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侍「道に迷ったらエルフに捕まっちまってござる」
Part6


163 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 16:23:14 ID:gyKs/.DY
侍「さて。保存食もそろそろ底をつきそうだし、そこらに食べられる野草か何か生えてなーー」
キャーーーーーー!!
侍・動物たち「」ビクンッ!
侍「な、何だ!?」

164 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 16:24:28 ID:gyKs/.DY
エルフ「な、なななな何で須野あなた!!?」
男「こんな格好で言うのもなんだが、少し落ち着きたまえレディ」
エルフ「だったら早く服を着てくださいませんこと!? でないと!」ガシッ
男「わかったから、とりあえず剣を抜こうとしているその手を下ろしてもらえるかな」
侍「おい、どうした!」
男「やぁ」キラッ
侍「」

168 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 17:18:38 ID:gyKs/.DY
侍「で、でたな妖怪!」キンッ
熊「グゥゥゥ……」
男「待ちたまえ妖怪じゃないから鯉口切らないでもらいたい。熊くんもそんな唸らないでさすがに恐いよ」
侍「……とりあえず服を着ろ」
男「今着ようと思っていたところだよ」
侍「で。あんた何者だ。見たところ人間のようだが」
男「しがない放浪人さ」キラッ
侍「……」キンッ
男「無言で鯉口を切らないでもらいたい」

169 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 17:19:40 ID:gyKs/.DY
侍「そんな白髪に白髭だらけの風貌で歯を光らせても胡散臭いだけだ」
男「胡散臭いはひどいなぁ。お嬢さんもそう思わない?」
エルフ「話しかけないで露出狂」
男「もっとひどかった」

170 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 17:20:52 ID:gyKs/.DY
男「ま、身分を表す物を持ち合わせていないから、怪しいと思われても仕方ないけどね。よっこいしょ」
侍「どこへ行く」
男「特に決めてないよ。ただ、エルフの国には前々から興味があってね」
男「ちょっと見て回ろうと思って、昨日から来てみたんだよ」
エルフ「……あなた、今この国がどのような状態か知りませんの?」
男「なーんか隣国と険悪な雰囲気だよねー」
エルフ「なら、この国の住民が人間に対してどのような感情を抱いているかもわかるでしょう?」
男「あ、心配してくれるんだ? おじさん嬉しいなぁハグしていい?」
エルフ「死んでしまえばいいのに」

171 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 17:23:17 ID:gyKs/.DY
男「冗談はさておき、そろそろ僕は行くとしようか」
侍「……まあ、止めはしないが」
男「僕だって、相応の知識はあるさ。君たちも気を付けるといい」
男「……どうにもキナ臭いからね」
エルフ「え?」
男「ではご両人。さらばだ」キラッ

172 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 17:24:26 ID:gyKs/.DY
侍「……何だったんだ?」
エルフ「何でもいいですわ。あんな……ゲスいものを朝っから……!」ワナワナ
侍(ゲスい……)
エルフ「もしまた不埒な真似をしたら、全身斬り刻んで魚のエサにしてやりますわ……!」
侍「いや、さすがにもう会うことは無いと思うが」
男「あ、そうそう」ヒョイ
侍「うおっ!?」
男「お嬢さん。その剣、大切にしなさいよ」
エルフ「え?」
男「じゃ、今度こそ失礼」

173 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:29:20 ID:gyKs/.DY
侍「気配を感じなかった……本当に何者だ?」
エルフ(あの人、この剣のことを何か知って……?)
侍「まあ、敵ではなさそうだからいいか」
エルフ「……ですわね」
エルフ(今は考えても仕方ないですわ)

174 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:30:57 ID:gyKs/.DY
侍「出発の前に確認したいんだが、昨夜言ってた隠れ家まではどう行けばいいんだ?」
エルフ「街道を通れれば一番確実なんですけど、そちらは軍が検問を敷いているでしょうから」
エルフ「一度南へ大きく迂回してから森の中を西進し、河が見えたらそれに沿って北上します」
エルフ「ただ、これはエルフ軍の陣があった場所を基点にした道筋ですので、一度そこまで近付く必要がありますが」
侍「昨夜は逃げるのに必死で、ここがどこだかわからないもんな。そんなに遠くまで行ってないとは思うが」
エルフ「どちらから来たのか大雑把には覚えていますから、さほど迷わず元いた場所までは戻れると思いますわ」
侍「そうか。なら頼む。俺はどうも方向音痴みたいで、道を覚えるのは苦手なんだ」
エルフ「そうなんですの?」

