?」
女「うーん、そうですね」
女「特に思い浮かばないです。いつものように過ごせたらいいです」
男「そうか」
女「あー、でも、ちょっとついてきてください」

258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 13:50:42.47 ID:G7ejXtln0
男「花がたくさん…」
女「花の墓です」
男「花の墓?」
女「先生から貰ったお花、ここにまとめて置いていたんです。よかった、残っていて」
女「こんなにたくさん。わざわざ買って、あの家から何度も何度も持ってきてくれてたんですよね」
女「先生、ごめんなさい。それと、ありがとう。これからは、ちゃんと飾るね」

259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 14:16:10.86 ID:G7ejXtln0
女「お墓の奥のこんな草むらに紛れて美しさを咲かせても、誰にも見てもらえないからね」
女「本当に綺麗な色だなぁ」
男「黄色、赤、白、いろんな色があるな」
女「黄色だけでは味気ないと思ったのかもしれないですね」
男「菊の花だな」
女「お花に詳しいですか?」
男「全然。だけど、どうして菊の花が供えられているのかは、中学の時に聞いたことがあったかな」
女「どういった理由なんですか?」
男「まず。実用的な面に優れているんだ。菊の花は一年中……」

260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 14:25:59.04 ID:G7ejXtln0
女「不老不死ですか。でも、ある意味そうかもしれませんね。お墓参りに来た生者が故人を偲んでいる時は、その故人は心の中に蘇りますからね」
女「花言葉も高貴なんですね。もっと大人しいイメージの花言葉だと思っていました」
男「それは総称としての意味でさ。色によっても花言葉が異なるんだ」
男「黄色は『破れた恋』」
女「一般的な菊のイメージは黄色ですけど、そんな意味があったんですね」
男「白色は『真実』」
女「白という色にそういうイメージがありますよね。真実を追い求める人は黒色にも染まりやすい気もしますが」
男「赤色にも花言葉があるんだ」
女「どんな意味ですか?」
男「…………」
女「どうしました?」
男「…………」
女「男さん?」
男「……あなたを」
男「あなたを愛しています」

261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 14:44:20.72 ID:G7ejXtln0
女「へー!ロマンチックな言葉なんですね!」
男「あ、ああ、そうだな!」
女「確かに赤いバラやカーネーションも愛を伝える花だと言われて……」
男「なぁ女」
女「はい?」
男「俺はさ。女とさ。今まで……」
男「…………」
男「丑三つ時に、自分史上最低な姿を見られて初めて女と出会って」
男「それでもそんなことはお構いなしに、俺は過去を呪っていた」
男「自分以外にもこの世界に絶望している奴がいるんだなって、初めはその程度の好奇心だった」
男「けれど、一緒に話していくうちに。この子は、俺よりも自分自身を責めているんだなってわかるようになって」
男「なのに、自分の大切な少ない時間を割いて、俺の後悔をなくすように背中を押してくれてさ」
男「俺が他人のことなんかお構いなしに生きているのに、この子は自分自身のことなんかお構いなしに誰かのことを思うことができるんだって」
男「昨日一緒にいて、改めてそう思った」
男「この子は幸せになるべき人なんだって強く思ったんだ」
男「昨日で過去を精算できたのかもしれないけれど。この子はもっと、人一倍幸せになっていい女の子なはずだって、そのために自分が力になりたいって」
男「女さん」
男「好きです。俺と、付き合って下さい」

262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 14:52:58.44 ID:G7ejXtln0
女「えっ……」
女「…………」
女「う、うれしいです。気持ちは嬉しいです」
女「でも、私、あと数日間、それどころか数時間しか……」
女「それでも、いいんですか?」
男「付き合って欲しい」
女「幽霊ですよ?」
男「知ってる」
女「他の人には触れられないんですよ?」
男「むしろ触れないでほしい」
女「最後の日、一層悲しくなりませんか?」
男「後悔したくないんだ」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「……はい」
女「私も、惹かれていました。これから、よろしくおねがいします」

263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 15:00:18.28 ID:G7ejXtln0
男「…………」
男「よかったー……」
女「断られると思ってたんですか」
男「思ってたよ」
女「私は告白されるなんて思ってもみませんでした」
男「どうしてだよ」
女「望んだことって手に入らないものばかりじゃないですか」
男「あんなに脳内で予行練習したのに。全部吹き飛んだ」
女「……ふふっ」
男「どうした?」
女「なんだかくすぐったくありません?」
男「まぁ、浮足立つというか」
女「さっきより景色が輝いてみえます」
女「花の色もこんなにくっきりしてましたっけ」
女「風の音も目に見えるようにはっきり聞こえる気がします」
女「男さん」
男「うん」
女「私を幸せにしてくれてありがとう」
男「こちらこそ。でも、まだまだこれからだよ」

264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 15:04:18.80 ID:G7ejXtln0
女「やっぱり、しばらくこの花は置いておくことにします」
男「どうして?」
女「男さんといる間に、私のお墓に花が供えられているのは、やっぱりちょっと悲しくなる気がして」
女「私がいなくなったあと、供えてくれませんか?」
男「うん。わかった」
女「そういえば、男さん、眠くないですか。昨日、徹夜だったじゃないですか」
男「大丈夫。今日は昼間たっぷり寝て、そのあと勉強もしたくらいだから」
女「ええ!?大丈夫ですか!?ね、熱ないですか!?」
男「健康アピールの意味合いの勉強をすることがどうして病の兆候だと思われるのか」
女「浪人嫌になったんですか?」
男「今からじゃ遅いし、浪人するだろうな」
男「先生からも言われたんだよ。女といる以外の時間も大切にすることが、女を大切にすることにつながるって」
女「そうだったんですか。やっぱり、先生はずっと、やさしいままですね」

265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 15:12:19.23 ID:G7ejXtln0
男「先生が俺の手を使って殴った時は驚いたけどな」
女「私もです。神様という存在がいるのなら、どうしてあなただけに触れられるようにしたのか、その時に謎が解けました。あなたの手は、女子高生を殴るためにあったのですね」
男「それ以上に聞こえの悪い手って存在しないと思うんだけど」
女「私の制服姿、見てみたかったですか?」
男「そりゃあ、まあ」
女「何度か見てるはずなんですけどね」
男「いつだよ」
女「同じ高校でしたもん。クラスも学年も違いますけど」
男「うそ!」
女「だからあなたが高3だって知っていたんです」
女「ねぇねぇ女ちゃん、あの人が実力者の幽霊部員という、漫画みたいな設定の人よ。って」
男「うわっ、いつだろう。思い出せない。顧問の人に呼び出されたときかな」
女「幽霊歴では男さんが先輩ですね」
男「そうだぞ。お前なんかあまちゃんだ」
女「触れられるし痛覚もありますしね」