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侍「道に迷ったらエルフに捕まっちまってござる」
Part17


582 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:38:34 ID:j3A91oTc
司令「ぐううううう……おのれえええええ!!」ダッ
侍「突っ込んできた!?」
国王「ある意味賢明な判断ではあるけど。さて」
エルフ「!」ダッ
侍(真っ向から行ったか)
国王(互いに消耗しての一撃。となれば、勝負を決するのはーー)
司令「ぬあああああっ!」ブゥンッ
エルフ「ーーはぁっ!」ブン
ーーザンッ
国王「一撃への集中力」
司令「がはっ……!?」ドサッ
エルフ「……つぅ」ガクッ

583 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:39:38 ID:j3A91oTc
侍「エルフ!」ダッ
エルフ「だ、大丈夫ですわ。斬られたわけではありませんから」
侍「いや、一回食らってるだろ! 平気か?」
国王「それは君も同じでしょ。二人とも軽いケガじゃないんだから、あんまり無茶しない」
侍「なんだかんだ言って、あんたは無傷だな」
国王「あんまり役にも立てなかったけどね。ま、話は後にして、今は戻ろう。勝敗は決したんだし」
エルフ「そうですわね」ヨロッ
侍「ほら、掴まれ」
エルフ「あ、ありがとうございます……」ガシッ
司令(……) ピクッ

584 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:41:05 ID:j3A91oTc
国王「平気かい? その体で人一人支えるのは」
侍「こいつは軽いから無理ではない」
エルフ「も、もう立ち上がれたから平気ですわ」
侍「無理するな。最後の一撃で、だいぶ神経刷り減らしただろ」
エルフ「それはそうですがーー」
ーーニゲテ!

585 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:41:37 ID:j3A91oTc
エルフ「え?」
国王「二人とも後ろだ!」
侍・エルフ「!」
司令「ぬおおおおおお!!」バッ
侍「ちっ!」バッ
エルフ「侍さーー」
ーーシュッ ドスッ
司令「かっ……」
侍「!」
国王「ナイフ……てことは」
エルフ「おいしいところを持っていきましたわね。ありがとう、メイドエルフ」
メイドエルフ「あの日に誓ったことを実行しただけです、お嬢様。皆様、ご無事で何よりでした」ペコリ

586 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:42:24 ID:j3A91oTc
今回はここまでです。次でたぶんラストになります。

588 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:46:29 ID:.jFpJbZI

楽しみにしてるぜ

589 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:50:33 ID:J2aAGxBQ
熱いな
いいな

590 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 22:30:17 ID:Hb7OhNT.

いよいよラストか

593 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:19:02 ID:L9/NjDn2
エピローグ
一ヶ月後
将軍「ぬおおっ!」
侍「はぁっ!」
ーーギィンッ
エルフ「またやってますのね。あの二人」
メイドエルフ「この一月で28戦28引き分けですから。双方とも、意地でも1勝を得ようと日に日に激しくなってますね」
エルフ「それもあるんでしょうけど、勝ち負けよりも、ただ互いに闘いたくて闘かっているように見えますわ」
騎士「それも正解でしょうね」
メイドエルフ「あら、いつの間に」

594 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:20:05 ID:L9/NjDn2
騎士「お二人とも、猛者との戦が好きな手合いですから。純粋に楽しんでいるんだと思いますよ」
エルフ「わざわざ解説するために現れましたの?」
騎士「……やっぱり扱い酷いですね」
メイドエルフ「宿命だと思って諦めてください。で、本題は?」
騎士「陛下に、侍殿を呼んでくるよう命じられまして」
エルフ「侍さんを?」
騎士「はい。なんでも、彼の国から侍殿宛てに文が届いたとか」

