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幼女「お医者さんごっこするれす」 メイド「嫌です」
Part6


88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 22:34:07.85 ID:2Fo7mvAb0
シスター「やっぱりそうです、昏睡症状にあった人達に、貴方は毎日触れていた!」
シスター「毎日毎日毎日毎日、触れて声をかけて生気を吸い取っていた!」
シスター「つまり女医さんが死んだのは……」
幼女「……ち、ちがうれす」
シスター「……貴女のせいです」
幼女「ちがう!」
シスター「……貴女のせいでゾンビになった」
幼女「違う違う違う!」
幼女「わ、私は、ただ、お母様みたいな」
幼女「お母様みたいなお医者様になりたくって!」
シスター「……そうですか、じゃあ」
シスター「貴女のその、お医者さんごっこのせいで」
シスター「みんなこうなったんですね」
幼女「あ……」

89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 22:34:40.91 ID:2Fo7mvAb0
「駄目ですお嬢様、お医者さんごっこは、もうおしまいです」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 22:42:09.27 ID:2Fo7mvAb0
幼女「あ、あああ、あああああ、私は、私は、違う!違う違う!」
シスター「……きっと、女医さんの患者達もゾンビになってるのでしょう」
シスター「探して、始末しないと……」
女医「……」ボー
シスター「女医さんも、今、解放してあげますから……」
ザクッ
女医「……」ビクンッ
幼女「あ……」
シスター「聖別された杭です、頭を挿しましたので、もう蘇る事はありません」
幼女「おかあ、さま……」
幼女「や、やだ、おかあさま、おかあさまぁ!」ジタバタ

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 22:47:35.56 ID:2Fo7mvAb0
シスター「さあ、患者達の家を教えてください」
幼女「お母様お母様お母様お母様!やだやだやだ!」
シスター「……うるさいですね、アンデッドの分際で」グググッ
幼女「ぐっ、ひゅっ、く、くるしい、くるしいよお、おかあさま……」
シスター「苦しい?そんなはずはないでしょう、貴方は死んでるのですから」
シスター「苦痛なんて感じるはずがない」
シスター「そう思い込んでるだけです」
幼女「た、たすけ、て……」
シスター「あら、私の生気を吸おうとしてますね」
シスター「無駄ですよ、私はこれでも聖職者です、吸生に対する耐性があります」
シスター「諦めなさい、アンデッド」
シスター「貴女はどうせここで潰えるのです」

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 22:49:27.96 ID:2Fo7mvAb0
「意識が、薄くなってくるれす」
「この人は苦痛なんて感じるはずないって言ってたのに」
「痛いれす、苦しいれす、悲しいれす、泣きたいれす」
「どうしてこんな」
「私は、私はただ」
「望んだだけなのれす」
「それだけ、なのに」
「視界が……歪んで……」
「もう……」

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 22:50:24.32 ID:2Fo7mvAb0
ガツンッ

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 22:58:11.58 ID:2Fo7mvAb0
「ものすごい音と共に、私は解放されたれす」
「思わず尻もちをついてしまったれす」
「顔を上げると、メイドが立っていたれす」
「こちらに背を向けて、立っていたれす」
「その向こうに」
「首から血を吹く」
「シスターだったものが」
「……」
「……」
「ぐちゃり、ぐちゃりと音がするれす」
「誰かが誰かを咀嚼している音が」
「その音を聞きながら」
「私は悟ったのれす」

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:00:26.04 ID:2Fo7mvAb0
「私の将来の夢は立派なお医者さんになることです」
「共和国屈指の名医であるお母様みたいになりたいのです」
「なりたかったのです」
「けど、その夢はもう絶対に」
「叶う事はありません」

