2chまとめサイトモバイル
侍「道に迷ったらエルフに捕まっちまってござる」
Part9


259 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:38:39 ID:9woH24nI
ーーソッチハダメ。
エルフ「え?」
ーーサキマワリサレテルヨ。
エルフ「まさか、敵も渡河を……。なら、このまま森の中に身を隠して」
侍「駄目だ。焼きうちにでもあったら詰む」
エルフ「エルフ族は自然の民です。そんなことはしませんわ」
侍「だとしても、時間が経てば経つほど不利になる」
エルフ「じゃ、じゃあどうすれば!」
エルフ兵「いたぞー!」
エルフ「! 見つかった!?」
侍「街道に出る」
エルフ「え?」
侍「こうなったら賭けだ。敵の指揮官を見つけて倒す」
エルフ「……それしかなさそうですわね」

260 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:39:43 ID:9woH24nI
街道
エルフ兵A「追い詰めたぞ、混血女と卑劣な人間め」
侍「……」
エルフ「……」
エルフ兵B「多くの同胞、そして我らが国王を手にかけたその罪、万死に値する!」ーーチョンチョン
侍(どいつだ?)
エルフ(今喋った方。精霊が教えてくれましたわ)
侍(わかった)
エルフ兵B「だが簡単には殺してやらんぞ。この場で捕えて後、市中引き回しの上でその首をーー」
侍「ご託はどうでもいいんだよ!」ダッ
エルフ兵B「なっ! 貴様!」ガシッ
侍「抜かせん!」
ザンッ
エルフ兵B「ぐああああ!」ドサッ

261 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:40:47 ID:9woH24nI
エルフ兵A「隊長ー!」
エルフ兵C「お、おのれ貴様!」
侍「本当なら、正々堂々といきたかったがな。今はそうも言っていられない」
侍「で、どうする。指揮官は倒したわけだが、まだやるのか?」
エルフ兵A「ぐ……!」
エルフ(どうにかうまく行きそうですわね)
エルフ兵B「……く」ヨロッ
エルフ「なっ!?」
侍(なに?)
エルフ兵C「隊長! ご無事で!」
エルフ兵B「当たり前だ。人間如きにやられてたまるか……と、言いたいところだが」
エルフ兵B「その人間が万全であったなら、今ので死んでいたであろうな」
エルフ「ど、どういう」
侍「……く」ガクッ
エルフ「!? 侍さん!!」

262 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:42:09 ID:9woH24nI
侍「……そういう、ことか……!」
エルフ兵B「そういうことだ。さっき矢を受けたからな」
エルフ「矢を……まさか!?」
エルフ(毒矢!)
エルフ兵B「ふ。捕えろ!」
エルフ兵たち「はっ!」
エルフ「くっ!」
侍「ちっ……」
エルフ兵A「さあ、おとなしくしてろ!」ガシッ
エルフ「その人に触らないで!」ドンッ
エルフ兵A「ぐあ! おのれ、混血!」チャキ
エルフ「!」チャキ
エルフ兵C「後ろががら空きだ」ガシッ
エルフ「なっ!? は、離しなさい!」

263 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:43:13 ID:9woH24nI
エルフ兵B「少し黙らせろ」
エルフ兵A「はっ」
エルフ兵C「そら、よ!」ブンッ バキ
エルフ「きゃあっ!」ドサッ
エルフ「く……」ヨロッ
エルフ兵C「まだ立てるのか」
エルフ兵A「そんじゃ、今度は俺」
ーーシュッ
エルフ兵A「ぐげっ!」ドサッ
エルフ兵たち「ーー!」ザワッ
エルフ兵B「何だ!?」
エルフ(あの……ナイフは)

264 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:44:29 ID:9woH24nI
シュッ シュッ ドスドス
エルフ兵C「がっ!」
エルフ兵「ぐふ……」
ドサドサ
エルフ兵B「誰だ!」
女声「いちいち聞かなきゃそんなこともわからないんですか?」
エルフ(……数日会ってないだけなのに、懐かしい)
メイドエルフ「そんなのーーあなたたちの敵に決まってるじゃないですか」チャキ

265 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:46:35 ID:9woH24nI
補足ですが、魔法が存在しない設定だったりします。
今日の分は終了です。

266 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/13(火) 23:48:01 ID:dUvdMVzU
次も楽しみにしてる

269 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:47:40 ID:HZ4y/JIo
メイドエルフ「さて。皆さん、お覚悟はよろしゅうございますか」
エルフ兵B「なに?」
メイドエルフ「わたし、久方ぶりにキレました。大切なお嬢様と大切なお客様を傷つけたその罪」
メイドエルフ「ーー死んで償いやがりませ♪」ニヤッ
エルフ兵たち「ひっ!」ゾクッ
エルフ兵B「う、うろたえるな! たかが一人、ただのメイドだ! 数で押し込め!」
メイドエルフ「たかが一人」ジャキン
エルフ兵D「な……」
メイドエルフ「されど一人」ジャキン
エルフ兵E「ナ、ナイフがあんなに!?」

