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女「人様のお墓に立ちションですか」
Part11


214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 17:24:21.07 ID:6/ci53PP0
女「どんなにしつこく、長い間お願いしても、先生は受け入れてくれませんでした」
女「生徒と同居なんてばれたら問題になるとか。自分の考え方を変えれば新しい家族と向き合えるようになるとか。どうしても今の家庭が嫌ならしかるべき施設に行くしかないとか」
女「失望しきっていた大人が言い出すようなことを言うようになってきたと感じました。少し不機嫌そうに話す表情も段々増えてきたと感じました」
女「先生に対して恨む気持ちが強くなっていき、次第に先生のやさしさが醜いものに思えてきました」
女「みんなから好かれる先生は、みんなにやさしくしていました」
女「私だけにやさしかったんじゃありません。八方美人だったんです。そんなことは初めからわかっていましたけど、そのやさしさをどうして全て自分に注いでくれないのかと不満が爆発しそうでした」
女「私は先生を少し傷つけてやろうと思いました。私が傷ついたことに気付いてほしいと」
女「あるいは、私の嫌がらせよりも私と同居するほうがマシだと思ってもらえるようにと」
女「先生の魅力を誰よりも知っていると自負していた私だからこそ、先生に憧れている人たちの羨望を、嫉妬に変えるような噂を簡単に思いつきました」
女「妙な噂が流れ始めてから。先生が日に日に疲れているのを感じました。無理やり笑顔をつくっているなって」
女「そんな精神状態でも噂を流したのは私とはまだ気づかずに、放課後に時間を取って相談に乗ってくれて嬉しく感じました。以前よりも私に弱音を吐いてくれるようにもなりました。私は心が熱くなって、先生にやさしくしてあげたいという気持ちと、もっといじめたいという気持ちが溢れてきました」
女「家に帰ってからは継母からの厳しい忠告や冷たい視線に苛まれ、実父の声を聞くことといえば深夜の一時頃以降にさえ始まる激しい喧嘩の時くらい。とてつもないストレスでした」
女「家で虐げられている分、学校では誰かを虐げていたかったんです。こんな言葉ありますよね。いじめっこといじめられっこは同一人物だって」

215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 17:52:43.62 ID:6/ci53PP0
女「ある日、全ての元凶が私にあると先生は気づきました。問い詰められた私は、開き直って私は私がしてきたこと全てを話しました」
女「先生はこう言いましたよね。そう、やっぱりあなただったのね、って。ただそれだけ」
女「間もなく先生は学校を辞めてしまいました」
女「人を呪わば穴2つですね。悪の元凶が私であることは周囲には全てばれていました」
女「学校では激しいいじめにあいました。休むと家に連絡がいくのが嫌で、耐えて通い続けました」
女「家に帰ってからも父と継母の喧嘩ばかり。『あの子が原因なのよ』って何度聞いたかわかりません」
女「心の病気になった実父も行方をくらまして、新しく継母に恋人ができました。直接話すようなことを私はしたくなかったし、何より嫉妬深い継母は意地でも話させようとしませんでしたが。私の部屋にその恋人が侵入した形跡を見つけた時は、怒りのあまり叫んでしまいました。そのせいで、継母から酷い仕打ちを受けたのは私なのですが」
女「もう、私の人生ぼろぼろでしたよ。もしもこの不運な環境で、それでもなお周囲への思いやりに長けた自分であったなら。この人を応援したいという気持ちが自分に注がれて、ちょっとはマシになってたかもしれないのに」
女「寒い夜の道を、ふらふらと、行くあてもなく歩いていた日。眩い光が理不尽な速度で自分に向かっているなって感じて。自分が踏切の中に立ち入ったのか、自動車やバイクが飛び込んできたのかはわかりませんが」
女「思い切り逃げ出したら避けられたのかもしれませんが、身体が動くのを拒否しました。それからの記憶はありません」
女「お墓で初めて目覚めた日、視界に広がる夜空の空を見た後、死という現象を一身に浴びたことを実感し、のたうちまわりました。恐怖が体中を包み込んで、世界に対する怒りと悲しみがとまりませんでした。身体の全身からウジが沸いてきてるみたいに、自分の全身をずっと掻き毟って一日目が終わった気がします。いや、2日目も、3日目もだったかも」