175 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:32:07 ID:gyKs/.DY
侍「ああ。昨日お前と合流したけど、メイドエルフから聞いた話の通りなら、あと二日は早く着いてたはずだからな」
エルフ「つまり、二日間道に迷っていたと?」
侍「そうなる」
エルフ「意外ですわね。何でも卒なくこなせるような人ですのに」
侍「何でもは出来んよ。それに、お前に尋問されたとき、道に迷ったって説明しただろ?」
エルフ「そういえば、そんなこともありましたわね」
エルフ「……くす」
侍「ん?」
エルフ「いえ、何でも」
エルフ(この人にも、そんなかわいらしい弱点があるんですわね)
エルフ「たった二週間前なのに、ずいぶんと懐かしい感じですわ」
侍「そうだな」

176 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:33:10 ID:gyKs/.DY

侍「……いいぞ。出てこい」
エルフ「この辺りは、本当に安全なようですわね」
侍「ああ」
熊A「……」
熊B「……」
兎「……」
リス「……」
侍「な、なんだか改めて見ると、こいつらが一列に並んでる様は色々と凄い」
エルフ「かわいいですけど、シュールというか何というか」

177 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:34:14 ID:gyKs/.DY
侍「こいつらの寝床だったんだし、礼を言うべきか?」
エルフ「通じるのかしら……。えっと、皆一晩ありがとう、ね?」
熊A・B「」フリフリ
エルフ「手を振ってる!?」
侍「通じてる上になんて器用な真似を!?」
エルフ「えっと、その……じ、じゃーね?」フリフリ
兎・リス「」フリフリ
侍「耳と尻尾で!?」
エルフ(み、皆かわいいですわね……)

178 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:35:42 ID:gyKs/.DY

エルフ「えっと、確かこの辺りで焚き火をしていたはず」
侍「あれだ」
エルフ「ありましたわね。付近に兵士の姿も無しとなると」
侍「捜索範囲を別の場所に移したか」
エルフ「とはいえ、さすがに陣を引き払ったとは思えませんわ」
侍「昨日の今日じゃな。ここからは少しーー」ピクッ

179 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:36:48 ID:gyKs/.DY
エルフ「? どうかしましーー」
侍(伏せろ!)ガバッ
エルフ(っ!?)
ザッ ザッ
エルフ兵A「まったく。あの混血女はどこに隠れやがった」
エルフ兵B「確か、前迷いこんだ人間の男も一緒にいるんだよな」
エルフ兵A「ああ。おおかた、あの女が下品な手で誘惑でもしたんだろ」
侍(ちっ……)
エルフ兵B「だろうな。男の方も、それにホイホイ乗ったんだろ。人間ほど欲望にまみれた生物はいないからな」
エルフ(勝手なことを……!)

180 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:38:29 ID:gyKs/.DY
エルフ兵A「あーあ。やっぱもうこの辺りにはいないんじゃないか?」
エルフ兵B「もう一晩経っているからな。あるいはだいぶ遠くまで逃げているかもしれん」
エルフ兵A「仕方ない。そろそろ時間だし、戻って合流するか」
ザッ ザッ ザッ ザッ
侍「……行ったか」
エルフ「みたいですわね」
侍「好き勝手に言ってくれやがったな」
エルフ「本当。いずれひっぱたいてやりますわ」
侍「ああ。ほっぺた腫れるまでやってやれ」
エルフ「当然です。ところで……そろそろ、その」カァッ
侍「ん……ああ、悪い」ヒョイ
エルフ「い、いえ。別に謝らずとも」
エルフ(いきなり押し倒されたときはびっくりしましたけれども……)

181 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 21:40:19 ID:gyKs/.DY
ちょっと早いけど今日はここまでにします。また後日。

182 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/10(土) 22:24:19 ID:DBjOSe4c
おっつ

185 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 20:49:19 ID:vpQ5LAvw
そろそろか

186 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 22:54:11 ID:2tTYifIk
侍「そろそろ時間、とか言ってたな。あいつら」
エルフ「ええ。さすがにもう、この辺り一帯の捜索は縮小するでしょうね」
侍「なら、このまま南まで一気に進むか?」
エルフ「そうですわね。時間をかけるとこの辺りは安全になっても、代わりに国全域に警戒範囲を広げられてしまいますし」
侍「そうなったら、ますます身動きがとりにくくなるか」
エルフ「隠れ家に着けば、こちらが尻尾を出さない限りバレることはありません」
侍「後のことは?」
エルフ「着いてから考えますわ」
侍「だな」

187 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 22:55:31 ID:2tTYifIk
同時刻
ガラガラガラガラ
メイドエルフ「ご主人様、お疲れではございませんか?」
エルフ母「ええ、大丈夫よ。あなたこそ平気? 一睡もしていないけど」
メイドエルフ「わたしなら問題なしなしです。その気になれば五日間は不眠不休で動けます」
メイドエルフ「まあ、その後一週間くらいバタンキューしちゃいますけど」
メイド母「じゃあ、あなたがバタンキューしちゃう前に着かないとね」
メイドエルフ「ですねー。問題は」
ガラガラガラ
メイドエルフ「荷馬車の速度が如何せん遅いことなんですよねー」

188 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 22:56:45 ID:2tTYifIk
メイド母「ごめんなさい。私がちゃんと歩ければ……」
メイドエルフ「とんでもございません! それはご主人様にはなんら責任の無いことなんですから!」
メイド母「でも」
メイドエルフ「そんなお顔をなさらないでください。今回はわたしがいるんです」
メイドエルフ「二度とあんなことにならないよう、しっかりとお守りさせていただきますから!」
メイド母「……ありがとう。お願いね」
メイドエルフ「お任せください!」
メイドエルフ(ええ。もうあんな事、わたしの前で二度と繰り広げさせたりしないんですから!)

