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死神「あなたは3ヶ月後に死にます」男(長過ぎる)
Part1

死神「あなたは3ヶ月後に死にます」男(長過ぎる)
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1402828665/

1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:37:45 .sRUrBP.
男「うぐっ!」
男「……あー、また失敗か」
ピンポーン
男「……無視で良いか」
ピンポンピンポンピンポン
男(うるせえ!)
死神「そう思うなら素直に開ければ良かったんですよ」

2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:38:37 .sRUrBP.
男「あ? はあ!?」
男「誰だお前、どこから入ってきた!?」
死神「私は死神です。ちゃんと扉から入ってきましたよ?」
男「扉からって、鍵もチェーンも閉まってたはずだろ!ていうか死神ってなんだよ!」
死神「いちいち質問が多いです」
男「うるせえ、まともに入室してまともに自己紹介してからまともなことを言え!」
死神「じゃあ一旦部屋から出るので、今度はちゃんとインターフォンに応じてくださいよ」
男「そういう問題じゃない!」
死神「ああもう面倒くさいですね」

3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:39:29 .sRUrBP.
男(なんだよコイツ。強盗…にしては何も持ってないし何かを要求してくる態度にも見えない)
死神「だから死神だって言ってるじゃないですか。別にあなたから何かを盗もうとかは思ってないですって。ああ命は奪う予定ですけどね」
男(…人の心が読めるのか?)
男「とうとう俺の頭がおかしくなったか」
死神「担当する人間の心は読めるようになってるんですよ。あなたの頭がおかしくなったわけではないです」
男「人工精霊なんて上手く作れたことないんだけどなぁ。しかも視覚情報までセットでとは…。色々と失敗した成果なのかね」

4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:40:58 .sRUrBP.
死神「人工精霊ではないですよ」
男「じゃあ触れられるわけ?」
スカッ
死神「私はこの世のものではないので必要以上の干渉はできません」
男「やっぱり人工精霊だ」
死神「ああもう面倒くさいですね。それで良いですよ」
男「で、人工精霊さんは何をしにここへ?」
死神「せめて死神と呼んでください。ここに来た理由はあなたに余命を宣告するためです」
男「ほほう。もしかして俺の命はあと数時間とかで勝手になくなるのか」
死神「いえ、あと3ヶ月ほどですね」
男「死神と言うわりに悠長だな」

5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:42:03 .sRUrBP.
死神「数日で死ぬ準備ができる人はあまりいないんですよ?」
男「それにしても長いわ」
死神「まあ、ほかの死神と比べて余裕をもって仕事をしているという自負はあります」
男「そこまで設定が行き届いてるのか。人工精霊のくせに」
死神「設定って…。ああもう面倒くさいですね」
死神「まあとりあえずそういうわけなので、ぼちぼちと死ぬ準備をしてほしいのです」
男「3ヶ月も待つ必要ねーよ。今だって死に損なったところだしな」
死神「ああ、この数日あなたがやってる自殺ごっこですか」
男「う、うるせえ! 意外に死ねないんだよ!!」

6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:42:51 .sRUrBP.
死神「良かったじゃないですか、自殺するまでもなく死ねるんですから」
男「お前の言うことを信じるなら3ヶ月も待つ必要があるんだろ。ふざけるな」
死神「こちらにも色々と事情があるので、3ヶ月先まで死なせませんよ?」
男「人工精霊ごときに何ができるってんだよ。あーもう、分かった。そこまで言うなら簡単確実な方法で今すぐ死んでやるよ」
死神「だから人工精霊じゃないって言ってるじゃないですか……」

7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:43:57 .sRUrBP.
10階建ビルの屋上
男「ここから飛び降りれば確実に死ぬだろ。下はコンクリだしな」
死神「足が震えてませんか」
男「怖いんだよ、悪いか」
死神「死ぬのが怖いのに自殺ですか」
男「なんだっていいだろ、どうせお前は俺を殺しにきたんだから」
死神「……そうですか」

