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狩人「スライムの巣に落ちた時の話」
Part8


167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/15(水) 17:44:54.78 ID:io/ozYfw0
「それで、貴女は何者なの?」
「この猪は、貴女が飼育していたの?」
話が逸れそうなので、修正してみる。
本当ならさっさと村に向かいたいが、何故か、この女性のことが気にかかる。
「あ、す、すみません、そう、そうです」
「その猪は、私が作ったもので、えっと、その」
「わ、私は、合成術師なんです、そう、今風の言い方をすると」
「キマイラマイスター、って感じです、えへへへ」
そっか、気になる理由かわかった。
イライラするからだ。
何故か、このヒトが喋っているのを聞くと。
心が騒ぐ。
何でだろう。

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/15(水) 18:00:15.84 ID:io/ozYfw0
「じ、実はですね、私は探し物をしてるんです」
「私が作った合成生物なんですけど、ずっと前に逃げ出しちゃいまして」
「この近くに、隠れてるって事は判るんです」
「最後に魔力反応が途絶えたのは、この『迷いの森』の近辺でしたから」
「きっと、きっとこの森に入ったから、魔力反応が途絶えたんだと思うんです」
「こ、この森の中は、魔力が濃すぎて、探知魔法とか通りませんから」
「だから、こ、こ、困ってたんです」
「……そんな時、思い出したんですよ、迷いの森には」
「狩人さんが居るって」
「ふ、ふふふ、狩人さんに手伝ってもらえたら、きっと探し物もすぐに見つかります」
「ああ、私は運がいいなあ、うふふふふふ……」
「けど、誤算でした」
「近くの村を訪れて聞いたら、三ヶ月近く前から狩人さんが消息不明だって言われましたから」
「きっともう死んでるんだろうって、あの村長は言ってましたから」
「がっかりです」
「けど」
「けど、村長の娘から、聞いたんです」
「アイツは、きっと戻ってくるって」
「そう、そうですよね!」
「ヒトの可能性を凝縮したような狩人さんが」
「自分のテリトリーの中であっさり命を落とすはずがありませんから!」
「きっと、きっと何か特殊な事態に巻き込まれて帰ってこれないだけなんです!」
「私はそう信じて!」
「信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて」
「待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って」
「探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して」
「そして、今日、狩人さんを見つけたんです」
「めでたし、めでたし」
「ところで、狩人さん」

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/15(水) 18:05:19.17 ID:io/ozYfw0
「どうして、今まで戻ってこなかったんですか」
「ひょっとして、何か変な物に遭遇したりしませんでしたか」
「具体的に言うと、純白の魔物とか」
「だって、それくらいじゃないと説明がつかない」
「貴女のような優秀な狩人が行方不明になる理由が」
「思いつかないんですよ」
「ねえ、狩人さん」
そいつは、何時の間にか私の目の前にまで迫っていた。
ああ、私がどうしてイライラしているのか判った。
こいつの顔は。
クロと似ているからだ。
髪形が違うので、すぐには気付かなかったけど。
きっと、クロはこいつの顔を模している。

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/15(水) 18:13:59.48 ID:Z+1dAgG50
面白い!

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/15(水) 18:42:24.11 ID:koN2T0VA0
クロと顔が似てるだけでどうしてイライラするんですかね?

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/15(水) 18:51:37.19 ID:EzLgpPo/O
仮にクロと関係があるとしたら色々繋がるだろう
読み返せばよーわかる

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:37:11.61 ID:gbcG53qB0
クロが何故、コイツと同じ顔をしているのかは判らない。
恐らく純白のスライムだった頃に何か因縁があったのだろう。
けど。
クロは、こう言っていたのだ。
「外は、辛いばかりでした、怖かったという記憶しかありません」
コイツが探している合成生物というのは、きっとクロ達だ。
コイツをあの子達に、会わせてはならない。
絶対に。

