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侍「道に迷ったらエルフに捕まっちまってござる」
Part7


198 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:11:18 ID:2tTYifIk
侍「おおおっ!」ガシィッ!
刺客♂「ーーなに!?」
刺客♂(こいつ、素手で短剣を掴みやがった!?)
侍「はあっ!」
刺客♂「くそ!」
ブンッ ザンッ!
刺客♂「ぐっ……」ブシュッ
侍「ちっ」ズキッ
侍(出血が少ない。浅かったか)
刺客♂「無茶苦茶なやつだ。これだから人間は……」
侍「やっとまともに口を開いたな」
刺客♂「……人間と話す口はない。次こそ殺す」
侍「あいにくだが、まだやることがあるんでな。簡単にはやられねーよ」
刺客♂「ふんっ!」ダッ
侍「はっ!」ダッ

199 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:12:45 ID:2tTYifIk
エルフ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」
刺客♀「うっふふ。だいぶお疲れのようね」
エルフ(迂濶でしたわね……暗器を警戒するあまり、集中を欠いて体力を無駄使いしてしまうとは)
刺客♀「さて。とどめはどっちにしようかしら。剣で斬るか、暗器で撃つか」
エルフ「……」
エルフ(仕方ないですわね。あんまりやりたくないけど……)
エルフ「はあっ!」ブンッ
刺客♀「おっと」キン
ブンッキン ブンッキン
刺客♀「遅い!」ヒュン ザシュッ!

200 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:13:53 ID:2tTYifIk
エルフ「くぁっ!?」ヨロッ
エルフ「つ……」ボタッボタッ
刺客♀「あらあら。その足じゃ、もう動けないわね」
エルフ「……」
刺客♀「ふふ。じゃあ、最後は剣で決めましょう。剣達者なあなたなら、その方が本望でしょ?」
ザッ ザッ ザッ
エルフ「……」
刺客♀「じゃあね。これでおしまーー」
エルフ「ーーはああああっ!」ブンッ
刺客♀「!?」

201 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:15:00 ID:2tTYifIk
侍「はっ!」
刺客♂「ふんっ!」
ギンッ ガィン キンッ
刺客♂「おおおっ!」ブンッ
侍(我を捨てたか。さっきまでと気迫が段違いだ)
侍「ふっ!」ヒュッ
ギン ギン ヒュッ キン
侍(だが!)
刺客♂「はあっ!」クルン
侍「ーーそこ!」
ヒュッ キィンーー
刺客♂「なに!?」
侍「おおおっ!」ブンッ ザンッ!
刺客♂「がっ……!」ヨロッ

202 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:16:18 ID:2tTYifIk
刺客♂「ぐ……ぅ……」ブシュッ
侍「……勝負ありだ。その深手じゃ、もう動けまい」
刺客♂「貴様……」
侍「熱くなったのが敗因だ」
侍「冷静なままならよかったものを、途中で逆手持ちを順手に変えようとするから余計な隙が出来た」
侍「剣は逆手で持つようには出来ていない。自然威力の伝わりが悪くなり、一撃の威力にどうしても欠ける」
侍「熱くなったせいで、手数より威力を取ろうとした。それはいいが、せめて間合いを空けてからやるべきだったな」
刺客♂「……ちっ」チャキ
侍「無駄だ。その傷では、もう戦いなんて」
刺客♂「勘違いするな。これはーーこうするためだ!」ドスッ!
侍「!」
刺客♂「ぐ……かは……」ドサッ
刺客♂「……人間の……手に……など……かかって……たまる……か」
刺客♂「…………」コトッ
侍「……後味悪いな」キンッ

203 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:17:31 ID:2tTYifIk
刺客♀「っと!」スカッ
エルフ「っ……」
刺客♀「危ない危ない。そういえば、腕はまだ動かせるのよね」
刺客♀「予定変更。やっぱり遠くから、こっちで殺してあげる」スッ
エルフ(針? あれが暗器の正体……)
刺客♀「くす。それじゃ」
エルフ(この程度の距離なら……)スッ
刺客♀「あら。目を瞑ったりして、観念したのかしら」
刺客♀「まあいいわ。それじゃーーさよなら。混血さん」シュッーー
エルフ「ーー」

204 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:18:37 ID:2tTYifIk
ーーヨケテ!
エルフ「!」カッ!