8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:46:30 .sRUrBP.
男「じゃあな。お前のおかげで確実に死ねる方法を実行する踏ん切りがついたよ」
ピタッ
男「!?」
死神「不必要な干渉はできないと言いましたが、必要な干渉はできるんですよ?」
死神「まさかチキンなあなたが本当に飛び降りようとするとは思わなくて少し焦りました」
男「お前……本当に死神なのかよ」
死神「だから最初からそう言ってるでしょう」
男「信じられるわけがないだろ」
死神「今なら信じられるのでは?」
男「う、むぅ」

9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:47:32 .sRUrBP.
男「つまり俺の死に時は3ヶ月後だと決まっているためにそこまではどう足掻いても死ねないと?」
死神「どう足掻いても、というほどの拘束力はないですが、少なくともこの宣告を受けたために自暴自棄になって死ぬと言うことはできませんね」
男「つまりお前は俺にとって疫病神ってとこか」
死神「どう足掻いても私を死神だと認めたくないのですか」
男「自殺志願者のところまで来てしばらく死ねません、と言う奴を死神と評価するのは間違っているだろう」
死神「ぐぬぬ」

10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:48:29 .sRUrBP.
男「それにしても3ヶ月か……食費やら家賃やらどうするかな」
男「死神が3ヶ月も死なせてくれないから、飢え死にしてしまうかもなぁ……」
死神「お金も食べ物も出しませんよ」
男「飢え死には自暴自棄の結果ではないのか」
死神「あなたが3ヶ月分の生活費を持っていないのが悪いのです」
死神「自暴自棄になろうがなるまいが、その金が無ければ生きていないですから」
男「金ならあるよ。払う気がないだけで」

11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:49:30 .sRUrBP.
死神「じゃあ私はあなたに家賃を払わせて、食べ物を食べさせる必要がありますね」
男「あーんってな感じに食べさせてくれるのか」
死神「さっさと死ねば良いです」
男「お前が言うな」
死神「いや私が言うのが正しいですよ。死神ですから」
男「人を生かしておいてよく言う」
男「せいぜい3ヶ月。俺が死なないように俺の世話を頼むよ」
死神「最低な人に当たってしまったようです…」
男「俺の台詞だ」

12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:50:16 .sRUrBP.
死神「自殺ごっこをしていたわりには身の回りが片付いてないですね」
男「ごっこだとか言うな。馬鹿にしてるのか」
死神「してますよ。生きるのが怖いのに死ぬのも怖い。何もかも怖くて動けない可愛いチキンちゃんだと思ってます」
男「だからさっきちゃんと死んでやろうとしただろうが」
死神「それはあなたが私の死亡宣告を受けたからです」
男「ちげーよ。お前が"ごっこ"だと言ったからだ」
死神「大差ありません」
男「絶対に違う」

13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:51:18 .sRUrBP.
死神「まああなたがチキンなんて話はどうでもいいんです」
死神「これから死ぬのに身辺整理をしないのは見苦しいですよ?」
男「いちいちムカつく言い方をするな」
死神「こんな疫病神みたいな人に優しく接する人なんていません」
男「そんなに死神扱いされないことを気にしてるのか」
死神「どうでもいいので早く身辺整理でもしてください」
男「気にしてるんだな」
死神「あなたを死なせないまでも苦しませるくらいはできるんですよ?」
男「不要な干渉はできないんだろ」
死神「く」

14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:52:28 .sRUrBP.
男「身辺整理なんか必要ねーよ」
男「唐突に自殺した人間が最期には何も持っていないなんて」
男「実は長い間悩んでいましたって言い回ってるようなもんだ」
男「長い間悩んでいたのにお前らは何も気付かなかったんだ」
男「そんな風に周りを責めてるようにしか思えないわ」
男「少なくとも自殺なんて、ただ衝動でやればいい」