189 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 22:58:00 ID:2tTYifIk
エルフ「思ったよりあっけなく陣からは離れられましたわね」
侍「さすがにこの辺りにエルフ兵の気配は無いな」
エルフ「だいぶ南下してきましたから。当分は安全に進めますわ」
侍「とはいえ、あまりゆっくりもしていられないんだろ」
エルフ「ええ……そろそろですわね」
侍「そろそろ?」
エルフ「あれですわ」
侍「ん? おー。立派な大木だ」

190 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 22:59:53 ID:2tTYifIk
エルフ「詳しい樹齢はわかりませんけれど。これを基点に、しばらく西へと進みます」
侍「そうか。しかし、ほれぼれするな」
エルフ「そうですわね」フリフリ
侍「誰に手を振って……あ、精霊か?」
エルフ「ええ。この樹には昔からたくさんの精霊が住んでいますの」
侍「なんとなくわかるな。俺の国でも神社のご神木は神秘的な雰囲気だが、この樹にもそれに通ずるものがある」
エルフ「あら。ちょっと見てみたいですわね」
侍「もしかしたら、精霊が見えるかもしれないな」
エルフ「異国の精霊か。一体どのような姿でーー……」
エルフ「……」
侍「……何て言ってる?」
エルフ「『テキがキテるよ』」

191 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:02:15 ID:2tTYifIk
ガサ シュッ
侍「ーーふっ!」キンッ
エルフ「ナイフの投擲!? どこかで見たような攻撃ですわね」
侍「抜け。来るぞ!」
エルフ「!」シャー
ガサガサガサ ガサッ!
男声「死ね」
ギンッ
侍「ちっ」

192 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:03:02 ID:2tTYifIk
エルフ「侍さん!」
女声「よそ見をしている場合かしら?」
エルフ「!」
キィンッ
エルフ「くっ!」ググッ
刺客♀「さあ。剣術大会優勝経験者の腕前、見せてもらおうかしら」ググッ
エルフ「……いいでしょう。ただし、お代は高くつきましてよ!」

193 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:04:32 ID:2tTYifIk
刺客♂「……」ヒュン ヒュン
侍「……!」スッ スッ
侍(逆手の二刀短剣。尺は無いが)
侍「はあっ!」ブン
刺客♂「」ヒラリ
侍(かなりの身軽さだな。軽業師並だ)
侍(つけ加えて)
刺客♂「ふんっ」シュッ シュッ
侍「」スッ キン!
侍(間合いが離れたら短剣の投擲。二本連続でくるから、迂濶に懐に飛び込めず)
刺客♂「……」スラリ
侍「ちっ」

194 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:05:40 ID:2tTYifIk
侍(いざ近付こうとすれば、別の短剣を既に抜いている)
侍「ーーおおおお!」
刺客♂「!」
ブンッガキン シュッキン!
刺客♂「はっ!」シュッ!
侍「っ!」キィンッ
刺客♂「もらう」ダッ
侍(こっちの懐に!?)
刺客♂「死ね」
侍「ちぃっ!」

195 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:07:13 ID:2tTYifIk
エルフ「はあっ!」
刺客♀「ふっ!」
ガキンッ!
エルフ「やあっ!」ブンッ
刺客♀「っ」ギン ヨロッ
エルフ(いける!)
エルフ「はあああっ!」ダッ

196 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:09:10 ID:2tTYifIk
刺客♀「ーー」
エルフ(……!)ビタッ
刺客♀「はっ!」
シュッ ザシュッ!
エルフ「つっ!」ツー
刺客♀「ちっ。頬にかすっただけか」ボソ
エルフ(剣じゃない。今のは、暗器?)
刺客♀「まあいいわ。威嚇効果は十分」

197 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/11(日) 23:10:05 ID:2tTYifIk
エルフ(精霊が警告してくれたおかげで助かった。けど)
刺客♀「剣での戦いはあなたが優勢。でも、今のも交えればどうなるかしらね?」
エルフ「……」
エルフ(どうかしらね。さっきのよろめき、わたくしを誘うためにわざと隙を作ったと思った方がいい)
エルフ(確かに負けてるわけじゃない。だけど)
刺客♀「それじゃあ、試してみようかしら!」ダッ
エルフ(だからって、余裕なんか少しもない!)
エルフ「……ええい!」ダッ