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:37:42.41 ID:gbcG53qB0
「……私は狩りで遠出してていただけ」
「別の用事もあるから、貴女の手伝いをしてる余裕は無い」
幸い、コイツはクロ達が森の中にいると思い込んでいる。
だが実際は、森の外……山の洞窟にいるのだ。
恐らく、発見する事は出来ないだろう。
けど、コイツは頭がよさそうだ。
私が思いつかない策を練る可能性もある。
だから、ここは頭が良いヒト。
幼馴染に、相談してみよう。
それまでの時間を稼げれば……。
「う、うそ!協力してもらえないんですか!?」
「そ、そ、そんなぁ……折角待ってたのに……」
「てっきり協力してもらえるものと思って、準備進めちゃったのに……」
コイツは、酷くガッカリした顔を見せた。
クロと同じ顔だから、少し罪悪感が湧く。
「準備って?」
「ご、合成生物です……あ、キマイラって言ったほうが判りやすいですかね?」
「この周辺にですね、30体ほど待機させていたんです……」
「その子達に、今から仕事だからご飯食べていいよーって指令をさっき送っちゃいまして……」
「ううう、あの子達、燃費が悪いからなあ……稼働時間、延ばせないかなあ……」

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:38:30.82 ID:gbcG53qB0
食事は確かに大切だ。
30体ともなれば、かなりの量を食べるのだろう。
けど。
……。
……。
何だろう、何か悪い予感が。
「……そのキマイラ達って、何を食べるの?」
「勿論、人間です」

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:39:14.72 ID:gbcG53qB0
「幸い、この近くには手頃な村があります」
「しかも、あの村の連中は狩人さんのワルクチばかり言ってました」
「聞いていて、イライラしました」
「まあ、1人だけ狩人さんを庇ってる子もいましたが、1人だけなんでただの誤差です」
「という訳で、あんな村、無くなっちゃったっていいんです」
「狩人さんだって、そう思いますよね?」 
「無くなっちゃったほうが、清々しま」

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:40:04.33 ID:gbcG53qB0
ソイツが言葉を最後まで言い切る前に、額を矢で貫いた。
倒れるのを待たず、転進し村へ向かう。
仮にキマイラ達があの猪と同程度の存在だとすると、恐らく村は数刻と持たない。
いや、けど、幼馴染は聡い。
勝てないと判れば恐らく何処かに避難するはずだ。
だから、きっと間に合うだろう。
間に合ってくれるだろう。
間に合って欲しい。
ああ、けど。

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:40:59.58 ID:gbcG53qB0
疾走を再開して42分後。
私は荒れ果てた村の中で、幼馴染の死体を発見した。
間に合いはしなかったのだ。
間に合うはずがなかったのだ。

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:51:59.01 ID:gbcG53qB0
村には、既にキマイラ達は残っていない。
合成術師を殺した事で、統制が解除され方々へ散ったのだろうか。
思っていたより村人の死体は少なかった。
きっと、一部は村長や幼馴染が避難させたのだろう。
その結果、自身が逃げ送れてキマイラ達に包囲された。
恐らく、そんな所なのだろう。
大きな裂傷が三箇所。
骨折が十箇所。
細かい傷を挙げればキリが無いけど。
不思議と、顔だけは綺麗だった。
意外なことに、ショックは大きくない。
ただ「ああ、そうか、残念だな」と思うだけだ。
村人達が言っていたように、私にはやはり心という物が無いのだろうか。
森でケモノ達を狩るうちに、私もケモノのようになってしまったのだろうか。
グルルルル
背後から、何かの唸り声がした。

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 10:55:59.70 ID:gbcG53qB0
今からでは、到底回避が間に合わない。
そこまで接近されていたのに、どうして気付かなかったのだろう。
ここが、森ではなく村だからかな。
それとも、やっぱり幼馴染の死がショックだったからかな。
後者だと、いいなあ。
そのほうが、私は嬉しい。
致命傷を避ける為に、首だけは右手で守った。
その右手は容易く噛み千切られた。

185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 11:06:19.22 ID:gbcG53qB0
右手が食いちぎられたと同時に、左手の親指をケモノの眼に突き立てる。
だが、親指が眼に突き刺さる直前、ケモノの前肢で弾かれた。
こいつ、私の動きを読んでる?
体重では到底勝てそうに無い。
私はそのまま押し倒された。
反撃の手を探るが、文字通り手は無い。
右手は床に転がっているし、左手も前肢で押さえられている。
そのまま、ケモノの大きな顎が私の首筋に

