母「良い子にしかサンタさんは来ないのよ」少年「なんで?」
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Part2
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:04:24.94 ID:
QdtUCwboO
少年「ごめんね、おまたせ」
不良「……ふんっ」
少年が自室に戻ると、ベッドの中に隠れていた不良がモゾモゾと顔を覗かせました。
不良は自分の家で入浴を済ませており、少年が夕食を食べている間に、持参した寝巻きに着替え終えていました。
少年「へぇ〜……可愛いパジャマだね」
ピンクの水玉柄で、モコモコした生地の、フード付きその寝巻きがなんとも可愛らしくて、少年は思わず頬が緩んでしまいます。
もちろん、そんな不埒な態度は不良が許す筈もなく。
不良「なに笑ってんのよっ!エッチ!」
枕元の目覚まし時計が飛んで来て、少年を脅かしました。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:06:55.73 ID:
QdtUCwboO
そんな一悶着もありつつ、夜は更け、途中トイレに行くふりをして、ご馳走の残りやケーキの残りを部屋に持ち帰り、お腹を空かせた不良にそれらをご馳走しました。
少年の母親の料理に、何故か不良は対抗心を露わにして。
不良「こっちは私のほうが上手く作れる。だけど、こっちは……悔しいけど私より美味しい」
そんなことをブツブツ呟いていました。
なら、今度不良の手料理を食べてみたいと、そう具申してみたのですが……返事はげんこつでした。
でも、頭を抑えてうずくまる少年に、不良はボソッと付け加えます。
不良「……今度、ね」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:09:59.31 ID:
QdtUCwboO
そうやって過ごしていると、瞬く間に時は流れ、少年達は両親に怪しまれないように部屋の明かりを消し、一緒にベッドに入り、襲いかかる睡魔と懸命に戦うことになりました。
まだまだ幼い2人には、日付が変わるまで眠らないということは、あまりに過酷でした。
しかし、ここで眠っては、真実は解明出来ません。
少年の計画は単純です。
毎年サンタがやってくる少年の家に不良を宿泊させることで、不良にサンタを会わせ、そしてあわよくばプレゼントも貰おうと、そう画策していました。
もしかしたらサンタは、素行に難ありの不良のプレゼントは用意していないかも知れません。
ですが、そんな表面上の理由で『良い子』か『悪い子』かを判断しているならば、それこそサンタは何もわかっていません。
少年は知っています。
不良の日々の善行の積み重ねを。
少年は知りました。
不良は『不良』などではなく、少し目つきの悪い、誤解されがちな『可愛い少女』だと。
少年「大丈夫。ぼくが必ずサンタに会わせて、プレゼントをくれるように頼むから」
少女「……ん。……ありがとう」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:12:48.93 ID:
QdtUCwboO
それからしばらくして、少年達の睡魔が限界に達する、その直前に……
すすすっと、音もなく、少年の部屋の扉が開きました。
来た!
サンタは今年も来てくれた。
その事に、そしてサンタと出くわした事に、この上ない感動と興奮、そして緊張となって、息を潜めて寝たふりをする2人に駆け巡ります。
同時に罪悪感も生まれました。
寝たふりをして、サンタを騙している思うと、なんとも居た堪れない気持ちになりました。
だけど、見極めなくてはなりません。
サンタが、少年が思い描く、理想の人物なのかどうかを。
サンタ「……メリー・クリスマス」
少年を起こさないよう、忍び足でこちらにやってきたサンタは、どこか父親に似ている声でそう呟き、枕元にプレゼントを置こうとして……不意に首を傾げました。
サンタ「……ん?」
少年の傍には、1人の少女の姿が。
薄目を開けると、どうやらサンタは困惑しているようです。
そしてその手に抱えるのは、たった1つだけのプレゼント。
なんで……どうしてっ!
