Part1
少女「記憶の中でずっと二人は生きていける」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1346681614/
1 :
HAM ◆HAM/FeZ/c2:2012/09/03(月) 23:13:34 ID:
roT2zndI
少女「……」
男「……」
少女「え、ここ、どこ??」
男「……あん?? なんだ、ここ」
少女「……」
男「……」
少女「あんた、誰」
男「お前こそ誰だよ」
2 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:20:10 ID:
roT2zndI
少女「あれ、私、死んだはずじゃあ」
男「あ、そういやおれも、死んだ気がする」
少女「……」
男「……」
少女「じゃあここ、天国??」
男「んん、地獄ではなさそうだけど」
少女「真っ白だね、この部屋」
男「地獄は真っ黒か赤いイメージだしなあ」
3 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:25:48 ID:
roT2zndI
少女「地獄に行くほど悪いこと、してないし」
男「ああ、おれもだよ」
少女「でも天国というには殺風景すぎるよね」
男「なんの部屋だろう」
少女「ドアも窓もないし」
男「あそこにノブだけあるぞ」
少女「死んだ人が来る部屋かなあ」
男「じゃあ、続々と後からもやってくるのか」
少女「うわ、いやだな」
男「死んだときの姿でってことはねえよな」
少女「やめてやめて!! 気持ち悪い!!」
4 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:33:01 ID:
roT2zndI
男「ちょっと、あのノブ回してくる」
少女「うん」
男「ん……」グイ
少女「どう??」
男「開かない」
少女「ま、そうでしょうね」
男「閉じ込められてんのかなあ」
少女「どうせ死んだんだし、どうでもいいよ」
男「さっぱりしてんなあ」
5 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:40:32 ID:
roT2zndI
男「君、いくつ??」
少女「14」
男「死ぬには若すぎないか」
少女「そっちだって、たいして変わんないじゃん」
男「まあ、そっか」
少女「あんた、いくつ」
男「18」
少女「受験のストレス??」
男「おい、自殺だと決めつけんな」
6 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:44:40 ID:
roT2zndI
少女「違うのか」
男「違うよ、事故だよ事故」
少女「事故かあ、私も一緒」
男「車??」
少女「うん、交差点でね」
男「そっか、痛かった??」
少女「覚えてないよ」
少女「知らないうちにこの部屋に来てた」
男「そっか」
7 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:51:59 ID:
roT2zndI
少女「あんたも車の事故??」
男「いや、学校の屋上から落ちて」
少女「それ自殺じゃん!!」
男「いや、違うんだって、友だちと、その、じゃれあってたらさ」
少女「付き落とされたの!? 殺人じゃん!!」
男「いや、違う違う」
少女「犯人はその友だちじゃん!!」
男「違うって」
8 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:55:50 ID:
roT2zndI
少女「痛かった??」
男「覚えてない」
男「ふわっと落ちてる間に気を失ったんだと思う」
男「あーこれ死ぬわ、って思ってるうちに、この部屋に来てた」
少女「楽に死ねて、良かったんじゃない」
男「んん、不幸中の幸いというか」
少女「あ、それ、まさにその言葉が合うね」
9 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/03(月) 23:59:47 ID:
roT2zndI
男「なんだろう、この、死んだはずなのに実体がある違和感」
少女「ね」
少女「夢って感じでもないし」
男「ドッキリ??」
少女「誰がそんなこと仕掛けるのよ」
男「共通の知り合いが……」
少女「いるわけないじゃん」
男「実はおれたちには血のつながりが……」
少女「安いドラマかい」
15 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 20:17:41 ID:
VUvGM1Dw
男「でも、死んだっぽいのは本当だと思うんだよなあ」
少女「私も」
男「あ、そうだ、君はなんで死んだの?」
少女「だから、交差点で、車が突っ込んできて」
