Part4
152 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:15:21.51 ID:isNjsBjJ0
こんばんは
今日も続きを書いていきます
153 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:17:57.29 ID:isNjsBjJ0
おばさん「1君、夕飯できたよー」
気づくと、1階から自分を呼ぶ声が聞こえた。
「はーい」と生返事をしつつ1階の居間に降りると、
おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん(義父の弟)、奈央がテーブルを囲っていた。
俺は身構えて再び自己紹介をして、食卓についた。
おばさんが台所から出てきて、「とってもいい子だよ」と言って笑った。
154 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:19:30.39 ID:isNjsBjJ0
おばあちゃんはにこにこして「よく来たじゃんねぇ」と喜んでくれた。
おじいちゃんはあまり表情を崩さず、少し怖い印象を受けた。
そして、おじさんはビールを飲みながら
「まあ何もない田舎だけど、ゆっくりしてけしw」と笑っていた。
義父の堅い印象とは裏腹に、とても温和そうな人に見えた。
なんでも、地元の農協で働いているのだとか。
155 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:22:07.93 ID:isNjsBjJ0
奈央はテーブルの向こうに座っていて、力なく笑っていた。
さっきはもっとハキハキした子に見えたけど、家族の前だとやはり恥ずかしいのだろうか、
それとも、俺の最後の態度にひっかかる所があったからだろうか…
どうしようか、奈央にいつ謝ろうか、そんな事を考えているうちに、
目の前には沢山の料理が出てきた。
初日の料理は印象的で、おばさんが張り切ったせいなのか、
豚の生姜焼きに、そうめんに、外で冷やしてあっただろうキュウリの浅漬やトマトなど、
夏っぽいメニューがわんさか出てきて、それはもう食べ切れなかった。
156 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:24:10.18 ID:isNjsBjJ0
おばさん「奈央、1君とは話した?」
奈央「え、うん…ちょっと」
おばさん「そう、それならよかったw」
奈央はいかにも気まずい、という感じで下を向いてしまった。
おじさん「奈央も見習って勉強しっかりやらんとだめだぞ」
奈央「わ、わかってるよ、そんなこと」
おじさん「信用出来ないな〜w」
どうやらおじさんは、少し酒に酔っているようだったw
みんなでテレビを見て元気に笑いながら夕飯は進み、
夏の宵闇の時間が過ぎていった。
157 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:25:50.06 ID:isNjsBjJ0
夕飯が終わるとおばさんが片付けを始めたので、
俺も率先して洗いものを手伝ったりした。
奈央に一言声をかけようと思ったものの、
ご飯が終わるとすぐに部屋に戻ってしまった。
ふと、縁側で食後の一服をしていたおじさんに呼ばれた。
おじさん「1君、こっち来おし」
俺「あ、はい」
縁側に座ると、外の青臭い夏の匂いを感じた。
わずかに、「リリリリ…」という虫の声も聞こえた。
空には、微かに星が光っていて、俺は「はー…」と唸ってそれらを眺めた。
158 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:27:07.26 ID:isNjsBjJ0
おじさん「どうでこっちは?すごい田舎でしょw」
俺「ああ…そうですね。色々初めてです、こういうの…でも、いい感じですね」
おじさん「それはよかったw」
おじさん「でもなんだか不思議なもんだよねぇ」
おじさんは、そう言ってゆっくりと煙を吐き出す。
俺が「何がですか」と聞き返す前に、おじさんは続けた。
おじさん「1君は、今いくつ?酒は飲めんのけ」
俺「あ、20歳なので…たまには飲んだりも」
おじさん「それはいいなw」
おじさんは嬉しそうにおばさんを呼んだ。
おじさん「母さん、ちょっと瓶持って来てよ!あとグラス2つね」
159 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:28:54.81 ID:isNjsBjJ0
家の奥から「もー、はいはい」という声が聞こえて、
俺とおじさんの間に、冷えた瓶ビールとグラスが置かれた。
おばさん「1君は勉強しに来たんだからー…あんまり変なことさせちょし」
そう言われて、おじさんは「わーかってる!少しだけだから!」と苦笑いした。
こうして見ているとおじさんはまるで小学生のように楽しい人で、(酔っているのもあるが)
あの義父の弟さんには、やっぱり見えなかった。
そして独特の方言も、なんだか俺には心地がよかった。
160 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:31:22.05 ID:isNjsBjJ0
おじさん「ほらほら」
おじさんが楽しそうに俺の持ったグラスにビールを並々と注いでいく。
もう大丈夫ですwと言ってもおじさんは子供のように「まだまだ」と言って聞かなかった。
おじさん「じゃ、乾杯だな」
そう言われて、カチンとグラスを突き合わせた。
夏の夜風に混じって「リーーン」と虫の声が聞こえる中で飲むビールはやっぱり美味しくて、
思わず二人で「かぁー!」とうなってしまった。
しばらくおじさんは、黙って煙草を吸い続けた。
途中、「吸うけ?」と言われたが、俺はそれとなく断った。
161 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:34:14.80 ID:isNjsBjJ0
おじさん「お父さん…って言っていいのかあれだけんど」
俺「はい?」
おじさん「アイツとは、上手くいってるけ?」
さっきまでのにこやかな表情ではなく、少しだけ物憂げな表情に変わっていた。
俺「ああ、まあ…ハイ。それなりには」
おじさん「ほうけ。それならまあ…ごめんね、変なこん聞いちゃって」
俺「いえ、とんでもないです…」
俺がそう答えて、しばらくその場で虫の鳴き声だけが響いていた。
俺「僕の方こそ、突然押しかけて…これからお世話になります」
