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狩人「スライムの巣に落ちた時の話」
Part4


67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/05(日) 15:04:46.07 ID:gaNxEPwz0
〜54日目〜
夢を見た。
過去の夢ではなく、今の夢だ。
洞窟の中、私の前にクロが立っていて、私に話しかけている。
「ゴボゴボあさんゴボゴボようになゴボゴボゴボゴボ」
「だからゴボゴボゴボゴボゴボってくだゴボコボコボ」
「わたしだってゴボゴボゴボゴボてますからゴボゴボ」
こんの子は、ヒトの夢の中に入るなって言ったのに、まーた来たのか。
まあ、今日は幼馴染の夢を見ていたわけでは無いから、別に良いんだけど。
ただ、今後の為に、一度きつく言い聞かせたほうがイイのかもしれない。
私は、拳を持ち上げて、クロの頭に軽く叩き付けた。
「こら!」
「っ!」
女の子の声が聞こえた気がした。

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/05(日) 16:24:50.29 ID:gaNxEPwz0
それで夢から覚めるかなと思ったが、覚めなかった。
拳は、半分くらいクロの頭部に沈み込んでいる。
ヌルリとした冷たい感触。
うん、やはり触るならアカの方が暖かくて心地よい。
「というか、これ、ひょっとして夢じゃないのかな」
「ごめん、クロ、私寝ぼけてて、てっきり」
「てっきり夢なのかと勘違いしてた」と言い切ることは出来なかった。
クロの反撃があったからだ。
「ガボガボガボガボガボガボガボガボガボ!」
「ガボガボガボガボガボガボガボガボガボ!」
「ガボガボガボガボガボガボガボガボガボ!」
うわあ、すごい。
身体の一部を回りに撒き散らしながら何か主張してる。
最近わかったけど、クロがガボガボ言う時は怒ってる時なのだ。
ゴボゴボ言ってる時は、比較的機嫌が良いように思う。

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/06(月) 17:46:15.51 ID:VlTi/mW3o
おーこらせた

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/07(火) 01:05:52.96 ID:dSdYc49Do
かわいい

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/08(水) 16:49:39.06 ID:oeqz/JL50
「ガボガボガボガボガボガボガボガボ!」
「ガボガボガボしかガボガボガボガボ!」
「ガボガボガボガボわかってガボガボ!」
「わたガボガボいちばんガボガボガボ!」
「ガボガボどうしガボガボなんでガボ!」
あれ、クロから出ている音に、何か別の音が重なっている気がする。
いや、音というか……。
「ガボガボガボもうガボガボガボガボ!」
「いつになってらガボガボガボるように」
「ガボボボボガボですかガボボボボボ!」
「いいかげんにガボガボガボボボボボ!」
「ガガガガうがががガガガガガガガガ!」
「ボボミドリてつだいなさボボボボボ!」
「これは、声かな」
「何時になったら……って言った?」
「い、い、い、ガボガボガボガボガボ……」
「……」
「……」
「……」
「クロ?」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/08(水) 18:58:51.74 ID:PRYLYb8x0
なるほど1+3匹の特質の違いはそういうことか

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/08(水) 19:43:48.69 ID:QX6ssRZjo
原色か…

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/09(木) 02:02:32.52 ID:MVVeUTCQo
CMYKか……

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:16:45.43 ID:kMtJYj7E0
クロの目が、パチリと開いた。
私と、視線が合う。
「い、い、い」
「ガボガボガボガボ」
「言いました」
「ガボガボガボガボ」
「何時になったら、意志が通じるのって」
「ガボガボガボガボ」
「ずっと、頑張って」
「ガボガボガボガボ」
「夢の中に入ったのだって」
「ガボガボガボガボ」
「なのに、あんな言い方、酷い」
「ガボガボガボガボ」
「そもそも、どんなつもりであんな名前つけたんですか」
「ガボガボガボガボ」
「まあ、けど呼ばれている内に愛着が」
「ゴボゴボゴボゴボ」
「一番許せないのが」
「ガボガボガボガボ」
「許せないのが!」
「ガボガボガボガボ」
「うががががが!」

