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侍「道に迷ったらエルフに捕まっちまってござる」
Part15


519 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:31:08 ID:o60g6hFU
数分後
メイドエルフ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
参謀「息が上がっていますね。降参しますか?」
メイドエルフ「誰が!」ジャキジャキンッ
参謀「やれやれ。一体どれだけナイフを隠しているのですか」
メイドエルフ「メイド服すなわち神秘の次元なんです!」
参謀「意味がわかりません」
メイドエルフ(こちらが構えたのに、向こうは新たなナイフを出さない……。弾切れ? でもあの余裕は……)
参謀「気になりますか?」
メイドエルフ「っ……何がです」
参謀「ふふ。私の余裕の理由ですよ」
メイドエルフ(読まれてる……さすがは参謀というところですか)

520 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:32:02 ID:o60g6hFU
参謀「先程あなたは、投げナイフが十八番なのは自分も同じだと言いましたね」
メイドエルフ「……」チャキ
参謀「白状しますと、私の手持ちのナイフは全て投げ尽しました」
メイドエルフ(何ですって?)
参謀「ですので、今は投げられるナイフは手元にありません」
メイドエルフ「……」
参謀「でもねーー」クイ
メイドエルフ「ーーっ!」バッ
ーーヒュン ザシュッ
メイドエルフ「くっ!?」
メイドエルフ(なに!? 床のナイフが、勝手に飛んで!)

521 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:33:18 ID:o60g6hFU
参謀「メイド服にかすっただけ……今のを避けましたか。いい勘をしていますね」
メイドエルフ「……何をしたんですか」
参謀「その答えは、これです」クイ クイ
メイドエルフ「くっ!」バッ
ヒュンヒュン ザン
メイドエルフ「くあっ!」ブシュッ
参謀「直撃、とまではいきませんでしたか」
メイドエルフ(腕をかすめた……!)
参謀「私の十八番は、実は投げナイフではありません」
メイドエルフ「なんですって?」

522 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:34:16 ID:o60g6hFU
参謀「私の十八番は、実は投げナイフではなく繰りナイフ。すなわち」バッ
メイドエルフ「ーーっ!?」ゾクッ
参謀「今床に散らばっている私のナイフ全てが、あらゆる角度から敵を、あなたを襲うのです」バババババ
ザシュ ザシュ ザン ザシュ ブシュ
メイドエルフ「ぅあっ!」ヨロッ
参謀「まだまだいきますよ」バババババッ
メイドエルフ「く……!」バッ
ヒュンヒュンヒュン ザン
メイドエルフ「つぅ!」
メイドエルフ(足を……! けどこれくらいならなんとか)
参謀「またかすっただけですか。いい反射神経してますね」
メイドエルフ(なによあれ……一体どういう仕組みなの。指や腕の動きに反応しているようだけど……それに、同時に舞う様に動くのは何故?)

523 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:35:19 ID:o60g6hFU
参謀「ですが、次で仕留めます」クイ
メイドエルフ(来る!)バッ
ヒュンーー
参謀「む?」
メイドエルフ(回避できた? 今動いた指は右手。飛んできたナイフは左から……ということは)
参謀「……ふむ」クイ クイ
メイドエルフ「ーーそこ!」ババッ
ーーキンキン
メイドエルフ(右後方と左側面。やっぱり、参謀の右手が動けばわたしの左側から、左手が動けば右側から飛んでくるようね)
メイドエルフ(でも、まだ何故その動きでナイフを操れるのかがわからない。それがわからないと。考えられるとすれば……)
参謀(そろそろ気付かれる頃ですかね)
参謀「一気にいきます」バッ
シュババババババッ

524 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:36:22 ID:o60g6hFU
メイドエルフ(……一か八か!)ダッ
参謀「!?」
ザシュザシュザシュザシュ
メイドエルフ「くぅっ!」バッ ガシッ
メイドエルフ(掴んだ! これはやっぱりーー!)
参謀「……まさかナイフの雨の中に突っ込んでいくとは思いませんでしたよ」
メイドエルフ「自分でもバカだとは思いますよ。でも、あなたの繰りナイフのカラクリはわかりました」
メイドエルフ「ずばり、糸です」
参謀「……」