俺がそう言うと、おじさんは力なく笑って「ゆっくりしてけばいいよ」と言ってくれた。
162 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:35:18.01 ID:isNjsBjJ0
その後、おじさんとしばらく縁側で話したが、
「勉強なんてテキトーでいいだ」だの「今度一緒にパチンコでも打ちに行かないか」など、
あまりに義父とかけ離れたことばかりを言われて、驚いた反面、
今までプレッシャーの中にいたので、とても安心できたのを覚えている。
これは俺の勝手な予想だが、もしかしたら息子ができたと思ってくれたのかもしれない。
そうだったら嬉しいな、という俺の気持ちだが。
163 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:36:55.75 ID:isNjsBjJ0
次の日は、起きて居間に降りるともうおじさんと奈央の姿はなく、
おじいちゃんとおばあちゃんが朝ごはんを食べていた。
おばさん「おはよう、朝ごはん今するからね」
俺「あ、ありがとうございます。あの、奈央さんは…」
おばさん「あ、奈央?部活だってさっき出かけてったねぇ」
おばさん「図書館行くとか言ってたから、今日は夜まで帰ってこないと思うけど」
俺「ああ、そうですか…」
結局昨日の事を謝るタイミングを失ったな、と俺はがっくりうなだれた。
164 :
名も無き被検体774号+:2015/11/02(月) 00:39:13.91 ID:vTuaPW310
田舎の気のいいおっさんってこんな感じだよな
にしても方言っていいな
165 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:39:52.18 ID:isNjsBjJ0
おばさん「何?奈央に何か用事あった?」
俺「いえ、そういうワケではないんです」
俺はそのまま用意されたご飯を食べて、日が傾くまで部屋で勉強に集中した。
西日が差し込んでくる頃にはさすがに集中力が切れて、
ちょっと散歩でもしようかなって思った。
家の一階が何やらガタガタ騒がしくなったので、ちょっと気になって見に行ってみようと思った。
開けていいのか分からなかったが、書道教室の部屋に続くドアをそーっと開けて覗いてみた。
166 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:42:39.55 ID:isNjsBjJ0
何人もの小学生が長机に座って、みんなそれぞれに書道をしている。
全然集中しないでだれてる子もいれば、背筋を伸ばして集中している子もいる。
俺はそれがおかしくて、「ぷっ」と笑ってしまった。
その内のぞいてるのがバレて、男の子に、「あ、誰ー!?」と指さされた。
その騒ぎは瞬く間に広まって、
「初めて見る人だ!」「兄ちゃん誰!」と次々に集まってくる。
「先生これ誰ー?」と集まってくる生徒に、おばあちゃんは「はいはい、席に戻ってね」
と冷静に対応している。
おばあちゃん「この人は1君。今先生の家に泊まって受験勉強してるの」
と優しく説明をする。
167 :
名も無き被検体774号+:2015/11/02(月) 00:42:52.66 ID:uiJ0nLPA0
待ってた!
168 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:43:48.64 ID:isNjsBjJ0
「え、じゅけんせいなの?」「ろうにんせいってやつじゃない!」
と、騒ぎが収まる様子はない。
俺も仕方なしに「こんにちは」などとテキトーな挨拶をして対応する。
おばあちゃん「1君は夢に向かって勉強してるの。みんなも見習ってね」
おばあちゃんのその一言が俺の心にぷつっと刺さって、俺は我に返った。
「え、なにそれ!」「兄ちゃんどっから来たの」などと、騒ぎが続く中、
おばあちゃんに「失礼しました」と一言謝って、すぐにその場を離れた。
169 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:46:49.07 ID:isNjsBjJ0
「俺の夢ってなんだ。」
おばあちゃんは俺が夢に向かって邁進してるように見えたんだろう。
勉強して、その先にかけがえのない夢がある、とー
俺は今、一体何のために勉強しているんだろうか。
そんな疑問、最初からあったのだけど、それすらも忘れようとして、
東京で色々問題を起こして、今ここに流れ着いてー
玄関に置いてあった、奈央のボロボロになったバレーボールを見て、
俺はそんなことを何度も何度も考えた。
170 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:47:58.35 ID:isNjsBjJ0
それから数日は、奈央と上手く顔を合わせることがほとんどなく、
二人で対人したあの時の事を、ずっと謝れずにいた。
なぜだか俺はそれが気がかりで仕方なくて、勉強にも身が入らなかった。
171 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:51:04.68 ID:isNjsBjJ0
数日後の朝、居間に降りるとやけにバタバタして落ち着かない様子だった。
奈央「お母さん!なんで起こしてくれなかったの!」
おばさん「やーね。何度も起こしたじゃない。アンタ、大丈夫だって言うから」
奈央「もー、これじゃ間に合わないよ!」
寝坊してしまったのか、奈央がえらい剣幕でおばさんと口論していた。
172 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:52:20.06 ID:isNjsBjJ0
おばさん「ほんとね。この電車には乗れないから…そうすると30分以上あくわね」
おばさんが、時刻表らしきものを見ながらつぶやく。
奈央「集合時間に間に合わないじゃん…お母さん車で送ってよ」
おばさん「だめよ。私今日早番だからもう行かないとだから」
奈央「はー?何で今日に限ってぇ!」
おばさん「おじいちゃんとおばあちゃんは病院に行っちゃったし、だめだからね」
奈央「マジ有り得ない!じゃあ本当に遅刻じゃん…!」
その口論は収まる気配もなく、俺は階段の脇から眺めていた。
173 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/02(月) 00:53:23.29 ID:isNjsBjJ0
すみませんが、今日は一旦ここまでで。
また明日の夜に来ますー
ではでは!