15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:53:20 .sRUrBP.
男「だから身辺整理もせいぜい、自殺してごめんなさいくらいの遺書を書いておけば良いんだ」
死神「……」
男「なんだよ。なんか言えよ」
死神「エゴですよね?」
男「エゴで悪いか」
死神「いえ、分かってるなら良いです」
死神「大層な中二病を煩っていらしたんですね」
男「本当にいちいちムカつく言い方をしてくる疫病神だな……」

16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:54:21 .sRUrBP.
死神「身辺整理をしないのは良いとして」
死神「これから3ヶ月、どう生きるのです?」
男「元々生きるプランがなかったところに降って湧いた3ヶ月だからなぁ…」
男「この数日、仕事の連絡も友人の連絡も全て無視してたが、3ヶ月押し通すのは難しいなぁ…」
男「かと言って、無断欠勤をして色々な期日を破った会社に戻るのも難しい」
男「ホント、どうしてくれるんだよ…」
死神「詰んでますね」
男「どっかの疫病神のせいでな」
死神「あなた自身のことですね」
男「言ってろ」

17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:55:13 .sRUrBP.
男「とりあえず会社に辞めると伝えて」
男「無用な詮索が入るのを防ごう」
男「3ヶ月分くらいの生活費は一応あるから」
男「その間、引きこもっていればいい」
死神「3ヶ月も猶予があるのに、死ぬまで引きこもるなんて精神腐ってますね」
男「ほんとにいちいちむかつくなぁ」

18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:56:21 .sRUrBP.
男「俺が自殺未遂をしてたこととか知ってるということは」
男「ある程度、俺のしてきたことについて調べてあるのか」
死神「わたしの仕事の丁寧さを褒めてるんですか?」
男「そう聞こえるならお前は大層生きやすい人生を送ってきたんだな」
死神「まあそうですね」
男「どっちに対する返事か分からねーよ」
死神「どっちもです」
死神「あなたが何故自殺未遂をしたのかだとか、あなたがどんな思想の持ち主かだとか、一応は調べてあります」
男「ふーん…」
死神「そこに何か問題が?」

19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:57:10 .sRUrBP.
男「個人情報がーとか言いたいことはあるが、人間の法では動いてないもんな」
死神「それくらいのことは理解できるんですね」
男「念のために言っておくと、これでも高学歴の部類に入る人間だからな?」
死神「ドングリの背比べですよ」
男「まあ高い位置から見ればそうなるか」
死神「で、わたしがあなたのことを知っていることに何か問題が?」
男「あー、いや知ってるなら問題ないんだ」
男「言う必要もないってことだろ」

20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:57:59 .sRUrBP.
死神「ああ、すみません。話したかったんですか」
男「な」
死神「そうですよね、話したいですよね。自分がどのくらい思い詰めてたのか人に話せたら楽になりますもんね」
男「はぁ…」
死神「どうしました?」
男「いやそうだな、ありがとう」
死神「やけに素直で気持ち悪いです」
男「何を期待してたんだ」
死神「ツンとした態度をとって結局目的を果たせず悶えるあなたを期待していました」
男「クズみたいな奴だな」
死神「話聞きませんよ?」
男「好きにしてくれ」

21 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:58:38 .sRUrBP.
死神「話さないんですか」
男「結局聞きたいのかよ」
死神「別にどちらでも良いですが、ヒマですし」
男「お前は俺が何を思ってるのか知ってるんだろ」
死神「言いたがりのくせに強がらないでください」
男「はあ…。言いたいとは思ってもまとまってないんだよ」

22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/06/15(日) 19:59:25 .sRUrBP.
死神「じゃあなんで死にたいと思ったんですか」
男「一言断っておくと死にたがりなわけではないからな?」
死神「知ってます」
男「ならいい。死にたい理由…な」
男「さっきも言ったように死にたいわけではないし、死ぬのが怖いとも思ってるんだ」
死神「知ってます」
男(こいつ、全部に知ってますって相槌打つ気か)
死神「じゃあ勝手に語ってください」
男「ムカつく。…まあいい」