205 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:20:44 ID:2tTYifIk
サッ ヒュンーー
刺客♀「なっ!? 避けられーー」
エルフ「っ!」ダッ ブシュッ
刺客♀(あの足で走って!?)
刺客♀「くっ!」チャキ
エルフ「やあっ!」
ブンッ ギィィィン!
刺客♀「くぁっ!?」
エルフ「はああああっ!」
ザンッ!
刺客♀「がは……!」ドサッ

206 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:21:23 ID:2tTYifIk
エルフ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁーーつぅ!」ボタボタ
刺客♀「そん……な……。汚れた小娘……に……がはっ!」
刺客♀「…………」コトッ
エルフ「はぁ、はぁ、はぁ」
エルフ「はぁ、はぁ……ありがとう」
ーーフリフリ

207 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:22:39 ID:2tTYifIk
侍「エルフ。無事か」
エルフ「なんとか。侍さんこそ、平気ですの?」
侍「ああ。少しばかり油断したけどな」
エルフ「同じく。足を少々やられましたわ」
侍「……少し深そうだな」
エルフ「あなたの手もなかなかですわよ」

208 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:23:49 ID:2tTYifIk
侍「ああ。ひとまず手当てするか」
エルフ「ええ。幸い、もう敵はいないようですし」
侍「精霊か」
エルフ「ええ。今の戦い、彼らに助けてもらわなければどうなっていたか……」
侍「よかったじゃないか」
エルフ「え?」
侍「また味方が増えて」
エルフ「あ……」
エルフ「ええ……そうですわね」

209 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:26:20 ID:2tTYifIk
書いてると長いのに投下するとあっという間でしかも案外短いという……。
今日の分終了です。また後日、というか明日に。

210 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:27:12 ID:zPgyiXUk


215 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:39:57 ID:LWAoxB8.
ギュッ
侍「よし。もういいぞ」
エルフ「意外と手際がいいんですのね」
侍「旅をしていれば、怪我することなんかしょっちゅうだからな」
エルフ「慣れですわね」
侍「そういうこと。しかし、しっかり治すにはさすがに医者に診てもらうしかないが」
エルフ「無理ですわ」
侍「まあ、街ではもう手配されてる可能性もあるか」
エルフ「いえ。手配とか、そういうことは関係なく無理なんです」
エルフ「怪我だろうと病気だろうと、わたくしやお母様が診療を受けることは」
侍「……そこまで」
エルフ「そのせいでお母様は……いえ、やめましょう」
エルフ「まあそのおかげで大病はもちろん、軽い風邪すら患ったことはございませんけど」フッ
侍(軽い病気でも、へたをしたら命に関わるからか……)

216 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:42:10 ID:LWAoxB8.
エルフ「そんなわけですから、医者を探すのは無しということで」
侍「わかった。しかしだとすると、どうにかして足を確保する必要があるな」
エルフ「ごめんなさい。よりにもよって足をやられたのは迂濶でしたわ」
侍「本気の殺し合いだったんだ。気にする必要はない」
エルフ「……」
侍「しかし困ったな。来るときに乗ってきた馬、どこに繋いだか」
エルフ「馬で? ああ、街から国境までですわね」
侍「ああ。メイドエルフが貸し馬屋から借りてくれたやつなんだが」
エルフ「……二つの意味で、返す機会はなさそうですわね」
侍「そうだな」
侍(色々聞いてしまうと、返す義理も無いように感じるがな)

217 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:43:32 ID:LWAoxB8.
侍「無いものねだりをしても仕方ない。歩けそうか?」
エルフ「ん……」ズキッ
エルフ「っ」
侍「しばらくは無理だな」
侍「抱えていこうにも、俺の手もこれでは」
侍「かと言って、おぶっては両手が塞がるからいざというときにまずい」
エルフ「ごめんなさい……」
侍「だから気にするな。さて、どうするか」
男「どうしようかねー」
侍「……」
エルフ「……」
男「ん?」
侍・エルフ「何故ここにいる」

218 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:44:58 ID:LWAoxB8.
男「や、ただの通りすがり?」
侍「半疑問系で答えるな」
男「あ、よかったらこの馬使う? なーんか木に繋がれて放置されてたのが不憫だったから乗ってきたんだけど」
侍「つーかそれ俺が乗ってきた馬だ!」
男「そうなのかい? じゃあなおのこと僕ナイスタイミング。足怪我してるみたいだし、お嬢さんに乗ってもらおう」
エルフ(な、なんてご都合主義的な……わざとやってますのこの人?)