525 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:37:13 ID:o60g6hFU
メイドエルフ「肉眼ではほとんど見えない程極細の糸で、ナイフを操っているんです」
メイドエルフ「一斉に仕掛けるときの舞う様な動きは、糸が絡まらないようにそれぞれのナイフを操作するため」
参謀「それを確かめるためだけの蛮勇に敬意を表しましょう。正解です」
参謀「しかし、その結果あなたが負った傷はこれまでのように軽くはない」
メイドエルフ「……」ヨロッ
参謀「その体で、次の攻撃に耐えることが出来ますか?」
メイドエルフ「仕掛けさえわかってしまえばこちらのものですよ」
参謀「果たしてそうでしょうか?」
メイドエルフ(……見破られてなお余裕がある。まだ何か隠している?)

526 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:38:10 ID:o60g6hFU
参謀「では、試してみましょうか」クイ ヒュン
メイドエルフ「仕掛けが糸だとわかったのなら、それさえ切ってしまえば!」シュッ
ーービン
メイドエルフ「え!?」
参謀「ふふ」
メイドエルフ(ナイフの刃が糸に弾かれた!?)
参謀「仕掛けを見破られたときのために対策を施すことも、参謀たる者の努めですよ」
参謀「この糸は特殊な素材で出来ていましてね。非常に優れた対刃性を有していながら、糸が持つ柔軟性を損なっていない」
参謀「その証明は、たった今あなたが目にした通りです」
メイドエルフ「くっ……」
メイドエルフ(なんてこと……。ここまで隙が無いなんて)

527 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:39:39 ID:o60g6hFU
参謀「さて。では」ユラリ
メイドエルフ(来る……。さすがに次は耐えられそうにないわね)
メイドエルフ(こんなことなら、わたしのメイド服にも何か防御的なものを縫い付けておけばよかったわ。もう遅いけど)
参謀「今度こそーー」
メイドエルフ(……ん? 縫い付ける……縫う?)
参謀「ーー終わりです!」シュババババッ
メイドエルフ「ーーいえ、まだです!」ダンッ
参謀「跳んでかわした!? あの傷でよく!」

528 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:40:01 ID:o60g6hFU
メイドエルフ「はっ!」シュババババッ
ドスドスドスドス
参謀「?」キン
参謀(複数のナイフを投げたのに、私を狙ったのは一本だけ?)
トン
メイドエルフ「次!」シュババババババッ
ドスドスドスドスドス ギン
参謀(また一本だけ? これまでは全てのナイフを直撃コースで投げていたのに……何か企んでいる?)

529 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:41:20 ID:o60g6hFU
メイドエルフ(急がないと気付かれる。その前に!)
メイドエルフ「やっ!」シュババババババババッ
参謀(私に向かってくるナイフはーーやはり一本だけ。なら、他のナイフは何のために……)キン
メイドエルフ「これで最後!」シュババババババババババッ
ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス
参謀(ラスト? それに、今のは私を狙わなかった。となれば、先程まで私に一本だけ投げていたナイフはただの牽制?)
メイドエルフ「……」チャキ
参謀「……どうやら、さすがに弾切れのようですね。それが最後の一本ですか」
メイドエルフ「ええ」

530 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:42:22 ID:o60g6hFU
参謀「何を企んでいたか知りませんが、悪あがきもそこまでです」
メイドエルフ「なら、一つお話してもいいですか?」
参謀「お話?」
メイドエルフ「わたし、仕事が見た通りメイドでして。家事全般が得意なんです」
参謀「……」
メイドエルフ「料理、洗濯、掃除はもちろん、特に裁縫は得意でして。このメイド服も自分で縫ったんです」
参謀「それはすごいですね。ところで、私はいつまでそのお話に付き合えばよろしいのでしょう?」
メイドエルフ「ご安心ください。ただそれが言いたかっただけですから」
参謀「そうですか。ならそろそろ終わりにーー」クイ
ーービシッ
参謀「ーーっ!?」
参謀(なに? 今の固い感触は?)チラッ
メイドエルフ「……」ニッ

