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幼女「お医者さんごっこするれす」 メイド「嫌です」
Part4


50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 19:52:31.72 ID:2Fo7mvAb0
メイド「さあ、今日はもうお休みしましょう」
幼女「……」
メイド「大丈夫です、ご主人様は私が見ていますので」
幼女「……」
メイド「ほら、参りましょう、ね?」
幼女「……」コクン
メイド「流石はお嬢様です」

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:01:51.57 ID:2Fo7mvAb0
〜深夜〜
幼女「なーんて、そんなに物分かりがよいはずないじゃないれすか、この私が」
幼女「メイドが手伝わないなら私が1人でやってやるのれす」
幼女「さっきこっそり手に入れておいたお母様が書いたカルテを参考に……」
幼女「ううう、読めない字が多いれす」
幼女「けど、名前くらいは判るれす、みんな見た事ある人れす」
幼女「患者は皆、家からそんな離れてはいないし……これならいけるのれす」
幼女「お母様からもらったコートを着て、と」
幼女「よーし、出発なのれす!」

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:05:19.67 ID:2Fo7mvAb0
「外に出ると、凄い吹雪だったのれす」
「隣の建物の屋根も、もう殆ど見えないのれす」
「コートを着てるのに、寒くて寒くて」
「何度も引き返そうと思ったのれす」
「けど、我慢したのれす」
「何度も雪に足を取られたのれす」
「けど、何度も這いだしたのれす」
「何度も道を間違えたのれす」
「けど、何度もやり直したのれす」
「作り置きの流動食が入ったリュックを背負って」
「何度も何度も頑張ったのれす」
「その甲斐あって、患者さんの家にたどり着けたのれす」

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:08:32.57 ID:2Fo7mvAb0
「屋根にある出入口から家の中に入って」
「部屋でベットに横たわってる患者さんを見つけて」
「雪を溶かして水にして」
「凍りついた流動食を口に含んでとかしてあげて」
「患者さんに与えてあげたのれす」
「患者さんは、意識がなかったのれす」
「けど、私が水と流動食を上げると、ぴくりと動いたのれす」
「生きているのれす」
「この人の血は、まだ身体をめぐっているのれす」
「苦労してここまで来た甲斐があったのれす」
「頑張った甲斐があったのれす」

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:11:59.02 ID:2Fo7mvAb0
「後片付けをして、屋根の出入口から外に出て」
「雪は相変わらず嵐のように降り注いでいたのれす」
「そこで私は気付いたのれす」
「まだ……1軒目なのれす」
「まだ30軒近い家に」
「患者さんが」
「……」
「……」
「……」
「私、1人で、全部?」
「そんな事が、できるの?」
「そんな事、が」

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:12:57.33 ID:2Fo7mvAb0
「お医者さんごっこは、もうおしまいです」

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:14:59.78 ID:2Fo7mvAb0
「メイドの言葉が頭をよぎったのれす」
「……違う、のれす」
「ごっこじゃないのれす、私は」
「私は、ごっこがしたいんじゃないのれす」
「助けてあげたいのれす」
「みんなを、助けてあげたいのれす」
「お母様が助けようとした患者さんを、みんな、みんな……」
「だから……」

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:21:28.86 ID:2Fo7mvAb0
「進んだのれす、私は1人で」
「二軒目、三軒目、四軒目」
「雪は止まないのれす」
「何時も駆け回っていたはずの道は雪に埋まって」
「まるで違う世界みたいに」
「五軒目、六軒目、七軒目、八軒目」
「指が冷たいのれす、色が変なのれす」
「耳の感覚がない気がするのれす」
「ちゃんとくっついてるのか、不安なのれす」
「九軒目、十軒目、十一けん目、十二軒め、十三けん……め……」
「なぜか、猫の声が聞こえたのれす」
「あの時の、猫なのかもしれないのれす」
「キセキみたいに動き始めたあの猫の」
「そうなのれす、私は、あの時、確かに1つの」
「1つの命を救ったのれす」
「私がぎゅっとして、温めてあげたら」
「あの猫は動きだしたのれす」
「だからきっと、今回も」
「じゅうよんけんめ、じゅうごけんめ」
「やっと、はんぶんなのれす」
「けど、足が、もう」

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:23:43.58 ID:2Fo7mvAb0
「あしが動かないのれす」
「そのままもつれて、倒れてしまったのれす」
「ああ、雪が」
「雪が私の上に」
「つもって、くるのれす」
「まだ、まだ残ってるのに」
「いくべきばしょが」
「かんじゃさんの」
「いえに」
「いかない」
「と」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:27:53.06 ID:2Fo7mvAb0
幼女「……はっ」
幼女「あれ、ここは……」
幼女「16軒目の患者さんの家?」
幼女「私は確か、途中で倒れて……」
幼女「……」
幼女「何だか、調子がよいのれす」
幼女「というか、身体がほかほかなのれす」
ニャー
幼女「あれ、お前は……」
猫「ニャー」
幼女「ひょっとして、あの時の猫?」
幼女「もしかして、お前が連れて来てくれたのれすか?」
猫「ニャア」
幼女「そうれすか、良い子れすね」ナデナデ