186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 11:16:08.31 ID:gbcG53qB0
「す、ストップ!駄目駄目!食べちゃ駄目!」
その声で、ケモノの動きはピタリと止まった。
聞き覚えが有る声だった。
クロ?
いや、違うか。
ケモノの背後に、アイツが立っていた。
おかしいな、ちゃんと額を貫いたと思ったんだけど。
呼吸が速くなってきた。
それと同時に、体温が下がってきている。
きっと、血が足りないんだろう。
当然だ。
今もまだ、右手の断面からは血が流れ続けているのだから。
「す、すみません、こんな事になるなんて……」
「わ、私はただ足止めしてって命令しただけなのに」
「こら!駄目でしょちゃんと言う事聞かなきゃ!」
「この子は知性も戦闘力も高いんですけど、制御がしにくいんですよね」
「因みに、この子、何か見覚えありませんか?」
「そう!狩人さんが倒した竜種の身体が組み込まれてるんです!」
「竜種って、攻撃力は高いんですけど、何か大雑把なんですよね」
「隠密行動とか、潜入行動にはまったく向いてませんし」
「その点、竜種とケモノを組み合わせたこの子は違います」
「竜種の戦闘力と、ケモノの隠密性を兼ね備えてるんです!」
「サイズも凄くコンパクト!」
「内臓が駄目になるんで多用は出来ませんけど、なんとブレスだって吐けちゃうんですよ!」
「凄いですよね!」

187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 11:20:38.02 ID:gbcG53qB0
顔を上げると、アイツの顔がすぐ近くにあった。
額には僅かに傷跡が残っている。
私の矢が刺さった場所かな。
それにしても……。
ああ、本当にイライラする顔だなあ。
「大丈夫ですか?お話できます?」
「えっとね、私、本当の事を知りたいんです」
「狩人さん、森の中で純白のスライムに会いましたよね?」
「それ、どこで会いました?」
「あ、勿論、その傷で案内しろなんていいません」
「ただ、どの辺かだけでも教えてもらえたらなって……」
うん、意識がある間に、応えてしまおう。
「しらない」

188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 11:23:58.02 ID:gbcG53qB0
「え、えっと、その、何か勘違いしてませんか?」
「私には、貴女を害する気なんて無いんです」
「その傷だって、ちゃんと治してあげます」
「ですから、その、強情張らないで欲しいんです」
「お願いします、狩人さん!」
薄れてくる意識の中で、私は再び応えた。
「あなたには、なにも」
「おしえてあげない」

189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 11:25:26.09 ID:gbcG53qB0
「そう、ですか……」
「残念です……けど、仕方ないですよね」
「手間がかかりますけど、自力で探そうと思います……」
「殺せ」

190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 11:32:20.14 ID:gbcG53qB0
アイツの声を聞いたケモノの牙が、私の首に食い込む。
「くひゅ」
自分でも意識しない奇妙な声が出る。
噛み千切られた箇所が、とても熱い。
死ぬのは、嫌だ。
けど、怖くはない。
だって、それは当たり前の事なのだ。
ずっと、ずっとそうだったのだ。
古い時代。
原初の狩人が居た時代から。
どんな優秀な狩人であろうと。
どんな技術を持つ狩人であろうと。
どんな最先端の狩人であろうと。
狩人である限り、絶対に覆せない事柄がある。
『最後は、狩るべくケモノに食い殺されて、終わる』
父もそうだった。
母もそうだった。
だから、私がそうなるのも。
当たり前のことだ。
それが、私が最初に狩人として教わった事。
事実、私は十数秒後に息絶える。
その僅かな間に、私は夢を見た。

191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 11:41:59.84 ID:gbcG53qB0
「ねえ見た!アイツらの顔!」
「滅茶苦茶驚いてたわ!」
「そりゃそうよね、アンタが帝国狩猟大会で優勝するなんて、誰も思ってなかったでしょうから!」
「あー!凄くすっきりした!」
「これで普段からアンタを馬鹿にしてた連中も、少しは見直すでしょうよ」
「大会の報酬も半分は村に引き渡したし、私とアンタを育ててくれた恩も返したから」
「後は、まあ、自由にやっていいんじゃない?」
「それで、その、ね」
「ちょっと相談なんだけどさ」
「私、もうすぐ誕生日よね」
「うん、18歳の」
「村ではさ、18歳になったら成人したと看做されて、色々な権利がもらえるの」
「仕事の権利と、住む場所の権利を自由に選べるのよ」
「だからね」
それは、とても大切な約束を交わした時の夢だった。
もう既に、居なくなってしまった相手との。
大切な約束の。

192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 12:33:25.72 ID:nqMzJnArO
はよはよ

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 12:34:15.41 ID:Voz7GAsr0
  バン   はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/
  ̄ ̄\/___/

194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/17(金) 12:36:33.68 ID:GtSE5tyA0
おまえら落ちつけ!
はよはよ

195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 08:56:45.51 ID:cSbK6Shm0
ぬおおおお