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侍「道に迷ったらエルフに捕まっちまってござる」
Part3


68 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 00:56:21 ID:pPnToBB.
エルフ母「ええ。おそらく、私の父が存命中に重ねた功績によるものです」
エルフ母「あの子自身も、たぶん気付いているでしょう。私を喜ばせようと、そんなことを言ったのだと思います」
侍「そうですか……」
侍(あいつには指揮官として最も重要なものが欠けている。しかも本人には何の落ち度も責任も無いところで)
侍(もし今のまま最前線で戦うことになったら、真っ先に瓦解するのはあいつの部隊だ)
侍(……)
侍「ここから前線の国境までどれくらいなんだ?」
メイドエルフ「距離ですか? 馬や馬車を使えば三日、徒歩でしたら早くて一週間ほどですね」
侍「そこまでの道を教えてくれ。できれば地図で。口頭で聞くだけだと迷う自信がある」
メイドエルフ「はい?」

69 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 00:57:37 ID:pPnToBB.
五日後 国境付近
エルフ軍陣営
司令「敵からの返答は」
参謀「未だ何も。使者を送ってからはや三日。使者が無事に戻ったことは幸運でしたが」
参謀「しかし、何の返事もしてこないというのはさすがに予想外でしたね」
司令「陛下がご到着なされるまであと半日ほどか」
参謀「はい。陛下にも逐一伝令を遣わしていますが、お考えはまだ変わらないご様子」
司令「二つの村を占領して以降、隣国軍に目立った動きはない」
参謀「敵が何を考えているか読めませんね」

70 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 00:58:52 ID:pPnToBB.
司令「ふん。大方陛下を誘き寄せて暗殺しようという魂胆だろう」
参謀「決めつけるのはよくありません。が、かといってこんな状態で陛下をお迎えするわけにもまいりませんね」
司令「……仕掛けるか」
参謀「ご命令には背くことになりますが、仕方ありませんね」
司令「うむ。あの女の部隊にやらせろ」
参謀「あの女……例の混血ですか」
司令「ああ。誇り高きエルフの騎士に、あのような輩はいらん。敵の手が読めん今、ちょうどいい捨て石だ」
参謀「かしこまりました」

71 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:00:57 ID:pPnToBB.
エルフ兵「攻撃って、俺たちがですか!?」
エルフ「ええ。ついさっき、そう命じられました」
女エルフ兵「味方は……」
エルフ「……わたくしたちだけです」
女エルフ兵「そんな!」
エルフ兵「無茶ですよ! あの大軍相手に俺たちだけでなんて!」
エルフ「今回の攻撃は敵の出方を見るための陽動であって、敵に勝つことが目的ではないから多くを動かすことはできないと」
エルフ「異議を申し立てて、そう言われました」
女エルフ兵「つまり……私達、捨てゴマにされたんですか……?」
エルフ「……話は終わりです。出陣の支度をなさい」
エルフ兵「……ちっ! 了解しましたよ! くそっ!」
女エルフ兵「なんで……こんな」
エルフ「……」ギリッ

72 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:01:19 ID:pPnToBB.
エルフ兵「攻撃って、俺たちがですか!?」
エルフ「ええ。ついさっき、そう命じられました」
女エルフ兵「味方は……」
エルフ「……わたくしたちだけです」
女エルフ兵「そんな!」
エルフ兵「無茶ですよ! あの大軍相手に俺たちだけでなんて!」
エルフ「今回の攻撃は敵の出方を見るための陽動であって、敵に勝つことが目的ではないから多くを動かすことはできないと」
エルフ「異議を申し立てて、そう言われました」
女エルフ兵「つまり……私達、捨てゴマにされたんですか……?」
エルフ「……話は終わりです。出陣の支度をなさい」
エルフ兵「……ちっ! 了解しましたよ! くそっ!」
女エルフ兵「なんで……こんな」
エルフ「……」ギリッ

73 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:03:03 ID:pPnToBB.
隣国軍陣営
騎士「申し上げます! エルフ軍に動きあり! 小規模の部隊がこちらに進軍しています!」
将軍「ほう? 数は」
騎士「およそ二百です」
将軍「本当に小規模だな。伏兵の可能性は」
騎士「いえ。そのような気配は今のところ」
将軍「ふむ……。千人ほど回せ。俺が指揮を執る」
騎士「将軍自ら、ですか?」
将軍「ああ。ここ数日はろくに動いていないからな」
騎士「了解」

74 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:04:24 ID:pPnToBB.
エルフ兵「前方に敵軍を確認!」
エルフ「来ましたわね」
エルフ(予想よりも少ない。向こうもこちらに合わせてきましたか)
エルフ(とはいえ、やはりこちらの不利は否めない……でも、やるしかありません!)
エルフ「進軍止め! 陣形を組め! 総員抜剣!」
将軍「ん? あの娘……」
騎士「将軍?」
将軍「……いや。進軍止め!」
エルフ(絶対、死なない)
エルフ「ーー攻撃開始!」