595 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:21:05 ID:L9/NjDn2
王城 執務室
侍「……ふむ」
国王「ま、そういうわけらしいよ」
侍「そろそろ来る頃かとは思っていたがな」
国王「僕としては、このままうちに君をスカウトしたいところなんだけどねぇ」
侍「無茶言うな。俺の主君は故郷にいるんだ」
国王「わかってるさ。言ってみただけだよ。で、いつ発つんだい?」
侍「ここから港まではどのくらいなんだ?」
国王「馬車を使えば半日かからないよ」
侍「ならもう少し余裕がある。あと二日は居られるだろう」
国王「それにしたって急な話だけどね」

596 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:22:01 ID:L9/NjDn2
侍「こればかりは仕方がないんだ。いつまでも国を離れているわけにもいかないからな」
国王「ごもっともで。ところで、あの話については考えてくれたかな?」
侍「……エルフのことか」
国王「そ。正式にあの子の母親を僕の妃として迎えた今、あとの心配はやっぱりあの子のことだからね」
侍「あいつも王女として迎えればいいだろ」
国王「それも考えてはいるよ。君が断った場合だけど」
侍「……」
国王「ただその場合、あの子が本当の意味で幸せになれるかは正直微妙だね。いろんなしがらみがついて回ることは間違いないし」
国王「何より、場合によっては政略の道具として扱わざるを得なくなることもある」
侍「王族故に、か……」

597 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:22:54 ID:L9/NjDn2
国王「あの子をそんな風に扱いたくないからね。これまで辛い目に合い続けてきたんだ。そろそろ人並の幸せを掴んでもいい頃でしょ」
侍「それは」
国王「もっとも、君には君の気持ちがあるからね。もちろん無理にとは言わないんだけど」
侍「……」
国王「ま、出発までに答えを出してくれればいいから。あの子にね」
侍「あいつの気持ちはーー」
国王「今更確認するまでもないでしょうよ。君だってね」
侍「……」
国王「ま、さっきも言ったけど強制じゃあない。時間はあまりないけど、もう少し考えてみてよ」

598 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:24:02 ID:L9/NjDn2
夜 屋上
侍「……」
エルフ「あら。こんなところにいたの」
侍「ん? ああ、星を見ていた」
エルフ「星? あなたが?」
侍「似合わないか?」
エルフ「そういうわけじゃ。それより」
侍「ん?」
エルフ「あなたの国から文が届いたそうだけど」
侍「ああ」
エルフ「内容を聞いても?」
侍「……」
エルフ「あ、答えられないのなら別にーー」
侍「帰国命令」
エルフ「……え?」

599 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:25:28 ID:L9/NjDn2
侍「そろそろ帰ってこいとさ。うちの殿様からな」
エルフ「い、いつまでに……」
侍「船旅が長くなるから、ここにいられるのはあと二日だ」
エルフ「二日……」
エルフ(そんな……たったそれだけなんて)
侍「殿からの命令だからな。無視することはできない」
エルフ「で、でも、いきなりあと二日だけなんて……」
侍「……ちょうどいい、か」ボソッ
エルフ「?」
侍「お前は、これからどう生きるつもりなんだ?」
エルフ「え?」
侍「この国の王と、正式に妃となった母君の娘なんだ。王女として生きる選択もあるだろう」
エルフ「それは考えられないわ。今まで騎士として生きてきたのに、そこからいきなり王女なんて言われても」

600 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:27:02 ID:L9/NjDn2
侍「ならどうする?」
エルフ「それは……人間の血が流れているとはいえ容姿はエルフ族だから、この国の騎士団に入っても浮くだろうし、まだ決めていないけど……」
侍「そうか」
エルフ「今はあたしのことよりあなたのことよ。二日なんかじゃゆっくり……お別れもできないし……せめてもう少し」
侍「それなんだがな」
エルフ「はい?」
侍「あれだ。その、良ければなんだが……お前も一緒に来ないか?」
エルフ「え?」

