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少女「記憶の中でずっと二人は生きていける」
Part3


65 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 21:34:45 ID:vXX/6iJ2
ヴォーン
少女「これが……お通夜?」
ざわざわ
少女「みんな……先生……」
『このたびは……』
『あのトラック……許せない……』
『神も仏も……ありませんね……』
少女「パパ、ママ……」
『本日は、あの子のために、ありがとうございます』
少女「ほんと、こんなに集まってもらえて、私、嬉しいよ」

66 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 21:41:18 ID:vXX/6iJ2
ヴォーン
男「みんな……泣いて……」
男「おれなんかのために……」
『あいつは、真面目で、いつも一生懸命勉強して……』
男「先生……」
『いつも、おれ、相談聞いてもらってました』
『今でも、あいつには感謝しています』
『……もっと……伝えたかったっ……』
男「くぅっ……」ポロポロ

67 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 21:49:00 ID:vXX/6iJ2
ヴォーン
ぐすっ……ひっく……うぇ……うぇ……
『うぇえ……悲しいよ……悲しいよ……』
『もっと一緒に……遊びたかったよっ……』
少女「私も……だよ……」ポロポロ
『いつもみんなのことを考えて動ける、優しい子でした……』
『私たちが喧嘩したときも、間を取り持ってくれて……』
『なんで……死んじゃったの……うぅっ』
少女「御免ね……御免ね……」ポロポロ

68 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 21:53:13 ID:vXX/6iJ2
ヴォーン
男「お開きか……みんな帰っちゃったな……」
男「ていうか、おれの遺影、もっと男前のやつなかったのかよ……ふふっ」
男「あ……」
女『……』グスッ
男「残ってくれてたんだ……」
女『……』グスッ
男「でも、どうして……」

69 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 22:02:23 ID:vXX/6iJ2
男「……」
女『御免ね……御免』グスッ
男「なんで、謝ってるの」
女『私、酷いこと、したね』グスッ
男「なんで? 君はなにも悪くないよ」
男「おれが勝手に嫉妬して、勝手に死んだんだから」
女『なんで、あんなことしたんだろうね、私』グスッ
男「なに、言ってるの?」

70 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 22:09:57 ID:vXX/6iJ2
ヴォーン
少女「お通夜って短いんだね……」
少女「もうみんな、いないのかな……」
少女「あ……」
少年『……』ポロポロ
少女「残ってくれてたんだ……」
少年『……』ポロポロ
少女「でも、泣いてる……」

71 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 22:17:05 ID:vXX/6iJ2
少年『御免なさい、御免なさい……』ポロポロ
少女「あんたは悪くないよ、あんたが無事だったら、それでいいの」
少年『僕、僕、トロくて、いつも、君に迷惑かけて……』ポロポロ
少女「そんな風に思ってない!!」
少女「ずっと大好きだった!!」
少年『僕の代わりに君が死んで……うぅっ』ポロポロ
少女「今でも大好きなんだから!!」

73 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/06(木) 22:31:38 ID:g1c5SDNE
せつねえ……

74 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:17:00 ID:5pYQ.YMk
ヴォーン
女『私ね、君にね、焼きもち焼かせたかったんだぁ……』グスッ
男「え……?」
女『いつも、さ、曖昧な関係だったでしょ、私たち』グスッ
男「え? え?」
女『だから、私のこと、どう思ってるのかなって、それであんなこと、しちゃって』グスッ
男「……」
女『御免ね……御免なさい……』ポロポロ
男「そんな……」
女『許してなんて……もらえないの……わかってる……』ポロポロ
男「そんなこと……」

75 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:23:32 ID:5pYQ.YMk
男「はは……死んでから気づくなんて……遅かったな……おれ」
男「ほんと、馬鹿だなあ……」
女『御免ね……御免ね……』ポロポロ
男「謝る必要、ないよ」
男「おれが馬鹿だった、ただそれだけだ」
女『……』ポロポロ
男「ハンカチ、御免ね」

76 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:29:27 ID:5pYQ.YMk
ヴォーン
少年『あのとき……僕……フラフラしてて……また君に迷惑をかけて……』ポロポロ
少女「そんな風に言わないで!!」
少年『僕が死ねば……』ポロポロ
少女「そんな風に言わないでったら!!」
少女「もう十分だから!! 自分を傷つけないで!!」
少年『御免ね……ほんと……ダメだ……僕……』ポロポロ
少女「もう!!」

77 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:37:28 ID:5pYQ.YMk
少年『もう一度会って……君に……謝りたい……』ポロポロ
少女「ぅうっ……」
少年『御免ね……御免ね……』ポロポロ
少女「わ……私だって……もう一度……会いたいよ……」
少年『……』
少女「会いたい!! 会いたい!!」
少年『……』
少女「まだ!! まだ死にたくないよぉ!!」ポロ
少女「死にたくない!! もっと生きて……生きていたかった!!」ポロポロ

78 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:44:13 ID:5pYQ.YMk
少女「うああ……ああああん」ポロポロ
少女「死にたくないよぉ……なんで……なんで……」ポロポロ
少女「もっと、お喋りして、一緒に、帰って」ポロポロ
少女「ぐす……ひっく……」ポロポロ
少女「楽しい毎日を……もっと……もっと……」ポロポロ
少女「過ごしたかったのに!!」ポロポロ
少女「もっと続くと思ってたのに!!」ポロポロ
少女「ぅあぁああああん……」ポロポロ
男「……」