75 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:06:09 ID:pPnToBB.
数十分後
エルフ「はあっ!」
ザシュッ ザシュッ
敵兵A「ぐあっ!」
敵兵B「ぎゃああああ!!」
ドサドサッ
エルフ「はぁ、はぁ、はぁ……味方は」
敵兵C「おらぁっ!」ザンッ
エルフ兵「うわああああ!」
女エルフ兵「きゃあああああっ!!」
エルフ(くっ……やはり旗色が悪いですわね)

76 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:07:23 ID:pPnToBB.
エルフ兵「くそ、やっぱり駄目だ! 数が違いすぎる!」
女エルフ兵「もう嫌! なんで、なんでこんな無茶な戦い!」
エルフ「うろたえてはなりません! 一度全員固まって態勢をーー」
エルフ兵「うるせえ! 誰のせいでこんな目にあってると思ってるんだ!」
エルフ「ーーっ!?」
女エルフ兵「あんたが……あんたが隊長なんかやってるから、私達まで捨てゴマにされたのよ!」
エルフ「なっ……!」
エルフ兵「付き合ってられるか! 俺は退かせてもらう!」
女エルフ兵「私も! こんなののために死にたくない!」
エルフ「ま、待ちなさい!」
エルフ兵「総員撤退! 本陣まで撤退だ!」
女エルフ兵「殿はあの人に任せていいから!」
エルフ「…………」

77 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:08:37 ID:pPnToBB.
数分後
エルフ「……」
将軍「どうした? そなたは撤退せんのか?」
エルフ「……どうやら、殿を押し付けられたみたいですので」
将軍「事情はわからんが、哀れよな」
エルフ「……」
将軍「どうする? 退くというのなら追撃はせんが」
エルフ「……」チャキッ
将軍「ふっ。それもよかろう」
騎士「お下がりを。ここは私が」
将軍「いや、わしがやる」

78 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:10:04 ID:pPnToBB.
騎士「しかし」
将軍「この者、お前よりも強いぞ」
騎士「……はっ」
将軍「時に、エルフの娘よ」
エルフ「何か」
将軍「そなたの剣は……いや、聞いたところで栓ないことか」ガシャッ
エルフ(ハルバート。得物といい、この気迫といい、厄介な老将ですわね)
将軍「ではーーゆくぞ!」ダッ
エルフ(っ! はやいーー)
将軍「ぬぅんっ!」
ドガァッ!
エルフ(くっ!? 避けたのに衝撃が!)
将軍「遅いわ!」
ブゥンッ ガキンッ!
エルフ「がっ!?」ドサッ

79 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:11:41 ID:pPnToBB.
エルフ「くっ……う……」
将軍「回避直後の不安定な姿勢で防御できたか」
将軍「だが、衝撃でしばらくは身動きできまい」
エルフ「……」キッ
将軍「ほう。いい眼をしよる。敵わぬとわかっていてなお抗がうか」
将軍「斬ってしまうにはちと惜しいな。どうだ、よければーー」
エルフ「仲間にも捕虜にもなる気はありませんわ」
将軍「……何故だ。味方からあのような仕打を受けてまで」

80 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:13:04 ID:pPnToBB.
エルフ「わたくしの味方は彼らではありません」
エルフ「わたくしの味方は、ただ二人だけ……」
エルフ「その二人が待っていてくれる限り、わたくしは」グッ
将軍「むっ?」
エルフ「わたくしは……!」グググッ
エルフ「わたくしはーーあなたたちに屈するわけにはまいりません!」チャキッ
将軍「……ふっ。その意気や良し」ジャキッ

81 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:14:20 ID:pPnToBB.
将軍「ならばせめて、最後までその覚悟を見届けることが騎士の努め!」
将軍「もう手加減はせぬ。よいな」
エルフ「望むところですわ!」
将軍「いざぁっ!」ダッ
エルフ「はああああっ!」ダッ
ーーギィィィンッ
エルフ「……」
将軍「……」
ーーヒュンヒュンヒュン ザクッ
エルフ「ーーっ」ドサッ
将軍「勝負あったな」
エルフ「……みたい、ですわね……」

82 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:17:23 ID:pPnToBB.
将軍「たむけだ。せめて一撃で葬ってやろう」
エルフ(ここまで、ですわね)
エルフ「お母様……メイドエルフ……」
将軍「ぬぅんっ!」ブンッ
エルフ「ごめんなさい……」
ーーガキィィンッ!
侍「謝る相手が一人足りないんじゃないか」

83 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:19:27 ID:pPnToBB.
エルフ「ーーえ!?」
将軍「むっ? 何だ、お主は」グググッ
侍「侍だ。義によってそいつの助太刀にきた」グググッ
エルフ「あっ……」
きりがいいので今夜はここまでにします。
また明日か明後日に。