601 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:27:26 ID:L9/NjDn2
侍「エルフの国との戦の前に、国王から頼まれたことがあってな」
エルフ「頼まれたこと?」
侍「ああ。良ければお前のこと貰ってくれってな」
エルフ「………………は?」
侍「だけど、頼まれたとかそんなことは関係なく……ええと……ええいもう単刀直入に言うぞ! エルフ!」
エルフ「は、はい!?」
侍「嫁に来い!」
エルフ「よ、嫁!?」カァッ

602 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:28:27 ID:L9/NjDn2
王妃の部屋
エルフ母「あら、良かったじゃない。ちょっとムードは足りないけど、侍さんらしいと言えばらしいプロポーズだわ」
エルフ「それは、そうですけれど……」
エルフ母「あら、嬉しくないの? 彼のこと、好きなんでしょう?」
エルフ「……メイドエルフに聞きましたの?」カァッ
エルフ母「ばかね。そんなの、聞くまでもなくわかるわよ。普段のあなたを見ていればね」
エルフ(そんなに態度に出ているのかしら……)
エルフ母「でも、その割には本当にあんまり嬉しくなさそうね」
エルフ「いえ、嬉しいです。すごく。ただ」
エルフ母「急な話な上に、外の国で生きていくのが不安?」
エルフ「……はい」

603 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:29:20 ID:L9/NjDn2
エルフ母「なるほどね。それは無理もないかしら」
エルフ「わたくしーーあたしだって、侍さんと一緒に生きたい。でも、そうするとお母様やメイドエルフとお別れすることになるし……」
エルフ母「確かに、会える機会はぐっと減るわね。でも、別に一生というわけでもないでしょ」
エルフ「そうなんですが……」
エルフ母「そうね……。私とあの人がどこで出会ったか教えてあげましょうか」
エルフ「え?」
エルフ母「私たちはね。この国でもエルフの国でもない。もっとずっと遠くの地で出会ったの」
エルフ「遠くの地で……」
エルフ母「そう。エルフ族の人間嫌いは昔から相当なものだったから。お転婆でよく国を抜け出しては人間の良い所も見ていた私には窮屈で仕方なかったの」
エルフ母「だからあなたと同じくらいの歳のときに、ついに家出してね。いろんな国を旅して回ったわ」

604 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:30:25 ID:L9/NjDn2
エルフ「そう言えば、あの人も放浪癖が酷いとか」
エルフ母「私には別に放浪癖はないけど。彼は当時から、というより、当時はもっとすごかったわね。何せ、私と出会ったのが極東の国だったのだから」
エルフ「極東……って、まさか!」
エルフ母「そう。侍さんの故郷よ。当時は鎖国していたけど、家のツテを勝手に利用して入国したの」
エルフ「侍さんの……」
エルフ母「あそこは本当に珍しい国でね。だから異国の者同士、すぐに意気投合したのよ。それが私とあの人の出会い」
エルフ母「その後一緒に旅をして、恋をして、そしてあなたを授かった」
エルフ母「その後は、あなたも知っての通りよ」
エルフ「そう、だったんだ」

605 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:31:16 ID:L9/NjDn2
エルフ母「今にして思えば、親子揃って極東の国とは縁があるのよね。私とあの人が出会い、そしてあなたがあの国の男性に恋をした」
エルフ「……」
エルフ母「まあ、色々話したけど、最終的に判断するのはあなたよ。だから参考までに、同じ女としてアドバイスしてあげる」
エルフ母「愛する人と離れ離れになるのは、辛いものよ」
エルフ「お母様……」
王妃の部屋前
メイドエルフ「……これは、忙しくなりそうだわ」

606 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:32:10 ID:L9/NjDn2
二日後 港
侍「長い間世話になった」
国王「礼を言うのはこっちの方さ。君がいなかったら、今こうして立っていることはできなかっただろうしね」
エルフ母「娘も、きっと最初の戦で命を落としていたでしょう。本当に、なんてお礼を言えばいいのか」
侍「いえ。自分がそうしたかっただけですので」
エルフ母「それでも言わせてください。本当にありがとうございます。そしてこれからも、娘をどうぞよろしくお願いします」
エルフ「お母様……」
侍「はい。若輩の身ではありすが、これからも必ず守り通してみせます」
国王「僕からもお願いするよ。で、孫ができたらぜひ見せに来てくれたまえ」
侍「はは。そのときはもちろん」
エルフ「……」カァッ