男「余所見でもしてたの?」
少女「私が? 運転手が?」
男「君が」
少女「ああ、いや、余所見って言うか……」
男「ん?」
少女「友だちがさ、危なかったのよ」
16 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 20:22:03 ID:
VUvGM1Dw
男「友だち?」
少女「そう」
少女「一緒に交差点を歩いてた友だち、ね」
男「ふうん」
少女「で、そいつを突き飛ばして、代わりに私が轢かれたっていうか」
男「自分が犠牲になって友だちを助けたわけか」
少女「ああ、うん、結果的にはそうなんだけど、そんな風には考えてなかったし」
男「美しい友情だな」
少女「ううん、そういう風に言われてもなあ」
少女「無我夢中だっただけだから」
17 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 20:28:09 ID:
VUvGM1Dw
男「じゃあ間違いなく天国行きだな」
少女「んー」
男「まだ若いのに、良くできた子だ」
少女「もう、その上から目線の言い方、やめてくんない」
少女「あんたもまだ若いでしょうに」
男「『でしょうに』っていう言い方は、若くないな」
少女「うるっさい!!」
男「大人ぶってるのか?」
少女「違う!! お姉ちゃんの影響だっつうの」
男「お姉ちゃんがいんのか」
少女「そうよ、私より何倍も何倍も良くできるお姉ちゃんよ!!」
男「なに怒ってんだよ」
18 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 20:37:54 ID:
VUvGM1Dw
少女「怒ってなんかない」
男「いつも優秀な姉と比べられたのか」
少女「……」
男「図星か」
少女「わかんないわよ、あんたには」
男「わかるよ」
少女「適当なこと言わないで」
男「おれにも優秀な兄がいたからなあ」
少女「……そう」
19 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 20:49:11 ID:
VUvGM1Dw
少女「でもまあ、私じゃなくてお姉ちゃんが死んでたら、もっと辛かっただろうし」
男「……」
男「なんで」
少女「代わりに私が死んでたらよかった、みたいに言われたり」
男「やめろって」
少女「聞いたの、あんたじゃん」
男「ん、そうだけどさ」
少女「あんたも、同じこと思ってるんじゃない?」
男「死んだのが兄貴の方じゃなくてよかった、てか」
少女「……うん」
男「はっ」
20 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 20:55:09 ID:
VUvGM1Dw
男「誰かの代わりに死ぬ、なんてのは死ぬ側の身勝手な妄想だ」
男「そんな現実はないんだよ」
男「死んだのはおれ!! 兄貴に代わりでもなんでもなく」
男「ただただ平凡なおれという人間が死んだだけ!!」
少女「……そうね」
男「君もだよ」
男「姉ちゃんではなく君という人間が死んだんだ」
男「友だちの代わりに、ではなく、君個人が死んだんだ」
少女「……うん」
男「君は、あれだろ、友だちがどう思っているかを気に病んでいるんだろ」
少女「……」
21 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 21:02:41 ID:
VUvGM1Dw
男「私の代わりに、あの子が死んじゃった、どうしよう」
男「そんな風に友だちが思ってないか、心配してるんだ」
少女「……」
男「優しい子だね、君は」
少女「女の子じゃないの」
男「あん?」
少女「男の子よ、その友だちって」
男「あ、そう、そりゃあ早合点してたな」
22 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 21:08:38 ID:
VUvGM1Dw
少女「今どう思ってるかな、って、ちょっと不安になる」
男「……わかるよ」
少女「あのねえ、さっきからさあ、なんか人を見下してない?」
少女「私の気持ちがわかるって言うの?」
男「わかるよ」
少女「どうしてよ」
男「おれも、似たような死に方をしてるからだよ」
少女「ん……」
24 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 21:14:56 ID:
VUvGM1Dw
少女「そ、そう」
男「自分の死のことを、自分のせいだ、なんて重荷に思ってほしくない」
少女「……」
男「だけど、なにも感じていないのも寂しい」
少女「……」
男「そういう、曖昧な感じだろ」
少女「……なんで、わかるの?」
男「だから言ったろ、おれも同じような死に方をしたんだって」