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:05:06.67 ID:2Fo7mvAb0
〜街道〜
〜上空〜
蝙蝠娘「これはどうした事デスか」
蝙蝠娘「町で戦闘が起こっているデス?」
蝙蝠娘「町人達が医療師団を襲っているデス?」
蝙蝠娘「いや、医療師団が町に火を放っているようにも見えるデス」
蝙蝠娘「確認に向かうべきデスか……」
ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
蝙蝠娘「ぷぷっ、雪が……」
蝙蝠娘「予想よりも早く嵐が来てるようデス」
蝙蝠娘「……今町に向かうと、閉じ込められてしまうかもしれまセン」
蝙蝠娘「ここは駐屯所に戻って軍に報告すべきデス」
蝙蝠娘「隊長、御武運を……!」バッサバッサ

97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:09:37.37 ID:2Fo7mvAb0
「町にいる医療師団はすぐに状況を理解したれす」
「町にいるゾンビを探して一匹ずつ焼き始めたれす」
「あの子達は、私の言いつけを守って動けないれす」
「私が大人しく寝ていろと、毎日声をかけて回っていたから」
「だから、反撃すらしないで燃やされているれす」
「お母様の患者なのに」
「私が守ってきた子たちなのに」
「私は、声をかけたれす」
「彼らに呼び掛けたのれす」
「自分の身を守れ、と」
「お母様の家に集まれ、と」
「力を自覚した私には、それが出来たのれす」

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:11:22.17 ID:2Fo7mvAb0
「町は大混乱になったのれす」
「色んな所で火の手が上がって」
「色んな所で悲鳴が聞こえたれす」
「それを聞いても、私は不思議と心が痛まなかったのれす」
「結局、あのシスターが言った通りなのれす」
「私の身体は、心は、とっくの昔に」
「死んでいたのだと思うのれす」
「けど……」

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:15:17.65 ID:2Fo7mvAb0
「それでも、患者たちを見捨てられなかったのれす」
「助けてあげたかったのれす」
「アンデッドになったとしても」
「そのまま燃やされるのはかわいそうだったのれす」
「だから、彼らを連れて逃げる事にしたのれす」
「軍属の医療師団の隊長を殺してしまったのれす」
「遅かれ早かれ、この町には軍の討伐隊がやってくるれす」
「ここにいては、先は見えないのれす」
「今なら」
「嵐が来て町が再び雪に閉ざされる今ならば……」
「きっと、逃げる事が出来るのれす」

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:18:07.33 ID:2Fo7mvAb0
「お母様の家は、燃やしたのれす」
「お母様の死体ごと、燃やしたのれす」
「その火は、とても」
「とても温かかったのれす」
「けど、きっとそれは思いこみなのれす」
「私には、もうそんな感覚は無いはずなのれす」
「ないはずなのれす」
「だから、頬を流れる涙の温かさも」
「きっと紛い物なのれす」

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:22:16.96 ID:4XrRZqcA0
神様仕事しろよ……

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:29:35.69 ID:2Fo7mvAb0
「気がつくと、メイドが手を繋いでくれていたのれす」
「気がつくと、猫が足元にいてくれたのれす」
「けど、これに意味は無いのれす」
「きっと生前の習慣でそうしてるだけ」
「彼女達が私を想ってくれているなんて事実は存在しないのれす」
「そんな事を受け入れる資格は」
「自分にはないのだから」
「私達は、患者達と一緒に、町を去り南に向かったのれす」
「邪法に寛容な帝国に逃げ延びれば、もしかしたら私達を受け入れてくれる所があるかもしれないのれす」
「そう信じて、嵐の中を進んだのれす」
「雪の中を進んだのれす」
「前も見えないほどの雪の中を」
「あの時みたいに」
「患者達は、次々と凍りついて、動けなくなったれす」
「31軒目にいたあの女の子も、雪に沈んでしまったのれす」
「ああ、この嵐は何時やむのでしょう」
「何時まで私の前に立ちふさがるのでしょう」
「それでも私は」
「信じて進むしかありません」
「私のせいで死んでしまった彼女達が」
「幸せに暮らせる場所があると信じて」
「平穏に暮らせる場所があると信じて」
「信じて」
「……」
「……」