607 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:33:04 ID:L9/NjDn2
将軍「達者でな、侍よ。更に精進しろよ」
侍「ああ。30戦30分け。次に闘うときは、俺が勝ってそのまま勝ち逃げさせてもらう」
将軍「ふっ。むざむざ勝ちを譲る気は無いが、そうなったらそれもまた良し」
騎士「お二人とも、どうぞお元気で!」
侍「いたのか」
エルフ「いたんですのね」
騎士「はーいわかってましたー。最後までこうだってわかってましたー」
侍「ははは。冗談だよ。ありがとうな」
エルフ「ふふ。あなたもお元気で。お母様と……その、お父様のこと、よろしくお願いしますわ」
騎士「あ、はい! お任せを!」

608 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:34:10 ID:L9/NjDn2
国王「お。初めて父と呼んでくれたね」
エルフ「……最後くらいはちゃんとしますわよ。もうお母様を離したらいけませんわよ?」
国王「ああ、わかってる。元気でね、エルフ」
エルフ「ええ。お父様も」
エルフ母「エルフ。体に気を付けて。向こうでも侍さんと仲良くね」
エルフ「はい。お母様も、お父様と今度こそ幸せになってください」
エルフ母「ええ。ありがとう」
ーーブオー
国王「お、そろそろ出港か」

609 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:35:02 ID:L9/NjDn2
エルフ「でも、まだメイドエルフが……あの子はまだ来ませんの?」
侍「少し遅れていくとは言っていたが」
エルフ母「大丈夫。船に乗ればわかるわ」
エルフ「え?」
国王「さ、船に乗りなよ」
侍「あ、ああ。それじゃあ、行こう。エルフ」
エルフ「え、ええ……」
侍「では、これにて御免。またいつか」
エルフ「お母様、お父様も。またね」
エルフ母「ええ。またね」
国王「達者でね。元気な赤ん坊を産むんだよ」
エルフ「もう、最後までそればっかり……でも、わかりました」
侍「それでは」

610 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:35:56 ID:L9/NjDn2
出港後 船上
エルフ「……船に乗ればわかるって……」
侍「なるほど。確かにわかった」
メイドエルフ「はい♪ わたしも一緒に着いていくことになりましたので、先に乗ってお待ちしておりました♪」
侍「母君に言われたのか?」
メイドエルフ「いいえ。わたし自ら申し出たんです。お城にメイドはたくさんいますけど、お嬢様の側には一人もいなくなりますから」
エルフ「ま、まあ、確かにあなたが一緒なら心強いけど」
メイドエルフ「二人きりになれなくてちょっと残念ですか?」
エルフ「べ、別にそんなことはありません!」カァッ

611 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:36:49 ID:L9/NjDn2
メイドエルフ「とにかくそういうことですので、お嬢様共々、よろしくお願いしますね。お侍様」ペコリ
侍「はは。ああ、よろしく頼む」
エルフ「そ、それではあたしも……」コホンッ
侍「ん?」
エルフ「今後とも、末永くよろしくお願いいたします。あなた」
ー終ー

612 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:38:46 ID:L9/NjDn2
以上です。
まさかこんなに長くなるとは思わなかった。
皆様、ご支援本当にありがとうございました。

613 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:39:30 ID:RQAWAiME
乙!
面白かった

615 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 20:44:23 ID:mtJo5hwY

よかった

620 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 22:30:06 ID:vPsSkeAE

すごく面白かった

621 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/10(日) 23:08:40 ID:Vj5l50TQ
よかったよーおつつ

622 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/11(月) 07:43:21 ID:suCs199g
おつ!
盛大におつ!
おもしろかった

624 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/11(月) 17:52:48 ID:/emyF4IQ
大儀である