84 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 01:24:26 ID:8A2YvF.o
侍かっけぇぇぇぇぇ
楽しませてもらってる

85 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 19:59:22 ID:WIeFTiFI
将軍「義、か。人間のお主が、エルフの娘にか?」グググッ
侍「出会いはお世辞にもいいもんじゃあなかったけどな」グググッ
侍「でも今は、一宿一飯ーー世話になってるんでねっ!」ギンッ
将軍「ぬぅ」ヨロッ
侍「はっ!」
将軍「ぐおっ!?」キィン
騎士「将軍! おのれ貴様!」
将軍「待て!」
騎士「し、しかし……」
将軍「待てと言ったぞ」
騎士「は、はっ……」

86 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 20:01:10 ID:WIeFTiFI
無双するのはもうちょい待ってほしいんですの。
将軍「小僧。侍とか言ったな」
侍「ああ」
将軍「その娘とは如何なる関係だ」
侍「別に。さっき言った通り、一日食事と寝床を提供してもらっただけだ」
将軍「それだけの義理で、人間を目の敵にするエルフの国に肩入れすると?」
侍「勘違いするな」
将軍「なに?」
侍「俺が肩入れするのはあの国じゃない。肩入れするのは一人だけ」
侍「真っ直ぐでひたむきで、理不尽な仕打ちにも決して負けない」
侍「絶対に腐らずへこたれない。真に誇り高いと思える、後ろの女一人だけだ」
エルフ「ーー!」ドキッ
将軍「…………」

87 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 20:02:39 ID:WIeFTiFI
将軍「ふっ。なるほど、惚れたのか」
侍「さあな。初めて会ったのは二週間近く前だが、一緒にいたのは実質一日もない」
侍「でもまあ、これまで会った女の中では、一番いい女だというのは認める」
エルフ「〜〜〜〜///」カァッ
将軍「ふ……ふははははははは! 随分と正直に物を言う男だ」
将軍「気にいった。お主のその気概に免じて、今度は軍を退こう」
騎士「えぇっ!? ちょっ、それはまずいのでは!」
将軍「構わん。今日のことを土産話とすれば、あの王のことだ。その程度の独断は許されよう」
騎士「はあ。まあ、そういう類の話はお好きな方ですが」

88 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 20:05:16 ID:WIeFTiFI
侍「勝手に盛り上がるな。結局どういうことだ」
将軍「エルフの国から引き上げるということだ。占領した村も開放しておく」
将軍「住民には手出ししていないから安心するがよい」
侍「……随分と拍子抜けな話だな」
将軍「そう言うな。戦など、終わる時は案外そういうものだ」
侍「そういうもんか。しかし、結局何故そっちはエルフの国に攻め込んだんだ?」

89 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 20:06:40 ID:WIeFTiFI
将軍「牽制だ。エルフが国境付近で大規模演習を繰り返すものだからな」
将軍「エルフの守備隊も、誰一人死者は出していない。無論今の戦いもな」
侍「……」
エルフ兵「……う……」
女エルフ兵「つ……うん……」
侍「確かに」
将軍「間違っても侵略が目的ではない。領土的野心など、我らが王には皆無だ」
将軍「拍子抜けなどと言っていたが、こちらは元々早々に引き上げる予定であった」
将軍「本来はもう少し長居するはずであったがな」
侍「ふむ……」
将軍「信じるか否かは自由だ」
侍「いや、そもそもそれを決めるのは俺じゃないんだが」
将軍「違いない」

90 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 20:08:19 ID:WIeFTiFI
将軍「他に聞きたいことはあるか」
侍「だ、そうだが」
エルフ「…………」
侍「どうした?」
エルフ「ーーへぁっ!?」
侍「へぁ?」
エルフ「な、何でもありませんわ!」ブンブンブンッ
将軍「くっくっくっ」
エルフ「(コホン)で、ではせっかくですので……」
エルフ「こちらは今まで、散々そちらに逃げた賊の身柄引き渡しを要求してきました」
エルフ「なのに、何故その要求を拒みますの?」
将軍「……む?」
騎士「ん? あれ、その件は確か」
侍(妙な雲行きだな……)

91 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/08(木) 20:09:14 ID:WIeFTiFI
将軍「騎士。その件なら確か」
騎士「はい。最初に要求された時点で、既に引き渡しには応じていたはずです」
エルフ「なっ!?」
将軍「わしも覚えておる。エルフを無視しても面倒なだけだと、最優先で処理させた」
エルフ「そんなはず……騎士団にはそんな話は」
エルフ「で、では和平の使者は!? 数日前にこちらからそちらに向かったはず!」
将軍「…………」
エルフ「ど、どうなんですの?」
将軍「残念だが、使者がこちらの陣に来たことなど無い」
騎士「本国からもそのような報告はありませんね。そっちにも来ていないかと」
エルフ「ど、どういうこと……?」