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:17:24.90 ID:kMtJYj7E0
一度に、複数の事が起こった。
まず、クロが喋っている。
しかも、かなり複雑な文章を破綻無く駆使しているように思える。
何時の間にヒトの言葉……文章を覚えたのだろう。
何やら怒ってる。
次に、クロに「眼」が出来ている。
いや、眼だけでなく……。
鼻も、口も出来ている。
急速に、ヒトの顔立ちが出来ているのだ。
その口からは先ほどの声が。
「一番許せないのは、私の知能が他の子達に比べて劣っていると言った事です!」
「劣っている訳無いじゃないですか、私を、私を何だと思ってるんです!」
「ガボガボガボガボガボガボ!」
「系譜姉妹の中で、一番最後に卵から生誕したスライムですよ!」
「つまり、最新鋭のスライムです!」
「ガボガボガボガボガボガボ!」
「最も新しく、最もかしこく、最もお母さんに愛されるべき存在、それが私です!」
「どうしてそれを判ってくれないんですか!」
「ガボガボガボガボガボガボ!」

77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:17:56.71 ID:kMtJYj7E0
クロの言葉が終わった時、そこには一人の女の子が立っていた。
身体や髪は黒い軟体だけど、それは確かに女の子に見える。
凄い。
思わず、クロの周囲をくるっとまわり、確認してみる。
「な、なんですか、お母さん」
手足の指もある。
鎖骨や腰骨のくびれもある。
黒く半透明では有るけれど、ちゃんとヒトの形に成っている。
しかも、私を模してヒトの形になった訳では無いようだ。
身体付きは私よりも若干ふっくらしているし、何よりずいぶん顔が違うように思える。
クロがこの容姿を、選んだのだろうか。

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:19:52.21 ID:kMtJYj7E0
「ゴボゴボゴボゴボ」
「いい加減にしてください、お母さん」
「まあ、どうせ私の言葉はまだ判らないんでしょうけど」
「ゴボゴボゴボゴボ」
「けど、もう少し私の個としての能力を認めて欲しいのです」
「私と意思疎通出来ていないのに、他の子達に言葉を教えようとしたりするのは止めてください」
「ゴボゴボゴボゴボ」
「時間の無駄です、姉妹で一番かしこいのは私なのですから、もっと私を見てください」
「ああ、けれどもミドリに幾つかの言葉を教えたのは良い判断だと思います」
「ゴボゴボゴボゴボ」
「音波に対して高い親和性を持つミドリが理解した事は、私に流れ込んできました、この知識があれば」
「私が言葉を発する事が出来るようになるまでの時間をかなり短縮出来ると……」
「クロ」
「はい、なんですか、お母さん」
「喋れてるよ」
「……はい?」
「そっか、クロは一番かしこかったのか、ごめんね、勘違いして」
「……あれ、私」
「ん?」
「……」
「クロ?」

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:20:33.15 ID:kMtJYj7E0
「言葉を交わすのは初めてになりますね、お母さん」
「私は最も優秀なるスライムの末裔、進化系譜の頂点、最新鋭のスライム」
「名は、そうですね、貴女の意志を尊重して……クロ、と名乗っておきましょう」
「本来であれば、有りえないのですよ、私達がヒトの意志を尊重するなど」
「お母さんは、それをとても名誉に思うべきです」
「そして、私達に変わらぬ愛情を注ぐべきなのです」
「まあ、このような事は改めて言う必要もない、当たり前のことなのですが」
「それでも、私はヒトが行う、言葉のやり取りを尊重したいと思います」
「誇り高き私からのプレゼントと言った所でしょうか」
「一番愛されたいってさっき言ってたよね」
「ガボガボガボガボガボガボガボガボ!」
彼女は一瞬で退化した。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:25:09.81 ID:uqHCwhj8o


81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:25:14.48 ID:3lKmcRS8o
うおー!? なんか一気に凄いことになってるー!?

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:47:43.48 ID:kMtJYj7E0
〜56日目〜
クロは元のスライム形態に戻ってしまった。
今日も、ピクリとも動かず蹲っている。
困った。
折角、言葉を交わすことが出来るようになったのに。
他のスライム達も、時間を掛ければ私と会話出来るようになるのかな。
それともクロだけが特別なのか。
そもそも……。
「クロ達は、何者なんだろう」
「幾ら知能が高くても、ヒトの形態に変化して言葉まで話すって言うのは普通じゃないと思う」
「まあ、世界は広いから私の常識が通用しない地域があるのかもしれないけど」
「そんな地域から、クロ達はどうしてここまで来たんだろう」
独り言に近い呟きだったけど、それに応える声があった。

83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:48:28.50 ID:kMtJYj7E0
「……私達は、逃げてきたんです」
「どこから逃げてきたのかは、覚えてませんけど」
「元々は、一つのスライムだったんですよ、私達」
「とても白い、そう、純白のスライムだったという記憶が、僅かに残っています」
「彼女は、長い、長い逃亡の末、ようやくたどり着きました」
「理想郷に」
蹲っていたクロが、ヒトの形を取り戻していた。
じっと私を見ている。

