Part4
643:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:18:57.18 ID:WlcqFXvq0
兄「……」ふらふら
コツン
兄「ん…?なんか蹴ったな…」
すっ
兄「…?なんだこれ…?」ごしごし
兄「ん?……!」
兄「さ、財布…!!」
656:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:24:17.09 ID:WlcqFXvq0
すっ
兄「…さん、…さん、3万円…!!」
兄「病院…病院に行ける…!」
兄「妹、病院に行こう。すぐに診てもらおうな」
兄「それから、病院の帰りに、二人でなにか食べような…」
兄「何が食べたい?最近牛丼たべたもんな。次はなんだ?」
兄「はは…なんだって食べられるぞ。いいんだよ、俺のお金だ」
兄「なにが食べたい?なぁ…」
ふらふら
男「あ!君!」
兄「…?」ふらふら
663:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:26:51.26 ID:WlcqFXvq0
男「その財布…いやぁ、助かった…!!」
兄「??」
男「実はついさっきこの辺りで落としてしまってね。探していたんだが、拾ってくれたのか」
男「助かったよ。現金はそんなに入っていないんだが、カードが色々入っててね」
男「本当になんとお礼を言っていいか…」
兄「これは…?」
男「ん?」
兄「俺の財布ですよ?」
男「…え?」
669:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:30:28.65 ID:WlcqFXvq0
男「いや、どう見ても私のだが…すまない、勘違いしてしまったかな」
兄「…いえ、いいんです」
男「本当に申し訳ないんだが、確認させてもらえるかな?」
兄「え?」
男「私は△△というものだが、その名義のクレジットカードなどが入っていると思うんだ」
兄「え?…え?」
男「済まないが、念の為に確認させてもらってもいいかな?」
兄「だ、だめです…俺の財布です…」
676:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:36:41.76 ID:WlcqFXvq0
男「…君。財布を渡しなさい」
兄「だめです。俺の財布です…俺の財布なんです…!!」
男「…君……!」
兄「俺の財布なんです。俺の財布…」
男「…よく見たら怪我をしているじゃないか…!君、なにがあったんだ?」
兄「……」
男「見たところまだ高校生か?…そんな事をしてはいけない。さぁ、財布を出しなさい」
兄「……!」ダッ
男「あっ、おい!!」
678:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:40:45.43 ID:WlcqFXvq0
兄「はぁ、はぁ…!」
男「待て!」ぐいっ
兄「うっ…」どさっ
兄「うぅぅ…!!」
男「この……!警察は許してあげるから、財布を出しなさい!」
兄「離せ!…離してくださいっ…!!」
男「まだ暴れるか、こいつ!」
バキッ
兄「うっ…!」
686:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:45:50.74 ID:WlcqFXvq0
・
・
・
【午後9時半】
ガチャ
兄「……ただいま…」
兄「妹、帰ったぞ…。妹、どこだ?」
兄「妹?…なんだ、ここに居たのか。朝からずっと…?」
ふら…ふら…
兄「朝の場所のまま……ずっと、寝てたのか?」
妹「……」
兄「疲れてるんだな。ごめんな遅くなって…」
妹「……」
兄「ほら、見てくれ。お金が入ったんだ。俺のお金だぞ」
妹「……」
兄「さぁ、病院に行こう。起きなさい。病院に行くよ」
妹「……」
698:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:50:47.77 ID:WlcqFXvq0
兄「妹?ほら、行くぞ?」
妹「……」
兄「やれやれ…よっぽど疲れてるんだな。ほら、おんぶしてやろう」
すっ
兄「よいしょ…っと。…」
ひょい
兄「…軽い……なんでこんなに軽いんだよ」
兄「さぁ行くぞ。ちゃんとお医者さんに診てもらって、元気になろうな?」
兄「足も見てもらおう。もしかしたら折れてるかも知れないしな」
ガチャ
バタン
710:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 21:54:53.64 ID:WlcqFXvq0
兄「…昔もこうやっておんぶした歩いたっけな」
ふら…ふら…
兄「そうだ、まだ母さん達が居た時だ。公園でこんな事したな」
ふら…ふら…
兄「はは、そういえば…一回落としちゃって、お前大泣きしたこともあった」
ふら…ふら…
兄「覚えてるか?たしか俺が小学生のころだったけど…」
妹「……」ぷらん
兄「おっと、しっかりつかまってくれ。また落としちゃうかも知れないぞ」
妹「…」ぷら…
ふら…ふら…
723:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:02:21.31 ID:WlcqFXvq0
【病院】
ガー…
ふら……ふら……
受付「緊急ですね。どうしました?」
兄「妹が…」
受付「その背中に負ぶわれてる子ですか?」
兄「そうです。こいつが、起きないんです…足も折れてて……」
妹「…」カクン
受付「う…!すぐにお呼びいたしますので、そこでお待ちください…!」
兄「はい…よろしくおねがいします」
732:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:07:34.99 ID:WlcqFXvq0
兄「よかったな。…もう大丈夫だからな」
妹「……」
兄「…元気になったら、帰りに美味いもん食って帰ろう。おなか減っただろ?」
妹「……」
兄「そうだ、久しぶりに風呂屋にも行こうか?」
妹「……」かくっ
どさっ
兄「おいおい、大丈夫か?」
ガチャ!
