幼女「お医者さんごっこするれす」 メイド「嫌です」
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Part3
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 17:16:02.07 ID:
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〜数日後〜
女医「いやあ、雪、やまないねえ」
幼女「やまないれすねえ」
メイド「渓谷の橋は先日崩れてしまいましたし、街道の方も雪で埋まってるようですね」
女医「事実上、この町は隔離されちゃったってわけか」
メイド「大丈夫ですよ、食料も燃料もマキも十分な在庫を仕入れています」
幼女「お母様もいるしメイドもいるし、冬籠りの準備は万端れす」
女医「井戸水の温度は大丈夫?」
メイド「はい、例年もより少し温度が高いくらいです」
女医「……高い?」
メイド「ほんの2度くらいですが」
女医「……」
幼女「お母様?」
女医「あ、いや、何でもないよ」ナデナデ
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 17:22:30.46 ID:
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ドンドンドンッ
幼女「うわあ、びっくりしたれす……」
メイド「誰か来たようですね」
女医「こんな雪の中を?」
メイド「少し様子を見てきます」スタスタ
幼女「寒いのに御苦労様なのれすね」
女医「……」
メイド「ご主人様、町長さんが話があると」
女医「……判りました、今行きます」
幼女「お母様?」
女医「大丈夫、貴方は家で待っててね?」
幼女「……はいなのれす」
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 17:26:18.17 ID:
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「町長の話は、深刻だったのれす」
「隣町で起こっている昏睡症状がこの町でも発生したとの事だったのれす」
「最初は数人だけだったのれす」
「けど、少しずつ、少しずつ、昏睡者が増えてきたのれす」
「お母様は、忙しく駆け回ったのれす」
「メイドも、お手伝いしたのれす」
「私は、家で待つことしかできなかったのれす」
「それしかできなかったのれす」
「ああ、早く」
「早くお医者様になりたいのれす」
「そうすれば」
「そうすれば」
「お母様の手助けができるから」
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 17:32:46.72 ID:
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幼女「おつかれさまなのれす」
幼女「まあ、お茶でも飲むのれす、暖かいのれすよ」
メイド「ああ、お嬢様、ありがとうございます」
メイド「……」フーフー
幼女「それで、様子はどうなのれすか」
メイド「……あまり、良くはないですね」
メイド「今のところ、患者は30人程度です」
メイド「我が家に収容できる人数ではないので、それぞれの家で安静にしてもらっています」
幼女「思ったよりも少ない?」
メイド「これは判っている範囲だけなのです」
メイド「町は今、雪で半分以上埋まってますし」
メイド「もしかしたら、私達が調べられなかった家々で被害が広がっている可能性も……」
幼女「そう、れすか……」
メイド「けど、大丈夫ですよ、ご主人様がいますから」
メイド「今も皆の家を回って診察してらっしゃいます」
幼女「お母様、無理しないといいのれすけど……」
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 17:36:34.36 ID:
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幼女「あ、雪がやんでるのれす」
メイド「あら、本当ですね……さっきまでは吹雪いていたのに」
幼女「少しだけ、外に出てもいいれすか?」
メイド「外は寒いですよ?」
幼女「お母様からもらったコートがあるから、へいちゃられす」
幼女「このままだと、今季はコート着て外を歩き買いがなくなってしまうれす」
メイド「……なら、少しだけ出てみましょうか」
メイド「私もご一緒いたしますので」
幼女「やったれす!」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 17:42:08.51 ID:
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〜外〜
幼女「ふー、二階の出入口を使うのは久しぶりなのれす」
メイド「一階の玄関はもう埋まってますからね、私達もここから出入りしています」
幼女「凄いのれす、他の家も雪で埋まってるれす」
メイド「足元に注意してくださいね、基本的に雪は固まってますが、空洞もありますので」
幼女「わーい♪」ピョン