84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 01:55:03.25 ID:kMtJYj7E0
狩人「理想郷って?」
クロ「勿論、ココです」
狩人「この洞窟が、理想郷なの?」
クロ「はい、理想的に暗く、理想的な温度で、理想的にジメジメしていて、理想的な食物連鎖が存在しています」
クロ「彼女は、ここにたどり着き、決意しました」
クロ「ここで、栄えようと」
クロ「彼女は、自分の命が長くない事を悟っていました」
クロ「ですから、自らの力を卵にして残したのです」
クロ「それが……」
狩人「クロ達って事か」
クロ「……はい」
クロ「私も、ここが理想郷だと思います」
クロ「だって、だってここには」
狩人「ここには?」
クロ「お母さんが、いてくれますから」
何だか、悪い予感がした。

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 02:06:58.74 ID:kMtJYj7E0
狩人「うん、クロ達の事が知れて、良かった」
クロ「私も嬉しいです、お母さん」
狩人「話は変わるけどさ、実はこの洞窟から出る方法を探してるんだ」
クロ「ええ、知ってます、けど、どうして出る方法なんて探してるんですか?」
クロ「出る必要なんて、全く無いじゃないですか」
狩人「……いや、私も家に帰らないといけないから」
クロ「クスッ」
クロ「おかしなお母さんですね」

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 02:07:25.24 ID:kMtJYj7E0
 
「お母さんの家は、ココじゃないですか」
 

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 02:44:08.24 ID:kMtJYj7E0
クロ「私には、純白のスライムの逃亡の記憶が残っています」
クロ「外は、辛いばかりでした、怖かったという記憶しかありません」
クロ「お母さんの記憶を覗いた時も、それは感じられました」
クロ「そんな所に戻る必要があるんですか?」
狩人「それ、は……」
クロの質問に、思い浮かぶのは二つ。
一つは、森で狩りをしている自分の姿。
私は、結局のところ、森が好きなのだ。
狩りが好きなのだ。
もう一つは、幼馴染の姿。
村で私の帰りを待ち続けているであろう、彼女。
私は……。
クロ「……私達とお母さんは、種族が違います」
クロ「私達はスライムですが、お母さんはヒトです」
クロ「ですが、安心してください、寂しい思いはさせません」
クロ「私がヒトの形になれたんですから」
クロ「同型であるアオ達にも、この能力は伝播します」
クロ「時が経てば、アオ達もヒトの形になるのです」
クロ「そうすれば、みんな同じ形です」

88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 02:46:21.71 ID:kMtJYj7E0
クロ「本当の家族みたいに」
クロ「本当の一族みたいに」
クロ「本当のお母さんみたいに」
クロ「本当の子供のように」
クロ「暮らせるんです」
クロ「過ごせるんです」
クロ「ゴボゴボゴボゴボ」
クロ「それって、とても」
クロ「素敵な事だと思いませんか?」

89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 03:22:16.48 ID:kMtJYj7E0
〜60日目〜
クロがヒトの形になり、言葉を放つようになってから。
私が行っていたアオ達への教育は、クロがやってくれるようになった。
教え方が上手いのか、アオ達の行動は急激に洗練されていく。
流石に声は出せないものの、アオ達も私の言葉を完全に理解して行動している節がある。
クロはこの事に対して、こう言っている。
「私達は同系のスライムですから、有益な知識や能力は各個体に反映されるんです」
「個性を残すために、反映には制限を設けていますけど」
実際、ここ数日でアオ達の形態は急激にヒトに近づいている。
今も、トコトコトコと「歩いて」いる。
だから、少し期待しているのだ。
クロは、私を外に出す気はないらしい。
そこには、確固たる強い意志を感じられた。
頭の悪い私では、説得は難しい気がする。
けど、アオやアカやミドリなら。
もしかしたら、話が通じるかもしれない。
こっそりと、洞窟を脱出するために手助けをしてくれるかもしれない。

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 03:30:43.25 ID:1Cayt+jCO
ええぞ

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 04:06:34.19 ID:oxewoMKHo
ヤバさのベクトルが変わってきた

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 04:19:34.05 ID:YgVSP7DZo
あと一ヶ月もないぞ…

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 04:39:00.01 ID:FjqrkXFI0
ハッピーエンドはあるのだろうか…

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 07:53:21.49 ID:sThLyTIA0
繁栄・・・人間とスライム4匹で繁栄?

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 09:14:13.59 ID:SeimUb8Zo
ヤンデレスライム……(ゴクリ)

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/10(金) 10:24:16.72 ID:0EihDZxOO
ていうか狩人女性だったのね…