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:32:43.09 ID:2Fo7mvAb0
〜帝国領〜
将校「死霊術師様」
幼女「……なんれすか」
将校「寝てらしたので?」
幼女「そんな事ないれすよ」
幼女「死霊術師は寝ないし、夢も見ないのれす」
将校「そ、そうでしたか」
幼女(と、言っておいた方がハクがつくのれす)
幼女(舐められたら終わりれすからね)
幼女「……」
幼女(それにしても、懐かしい夢を見たのれす)
幼女(あれから何十年経ったっけ)

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:37:44.10 ID:2Fo7mvAb0
幼女(結局、あれから私達は帝国領に逃げ延びる事が出来たのれす)
幼女(最初は色々と苦労したけど、軍との交渉に成功してからは比較的穏やかな暮らしが続いてるれす)
幼女(立派なお屋敷も貰ったれすしね)
幼女(……まあ、要所要所でコキ使われてるれすけど)
将校「死霊術師様、次の任務なのですが……」
幼女「はいはい、判ってるれす、南の森林地帯を攻めるれすね」
将校「はい、すでに計画は進められています」
将校「国境線には十分な量の死体を用意する事が出来ました」
将校「あとは、死霊術師様が出向けば……」
幼女「判ったれす、準備するから待つのれす」
将校「はっ!」

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:40:45.30 ID:2Fo7mvAb0
幼女「メイドー、メイドー」
メイド「……」フラッ
幼女「仕事に行くれす、着替えを手伝ってほしいれす」
メイド「……」コクン
幼女「……」
メイド「……」ゴソゴソ
幼女「もう、残ってるのは私達だけれすねえ」
メイド「……」ゴソゴソ
幼女「患者達も、猫も、もう誰も居なくなってしまったれすし」
メイド「……」ゴソゴソ
幼女「……メイドは、頑丈だから」
幼女「まだ、大丈夫れすよね」
メイド「……」
幼女「……ねえ、お医者さんごっこ、したいれす」
メイド「……」コクン

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:42:21.48 ID:2Fo7mvAb0
幼女「……」ギュー
メイド「……」ボー
幼女「……うん、何時も通りなのれす」
幼女「脈なし、心臓の音もしない、けど」
幼女「……けど、なんだかとっても」
幼女「あたたかいのれす……」
幼女「……」
幼女「よし、ではお仕事、頑張ってくるれす」

107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:44:50.72 ID:2Fo7mvAb0
幼女「大人しく、待ってるれすよ」
メイド「……」コクン
幼女「人を食べたりしちゃ、駄目れすよ、騒ぎになると厄介れす」
メイド「……」コクン
幼女「私の恰好、可愛いれすか?」
メイド「……」コクン
幼女「じゃあ、少しかがむのれす」
メイド「……」コクン
幼女「……」
メイド「……」
幼女「じゃあ、行ってきます」チュッ

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:46:39.80 ID:2Fo7mvAb0
彼女が部屋を去るのを。
メイドは棒立ちのままで見送った。
何時も通りの出来事。
何時も通りの反応。
何時も通りの彼女。
その口が、少し開いて。
空気が漏れた。
イッテラッシャイマセ
オジョウサマ

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 23:47:30.04 ID:2Fo7mvAb0
これは、お医者様になりたかった女の子のお話。
これは、お医者様になれなかった女の子のお話。


110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/17(火) 00:04:10.68 ID:52x/VSR3O
おつ、前作も見たよ

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/17(火) 00:14:52.16 ID:ENBzZwOA0
この世界の神様、職場放棄した模様

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/17(火) 07:41:45.06 ID:tJ89fZwQO
狙撃手の繋がりだったのか

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/18(水) 02:40:43.93 ID:qWA/2KIK0
ため息しか出てこない
本当に悲しくも儚い名作だ