Part25
677 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:53:36.70 ID:JceRb9if0
青年「……はっ!?」
青年「だ、だけどこんな特殊な身体で、他よりデメリットがあるコイツをいつまでも侍女にしておく気もないんだろ?! やっぱりいつかは……!」
魔王「他の侍女と同待遇でしか扱っていない。使えなければ解雇もしよう。が、優秀な侍女になるだろうな」
町娘「あ、ありがとうございます」
青年「ま… 町娘はどうなんだ。ホラ、侍女だなんて… それだけじゃ今後はやってけねぇんじゃねぇのか?」
町娘「……? もったいないほどのお手当てを貰える事になってますよ…?」
魔王「額面に不服があれば、俺ではなく財政担当に言え。目を通すのも面倒な書類ばかり出してくる」
青年「で、でも でも!」
町娘「…? 衣食住の保障はもちろん、身体の検査なども全ての侍女様方に義務付けられており 何の不便もないほどですけど…」
少女(魔王城って意外にカッチリしてるところあるんだぁ…。 なんだかんだ“魔王城”のイメージと違うなぁとは思ってたけど)
678 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:54:02.51 ID:JceRb9if0
魔王「……お前は、こいつが正当な待遇で扱われているのが気に入らないのか?」
町娘「え?」
青年「ち、ちげーよ!!」
魔王「ではなんだ。お前の質問は的を射ていない」
青年「……」
魔王「………?」
青年「…その。本当にコイツが あんたに必要なのか…って…」
魔王「ふむ?」
青年「後味が悪いって話で、回復させてやったのならまだわかる」
青年「支払った分、こきつかってやるっていうなら、それもわかる」
青年「……でも、そんな風に… こいつの信頼を得るほど… なんでそんな……」
魔王「……ああ。おまえ、俺が手放すつもりが無いのではないかと疑っているのか」
青年「ぅ」
679 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:54:30.17 ID:JceRb9if0
魔王「ついでに、何か下心を持っているのでは無いかとも危惧しているか」
青年「うぅ」
魔王「さらに、こいつに充分な待遇をあたえる俺に対して羨望でも抱いたな」
青年「ぐっ」
魔王「ふん、くだらぬ。どれもこれも見当違いの言い分だ」
町娘「……ふふ。下心は無いと、あまりはっきり言われてしまうのも少し切ないですね」
魔王「そうか」
町娘「でも、そういうお方だと思ってました」
魔王「そうだろうな。お前もそういうヤツだと思っている」
町娘「ふふ」
680 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:55:02.35 ID:JceRb9if0
少女「……なんか仲良しっぽい?? そいえば、おねーちゃんは、魔王のお世話係なんだっけ?」
町娘「お世話係…… なんでしょうか?」
魔王「正確に言えば、側仕いだ」
少女「蕎麦…使い?」
青年「なんだか美味そうな仕事だな」
町娘「オイシイといえば、オイシイ仕事です」ニコ
魔王「……」ハァ
魔王「……こちらの国中で、見世物にされた身だ。町に戻るのは難しいだろう」
青年「!」
魔王「年頃の娘が、裸体を晒していたのだ」
魔王「国中の見世物にされて、こんどは鎧の手足をつけて町に戻れば、また見世物の生活になるのは予想できる」
青年「あ…… そん、な」
681 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:55:28.94 ID:JceRb9if0
町娘「……魔王様は… 后様の姿を重ねた私に、そのような生活はしてほしくないとおっしゃってくださいました」
魔王「それこそ、後味が悪い。まるで“救いそびれた少女を見る”ようで不吉だ」
町娘「ふふ。亡霊鎧さんに聞いた、勇者様のお気持ちに共感してるじゃないですか」
魔王「む? ……なるほど。確かにな。愚かだとおもったが、勇者もそんな思いであったか」
少女・青年「「……何の話…?」」
町娘「ふふ。優しい人の、話です」
魔王「ともかく、そうであるならば 今後も魔王城にいるよう言った。報酬を支払うから、見世物になどなってやるな と」