531 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:43:42 ID:o60g6hFU
参謀「ーーなっ!?」
メイドエルフ「わたしが何故あんな話をしたか、理解出来ましたか?」
参謀「まさか、さっきまでバラバラに投げていたのは!」
メイドエルフ「そう。わたしは裁縫が大の得意。ですので縫い付けさせてただきました」
メイドエルフ「わたしのナイフで、あなたとあなたのナイフを繋いでいる糸を、床に」
メイドエルフ「対刃性に優れていて切ることは出来ない。でも柔軟性はあるから刃を食い込ませることは可能」
メイドエルフ「操る上では便利だったのでしょうけれども、今回はそれが仇となりましたね」
参謀「くっ……!」

532 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:44:39 ID:o60g6hFU
メイドエルフ「しかも、あなたとナイフは糸で繋がっているから、あなた自身もそこから動くことが出来ない」
メイドエルフ「繋がっているのが一本や二本ならともかく、優に二桁を越えるナイフと繋がっていては、そうなるのも当然です」
参謀「……」
メイドエルフ「おかげであなたの言う通り、確かにこれが最後の一本ですがーーこれだけあれば十分です!」シュッ
ーードスッ
参謀「ーーがっ!」
メイドエルフ「……どうぞ、逝ってらっしゃいませ」ペコリ
参謀「……結局……こうなりました……か……」
メイドエルフ「え?」
参謀「……」ドサッ
メイドエルフ「最後の言葉は一体……まるで負けることが分かっていたみたい」
メイドエルフ「て、そんなことはいいわね。早くお嬢様たちを追わないとーー」ズキッ
メイドエルフ「……その前に手当てが先ね」
メイドエルフ(手当てをしたらすぐに追い付きます。ですから皆さん、どうかご無事で!)

533 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:45:15 ID:o60g6hFU
今回はここまでです。

534 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/26(土) 22:59:40 ID:sh7sApdc
手当ての後に投げまくったナイフ拾うのメンドくさいだろうな
それと乙

535 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/27(日) 07:52:36 ID:7THLwXKw
メイド服は神秘の次元、なんかかっこいいぞ
そして乙

540 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:36:58 ID:0Mwj2gVY
タタタタタタッ
エルフ「あそこですわ!」
侍「正面の扉か」
国王「玉座の間か。そこか、あるいはその奥の部屋に敵の司令がいる、と」
エルフ「ええ」
侍「さっさと片付ける、と言いたいところだが」
親衛隊A「……」
国王「ま、さすがにそうはいかないよねやっぱり」
エルフ「気を付けて。親衛隊の練度は並ではありませんわよ」
国王「その並ではない兵士諸君がおよそ十人か。ちょっと時間がかかるかなこれは」
親衛隊A「舐めるなよ。時間などかけん。貴様らさえ討ち取れば我らの勝ちなのだ」

541 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:37:56 ID:0Mwj2gVY
国王「あー、頭を潰せば勝ちってのは互いに同じだねそう言えば」
侍「今更そこに気付いたのかよ……」スッ
エルフ「侍さん? 何をーー」
侍「お前たちは先に行け。この場は引き受ける」
エルフ「え!? でも!」
侍「メイドエルフも言っていただろ。こっちには時間が無いんだ」
エルフ「ですがだからと言って……」
侍「それに、お前たちには敵司令と因縁があるんだろ」
エルフ「え?」
国王「この子はともかく、僕にもかい」
侍「ここまで来て隠す必要はないだろ。以前そんなことをほのめかしていたしな」
国王「……そんなことまで覚えてるんだから、やっぱりたいしたもんだよ君は」
エルフ(そう言えば、あの尋問……というか拷問のときにそんなことを漏らしていたような)

542 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:39:29 ID:0Mwj2gVY
侍「そういうわけだ。こっちはなんとかするから、そっちはそっちできちんとケリを着けてこい」
国王「じゃ、お言葉に甘えさせてもらうことにしようか」
親衛隊B「何の相談か知らんが、ここは何人たりとも通さんぞ」
侍「そうか。ならば力付くで道を開けてもらう」ダッ

543 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:40:01 ID:0Mwj2gVY
親衛隊A「させんぞ!」ダッ
侍「はっ!」ザンッ
親衛隊A「ぬわっ!?」ドサッ
親衛隊B「おのれ!」ブンッ
侍「遅い!」サッ ザシュッ
親衛隊B「ぐお!?」ヨロッ
侍「今だ! 行け!」
国王「はいよー」ダッ
エルフ「ちょっと!」ダッ
親衛隊C「くそ、行かせるな!」
侍「行かせないのはこっちだよ!」ギン
親衛隊C「く、貴様!」グググ