その悲しい現実をその目でしかと見てしまった少年は、堪らず寝たふりをやめ、驚愕の表情を浮かべるサンタを弾劾します。
少年「どうしてこの子の分のプレゼントも持って来てくれなかったのさ!?」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:15:04.52 ID:
QdtUCwboO
サンタ「そ、そんなことを言われても……」
突如起き上がり、吠えた少年に、サンタは狼狽え、しどろもどろになりました。
顔は暗くて良く見えませんが、赤い服と白い髭をたっぷりと口元に生やしているので、この人はサンタに違いありません。
夢にまで見たサンタが、こうも取り乱している様子を見て、少年は失望しました。
サンタは自分の思い描いていた聖人などではなかった。
その事を、冷静に受け入れるしかありませんでした。
少年「……帰ってよ」
サンタ「……えっ?」
震える声でそれだけ絞り出すと、サンタはますます困ったような素ぶりを見せました。
サンタ「ま、待ってくれ。お友達がいるなんて知らなかったんだ。ほ、ほら、プレゼントだぞ。ちゃんと欲しいって言った物をこうして用意して……」
少年「いらないよっ!そんなの!!」
怒りに駆られた少年は、サンタの手からプレゼントをはたき落としました。
その衝撃で梱包紙が破れ、そこには少年が欲しくて堪らなかった戦隊モノのロボットの箱が現れました。
しかし、そんな物、もはや何の価値もありません。
傍でまたしても悲痛そうな表情を浮かべる少女を差し置いて、自分だけがプレゼントを貰うことなど、出来る筈もありませんでした。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:16:38.84 ID:
QdtUCwboO
サンタ「そ、そんなことを言われても……」
突如起き上がり、吠えた少年に、サンタは狼狽え、しどろもどろになりました。
顔は暗くて良く見えませんが、赤い服と白い髭をたっぷりと口元に生やしているので、この人はサンタに違いありません。
夢にまで見たサンタが、こうも取り乱している様子を見て、少年は失望しました。
サンタは自分の思い描いていた聖人などではなかった。
その事を、冷静に受け入れるしかありませんでした。
少年「……帰ってよ」
サンタ「……えっ?」
震える声でそれだけ絞り出すと、サンタはますます困ったような素ぶりを見せました。
サンタ「ま、待ってくれ。お友達がいるなんて知らなかったんだ。ほ、ほら、プレゼントだぞ。ちゃんと欲しいって言った物をこうして用意して……」
少年「いらないよっ!そんなの!!」
怒りに駆られた少年は、サンタの手からプレゼントをはたき落としました。
その衝撃で梱包紙が破れ、そこには少年が欲しくて堪らなかった戦隊モノのロボットの箱が現れました。
しかし、そんな物、もはや何の価値もありません。
傍でまたしても悲痛そうな表情を浮かべる少女を差し置いて、自分だけがプレゼントを貰うことなど、出来る筈もありませんでした。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:18:34.14 ID:
QdtUCwboO
連投してしまいすみません。
続きです……
サンタ「おいっ!いい加減にしろ!誰の為を思ってプレゼントを用意したと思っているんだ!!」
ここでとうとうサンタがキレました。
その怒声が、怒った時の父親そっくりで、思わず身体が竦んでしまいます。
わざわざ用意したプレゼントを台無しにされたのですから、サンタが怒るのも無理はありません。
すっかり意気消沈した少年を庇ったのは、傍で悲痛そうな表情を浮かべていた、元不良の少女でした。
少女「彼を怒らないであげて!私が勝手に布団に潜り込んだのが悪いってことはわかってる。だから、彼を許してあげてっ!!」
両手を広げて、背に少年を庇う少女の剣幕に、堪らずサンタはたじろぎます。
少女の優しさに、少年はいたく感動しましたが、このままでは良くないと直感的に感じました。
女の子に庇われているだけなど、男が廃る。
意を決して、竦む身体に鞭を打ち、ベッドから降り、今度は自分が少女を守るべく、サンタと正面から対峙しました。
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:20:50.99 ID:
QdtUCwboO
少年「どうしてサンタさんは彼女にプレゼントをくれないんですか?」
先ほどの反省を生かし、今度は努めて冷静にサンタに問いかけます。
売り言葉に買い言葉では、真実は究明出来ません。
煮えたぎる怒りをどうにか抑えつけ、また1つ大人になった少年は、サンタとの建設的な会話を模索します。
それに対してサンタは……
サンタ「……この家に子どもは1人だと思ったんだ。だから、お友達の分は用意出来なかった」
そう主張しました、
確かに、それは当然の主張です。
魔法の力を持つと言われるサンタでも、ベッドの中にもう1人子どもが隠れていることまでは、わからなかったようです。
その件に関しては、少年にも非があります。
少女を布団の中に隠していたのは少年であり、ともすればサンタを騙した、と言っても過言ではありません。
しかし、それは今回に限って、の話です。
これまでのサンタの行いについて、少年はサンタを追求することにしました。
少年「じゃあどうして……サンタさんは、一度も彼女のところに来てくれなかったの?」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:23:38.32 ID:
QdtUCwboO
サンタ「い、一度も……?そ、それは本当なのかい?」
その少年の詰問にこれまでで一番狼狽えたサンタは、びっくりしたように少女に尋ねます。
それに対して少女は、まるで親の仇を見るかのようにサンタを睨みつけ、こくりと、小さく頷きました。
それを受け、サンタは頭を抱えます。
サンタ「なんてこった……可哀想になぁ」
まるで少女の境遇を今初めて知ったかのような、そんなサンタの仕草に、少年達は揃って違和感を覚えます。
どういうことだろう?
