Part16
551 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:47:18 ID:
0Mwj2gVY
国王「そうだね。じゃああと一つだけ、自分のことは棚に上げて言わせてもらってから始めよう」
国王「……惚れた女と愛娘を散々傷付けてくれた恨み、ここで晴らさせてもらいますよ」
エルフ「こればかりは他人のためではない。ただわたくしとお母様があなたから受けた痛み、倍にしてお返しいたしますわ!」
司令「やれるものならやってみるがいい!」ダッ
エルフ(速い!)
司令「ぬあああっ!」ブンブン
国王「っ!」ギギンッ
司令「まだまだーー」バッ
エルフ「させません!」ダッ
国王「迂濶に踏み込むな!」
司令「遅いわ!」ブォンッ
ーーギィンッ
エルフ「くぅっ!」
エルフ(切り返しが速い上に重い! この重さ、本当に侍さん以上……!)
司令「貴様は後で相手をしてやる。まずはこいつからだ!」
552 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:48:21 ID:
0Mwj2gVY
国王「せっかくのご指名だけど、数的有利は利用させてもらうよ。エルフ!」
エルフ「呼び捨てで呼ばないで下さい!」ダッ
国王「厳しいなぁ。けど!」ダッ
司令「……ちっ」
国王(やはりだ。実力で勝るにしても、二人同時は面倒らしい)
国王「はっ!」ブンッ
エルフ「やぁっ!」ブンッ
司令「ふん」ギン ギン
エルフ「っ」グググ
国王「……」グググ
司令「ぬるい!」ギィィィン
エルフ「きゃあっ!」
国王「くっ……!」
国王(とはいえ、両手持ち二人相手にそれぞれ片手で防ぐとは。腕の方はやはり衰えていないな)
553 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:49:48 ID:
0Mwj2gVY
司令「その程度で挑もうなど笑止!」ダッ
エルフ「!」チャキ
国王「行かせないさ!」ダッ
司令「どけい!」ブン
ギィィンッ
国王「うお!?」
554 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:50:14 ID:
0Mwj2gVY
司令「ああああ!」ブンブン
ギンギィンッ
エルフ「くぅっ!」ギギギギ
エルフ(まずい、鍔競り合いになったら……!)
司令「どうした、なんだその軟弱さは?」グググググ
エルフ(押し込まれる!)グググググ
国王「ちっ!」ダッ
司令「ふん」ドスッ
エルフ「かはっ!?」ガクッ
国王(蹴り!? しまった、誘われた!)
555 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:51:27 ID:
0Mwj2gVY
司令「はっ!」ブォン
国王「ぐっ!?」ギガンッ
国王(まずい、剣を!)
ーーヒュンヒュンヒュン ザクッ
司令「もらった!」
エルフ「ーーはあああああっ!」ブンッ
司令「ええい、しつこいわ雑魚が!」ブンブン
ーーキィンッ
エルフ「ーー!」ヨロッ
司令「ふん!」ブン
ギガンッ カシャン
エルフ(くっ、あたしまで剣を……!)
556 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:52:57 ID:
0Mwj2gVY
司令「そんなに死にたいのなら良かろう。まずは貴様から殺してやる」バッ
国王「……そううまくはいかないと思うけどねぇ」
司令「減らず口を。混血を仕留めたら次は貴様だ」
エルフ「っ」ギュッ
司令「死ね!」ブオンッ
ーーギィィィンッ
司令「ぬぅっ!?」グググ
エルフ「……あ」
声「なんか、前にもあったなこんな事」
国王「言った通りだね。ヒーローは遅れてやってくるものだって」
司令「貴様は……!」グググ
侍「侍だ。義によってその二人に助太刀しにきた」
557 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:54:08 ID:
0Mwj2gVY
今回はここまでです。終わりが見えてきたせいかちょっと勇み足だったかも……。
558 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 22:00:55 ID:JjT9nKIY
おっつん
559 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 22:03:43 ID:vdxpZzEM
乙
無理しないでくれよ
566 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:17:36 ID:
j3A91oTc
司令「いつぞや迷いこんできた人間か。貴様に用などない。さっさと死ね」グググ
侍「こっちにはあるんだよ。少なくとも二人が勝つか退くかするまではな」グググ
司令「その選択肢は間違いだ。貴様もそこの二人もーーまとめて殺す!」ギン
侍「ぐっ!」ズザザザッ
エルフ「侍さん!」
侍(一息で押し返された? 相当鍛えてやがる)
司令「死ね」ダッ
侍「そう簡単に!」ダッ
ーーキン ギン ギン
国王「今のうちに、と」ダッ
エルフ「あ、ちょっと、どこにーー」
567 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:18:39 ID:
j3A91oTc
国王「そら、受け取って!」ブンッ
ヒュンヒュンヒュン