219 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:46:06 ID:LWAoxB8.
侍「……それについては否定しないでおく。ほら」
エルフ「え、ええ」
侍「よっ、と」ヒョイ
エルフ「きゃっ!? い、いきなり抱えないでくださいません!?」カァッ
侍「その足じゃ自力で跨がれないだろ。ほい」
エルフ「まったく……」ストン
男「うんうん。若いっていいねー。僕も二十年くらい前は熱ーい恋をしたもんさ」
エルフ「想像できません」
男「じゃあ聞く? 聞きたい? 若かりしおじさんの甘く切なく凄まじいピュアラブストーリーを!」
侍「行こう」
エルフ「ですわね」
男「せめてジト目くらいは向けたまえ」

220 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:47:31 ID:LWAoxB8.
侍「いちいち相手にしてたら日が沈むだろ。馬のことは礼を言うが」
男「ま、知らぬ顔ではないし、通り会わせたのも何かの縁だからね」
男「ところで、お嬢さんだけじゃなく君も怪我をしているようだけど」
侍「……少しな」
男「ん? 僕は関係ないから巻き込みたくない?」
侍「そういうことだ」
エルフ「興味本意でこの国に来たのなら、今すぐ帰るべきですわよ」
男「んー。そう言われると、天邪鬼な僕としてはますます帰りたくなくなっちゃうなぁ。てへっ☆」
エルフ「……」チャキッ
男「無表情で剣に手をかけないでもらいたい」

221 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:50:02 ID:LWAoxB8.
エルフ「……そういえば、あなた」
男「ん?」
エルフ「この剣のこと、何か知っていますの?」
男「おや。何でそう思うのかな?」
エルフ「あなた、さっき洞窟を出るときに言ってたじゃありませんか。その剣を大切にしろと」
男「んー。そんなこと言ったっけ?」
エルフ「……答える気はないようですわね」
男「だから僕には何のことやら」
エルフ「もういいです。森でも村でも、好きなだけ見ていらっしゃい。命の保証はいたしませんわよ」
男「くわばらくわばら」

222 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:50:44 ID:LWAoxB8.
侍「行くか?」
エルフ「ええ。行きましょう」
男「それじゃ、僕もこの辺で」
侍「一応、気を付けてな」
男「申し訳程度のご心配に感謝するよ」
エルフ「……」
男「それじゃあね。近いうちにわかると思うよ、お嬢さん」
エルフ「え!?」
男「さらばだー」キラッ
エルフ「ちょっ、どういう……行ってしまいましたわ」
侍「……」

223 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:52:03 ID:LWAoxB8.
エルフ軍本陣
エルフ王「その報告はまことか」
参謀「はっ」
司令「例の女隊長、混血の身でありながら騎士団へ登用させてもらった恩を忘れ、我らに……いえ、陛下に牙を向きました」
司令「辛うじて生き残った者が、戦場にて敵将と談合する混血の姿を目撃しております」
参謀「共にいたという極東出身の者も合わせて、目下行方を捜索中にございます」
エルフ王「……わかった。ときに司令」
司令「はっ」

224 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:53:21 ID:LWAoxB8.
エルフ王「そなたは司令に昇格してまだ日が浅かったな」
司令「はっ。まだ一年ほどにございます」
エルフ王「なるほど。確かに、その間実際に顔を会わせたのは僅かであるな」
司令「左様にございます」
エルフ王「では司令。いい機会だからそなたにも教えおこう」
司令「はっ?」
エルフ王「二度と私の前で、混血などという蔑称を使うな!!!」バンッ
司令「っ!」
エルフ王「……件の騎士とその人間。見つけ次第私の前に連れてこい。ただし、丁重にな」
司令「丁重に? 相手は御身に反旗を翻したーー」
エルフ王「二度同じことを言わせるな」
司令「……御意」
司令(……!)ギリッ
参謀「……」

225 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:54:44 ID:LWAoxB8.
数時間後
侍「だいぶ暗くなってきたな」
エルフ「今日はこの辺りで野宿しましょう。敵もいないですし」
侍「敵、か。あいつら、やっぱり軍の回し者か?」
エルフ「状況からしてそうとしか思えませんが、あのような者たちを見かけた覚えはありませんわね」
侍「それに、どうやって俺たちの居場所を突き止めたかも気になる。精霊に聞いたか?」
エルフ「……いえ。精霊は否定していますわ」
侍「教えてない、か。どうやら、精霊は本格的にお前の味方をしてくれるようだな」
エルフ「それはもちろん嬉しいのですけど」

226 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/12(月) 22:56:51 ID:LWAoxB8.
侍「なおさら、居場所を突き止められた原因がわからない」
エルフ「ええ。そこがわからないと、今後もまた襲われる危険があります」
侍「特にこれからの時間帯は危険だな……」
エルフ「ですわね。交代で見張りをするしか、今のところ手はないですが」
侍「そうしよう」