世界中の子ども達にプレゼントを配るサンタが、何故そのことを知らないのか。
もしかしたら、サンタという存在は複数人いて、このサンタは少女の担当ではないのだろうか?
そんな疑念が次々浮かびますが、少年がその事を問いただす前に、サンタは立ち上がり、そしておもむろに少年達の頭をくしゃりと撫でました。
サンタ「ごめんなぁ。そういう事情があったとは知らずに……怒鳴っちまって、本当にごめんなぁ」
サンタは何度も少年達に謝り、そして床に落ちたプレゼントを拾うと、肩を落として帰って行きました。
頭を撫でるその手のひらの感触が、やはり父親のそれとそっくりなのが、妙に印象的でした。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:26:38.50 ID:
QdtUCwboO
少年「……帰っちゃったね」
少女「……うん」
サンタが帰り、再び部屋は深夜の静寂に包まれました。
呆然としていると、ふいに、少女が少年の手を握って、呟きます。
少女「ぐすっ……ご、ごめんね……ごめんね」
少女は泣いていました。
嗚咽混じりのその呟きに含まれる、様々な悲しみや、そして失望に、少年はカッと頭が熱くなり、少女を抱きしめます。
少女「えっ?……えっ?」
びっくりしたような少女には構わず、少年は抱きしめる力を強めます。
力いっぱい少女を抱きしめながら、少年は悲しくて、悔しくて、どうしようもなく切なくなりました。
少年「ぼくの方こそ、ごめん。……サンタは君にプレゼントをくれなかった。本当にごめんね」
そんな少年の優しさに触れ、とうとう少女は大泣きしてしまいます。
少女「ぐすっ……うわぁあああん!」
少年が余計なことをした為に、少女を傷つけてしまった。
それが言いようのないほど申し訳なくて、ついには少年も泣き出してしまいました。
少年「うわぁぁあん!うわぁぁあああん!」
情けない。
本当に情けないと思いながらも、次々溢れ落ちる涙は止まることはありませんでした。
2人は幼児に戻ったかのように大泣きして、そして、とうとう泣き疲れて眠りにつきました。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:28:53.09 ID:
QdtUCwboO
翌朝。
少女「……ぷっ。酷い顔」
少年「……そっちこそ」
抱き合うようにして布団の中で丸まり、眠ってしまった少年達は、どちらからともなく目覚め、お互いの泣き腫れた酷い顔を見て、笑い合いました。
あれほど悲しい思いをして眠ったのに、朝起きてみると思いの外、スッキリしていて、悲しみはどこかに吹き飛んでしまったようです。
改めて枕元を見ると、やはりそこにはプレゼントはありませんでした。
しかし、ちっとも悲しくはありません。
涙というのは不思議な物だと、漠然とそう考えていると、ダイニングから母親の声が響きます。
母「ご飯出来たわよ〜!」
少年「はーい!」
その呼びかけに元気良く返事をして、少女に、待ってて、と声をかけ、少年は朝食を摂るべく、自室を出ました。
ダイニングでは既に両親が席についていて、父も母も少年の泣き腫れた顔については言及してくれなかったので、助かりました。
そんなこんなで、何事もなく朝食を食べ終え、自室に戻ろうとする少年だったのですが……思いがけず、待ったがかかりました。
父「あー……ちょっと待ちなさい」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:30:33.22 ID:
QdtUCwboO
待ったをかけたのは父。
やはり、この泣き腫らした顔が気になるのだろうか?