エルフ「え、ちょっ、待っ!?」
ガキンッ
エルフ「きゃっ! あ、危ないじゃないですの! しかもこれあなたの剣じゃーー」
国王「いや。そいつは出陣前に、君用に打たせたものだよ」
エルフ「え?」
国王「そして今まで君が使っていた剣は、元々は僕のものだったというのは前に説明した通りさ」ガシッ
国王「それに、どっちの剣がどっちのだ、なんて言ってる余裕はもうない。侍くんも一人ではそろそろ限界だ」
ーーギィンッ
侍「くっ!」
エルフ「侍さん!」
司令「やはり弱い」
侍「ちっ。これまでたくさんの猛者と闘ってきたが、こいつは飛びきりだな」
568 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:19:37 ID:
j3A91oTc
国王「時間稼ぎありがとう。ここからは僕も参加するよ」
侍「多勢に無勢は好ましくない、なんて言ってる余裕はないか。頼む」
エルフ「わ、わたくしも!」ガシッ
エルフ(! この剣、軽い。それに柄を握る感じもしっくりくる)
司令「良かろう。どうせ全員死ぬのだ。まとめてかかってきてくれた方が手間が省けるというもの」
国王(とか言ってるけど、さすがに三対一じゃ不利なのは承知しているはず)
侍(となれば、まず速攻で一人潰すために動く)
国王(その場合真っ先に狙われるのはーー)
司令「さあ、行くぞ!」ダッ
エルフ「っ!」チャキ
569 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:20:40 ID:
j3A91oTc
国王「当然、この中では一番劣るあの子だよね」
侍「ああ。だがーー」
司令「はあっ!」ブン
エルフ「くっ!」バッ
スカッ
司令「!?」
エルフ(かわせた?)
侍(己に合う得物に持ち変えたことで、わずかだが構えや体捌きが自然になった)
国王(結果、これまで回避しきれなかった攻撃を紙一重ではあるが回避できるようになったわけだ)
司令「ぬあああっ!」ブンブン
エルフ「ーーやあっ!」
キンギン
司令「ぬぅ……!」
570 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:21:41 ID:
j3A91oTc
侍(取扱いやすくなったことで、敵の攻撃も受け長しやすくなったか)
国王(とくれば、あとは)
侍・国王「挟撃あるのみ!」ダッ
司令「ちぃっ!」バッ
エルフ「……はっ!」ダッ
侍(すぐに追わず、俺たちに呼吸を合わせたか)
国王(侍くんが来たことに加えて本来の実力を発揮できるようになったことで、思考が冷静になっているね。これなら、勝てる)
国王「はっ!」ブン
侍「おおおお!」シャン
エルフ「やあああっ!」シュッ
ギンギンーーザシュッ
司令「ぬおっ!」
エルフ(当たった……けど)
侍「あの挟撃を受けてなお直撃を免れた……!」
国王「普通なら今ので終わってるところなんだけどなぁ。やっぱり一筋縄じゃいかないか」
571 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:24:09 ID:
j3A91oTc
司令「……自分の血を見たのは久しぶりだ」
国王「ま、あなたならそうでしょうね」
司令「いいだろう。人間相手に癪だが……本気で行く」ブン カシャン
エルフ(剣を片方捨てた?)
司令「ふん!」ダッ
エルフ「侍さん!」
侍「っ」バッ
ーーガキンッ
侍「ぐっ!?」
侍(なんて重さだ……!)
司令「ぬああああっ!」グググググ
侍「ちぃっ!」グググ
572 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:27:22 ID:
j3A91oTc
侍(駄目だ、このままでは押し斬られる!)
エルフ「侍さん!」ダッ
司令「見え見えだ!」
シャー
侍「!」
エルフ「なっ!」
国王(侍くんの刀の刃で剣を滑らせた!? いかん!)ダッ
司令「ふん!」ブゥン
ザシュッ
エルフ「うあっ!」ブシュッ
侍「エルフ! 貴様!」バッ
国王「駄目だ! その距離で大振りは!」
司令「迂濶なんだよ!」
ザンッ
侍「っ!?」ブシュッ
573 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:30:01 ID:
j3A91oTc
国王「侍くん!」
司令「貴様もだ!」ブン
国王「くっ!」ブン
ギン キン ギン
司令「ふ、さすがに慎重だな。だが」チャキッ
国王(まずいな。二人とも急所は避けてるし、致命傷ではないけど、もう戦力としては半分以下か……)
侍「くっ……エルフ、動けるか……?」ヨロッ
エルフ「なんとか……けど」フラッ
ーーボタ ボタ
574 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:31:15 ID:
j3A91oTc
侍(まずい。俺もエルフも一撃で深くまで決められた)
エルフ(これじゃあ動くことは出来ても、戦闘なんてとても……)
ーーガキンッ
国王「うおっと!」ズザザザ
司令「どうした。それで終わりか」
575 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:31:36 ID:
j3A91oTc
侍「……エルフ!」ダッ
エルフ「はい!」ダッ
司令「遅いわ!」ブゥンッ
ギン ギン
侍「ぐっ」ドサッ
エルフ「きゃあっ!」ドサッ
国王「二人とも!」
司令「貴様も這いつくばれ!」ブォンッ
ーーガィンッ!