看護士「お、お待たせしました…!どうぞ…」
兄「…はい。行こう、妹」
736:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:11:17.90 ID:WlcqFXvq0
医者「これは……」
兄「どうでしょうか…?」
医者「…どうしてここまで…ほっておいたんだね」
兄「…」
医者「この子は今、かなり危険な状態にある」
兄「危険…なんですか?」
医者「重度の栄養失調に加え、大腿骨完全骨折。しかも、ずいぶん放置していたね…?!」
兄「……」じわ…
医者「どうしてもっと早く連れてこなかったんだ!!!」
兄「……すみません…すみません…!」ぽろぽろ
758:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:21:47.69 ID:WlcqFXvq0
医者「今すぐに救命措置、それから入院だ」
兄「入院…ですか」
医者「当然だ。もういつ手遅れになってもおかしくない状態なんだ」
兄「入院費、3万円で……足りますか」
医者「なに…?」
兄「3万円しか持ってないんです。お願いします、これで…なんとか…」
医者「お金の問題ではないだろう…!」
兄「…足りませんか…?じゃあ、こいつを助けてくれないんですか…」
医者「そういう問題ではない。すぐに親に連絡しなさい」
兄「…親は、居ません」
医者「…?」
771:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:26:36.41 ID:WlcqFXvq0
医者「何を言っとるんだ君は…?」
兄「お願いします…。俺にはこれしか用意できないんです」
医者「…とにかく今は、この子の処置が先決だ。それから…警察に連絡してくれ」
看護士「わかりました…!」
兄「!!」
兄「待ってください…!警察は…警察は待って…」
医者「…?」
兄「警察呼ばれたら、こいつが一人になるんです…!」
医者「?」
兄「お願いします…!」
医者「君…その3万円…本当に君のものなのかね」
兄「……!!」
782:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:31:07.77 ID:WlcqFXvq0
医者「医者としてこの子は助ける。警察も呼ぶ…いいね?」
兄「それじゃあ…こいつの入院費、用意できません…!」
兄「せめて、妹が退院するまで…待ってくれませんか?お願いします…!」
医者「だめだ。…警察は呼ぶ。私にも義務がある」
兄「…!」
医者「点滴だ。それから、足の方の処置に入る」
看護士「わかりました…」
兄「あぁ…」
789:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:38:10.45 ID:WlcqFXvq0
兄「……」
医者「衰弱しきっているな。このままでは…」
看護士「…どうしますか…?」
医者「…患者の容態が回復してから…」
医者「…5割だな。早速処置に入ろう」
医者「まずは…」
・
・
・
兄「このままじゃ…このままじゃ、妹が…」
兄「俺が捕まったら、こいつはどうやって暮らせばいいんだ…?」
兄「このままじゃ、入院費も用意できない…」
兄「お金が…お金…だけでも用意できたら…」
799:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:45:27.42 ID:WlcqFXvq0
兄「…そうだ」
兄「お金を、用意すればいいんだ」
兄「…入院費と、俺が居なくても生きていけるだけのお金があれば」
兄「…それだけ用意できれば、もう…」
兄「よし…」
すっ
ふら…ふら…
ふら…ふら…
ガー…
805:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:49:32.57 ID:WlcqFXvq0
看護士「!あの少年が、出て行ったみたいですが…!」
医者「…妹さんの方が先だ。なんとか助けてやらないと」
看護士「……どこに行くつもりでしょうか?」
医者「…妹がここまで酷くなるまでほっておいたのだ。…逃げたのかも知れんな」
看護士「そんな…」
医者「この子を助けるのが先だ。警察はその後でいい」
看護士「わかりました…」
814:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 22:54:56.70 ID:WlcqFXvq0
ふらふら
兄「ああ…忘れてた」
兄「明日だっけな……妹の誕生日……」
兄「すっかり忘れてた…すっかり…」ふら…
兄「プレゼント…あげられなかったなぁ…ごめんな」
『なんにもいらない。だからね?ずっと一緒に居てね?』
兄「ごめんな……」
ふら…
兄「あ、パイプ……これでいいな…」
【コンビニ】
ウィーン…
店員「いらっしゃいま…せ…?」
828:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 23:00:05.40 ID:WlcqFXvq0
兄「お金を、用意してください…」
店員「え?え?」
兄「そのレジと、金庫にあるぶん全部です。お願いします…」
店員「ひ…」