ズボンッ
幼女「う、うわあ、沈むのれす、助けるのれす」
メイド「だから言ったのに……」
幼女「あ、あれ、何か手に当たるのれす……」
メイド「引っ張り上げますよ」
幼女「何れすかこれ、柔らかい?」
メイド「せーの……」
ヨイショッ
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 17:45:42.89 ID:
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メイド「ふう、何とか引き上げられましたか」
幼女「……」
メイド「お嬢様?」
幼女「猫さんだったのれす」
メイド「え?」
幼女「この子……」
メイド「……ああ」
猫「……」
メイド「まだ子供のようですね、何処かの家で飼っていた子が、外に出てしまったのかもしれません」
幼女「じゃあ、飼い主を探して帰してあげないとれすね」
メイド「……いえ、それは難しいかもしれません」
幼女「どうしてれすか」
メイド「……その猫は、もう死んでいるからです」
幼女「……え?」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 18:30:57.57 ID:
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メイド「子猫は身体が小さい分、寒さに弱いのです」
メイド「この寒空で、しかも雪に埋まっていたのですから」
メイド「恐らくは数時間も持たなかったのでしょうね」
幼女「……けど、まだ柔らかいのれす」
メイド「我々はもう少し早く外に出ていれば、もしかしたら助けられたのかもしれません」
幼女「……そう、れすか」
メイド「……」
幼女「……」
メイド「……このまま野晒にするのも不憫です」
メイド「春になったら、埋めてあげましょう」
幼女「……」コクン
メイド「今、何か袋を持ってきますね」
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 18:34:57.38 ID:
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メイド(……迂闊でした)
メイド(もう少しオブラートに包んで発言すべきでした)
メイド(手術室を覗いた時もそうでしたが)
メイド(お嬢様は大人びているとはいえ、まだ子供なのです)
メイド(生死についてまだ割り切れない事も多いでしょう)
メイド(今後は、気をつけないと……)
メイド「……」
メイド「お嬢様、袋をお持ちしました」
幼女「……」
メイド「お嬢様?」
幼女「ああ、メイド、御苦労さまだったのです」
メイド「あら、子猫はどうされたのですか?」
幼女「……」
メイド「お嬢様?」
幼女「子猫は……生きていたのれす、何処かへ行ってしまったのれす」
メイド「……生きていた?あれで?」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 18:36:49.37 ID:
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幼女「……雪が、また降ってきたのれす」
幼女「家の中に戻るれすよ、メイド」
メイド「あ、お待ちくださいお嬢様」
幼女「……」トテトテ
メイド「……」
メイド(あの猫は、生きていたのでしょうか)
メイド(どう見ても死んでいましたが、けど)
メイド(死体がないのですから、そうなのでしょう)
メイド(上手く飼い主の元に戻っていてくれると良いのですが)
メイド「……」
メイド「また吹雪きそうですね」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 18:54:00.92 ID:
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〜夜〜
女医「ただいま……」ハァハァ
幼女「お母様、お疲れなのれす?」
女医「う、ん、ちょっと疲れたかな……」ハァハァ
幼女「お母様?」
メイド「だ、大丈夫ですか、今温かい物をお持ちしますので!」
女医「ありがと、けどちょっと待ってメイドちゃん……」ハァハァ
メイド「は、はい?」
女医「今日からは、井戸水は使わないで……雪を、雪を溶かして使って……」ハァハァ
メイド「雪を?」
女医「うん、もう少し、早く気付くべき……だった……」ハァハァ
女医「この地域の井戸水は、地熱の影響で、温度が高い……」ハァハァ
女医「冬でも、凍りつく事は無いから、各家庭で水をくみ上げる方式になってる……」ハァハァ
女医「けど、今年は、時間帯によって、温度が違っているんだ……」ハァハァ
女医「通常より水温が高い時間帯に、水を汲んだ家で、昏睡状態が起こっていの……」ハァハァ
女医「多分、この井戸水の中に……原因が……」ハァハァ
幼女「お母様、お母様」ユサユサ
女医「ごめんね、私も、症状が出てるみたい……」ハァハァ
女医「けど、けどね、さっき雪が止んだ時に……隣町にいる医療師団へ連絡しておいたから……」ハァハァ
女医「きっと、彼女達が、治療方法を発見してくれるはず……」ハァハァ