174 :
名も無き被検体774号+:2015/11/02(月) 01:07:28.65 ID:to2uwtRD0
>>173
お疲れ様
175 :
名も無き被検体774号+:2015/11/02(月) 05:49:48.56 ID:7d+J/fJw0
お疲れ様♪
毎日楽しみにしてるよ
176 :
名も無き被検体774号+:2015/11/02(月) 12:39:04.38 ID:9wd+V7ir0
1時間じゃなくて30分というのに田舎住みの俺は驚いた。
保守。
184 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/03(火) 01:21:15.03 ID:9B6+3UGn0
こんばんは。
遅くなりましたが本日も続きを書いていきます。
185 :
名も無き被検体774号+:2015/11/03(火) 01:24:08.70 ID:2lWRbsqf0
まってました!
186 :
名も無き被検体774号+:2015/11/03(火) 01:26:57.42 ID:G0BrNw4M0
来たか!
187 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/03(火) 01:27:06.75 ID:9B6+3UGn0
機をうかがって、どうしたのかと事情を尋ねてみる。
俺「あの、どうしたんですか…?」
おばさん「奈央、今日野球の応援だったらしいんだけど、見ての通り寝坊しちゃったのよ」
俺「ああ、なるほど…」
おばさん「野球の応援くらい、ちょっと遅刻したっていいんでしょ?」
おばさんが呆れた様子で奈央に問いかける。
奈央「だめ!絶対に行かないとなの!」
まるで見に行かないと死んでしまうとでも言わんばかりに、奈央の語気は荒かった。
おばさん「何をそんなに怒ってるのか知らないけど…無理なもんは無理よ」
おばさんにそう言われて、奈央は涙目になって肩を落とした
188 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/03(火) 01:28:13.37 ID:9B6+3UGn0
俺もさすがにそれが見ていられなくて、一言聞いてみる。
俺「あの、車を出せば間に合うんですか?」
おばさん「え?まあ、今から電車で行くよりは…」
俺の言葉を聞いて、奈央がはっとした表情でこちらを見た。
俺「俺、車の免許ありますし…送っていけないことはないですけど」
俺がそう言うと奈央はまた一気に勢いづいて、
「ね、ね、お母さん!いいよね!?」とまくし立てた。
189 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/03(火) 01:29:18.78 ID:9B6+3UGn0
おばさん「あのねぇ、1君に迷惑でしょ…」
奈央「でも他に車出せる人いないんだし、いいじゃん!」
おばさん「はーもう…この子ったら…」
おばさんはそう言って、微妙な面持ちで俺の方を見た。
俺「そういう緊急事態だったら、全然いいですよ」
俺「大丈夫です、安全運転で行くんでw」
おばさん「それじゃ悪いけど、このわがままな子連れてってもらえるかしら」
おばさん「本当に、気をつけてね。急がなくていいからね」
おばさんはそう言って、俺に車のキーを手渡した。
190 :
1 ◆aPqsLiX.0g :2015/11/03(火) 01:33:03.26 ID:9B6+3UGn0
奈央もバタバタした様子で、急いでカバンやら荷物を持ってくる。
出かける間際、おばさんが俺と奈央に、
「暑いから」とペットボトルのポカリをくれた。
車に乗り込むと、案の定中は蒸し風呂のような熱気に包まれていて、
奈央が「早く冷房、冷房」と俺を急かした。
俺「すぐにはクーラー点かないから、ちょっと窓を開けておこう」
そう言って窓を開けると、外から「ジジジジジジ…」とやかましいくらいの蝉の声が聞こえた。
入ってくるのは蝉の声ばかりで、ちっとも風は来なかった。
191 :
名も無き被検体774号+:2015/11/03(火) 02:44:31.91 ID:f5GA0UfZ0
おやすみなさい(今日はお疲れだったか)
192 :
名も無き被検体774号+:2015/11/03(火) 03:13:59.24 ID:G0BrNw4M0
1はおやすみか。
まあ、落ちる前に終わるようにだけしてくれれば何でもいいからマイペースに書いていってくれ