国王「うおっ!?」ドサッ
司令「ふん」
576 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:32:32 ID:
j3A91oTc
侍(強い……!)
エルフ(まさか、三人がかりでも倒せないなんて……!)
国王(これは、ちょっと勝負を焦ったかな……)
司令「想像以上にはてこずらせてくれたが、それもここまで」
侍(三人とも撤退は……無理だな)
エルフ(ならせめて)
侍「あんたは退け。時間は稼ぐ」
国王「おいおい。よりにもよって君がなんてことを」
エルフ「すみませんが、わたくしも同じ意見ですわ」
侍「あんたならわかるだろ。この状況じゃ、どう転んでも勝ちは無い」
エルフ「けどわたくしたちが死んでも、あなたが生き残れば次がありますのよ」
577 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:33:30 ID:
j3A91oTc
司令「当然の判断だが、それをみすみす許すと思うか」
侍「許させるさ」
エルフ「だからといって、地に頭を付けたりなんか絶対いたしませんわよ」
侍「とにかくそういうわけだ。あんたは早くーー」
国王「んー、断る」
侍「……あんたな」
エルフ「そんな軽く……!」
国王「だってさ。娘と将来義理の息子になるかもしれない男にそんなこと言われちゃ、父親としては意地でも残らなきゃ格好が悪いでしょ」
エルフ「ちょ、ちょっと! こんなときに何を!」カァッ
国王「こんなときだからだよ。それに、まだ手がないわけじゃない」
エルフ「え?」
侍「なに?」
578 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:34:27 ID:
j3A91oTc
司令「ふん。そのようなはったりがーー」
国王「エルフ。部屋を見回してごらん」
エルフ「部屋を? あ……!」
司令(む?)チラッ
司令「なっ!?」
侍「なんだ?」
国王「ほらね」
侍「何が」
国王「わからない? 人間には見えないけど、彼女らには見える存在」
579 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:35:21 ID:
j3A91oTc
侍「精霊か? だが、なぜ今精霊が」
エルフ(なに? 精霊の一部があたしの回りに)
国王「前に聞いたことがある。精霊ってやつは普段は気分屋だけど温厚だ」
国王「だが、彼らに害を及ぼすもの、あるいは既に及ぼしたものには必ず報復する執念深い一面もある、と」
侍「……つまり、今ここに精霊が集っているのは」
国王「森を、彼らの住みかを焼いた者への報復のため」
ーーキイイイイイイイイ!!
司令「ぐおおおおっ!?」ガクッ
侍「なんだ!? 耳を押さえてうずくまったぞ」
エルフ「精霊のいななき」
侍「いななき?」
エルフ「精霊が集団で奇声を発し、相手を威嚇する行動ですわ。エルフ族や動物にしか効きませんが」
580 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:36:35 ID:
j3A91oTc
侍「お前は平気なのか?」
エルフ「ええ。一部の精霊が守ってくれていますから」
侍「なるほど。しかしてその効果の程が」
国王「あの有り様さ」
キイイイイイイイ!!
司令「ぐぅ、耳が! 耳がぁ!」
侍「しかし、エルフならともかく何故あんたが精霊のことに気付いたんだ?」
エルフ「そうですわ。しかもあんなタイミングで。わたくしだって言われるまで気付きませんでしたのに」
国王「ん? んー、実は僕見える人だから」
侍「は?」
国王「だから、精霊が見えるんだよね。僕」
エルフ「そんな精霊を幽霊みたいに……いえそれはいいとして、どういうことですの? 人間には見えないはずですわ」
侍「事実俺には見えていない」
581 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/06/09(土) 21:37:30 ID:
j3A91oTc
国王「や、僕も始めっから見えてたわけじゃないよ? 見えるようになったのは、娘が出来るきっかけの後からかな」
エルフ「きっか……け……って、ちょっとあなた!」
侍「……ああ、そういう」
エルフ「マジマジと納得しないでいただけます!? 不潔極まりないですわ!」
国王「それはともかく……とどめ、刺すかい?」
エルフ「……!」
国王「今なら楽に決められる。僕が君のお母さんと離れざるを得なかったのは司令の徹底的な妨害があったからだから、斬りたい気持ちは強い」
国王「けど、それ以上に君にも思うところがあるだろう?」
エルフ「……」チラッ
侍「お前が決めろ。自分で斬るか、国王に任せるかな」
エルフ「……」