270 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:49:02 ID:HZ4y/JIo
エルフ兵B「ひ、怯むな! かかれ、かかれー!」
エルフ兵たち「お、おお!」ダッ
メイドエルフ「それでは……皆様!」シュババババババッ
ドスドスドスドスドスドスドス
エルフ兵D「がっ!」
エルフ兵E「ぐあ!」
エルフ兵たち「ぎゃーーーー!」
メイドエルフ「どうぞ、逝ってらっしゃいませ」ペコリ
ドサドサドサドサーー
エルフ兵B「……」パクパク
エルフ兵F「に、二十人以上を」
エルフ兵G「狙い違わず」
エルフ兵H「各ナイフ一本で倒しやがった……!」

271 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:50:25 ID:HZ4y/JIo
メイドエルフ「さあ」
エルフ兵たち「」ビクンッ
メイドエルフ「次に楽土へおでかけなさりたい方はどうぞ前へ」ジャキ ジャキ
メイドエルフ「メイドとして、きちんとお見送りさせていただきますので」ニコッ
エルフ兵B「ぐぅ……ええい、あいつを取り押さえろ!」
メイドエルフ「うふふ♪」ニヤッ

272 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:51:48 ID:HZ4y/JIo
ーーギャー! ウワー! イヤダー!
エルフ「……」ポカーン
エルフ「……何で侍さんにあの子があたしと同等程度の強さ、みたいな説明しちゃったんだろ」
男「おや? なんだか口調変わってない?」
エルフ「うひゃっ!?」ビクッ
ーーウギャー! グワー! ヒィー!
エルフ「ま、またあなたですの!? いつの間に後ろに、ていうかいつからここに!?」
男「メイドちゃんと一緒に来たんだけど。気付かなかったかな?」

273 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:53:04 ID:HZ4y/JIo
エルフ「いつの間にあの子と知り合っているんですか。あと存在感無さすぎですわ」
ーーモウイヤダー! コラ、ニゲルナー!
???「ところで、彼はどうしたんですか? 何だか苦しげですが」
エルフ「っと、そうですわ! 侍さん!」
侍「はぁ……はぁ……」
エルフ「すごい熱……! 毒のせいですの?」
男「ふむ。肩に矢傷があるね。毒矢かい?」
エルフ「え、ええ。わたくしをかばって」
男「ちょっと見せてくれるかな」
侍「……っ」
???「おわかりになるんですか?」
男「専門じゃないけど……確かにひどい熱だ」

274 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:54:23 ID:HZ4y/JIo
ーータイチョウモウムリデス! クソ、テッタイダ! テッタイセヨ!
男「どれ」チョン
侍「」 ドサッ
エルフ「ちょっ! なにしてるんですの!」ダキアゲ
男「意識はもうほとんどない、か」
メイドエルフ「いやーたくさん殺りましたー。すっきりです♪」
???「いい笑顔で恐ろしいことを発言しながら隣に立たないでください狂気を感じるので」
メイドエルフ「お侍様は大丈夫なんですか?」
???「スルーされた」
男「うーん……。とにかく、一度安全な場所に運ぼう。服も濡れたままだとまずい」
エルフ「わ、わかりましたわ」

275 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:54:42 ID:icjKutDk
メイドちゃんペロペロ

276 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:55:37 ID:HZ4y/JIo
夜 隠れ家
エルフ母「毒を!?」
男「うん。あの子をかばってくれた結果ね」
エルフ母「そんな……解毒は」
男「さっき、国に薬草を取りに行かせた。エルフ軍の警戒網の穴は教えたから、明日中には戻ってこれる」
男「それまで持ち堪えてくれるか否かは……彼次第だよ」
エルフ母「そう……」

277 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:56:48 ID:HZ4y/JIo
エルフ「……」
侍「はぁ……はぁ……はぁ……」
メイドエルフ「ーー失礼いたします。新しいお水とタオルをお持ちしました」
エルフ「ありがとう……」
メイドエルフ「湯あみの用意も整っています。お侍様はわたしが看病しますから、お嬢様は」
エルフ「いい」
メイドエルフ「ですが、お嬢様も河を泳がれたのですから」
エルフ「いい。わたくしのせいで彼は苦しんでいるのに、自分だけぬくぬくと湯あみなど」
ガチャ
エルフ母「だからこそ、あなたが休まなければ駄目よ」
エルフ「お母様……」

278 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:57:56 ID:HZ4y/JIo
エルフ母「あなたが傷つかないようにと、彼が守って下さったのでしょう?」
エルフ母「だったら、まずはあなたが元気になって、彼の勇気に応えてみせなくちゃ」
メイドエルフ「そうですよ。ここはわたしに任せて、お嬢様は」
エルフ母「あなたもです」
メイドエルフ「え?」
エルフ母「あなたも、昼間戦って疲れているでしょ? 侍さんは私が看ているから、二人ともゆっくりしていらっしゃい」
メイドエルフ「いえ、わたしはあれくらい」
エルフ「わかりました。わたくしが出るまではお願いします」スクッ
エルフ母「ええ」
エルフ「行きましょう」
メイドエルフ「あ、は、はい!」