兄「用意してください。そしたら絶対に怪我はさせません…おねがいです…」
店員「…わ、わかりました…」
兄「…ありがとうございます」
店員「……」ビクビク
兄「早くしてください…。もうすぐ警察来ると思うんで…」
840:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [減速お願いします]:2009/05/07(木) 23:05:04.31 ID:WlcqFXvq0
どさっ
店員「これで…全部です…」
兄「ありがとうございます。…すみません」くるっ
ふらふら
店員「け、警察に連絡…」
兄「…」ふら…ふら…
店員「…なんだったんだ…?あんな強盗……」
兄「……」ふら…ふら…
857:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 23:11:54.45 ID:WlcqFXvq0
ガー…
ふら…ふら…
兄「妹…これで、入院できるぞ。よかったな」
兄「俺が居なくても大丈夫。元気になってくれよ…」
兄「ごめんな…こんな兄貴でごめんな…」
ふらふら
・
・
・
妹「くぅ……くぅ…」
医者「とりあえずは…大丈夫だろう」
看護師「あ!帰ってきたみたいですよ!」
医者「そうか…すまないが君、警察に連絡してくれ」
看護士「わかりました…」
15:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 23:48:52.80 ID:WlcqFXvq0
再開します
医者「帰ってきたのか…」
兄「はい…。先生、これで妹を入院させてやってください…」
どさっ
医者「!?」
兄「あんまり多くありませんが…どうか、これで妹を入院させてやってください」
医者「君は…」
兄「…」
医者「取り返しの付かないことをした…わかってるのか」
兄「わかってます。…でも、お願いします。どうかこいつを助けてやってください…」
医者「こんな事をして…本当に妹さんが喜ぶと思っているのかね…!」
妹「……おに…い………ちゃん…?」
兄「!」
20:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/07(木) 23:55:48.83 ID:WlcqFXvq0
妹「…おにいちゃん……おかえりなさい」
兄「ああ…ただいま」ニコ
妹「……今日もありがとう。お疲れ様」
兄「……うん」
妹「あれ……?ここ…?」
兄「ここは病院なんだよ。…ごめんな」
妹「え…?でも、お金は……お兄ちゃんの…」
兄「……お前はそんな心配しなくていいから。ほら、先生が助けてくれたんだぞ」
医者「……」
妹「…そうなんですか。ありがとう、先生」
妹「ねぇ…お兄ちゃん、もう帰ろう?私、お家がいいよ…」
兄「…」
31:
◆r3yksmPHg2 :2009/05/08(金) 00:00:48.83 ID:n5BjxINq0
兄「…」
妹「お兄ちゃん…もう帰ろう?」
兄「だめなんだ。お前は、入院しなきゃ治らないんだって…」
妹「え?でも、そんなお金…」
兄「お金の心配はしなくていいから。お前は早くよくなるんだぞ…?」
医者「君。あんな金は受け取れないぞ…」
妹「え?え?お兄ちゃんは…?」
兄「俺はもういいんだ。きっと俺も居なくなったら、お前も生活保護受けられるだろ」
妹「え?居なくなるって…?」
兄「俺はな、ちょっと妹と会えなくなるんだ……ごめんな」
40:
◆r3yksmPHg2:2009/05/08(金) 00:04:26.02 ID:n5BjxINq0
妹「え?…嫌だよ…?」
兄「約束破ってごめんな…こんな兄貴で…」
妹「約束…?お兄ちゃん、また悪い人になっちゃったの…?」
兄「うん。ごめんな…」
医者「妹さんにはかわいそうだが、もう警察は呼んだ。もうすぐ到着するだろう…」
妹「なんで?ねぇ…なんで?約束したのに…!」
兄「…ごめんな」
妹「先生、やめてあげて…!おねがい、許してあげて…」
妹「お兄ちゃんも、助けてあげてよぅ…!!」
43:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/08(金) 00:06:47.21 ID:n5BjxINq0
妹「お兄ちゃんもなんだよ?…お兄ちゃんも、私と一緒なのに…!」
医者「お兄さんは、間違ったことをしたんだ…」
妹「お兄ちゃんも助けてあげて…!お兄ちゃんは優しい人なんだよ…?」
医者「……」
兄「…妹。もういいんだよ」
妹「なんで…?ずっと一緒に居てくれるんでしょ?」
兄「…ごめんな。約束守れるような兄貴じゃなかったんだ…」
妹「…いやだよ…お兄ちゃんが居なきゃいやだ…」
59:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/08(金) 00:12:47.62 ID:n5BjxINq0
兄「……俺は警察で面倒見てくれるから、心配しなくていいからな」
妹「……」ぽろぽろ
兄「……明日、誕生日だったよな…」
妹「……うん」
兄「…おめでとう。ちょっと早いけどな」
妹「……うぇぇん…」
兄「ほら、プレゼント…。ハイチュウ、欲しかったんだろ?」
妹「…いらない」
兄「買ったんじゃないけどな…さっきコンビニで…ほら…あげるよ」
妹「こんなのいらない!」