544 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:41:00 ID:0Mwj2gVY
エルフ「……侍さん、気を付けて」
国王「彼なら平気でしょ。ヒーローは遅れてやってくるものだしね」
国王「それに、心配すべきはむしろ僕たち自身さ……」
エルフ「どういうことですの?」
国王「あえて言っておくよ。はっきり、僕は侍くんより強い」
エルフ「は?」
国王「『なに寝惚けたことほざいてんだこのオヤジ』みたいな顔してるけど、事実だよ。侍くんに聞いてもあっさり認めるんじゃないかな。彼潔いし」
エルフ「……」
国王「だから気を付けてね。これから闘う司令は、僕よりもたぶん強いから」
エルフ「え?」
国王「さ、到着だ」
エルフ「玉座の間……」

545 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:42:09 ID:0Mwj2gVY
国王「……居るね」
エルフ「わたくしにもわかりましたわ。扉の中から漏れてくるこの殺気……」
国王「さて。それじゃ、互いの因縁に決着を着けにいきますか」ギギギギギィ
玉座の間
司令「来たか」
エルフ「司令……!」
国王「相変わらず短気な方だ。その無駄なネガティブエネルギー、もっと前向きなことに利用した方が有意義じゃないですかね」
司令「ふん。貴様こそ変わらんな、そのヘラヘラとした態度は」
エルフ(やっぱり、知り合い?)

546 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:43:20 ID:0Mwj2gVY
司令「しかし、よもや貴様がその面を見せに来ようとはな。混血」
エルフ「……何故陛下を殺めましたの?」
司令「ふん、精霊から聞いたか。決まっている。人間を排除するためには、あの男が邪魔だったからだ」
エルフ「あなたは……!」
国王「あなたの人間嫌いは筋金入りですねー。何か恨みでも?」
司令「あるさ。少なくとも貴様にはな」
国王「それはあなたの単なる我が儘だと思うんですがね」
司令「何を抜かすか! 妹をたぶらかし、挙句貴様の汚れた血が混じった混血を孕ませた! これを恨まずして何を恨む!」
エルフ(……ああ、そういうことね)
国王「そこまで嫌われると、いっそ清々しいですねー。じゃあ僕も言わせてもらいますけど」
国王「僕もあなたが嫌いですよ」スラリ

547 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:43:32 ID:vdxpZzEM
リアルタイム投下だうひょー
支援

548 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:44:25 ID:0Mwj2gVY
エルフ「……」チャキ
国王「彼女はね、あなたの、いや、エルフ族のそんな偏った思想に辟易して家を、国を飛び出したんだ」
国王「わかってやれとは言わないまでも、この子らのことを聞く限り、ちょっと扱いが酷すぎやしないですかね」
エルフ「わたくしだけではありません。司令……いえ、あえてこう呼ばせていただきます。おじ様」
司令「……」
エルフ「わたくしを徹底的に目の敵にするのはまだ構いません。ですが十年前のあの日、あなたは……あなたは!」
司令「妹を……貴様の母を殺そうとした、か?」
エルフ「……っ」キッ
国王「……それは本当かい?」
エルフ「事実です。あの日、彼は意見が対立し続けるお母様についに激怒し、切り付けたのです」
国王「じゃあ、彼女の片足が悪くなっていたのは」
エルフ「そのときの傷が元ですわ」
国王「……」

549 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:46:00 ID:IGoXrklk
支援

550 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/31(木) 21:46:15 ID:0Mwj2gVY
エルフ「幸か不幸か、わたくしは居合わせませんでしたが、メイドエルフは目の前でお母様が斬られる瞬間を見ています」
国王「あの子が投げナイフを始めたきっかけがそれか」
エルフ「ええ。もう二度と目の前でお母様やわたくしを傷付けさせはしないと言って」
国王「そっか……」
司令「思い出話なら後にしろ」
エルフ「……」
国王「……」
司令「そんな話をするためにわざわざ来たわけではあるまい。こちらもそのために待っていたわけではない」
司令「貴様らが選べる道はない。ただ死、あるのみだ」スラ スラ
エルフ(二刀流……)