女医「雪がやめば、助けが来るわ……」ハァハァ
女医「だから、それまで、頑張れ……ば……」ガクッ
女医「お母様!」
メイド「ご主人様!」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 19:18:11.23 ID:
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〜隣町〜
〜医療師団駐屯所〜
シスター「治療薬は町の方達に行き渡りました、これでこちらは安心ですね……」
シスター「それもこれも女医さんの連絡のお陰です……」ウットリ
シスター「問題は……女医さんがいらっしゃる街の方ですね」
蝙蝠娘「先ほど街道付近を偵察しましたが、、駄目デスね、街道は全て埋まってるデス」
蝙蝠娘「地を這う人間では進むのは無理デスね」
シスター「何とかなりませんか、我々は至急、治療薬を届けなければならないのです」
蝙蝠娘「この地方の雪は深いデスからね、春まで待たなければ難しいカト」
シスター「貴女一人なら行けるのではないですか?」
蝙蝠娘「勘弁してほしいデス、私達は本来寒さに弱いのデスよ」
蝙蝠娘「この吹雪の中を長時間跳んだりしたら、途中で冬眠してしまいマス」
蝙蝠娘「それに、女医さんから音波魔法で連絡が来た時、私がいないと誰も受信できないデスよ」
シスター「それはそうですが……」
シスター「あれ以来、女医さんから連絡は無いのですよね?」
蝙蝠娘「はい、こちらの音波魔法を受信された形跡もありまセン」
シスター「……心配です」
シスター「心配です心配です心配です、ああ、どうしてあの時、彼女を引き止めなかったのか」
シスター「無理やりにでもお引き留めしておけば……あああ……」ヨヨヨ
蝙蝠娘「相変わらず、隊長は女医さんの事となると眼の色が変わりますネ」
シスター「当然です、あんな素敵な人は他にいません」
シスター「無邪気で可愛くて、それでいて仕事の時は恰好よい」
シスター「あれで一児の母とか、考えられません」
蝙蝠娘「はぁ」
シスター「こうなったら私1人で……」
蝙蝠娘「軍務放棄したら流石に擁護できませんヨ」
シスター「ぐぐぐ」
蝙蝠娘「大丈夫デスよ、あと1カ月もすれば寒気も去りマス」
蝙蝠娘「それまでの辛抱デス、今は女医さんを信じまショウ」
シスター「……仕方ありませんね」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 19:30:19.32 ID:
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〜女医の寝室〜
女医「……」
幼女「お母様、眠ってしまったのれす」
メイド「……」
幼女「けど、けど大丈夫なのれす、ちゃんと栄養を補給してお水を飲ませてあげれば」
幼女「きっと、きっと春まで頑張れるのれす」
幼女「そうすれば……」
メイド「……はい、医療師団が来て下さるはずです」
幼女「……そうなのれす」
メイド「頑張りましょう、お嬢様」
幼女「任せるのれす!」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 19:43:01.30 ID:
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幼女「メイド、お母様の書いたカルテを持ってきてほしいのれす」
メイド「……」
幼女「メイド?」
メイド「あ、はい、聞こえています……カルテ、でしたか?」
幼女「そうなのれす、お母様が把握していた昏睡症状の人達の名前と住んでる場所を書き出すのれす」
メイド「……まさか」
幼女「そうなのれす、お母様の患者は、今私の患者になったのれす」
幼女「勿論、私に治療なんてできないれすけど、それでも」
幼女「それでも、流動食と水を与えてあげる事は出来るのれす」
メイド「……お嬢様」
幼女「お願いなのれす、メイドも、メイドも助けて欲しいのれす」
メイド「それは、駄目ですお嬢様」
幼女「と、どうしてれすか!」
メイド「もう町は雪に閉ざされています、吹雪は多分、春まで止まないでしょう」
メイド「そんな中、町に出向くなんて自殺行為です」
メイド「そんなことは許容するわけには、いきません」
幼女「け、けど!」
メイド「……駄目ですお嬢様、お医者さんごっこは、もうおしまいです」
幼女「……!」
メイド「お嬢様は、お嬢様に戻っていただきます」
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/16(月) 19:49:57.77 ID:
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メイド「きっと、ご主人様が起きていらしたら、私と同じ事をおっしゃいます」
幼女「……」
メイド「お願いします、お嬢様」
幼女「……」
メイド「どうか、無理はなさらないでください」
幼女「……」
メイド「今はご自分が……いや、ご自分とご主人様が無事であることを最優先に考えてください」
幼女「……」
メイド「お嬢様?」
幼女「……判った、のれす」
メイド「そうですか、良かった……」ホッ