216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 18:06:35.51 ID:6/ci53PP0
女「幻想の恐怖に襲われることがなくなってからは、どうしてこんなことになってしまったんだろうって、悲しさが止まりませんでした。なのに涙が一滴も出ないのは、自分が死者であるからだと気づき、余計に悲しくなりました」
女「私だって、普通の女子生徒だったはずなんです。彼氏への異常な束縛をする子を見ては理解できないなぁって呆れていました。くらだない嫌がらせをする女子を見てはこうはなりたくないなって思っていましたし」
女「この世への未練といえば、先生への謝罪だけ。私の今までの生き方ってなんだったんだっろうなって、振り返ってばかりいました」
女「性格に対する後悔がとまりませんでした。もっと、やさしい人間でありたかった。人の気持を考えられる人間でいればよかった」
女「自分がいちばん感謝すべき人を傷つけてしまった」
女「人に求めるばかりで、自分からは何一つあげようとはしなくなってしまったこと」
女「全部ぜんぶ、後悔しています」
女「先生、ずっと怖くて言えなかった言葉があるんです」

217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 19:08:23.78 ID:6/ci53PP0
女「先生」
女「私、先生に」
女「今更で、失礼で、自己満足かもしれません」
女「でも、先生に。ずっと、言えなかったんです」
女「ごめんなさい」
女「本当に、すみませんでした」
女「先生を傷つけてしまったこと。先生の人生を台無しにしてしまったこと」
女「いつまでも悔いています。本当に、申し訳ありませんでした」

218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 19:19:05.22 ID:6/ci53PP0
先生「…………」
先生「はぁ、呆れた」
女「…………」
先生「ねぇ、君、ちょっと手を貸して」
男「えっ、はい」
男「一体何を…」
先生「馬鹿言ってんじゃないわよっ!!!!」
女「痛いっ!!」男「いって!!」
先生「自分のことばかり考えて何が愛よ!!」
先生「後悔なんて、生きてるうちにしておきなさいよ!!」
男「いてて…まきぞい…」
先生「最後に話した時、あなたにこのくらいの体罰を与えておくべきだったわね」
男「このご時世大騒ぎになりますよ」
先生「いいのよ。この子には必要なことだったんだから」
先生「教師を辞める覚悟でこの子に向き合うべきだったのよ。あの時の私は、教師を続ける自信がなくなっただけ」
先生「私だって、ずっと後悔し続けていたのよ。この子のことだけじゃなく、人生全般に対して」

219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 19:35:12.53 ID:+d6CEXTVO
難しいな

220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 19:44:05.11 ID:6/ci53PP0
先生「八方美人だって言ったわよね。あなた、やっぱり私を表現するのが上手ね」
先生「あなたにも打ち明けてなかったことなんだけどね。私、ストーカーされてた時期があったのよ」
先生「大学時代に恋人ができたのね。弱気で、どちらかというと暗い性格の人だったんだけど。私がその人がからかわれてるのをかばったことがあって、それ以来向こうが私に心を開いてくれるようになって」
先生「私だけに心をひらいているところや、私だけがその人の良さをしっていることが嬉しくって。弱気なその人が告白してきた時に、恋人として不安な気持ちもあったけど、断るのも申し訳なくて付き合うことになったの」
先生「最初はやさしくて、私だけにやさしくしてくれたものだから、私からもだんだん好きになってね」
先生「けど、時が経つにつれて束縛が激しくなって。私に不満を抱いた相手が別れ話をしてきた時は、私は泣いてひきとめたの。そしたらまたやさしくしてくれるようになって」
先生「けれど向こうの過剰な要求はエスカレートする一方。向こうが怒って、私が泣いて謝って、やさしくなだめられて、また怒り出しての繰り返し」
先生「ある日、また向こうが別れ話を切り出したときにね。私も、もう疲れ果ててしまって、承諾したの」
先生「そしたら必死で引き止められた。悪いところを全て治すって言われて。ドラマでよく聞くセリフだなって思ったけど、もう一度やり直そうって思った。もうその人が絶対に変わらないことはわかっていたから、強引に別れたの」
先生「それから二年間くらいストーキングが続いた。私に新しい彼氏ができてもね。ねちねちと、証拠を残さないような嫌がらせをされた」
先生「ストーキングのストレスが原因で、私は本当に好きになった彼氏から振られてしまった。でも、これは運の良いことなんでしょうけど、私以外に興味のある女性ができたみたいだった」
先生「今では結婚して子供もいるって昔の知り合いから聞いたわ。その家庭が幸せかどうかはさておきね」
先生「話が少しそれたわね。でも、女ちゃんからしつこく迫られるようになった時に思ったのよ。人生同じことの繰り返しだって」
先生「小学生の時も、中学生の時も、高校生の時も、大学生の時も。そして教員時代も。私は誰からも嫌われたくなくて、やさしさをばらまいてきたけれど。そのことが原因で、時を変え、場所を変え、人を変え、自分が与えたやさしさが恨みとなって自分に跳ね返ってきてるなって気づいた」
先生「自分を本気で変えなければ、人生は今までに起きたことの繰り返しなのね」
先生「本でもネットでも、ストーカーと被害者の"馴れ初め"について調べてみなさい。ほとんど女性が男性にやさしくしたことが原因よ。どんな異性からもやさしくされたことがなかった男性に、笑顔を向けたり、悪口から庇ったりしたせいで、やさしくした女性の人生はめちゃくちゃに狂わされてしまってるの」
先生「私ももう今じゃ、今までのように誰かれ構わずやさしくするということをやめたわ。意識的にね」
先生「おかげで今までの人生で抱えていた人間関係の苦しみはなくなった。同時に、私を慕ってくれる人もずっとずっと少なくなったわ」
先生「やっぱりね、いくらつらかったといっても、20年間やさしくして、応援されてきた私だもの。人に囲まれて輝いていた時代を思い出しては、今の私は本物じゃないっていう新しく出た不満の方がちょっと大きいのよね」