困ったな。
それを聞かれた際に、どう答えたものか。
少年が身構えていると、父親はおほんっと1つ、咳払いをして、予期せぬことを訪ねました。
父「あー……えーとだな……そうだ、クリスマスプレゼントは貰ったのか?」
その質問に少年の心はすぅっと冷えて、昨日の怒りが込み上げてきました。
しかし、父親にそれをぶつけてもどうしようもありません。
なので、少年は必要最低限の返答をするに留めました。
少年「今年は貰えなかった。でも、いいんだ。プレゼントなんて、いらないから」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:32:48.28 ID:
QdtUCwboO
父「そ、そうか……」
その返答を聞いて、明らかに落胆する父。
そんな様子のおかしい父に、訝しむ視線を送ると……
母「ほら、あなた!しっかりしてっ!」
父「お、おぅ。わかってるよ」
何やら母に叱責され、父は背筋を伸ばし、そしておもむろに財布から一枚の紙幣を抜き取り、そしてそれを少年へと差し出しました。
意味が分からず、少年が困惑していると、父は目を逸らしながら、こんな説明をします。
父「クリスマスプレゼントを貰えなかった代わりに小遣いをやる。これで、好きな物を買いなさい」
そう言われて、ようやく少年は納得しました。
なんて……なんて優しい父なのでしょう。
昨夜現れたサンタなどよりも、少年の父親はずっとずっと優しい存在でした。
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:34:37.93 ID:
QdtUCwboO
少年「父さん、ありがとう!」
お礼を言って紙幣を受け取ると、なんとそれは1万円札でした。
そのことに気づいた少年は、慌てて突き返します。
少年「こ、こんなにたくさん貰えないよっ!?」
1万円と言えば大金です。
小学生に扱える金額ではありません。
そんな大金を受け取ってしまった少年は慌てふためき、困ってしまいました。
そんな少年に、父は諭すようにこう言いました。
父「何も1人で使い切れと言ってるわけじゃない。そうだな……もし、誰かにプレゼントをあげたければ、その子の分もそれで買えばいい。それなら、金額的にも丁度いいだろう?」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:37:04.44 ID:
QdtUCwboO
なんと素晴らしいアイディアでしょう!
少年「わかった!そうするよ!ありがとう父さん!!」
感謝の言葉を口に出しつつ、少年は目から鱗が落ちる気持ちを味わいました。
言っては失礼ですが、少年はここまで冴えた父を見るのは初めてでした。
もちろんこれまでも父は、時には厳しく、時には優しく少年に接してくれる、良い父親だったのですが、ここに来てこれほどまでに冴えた父を見ることになるとは思いもしませんでした。
少年のキラキラとした尊敬の眼差しを一身に受け、父は満更でもない表情でキメ顔を作ります。
父「どうだ!父さんは凄いだろう!」
そんな大威張りな父親の様子を見て、母親がボソッと付け加えます。
母「ま、私のアイディアなんですけどね」
父「ちょっ!?」
父さん……。
尊敬の眼差しから一転、失望の眼差しに変わった少年は、それでも心優しい父と、知性に溢れた素晴らしい母に改めて感謝の言葉を告げ、1万円を握りしめ、足早に自室へと戻りました。
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:38:14.50 ID:
QdtUCwboO
少年「すぐ出かけるから支度して!」
少女「ど、どうしたの?そんなに慌てて……」
息急き切って部屋に戻り、支度を急がせる少年の様子に少女は困惑しました。
そんな少女の眼前に、少年は先ほど貰った1万円を突き出し、宣言します。
少年「これでぼくが君のサンタになる!これからずっと、ぼくがサンタの代わりに君にプレゼントをあげるよ!」
突き出された1万円を見つめていた少女はその宣言を聞いて、ようやく困惑顔を崩して、にっこり微笑み……
少女「うんっ!ありがとう!」
大きく頷いて、少年の提案を受け入れました。
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:40:35.89 ID:
QdtUCwboO
少女の支度が整った後、少年は両親に見つかることがないように慎重に家から少女を出しました。
少女が無事玄関から脱出したことを見届け、少年もその後に続いて外に出ようとしたその時。
母「あら、もう行くの?」
今度は母に引き止められました。
少年「うん!行ってくるね!」
母「そう。それじゃあ、気をつけて。ほら、これ、お弁当」
お弁当?