25 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 21:27:03 ID:
VUvGM1Dw
少女「どんな?」
男「屋上でさ、友だちとじゃれあってたって、言っただろ」
少女「うん」
男「友だちのさ、ハンカチがさ」
少女「ハンカチ?」
男「そう、気に入らなくてさ、取り上げて」
少女「取り上げて? あんたガキじゃないの!?」
男「おっしゃる通り」
少女「友だちのハンカチを気に入らないからって?」
少女「そんなのその人の勝手じゃん!!」
男「おっしゃる通り」
26 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 21:33:43 ID:
VUvGM1Dw
少女「はあ、ちょっと意味わからない」
男「あの、その友だちってのはさ、女でさ」
少女「ああ」
男「別の男からもらったプレゼントらしくてさ」
少女「はあ」
男「なんつーか、嫉妬って言うか」
少女「その女の人、あんたのなんなのよ」
男「……友だち」
少女「じゃあ、あんたに嫉妬される筋合いはないじゃんか」
男「……おっしゃる通り」
27 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 21:40:15 ID:
VUvGM1Dw
少女「片思いってわけね」
男「うん」
少女「で、他の男のプレゼントに嫉妬して、取り上げて、それで?」
男「屋上で走り回って、バランス崩して」
少女「ハンカチは?」
男「握りしめたまま、落ちた」
少女「もう、なんていうか、最低な死に方ね」
男「返す言葉もないよ」
少女「その人にしてみたら、ほんと、5割増しで最低ね」
男「……はあ」
28 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 21:54:19 ID:
VUvGM1Dw
少女「わからないでも、ないけどね」
男「嘘つけよ」
少女「慰めで言ってるんじゃないよ」
少女「私も、そうだったもん」
男「はあ?」
少女「その男の子のこと、好きだったもん」
男「……」
少女「だから、自分の命のことなんか、全然考えてなかったもん」
男「……」
少女「あいつが死んだら嫌だって、そんなことしか、考えてなかったもん」
29 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/04(火) 22:04:34 ID:
VUvGM1Dw
少女「付き合ったりとかじゃなかったけど、でも、それでもいいっていうか」
少女「一緒に帰れるだけで、嬉しかったし」
少女「一緒にいられるだけで良かったんだもん」
男「……」
少女「大袈裟じゃなく、あいつじゃなくて、死んだのが私でほんと良かった」
男「……」
男「それって……」
ガチャリ
少女「!!」
男「!!」
31 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/05(水) 19:29:17 ID:
SMJlWAL.
少女「ドアが……開いた?」
男「……」
?「失礼します」
?「御二方、御自分の状況を把握しておられますか?」
少女「……は、はあ」
男「死んだってことくらいは、まあ」
?「ええ、十分です」
少女「あの、ここはなんなんでしょうか」
男「ああ、それ、それを聞きたかった」
32 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/05(水) 19:34:56 ID:
SMJlWAL.
?「ここは、天国と地獄の間です」
少女「はあ」
男「なるほど?」
?「正確には、天界と冥界の間です」
少女「うん?」
男「な、なるほど?」
?「まあ、簡単に言いますと、天界へ行くか冥界へ行くか、その審判の待合室です」
少女「ああ、それが一番わかりやすい」
33 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/05(水) 19:39:59 ID:
SMJlWAL.
男「いつまで待ってりゃあいいの?」
?「ええと、今は待っている人が少ないので、一日もあればどちらも呼ばれると思います」
少女「一日!?」
男「それって遅いんじゃないの?」
?「人死にが多いと、何日も待つ場合もありますので」
少女「はあ」
男「よくわかんねえけど、呼ばれるまで待ってたらいいのか」
?「ええ」
少女「貴方は天使?」
天使「ええ、そういう役割を仰せつかっております」
男「天使ね、実在するとは」
34 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/09/05(水) 19:41:21 ID:wj8Z2QBo
支援