221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 19:59:27.40 ID:6/ci53PP0
女「やっぱり、先生は私のせいで学校を辞めて……」
先生「きっかけのコップの話をしたことがあったわよね。あなたは確かにその最後の大きな一滴だったわ」
先生「ただ、それも言い訳にして、逃げたのよ私。先生という職業から」
先生「クラスの子供30人、いや授業している子も含めたら何百人という子供の人生抱えてるだなんて考えたら恐ろしくってね。帰宅してからも休日も、片時も心が休まらなかったわ」
先生「授業の準備も手を抜けないけどお給料は出ないし。あんなあけっぴろげな性格だったから教員では私に厳しく接する人も多いし。かなりしんどいのよ」
先生「今じゃ普通の会社のOLよ。怖い上司も、嫌いな社員もたくさんいる。私もただの真面目ちゃんだと思われてる。全然自分をさらけ出せてない。思春期の女の子からラブレター貰ってたなんて言っても誰も信じないくらい、会社では退屈な女よ」
男「女、顔、赤くなってね」
女「……穴があったら入りたい」
男「もう入ってるだろ」
女「不謹慎さん黙って」
先生「けれど、今じゃ、普通のストレスしかないの。やさしい先輩の役に一日でも早く立てるようになりたいな、という明るい気持ちが少しあるだけ。正直、責任感なんてない。会社が潰れても知ったことじゃない。間接的に、社員の子どもたちは大変な目にあうだろうけど。フロアにいるのは30人の子供じゃなくて、自分で立って生きてる大人。しかも私はその責任者ですらない」
先生「仕事自体は覚えることがいっぱいで楽しいしね。勉強、好きだから。教えるより、学ぶほうが気楽よね」
先生「先生っていう仕事はね。責任が強くて最後までやり遂げられる意志がある人か、責任感がないからやり続けられている人にしか勤まらない」
先生「私みたいに理想ばかり強くて意志の弱い人ではまるで歯が立たなかった。私がやめたとしても、社会の歯車が崩壊することなんかなくて、私より適した人が補充されるんだろうなって考えてた」
先生「ただね、あなたが亡くなったことを偶然知らされた時にはね、やっぱり私にしか担えないことがあったんじゃないかって思ったのよ」

222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 21:29:35.95 ID:6/ci53PP0
先生「相手の飲酒運転が原因の交通事故だって聞いたけどね」
女「先生がお花を供えてくれたことと関係がありますか?」
先生「そうね」
女「どうしてお花を供えてくれたんですか」
先生「とっても残酷な理由よ」
女「私は本当のことを知りたいんです」
先生「わかったわよ。でも、単純な理由でもあるの」
先生「あなたが、死んでいるからよ」