279 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/14(水) 23:58:53 ID:HZ4y/JIo
チャポンーー
エルフ「……」ハァ
メイドエルフ「お嬢様、髪を束ねなくてよろしいので?」
エルフ「うん。面倒だから」
メイドエルフ「そうですか」
エルフ「二人っきりなんだから、敬語じゃなくてもよろしいですわ」
メイドエルフ「なら、あなたもお嬢様口調やめたら?」
エルフ「……そうね」

280 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/15(木) 00:00:08 ID:dEmM67aU
エルフ「あなた、強さを隠してたわね?」
メイドエルフ「別に隠してたわけじゃないわ。それに、さすがにあなたより強いなんてこともないし」
エルフ「うそ。あたし一人だけじゃ、あれだけの数を相手には出来ないわ」
メイドエルフ「強さの質が違うのよ。わたしは集団相手に強くて、あなたは一対一に強いの」
メイドエルフ「実際、わたしがあなたと手合わせして勝ったことないじゃない」
エルフ「まあ、そうだけど……」
エルフ「……」

281 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/15(木) 00:01:12 ID:dEmM67aU
メイドエルフ「……大丈夫よ、彼なら」
エルフ「え?」
メイドエルフ「というか、大丈夫じゃなきゃ嘘よ。やっと巡り逢えた人じゃない」
エルフ「め、巡り逢えたって、彼は別に……!」カァッ
メイドエルフ「あなたの味方になってくれる人って意味で言ったんだけど?」
エルフ「……」
メイドエルフ「……恋しちゃった?」
エルフ「……」カァッ
メイドエルフ「そっか。なら、なおさらあなたが元気にならなきゃ」
メイドエルフ「彼が元気になったとき、あなたが沈んだ表情だったら申し訳ないでしょ?」
エルフ「……うん」

282 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/15(木) 00:02:38 ID:dEmM67aU
エルフ「そういえば、あの男とはどういう経緯で?」
メイドエルフ「出会ったのはたまたまね。一度外に見回りに出たら騎士団の小隊を見かけて」
メイドエルフ「周辺をうろつかれても厄介だから始末しようとしたんだけど、そこに彼らが通りかかったの」
エルフ「ら? ……ああ、そういえばもう一人いたような」
メイドエルフ「見た通り人間だったから、問答無用で騎士に襲われててね」
メイドエルフ「だから助けたの。もしかしたら侍さんとも何か関係あるかもしれないと思って」
エルフ「で、そしたらあたしとも関係があったと」
メイドエルフ「そういうこと。彼から二人が怪我してるって聞いて、心配になってあそこまで出向いたのよ」
エルフ「そうだったの。ありがと。おかげで助かったわ」
メイドエルフ「どういたしまして」

283 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/15(木) 00:04:01 ID:dEmM67aU
エルフ「ところで、そのもう一人の彼はどこに行ったの? 見かけないみたいだけど」
メイドエルフ「ここに来る前、男さんが何か呟いた後、文句言いながらどっか行ったわ」
エルフ「……相変わらず謎だらけな人ね」
メイドエルフ「そーねー。ご主人様とも顔見知りみたいだったし」
エルフ「……え?」
メイドエルフ「二人とも、顔合わせた瞬間すごくびっくりしてたのよ。あなたは侍さんに気がいってたから気づいてなかったけど」
エルフ(お母様とあの男が、知り合い……?)

284 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/15(木) 00:05:11 ID:dEmM67aU
王城
司令「精霊が連中の味方をしている?」
参謀「はい。報告を聞く限りでは」
司令「具体的には」
参謀「こちらの兵がいくら問いかけても精霊が答えてくれないとのこと」
参謀「そもそも、姿すらも見せてはくれないそうです」
司令「確か、精霊は己の姿を見せる相手を任意で選べるのだったな」
参謀「はい。そして、例の彼女には見えている節があったとのこと」
司令「……解せん。何故自然そのものの命と言っても過言ではない精霊が、我らではなく混血などの味方をするのだ」
参謀「彼らの考えまではさすがに」

285 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/15(木) 00:06:12 ID:dEmM67aU
司令「まあいい。連中の捜索はひとまず後回しにさせろ」
参謀「では?」
司令「うむ。明日、隣国へ向けて出陣する」
司令「人間などこの大地には不要だと、民に証明してやるのだ」
参謀「かしこまりました。すぐ手配いたします」
司令「頼むぞ」
参謀「では」
ガチャッ バタンーー
参謀「……」
参謀「……過ぎた選民思想は、己の破滅を招くだけなのですがね」

286 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/15(木) 00:07:45 ID:dEmM67aU
翌日
侍「はぁ、はぁ……ぐぅっ……」
エルフ(昨夜よりも呼吸が苦しそう……このままじゃ……)
ガチャ
男「どうだい。彼の様子は」
エルフ「……いけませんわね。徐々に悪化しているようです」
男「ふむ。今配下に薬草を取りに行かせてるんだが」
エルフ「配下に、薬草?」
男「あれ。僕の他にもう一人いたの覚えてない?」
エルフ「地味な方がいらしたのは覚えていますが」
男「結構言うね君。さておき、その地味な彼がそうさ。早ければもうそろそろ戻ってくるはずなんだが」