79 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:48:35 ID:5pYQ.YMk
少女「……」グス
男「ねえ」
少女「……なに?」グス
男「おれが偉そうに言うことじゃないかもしれないけれど」
少女「……」
男「おれたちはさ、やっぱさ、死んだんだよ」
少女「……わかってるわよ、そんなこと」
男「おれもさ、わかるよ、生きてたいって気持ち」
少女「……うん」

80 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:53:48 ID:5pYQ.YMk
男「だけど、その、なんていうか、おれたちは死んだけど、存在が消えるわけじゃない」
少女「?」
男「現にさ、あの男の子は君のこと、心に刻んでくれてるじゃないか」
少女「心に?」
男「そう」
男「あの子が君のこと、忘れると思う?」
少女「……ううん」
男「だろ?」

81 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/07(金) 23:59:00 ID:5pYQ.YMk
男「思い出に残ることができるじゃないか」
少女「……」
男「おれたちは死んだけどさ、みんなの記憶の中で、ずっと二人は生きていけるんだよ」
少女「記憶の中で……ずっと二人は……生きていける……」
男「そう」
男「君のパパも、ママも、お姉ちゃんもさ、君のこと、忘れないよ、きっと」
少女「……うん」
少女「あんたも……家族と、あの子の心の中で……」
男「ああ、生きていけるんだ」

82 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:06:55 ID:Fvyr7wBc
少女「ありがと」
男「ん?」
少女「なんか、すっきりしちゃった」
男「ははは」
少女「泣いてすっきりするって、こういう感じなのね」
男「そうそう」
少女「一つ勉強になりました」
少女「さすが、私より長く生きてるだけあるのね」
男「そんなに変わんねえよ」

83 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:12:57 ID:Fvyr7wBc
少女「ねえ……こっちからさ、現世に言いたいことは伝わるかな」
男「ん……どうだろう」
少女「あいつに、思いっきり叫びたいんだけど、色々と」
男「ああ、おれもだ」
少女「叫んだらさ、ちょっとは伝わるかな」
男「やってみようか」
少女「うん」
ガチャリ
天使「……?」

84 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:18:36 ID:Fvyr7wBc
男「おれは!! お前が好きだった!!」
男「ていうか今でも好きだ!!」
少女「ねえ!! いっつも一緒にいてくれて、ありがとう!!」
少女「大好き!! すっごく好き!!」
男「気付かなくて馬鹿な真似して御免!! 嫉妬して御免!!」
男「あんな死に方して御免!! 目の前で死んじゃって御免!!」
少女「あんたは悪くないよ!! むしろあんたを庇って死んだこと、胸を張れる!!」
少女「今までありがとう!! ずっと忘れないから!!」

85 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:26:20 ID:Fvyr7wBc
女『許してくれるまで……ずっと償い続けるから……』
男「気持ちだけで十分!! もうもらってる!! 十分!!」
少年『僕……君の分まで……一生懸命生きるから……』
少女「重いよ!! もっとリラックスして!! 気楽に元気に生きて!!」
女『御免ね……でも、ありがとう』
男「!!」
少年『ずっと忘れないから!!』
少女「!!」

86 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:32:55 ID:Fvyr7wBc
男「ありがとう……か」
男「そうだよ、『御免』なんかより、そっちの方がいい」
少女「忘れないで……いてくれるの……?」
少女「嬉しい……嬉しい!!」
天使「……」

88 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:38:48 ID:Fvyr7wBc
男「伝わったかな、気持ち」
少女「どうかなあ」
男「まあ、伝わんなくても、すっきりしたからいいか」
少女「そう!! 終わりよければすべてよし!!」
天使「……」
男「うおっと!! いつの間に」
少女「や!! びっくりした」
天使「ええ、ええ、邪魔してしまって申し訳ありません」

89 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:45:37 ID:Fvyr7wBc
天使「御二方、スクリーンをご覧ください」
男「ん?」
少女「なあに?」
天使「私からの、ささやかな悪戯です」
男「……?」
少女「……?」
男「うお!!」
少女「や!!」
『遺影がウインクした!!』

90 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:51:20 ID:Fvyr7wBc
天使「では、失礼します」
男「ははは、びっくりした」
少女「あんなん見たら、腰抜かすよね」
男「ははは、あいつ、ポカーンてしてる」
少女「あはは、あいつも目が点になってる」
男「でも、これで、伝わったかなあ」
少女「素敵なプレゼントだったね」
男「ああ」

91 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 00:56:30 ID:Fvyr7wBc
天使「あ、そうそう、忘れていました、仕事」
男「仕事?」
天使「大天使様がお呼びです」
天使「今から御二方とも、審判が下ります」
少女「ああ、そっかそっか」
少女「天国行きか地獄行きか」
男「へいへい、そうだったな」
天使「まあ、そんなに身構えなくて大丈夫ですよ」
天使「地獄で拷問を受けたり、なんていうのはありませんから」
少女「そっか」ホッ

92 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 01:06:27 ID:Fvyr7wBc
男「あのさ、生まれ変わりって、あるの?」
天使「ありますよ」
少女「じゃあ、またあいつと会える?」
天使「さあ、それは……貴方の頑張り次第ですね」
少女「ふうん?」
男「おっし、行こうか」
少女「うん」

93 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 01:09:27 ID:Fvyr7wBc
男「じゃあな!!」
女『……じゃあね』
少女「またね!!」
少年『……また、会えるといいな』
★おしまい★

95 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 01:25:41 ID:sPLU2nhc
乙はむはむ

96 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 01:33:04 ID:A8rLY8Dk
おつ

97 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 07:51:37 ID:K6AzUnwg
おつ

98 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/08(土) 11:15:22 ID:86Cb48Pg
おーつー