223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 21:40:09.92 ID:6/ci53PP0
女「…………」
先生「それだけよ」
男「あの、死んでいるから花を供えるって、当たり前の話じゃないですか?生きてる間に机に花瓶を乗せる方がよっぽど残酷では」
女「美化したってことですよね。死んだから」
先生「そう。死んだから」
先生「あなたとの苦い思い出は全て、あなたの悲惨な死によって精算されたの」
先生「あなたから与えられた苦痛はその程度だったってことよ。20何年間も生きてきて1番つらかったことが、教え子からの嫌がらせだなんてほど幸せな人生送ってないわ」
先生「1番あなたを嫌いだった時期は、メンヘラの、かまってちゃんの、思春期の自我に溺れためんどくさい女学生という認識だった」
先生「死んでからのあなたは、家庭の不遇に見舞われ、救いの手を差し伸べられることもなく、理不尽な事故に遭って亡くなった悲しき少女という認識になった」
先生「あなたが死んでからあなたも自分の人生を後悔してちゃんと向き合ったように、あなたが死んでから私も自分の人生に後悔してちゃんと向き合い始めたの」
先生「あなたが生きたままだったら、今もこんな風に話していなかったでしょうね」
女「…………」
女「悲しいのに涙が出ません。行為の制限のせいでしょう。死んでてよかったです」
先生「これで話したいことは全部かしら」
女「はい。ありがとうございました。突然会いに来て申し訳ございませんでした。これで成仏できそうです」スタ…
男「ちょっと、女!」

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 22:27:04.30 ID:6/ci53PP0
男「先生も酷すぎますよ!!女は31日にはこの世から完全にいなくなるんですよ!!」
先生「そうなの。まぁ、何十年前も何百年も前からトンネルや橋に取り付いている悪霊みたいになるよりはいいんじゃない?」
男「女もいいのかよ!」
女「いいんですよ。それが先生のやさしさですから」
男「どこがやさしいんだよ!」
女「今先生がおっしゃった通りですよ」
女「この世に愛着を持った死霊ほど残酷な存在はありません。この世への希望を断つことこそ、死んだ私に対してできる最後の手向けだと思っているんでしょう」
女「そんなのお見通しですからね。あなたのその振り絞った突き放しの愛情なんて、今の私にはこの世に愛着を持つ理由の1つにしかなりません」
女「私も、中学生の時の私と違うんです。この人と出会って、他人の心の痛みにも目を向けるようになって、死んでから、ちゃんと生まれ変わったんです」
男「女……」
先生「馬鹿ね。何言ってるのよ。はやく帰りなさい」
女「同情心だけで6回も新しいお花を買いますか」
先生「もしかして、あなたが捨てていたの!?いじめの噂も聞いていたから、てっきりその延長かって……」
女「違う所にまとめておいてあります。私は受け取る資格がないと、つい今日まで思っていたんです。先生以外の人は私が死んだことなんて、同窓会の飲みの席以外では思い出しもしませんよ」
先生「何度も買いに行くのも大変だったのよ。監視カメラでもつけようかと思ったくらい。不謹慎だからやめたけど」
女「幽霊を撮影するよりはマシですね」ジー
男「あ、あはは…」

225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 22:41:39.11 ID:6/ci53PP0
女「だから先生が今日なんと言おうと、私の中の先生は変わりません」
女「ふとした時に見せた悪い姿だけがその人の全てだと思ってはいけないと思うようになったんです」
女「放課後に何度も何度も相談に乗ってもらったのに、無茶な要求だけを聞いてくれなくて憎悪をしたり」
女「ひと目のつかないところで不謹慎なことをしていても、それがその人そのものだと思うのはやめるようにしたんです」
女「逆に、普段意地悪な人が稀にやさしくしてくれてもその人は意地悪です」
女「優等生の稀な悪行と不良の気まぐれのやさしさばかり取り上げられるのは理不尽だって先生も話していました」
女「性善説とか、性悪説とか、人の本音は際で出るとか、偉人の多くの考察がありますが」
女「私にとっての先生の姿は、憧れていた時の先生の姿なんです」
女「ちゃんと、自分に原因を求めれば単純なことだったんです」
女「自分が際にいる時に、相手をどう思うかが大事なんだって」
女「借金に追われた親友が、自分を裏切ってお金をだまし取ったらそれが親友の本当の姿、ではないんです」
女「自分が死の淵に立って親友を思い浮かべた時に、浮かんだのがお金をだまし取った姿であればそれが親友の本当の姿。浮かんだのが一緒に仲良く遊んだ日々の姿であればそれが親友の本当の姿」
女「全部、自分で決めてしまえばいいんです」
女「どうです先生、シンプルでしょ?」
女「もう、役立てる機会もないんでしょうけどね。あはは」
先生「ちゃんと自分で考えるようになったのね」
先生「私が悪い男に捕まってたときと、少し思考回路が似てるから心配だけどね」
女「ええ、そうなんですか。どおりで……」
男「おい、何故視線をこちらに向けるのだ」