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:29:25.32 ID:2Fo7mvAb0
幼女「よし、何だか調子がよいのれす」
幼女「このままドンドン行くのれす!」
猫「ニャア」
幼女「ようし、お前も付いてくるれすか?」
猫「ニャア」
幼女「けど、お前、まえみたいに生き倒れにならないれすか?」
猫「ニャア」
幼女「……まあいいれす、その時はまた私が助けてあげるのれす」

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:39:56.34 ID:2Fo7mvAb0
「患者さんを見つけて、水と流動食を上げて、顔を見てあげて」
「大丈夫れす、と声をかけてあげると、皆反応してくれるのれす」
「17軒目、18軒目、19軒目、20軒目、21軒目」
「雪の中を進むのれす、寒くて辛いけど、さっきと比べるとマシなのれす」
「雪が優しくなった気がするのれす」
「22軒目、23軒目、24軒目、25軒目、26軒目」
「コートの中で猫がニャアと鳴いたのれす」
「この子にも、ご褒美をあげないといけないのれす」
「27軒目、28軒目、29軒目、30軒目、31軒目」
「最後の患者さんは、私と同じくらいの女の子だったのれす」
「家族の人たちも、みんな意識を失ってるみたいだったのれす」
「だから全員に水と流動食をあげたのれす」
「ちゃんと、声をかけてあげたのれす」
「がんばるのれす、春になればきっと助かるのれす」
「だから、今はしっかり寝ておくのれす」
「寝ておくのれす」

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:43:13.27 ID:2Fo7mvAb0
〜自宅〜
幼女「はぁ……はぁ……た、ただいまなのれす」
幼女「ううう、寒いのれす、メイドー、暖かいお茶を……」
幼女「そうだったのれす、メイドはお母様の部屋に」
トテトテトテトテ
幼女「メイドメイドー、出てくるのれす!」
幼女「お母様も、きっと喜ぶのれす!」
カチャッ
幼女「メイドー!」ドタバタ

63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:46:38.01 ID:2Fo7mvAb0
メイド「……」
幼女「メイド、聞くのれす、私やったのれす!」
メイド「……」
幼女「お母様の患者を助けてきたのれす!メイド!」ユサユサ
メイド「……」
幼女「メイド?寝てるのれすか?メイド?」ユサユサ
メイド「……」
幼女「起きるのれす、メイド」ユサユサ
メイド「……」フラッ
バタン
幼女「……あれ」
メイド「……」
幼女「あれ……」

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:52:05.82 ID:2Fo7mvAb0
幼女「メイド、床で寝ちゃだめなのれす」
幼女「メイド?」ユサユサ
メイド「……」
幼女「怒ってるのれすか、私が勝手に外に出たから怒ってるのれすか」
幼女「ご、ごめんなさいなのれす、謝るのれす」
幼女「だから返事してほしいのれす」ユサユサ
メイド「……」
幼女「……メイド?」
猫「ニャア」
幼女「メイド……」

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:55:44.70 ID:2Fo7mvAb0
「メイドも昏睡症状が出てしまったのれす」
「お母様と同じ症状なのれす」
「きっと発症が遅れたのは、メイドが人より頑丈だったからなのだと思うのれす」
「もしくは、我慢していたのれしょうか」
「けど……けど、大丈夫なのれす」
「私が助けてあげるのれす」
「春まで私がちゃんと、面倒を見てあげるのれす」
「きっと、私にはそれが出来るのれす」
「だって、今日、私は31軒の家でそれをしてきたのだから」

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 20:57:28.88 ID:2Fo7mvAb0
「一日目」
「メイドとお母様にご飯をあげるのれす」
「因みに、メイドは私の部屋のベットに寝かせておいたのれす」
「重かったのれす」
「それから患者の家を巡って、皆にご飯を上げて、声をかけてあげたのれす」
「みんな、ちゃんと反応してくれたのれす」
「生きているのです」
「私は今日もやり遂げたのれす」

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 21:02:47.35 ID:2Fo7mvAb0
「三日目」
「お母様とメイドにご飯をあげたのれす」
「2人とも、少しだけ反応してくれるけど、何も喋ってくれないのれす」
「寂しいけど、春までの辛抱なのれす」
「町に行って、患者の家を回るのれす」
「何度も往復しているからか、コートがドロドロになってしまったのれす」
「春になったらお母様に頼んで、洗って貰わないと」
「今日もちゃんと出来たのれす、いっぱい頑張ったのれす」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 21:06:45.14 ID:2Fo7mvAb0
「七日目」
「お母様とメイドにご飯をあげたのれす」
「メイドの胸に耳を当ててみたのれす」
「もう殆ど聞こえないのれす」
「このまま消えてしまうんじゃないかと心配なのれす」
「怖くてたまらないのれす」
「けど、私にやれる事はこれしかないのれす」
「これしか」
「ああ、はやく」
「早くお医者さんになりたい」
「そうすれば」
「そうすればもっと……」
「……」
「……町に出て患者の家を回ったのれす」
「ちゃんと出来たけど、嬉しくなくてすぐに寝たのれす」