少年の家からおもちゃが売っているデパートまでは然程距離はありません。
そもそも、先ほど朝食を食べたばかりです。
それなのに、どうして?
困惑している少年の手に、母親はしっかりお弁当を握らせました。
母「途中でお腹が空いちゃいかも知れないから、一応持っていきなさい。それと……」
そこで母親は一旦言葉を止めて……
母「女の子は大切にしなさいね?」
いたずらっぽい笑みで、少年を送り出したのでした。
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:42:54.68 ID:
QdtUCwboO
玄関から外に出ると、そこは一面雪景色でした。
まさに、ホワイト・クリスマス。
そんな銀世界に1人の少女が佇んでいて、少年の目には彼女はまるで天使のように映りました。
少年「……ふげっ!?」
そんな風に見とれていると、少年の顔面に、冷たい感触と共に衝撃が走ります。
慌てて我に返ると、そこには投球を終えた姿勢の天使……いや、少女の姿がありました。
どうやら少年は彼女に雪玉をぶつけられてしまったようです。
にしし、と笑い、次の雪玉を作る彼女は……なるほど、天使などではなく、いつもの不良の彼女に戻ったようでした。
間も無く少年も応戦し、雪まみれになりながらも手を繋いで互いの冷えた手を温め合い、途中公園に立ち寄り、母親が持たせてくれたお弁当を少女に食べさせ、そしてデパートへと辿り着きました。
このクリスマスのことを、そして少年からプレゼントを受け取った嬉しそうな少女の笑顔を、一生忘れることはないでしょう。
とても、素晴らしいクリスマスでした。
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:45:23.49 ID:
QdtUCwboO
その後。
少年は律儀に少女との約束を守り、毎年欠かさずにプレゼントを贈りました。
小学校を卒業し、中学、高校も卒業し、大学生を経て、いつしか社会人になってもそれは変わりませんでした。
しかし、変わらないと言っても、元不良の少女……今となっては立派な大人の女性との関係性だけは、年を重ねるにつれて変わっていきました。
小・中学校までは友人として。
高校・大学には恋人として。
成人した少女と、同じく成人した少年との距離はだんだんと、そしてゆっくりと近づいていきました。
そして、今日。
大・少年「結婚してください!」
何度目かもわからない程、積み重ねたクリスマスプレゼントの果てに、とうとう大人になった少年は婚約指輪を差し出しました。
大・少女「はいっ!よろこんで!」
委細迷いなく、それを受け取ったすっかり大人になった少女は、晴れて大人になった少年と結ばれました。
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 22:47:32.09 ID:
QdtUCwboO
エピローグ
数年の結婚生活を経て、彼らは子供を授かりました。
彼らの子供はスクスクと成長し、あっという間に小学生になりました。
この頃には、彼らの子供は母から受け継いだ気の強い性格と、父から受け継いだ聡明な頭脳によって、言ってはなんですが、手のかかる子供になってしまいました。
しかし、手のかかる子供ほど、可愛いもの。
父親になった元少年と、母親になった元少女は愛情たっぷりに育てていました。
しかし、残念なことにサンタはあれ以降姿を見せることはなく、彼らの子供の元にも現れてはくれませんでした。
なので、これまで彼らがサンタを装って毎年子供にプレゼントをあげていたのですが……
子供「お父さん!お母さん!聞いて!あのね……」
ある日、彼らの子供は学校で悪さをして、担任の先生に叱られた際、こう言われたそうです。
子供「良い子にしか、サンタさんは来てくれないんだって!」
FIN
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/25(日) 23:33:17.87 ID:5YPWzAim0
よかった
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/26(月) 01:50:59.99 ID:mJk+oMkeo
乙
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/26(月) 04:55:38.10 ID:vu3YpzwK0
乙
いいね