226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 23:31:47.92 ID:6/ci53PP0
先生「人の本性なんてものが本当にあるかもわからないものね」
先生「私だって、私の本性なんてわからないわ。あなたもそうでしょ」
女「自分で自分を良い人だと思う時もありますが、悪い人だと思う時もあります。だいたい負け越していますが」
先生「Aさんという人は、Bさんにとっては良い人でも、Cさんにとっては悪い人」
先生「じゃあAさんはAさん自身にとって良い人なのか、それとも悪い人なのか」
先生「先生もわからないまま、もうアラサーよ」
女「先生は、もう恋人はつくらないんですか?」
先生「来年結婚するわよ」
女「そうなんですか!?」
先生「そう。社内婚。とっても仕事ができる人なの」
先生「私は私の良さをわからないけど、あの人は私の良さを知っているみたい。一方あの人はあの人自身を高く評価していてちょっと鼻につくけど、私から見ても良い男なのよね」
先生「シンデレラも白雪姫も嫌な話よね。理不尽な目に遭っていても、美貌があれば最後は王子様と結婚。ちゃんちゃん」
女「ついに自分で美人だって認めた!!」
先生「あははは!あなただって美人じゃない」
女「そんなこと……」カァア///
先生「ちょっと、ガチ照れかい。ねぇ、あなた?」
男「まぁ……」カァア///
先生「こっちもかい」

227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/03(火) 23:54:04.51 ID:6/ci53PP0
女「先生、幸せになってくださいね」
先生「うん。めげずに」
女「今幸せの絶頂なんじゃないですか?」
先生「生きることは、つらいわよ。好きな人よりも嫌いな人が多いし、期待よりも不安が多いし、嬉しくて泣いたことより悲しくて泣いたことの方が多いわ」
先生「蚊取り線香のにおいを嗅ぎながら窓辺から見る夏空の花火や、賢い生徒が懇切丁寧に考えた空想の中の星々など、この世はありとあらゆる美しいもので満ちているのに、死にたいって思わせるくらいにね」
先生「こんなにも素晴らしいのに死んでしまいたくなる世界。同時に、そんな世界にも関わらず、今日も生きているのは、それだけの可能性がある世界だからなのよね」
先生「実際、そうね。正直結婚に関してはかなり幸せよ。いつか良いことあるかもしれないって思って生きてたら、本当にあったんだもの。困っちゃうわよね」
女「いつかいいこと、ですか……」
先生「長話してごめんなさいね。あら、4時までそんなに時間ないわね。このあと二人きりでデートするんでしょ?」
女「し、しませんよ!」
男「せいぜい二人で話したり歩いたり花火したり音楽聴いたりするだけです!!」
先生「あ、あらそう」

228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 00:00:45.22 ID:G7ejXtln0
先生「ちょっとわるいんだけど、この子と二人きりにしてもらってもいいかしら?」
男「はい。外で待ってますね」
先生「外は危ないわよ。バスルームの中で待ってて。暖房もつけるから」
女「先生、脱いだ下着ちゃんと隠してくださいね」
先生「はいはい。見てほしくないものね」
女「見られたくないんです!」
男「どういう意味?」
先生「こっちよ。ついでに音楽でも聴きながら待ってなさい」
男「いいですね。ノリの良い曲聴いて踊ってますね」

229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 00:23:31.19 ID:G7ejXtln0
先生「おまたせ。彼、自分で音量あげてたわよ。やさしい男ね」
女「先生ほどじゃないですよ」
先生「私のやさしさは自分のためよ」
女「さっき私が出ていこうとした時に、先生冷たいこと言いながら普通に目が泣いてましたもん」
先生「そうだったかしら」
女「あの人は変な冗談ばっかり言ってるだけです」
先生「ああいう人こそ一人の時は真剣に考えているものよ」
女「まぁ、そうかも……」
先生「それで、何かまだ話していないことがあった?」
女「いや、その…」
先生「話しづらいこと?」
女「言ったら今日の全てが台無しになってしまうような気がして」
先生「そんなことってある?」
女「はい…」
先生「じゃあさ、私からちょっと聞いてもいいかしら?」
女「はい、なんでしょう」
先生「彼とはどうなのよ?」ニヤニヤ

230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/04(水) 00:38:34.34 ID:G7ejXtln0
女「どうもこうも、見たまんま、普通ですよ」
先生「あなたが特に感激してくれた言葉があったじゃない。幸せを求めて他人に話しかけるんじゃなくて、幸せな時に人に話しかけなさい、みたいな。私のおばあちゃんの言葉なんだけど」
女「はい。だいすきな言葉です」
先生「あなた、今日、私に話しかけてきた」
先生「あなた、今、幸せ」
先生「そばに、男、いたから」
先生「そういうことよね?」
女「原人差し込んだのは理由があるんでしょうか」