魔王「これからは最善の生き方をし、僅かでも俺の不安を埋めておけ、と」
青年「…………それは…」
青年「埋めるって、もしかして 身体で?」コワゴワ
町娘「違うと何度言えばいいんですか? 青年さん」ニッコリ
魔王(この兄弟は、どうしてすぐに身体で支払うことを思いつくのだろうか…)ハァ
682 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:55:58.06 ID:JceRb9if0
町娘「側仕えとしてお世話をさせていただくという内容で、お受けしました」
魔王「剣技も仕えるし、警護の任にも当たれる。面倒を任せるに丁度いい」
青年「ちょ、ちょっと待ってくれ。整理する時間をくれないか!?」
魔王「……いいだろう」
青年は少女の手荷物の中から 濁った液体の入った瓶を取り出して
そのままに口をつけて飲み干した
おそらく、あの濁った水は飲料水なのだろう
酒を抜くつもりなのか
青年「帰ってきたのに… 帰ってこれない…?」
なにやらブツブツとしゃべりはじめた
683 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:56:23.84 ID:JceRb9if0
その様子を見て、少女も少し緊張が抜けたようだ
適当な場所に座り込み、深く大きな息をつく
町娘も少女の側に座った
二人は顔を見合わせて、くだけた笑顔で微笑みあった
少女「えへへ… じ、実は 私もまだ信じられないよ。何がどうなってるの?」
町娘「どうって言われても… 私だって、まさか后様というのが少女ちゃんだとは思わなかったですし」
少女「私も、おねえちゃんが魔王に仕えてるとはおもわなかったよぉ…」
町娘「わかってたら、あんなに大混乱にならずにすみましたものね」フフ
少女「えへへ… ほんっとにびっくりしたんだよー!!」
町娘「私もですよ、少女ちゃん」
魔王(街中で 再会の抱擁をするならばまだしも、騒乱を起こすとは。俺だって驚いた)ハァ
684 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:57:41.61 ID:JceRb9if0
********************************
少し前… 町の中
魔王は少女を腕に抱えて、“兄の思い人である達磨”を探していた
裏通りの寂れた一角でその姿を見付ける
魔王「町娘! 探したぞ!」
町娘「魔王様?」
町娘「? その腕に抱いているのは…?」
魔王「ああ。こいつがーー……
タタタタ… シュルッ、チャキン!
町娘「え?」
魔王「……」
驚いた口調と表情の町娘
だがその手足は、抜いた剣を美しい姿勢で構えた
685 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:58:09.98 ID:JceRb9if0
魔王「……何故、俺に剣を向ける?」
町娘「も、申し訳ありません! 亡霊鎧様の腕と脚が勝手に!」
魔王「あいつの意思か。 一体、何を……」
町娘「っ きゃっ!?」 グイッ
町娘の、剣を持っていないほうの手が前に突き出される
魔王は思わず身構えて防御姿勢をとったが……
籠手『何を、ではありませぬ!! 魔王殿!』
その手は、突然に喋りだした
町娘「こ、籠手が!? 手がパクパクして喋る!?」
魔王「なんと面妖な。生きる鎧とは、口ではなくとも口の代わりとなって活動するものか」
籠手『パーツの一部が欠けても生きていられるのが我輩である! 腹は無くとも腹が立ち、口がなくとも声が出ますぞ!』
町娘(ごめんなさい、ちょっときもちわるいです!)アワワ
本人はいたって真面目なのだろうが、あまりに奇妙、あまりに間抜け
一刻も早く少女の兄の下へ町娘を連れて行きたいというのに、鬱陶しい事この上ない
さらに、その間抜けな籠手はとんでもないことを口走った
686 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:59:05.59 ID:JceRb9if0
籠手『后様という者がありながら女児誘拐とは関心致しませぬぞ! 魔王殿!』
魔王「は? 女児誘拐……?」
問い直そうとしたが、腕の中の少女が暴れもがいたのに気をとられる
どうしたのかと 一度地に降ろしてみると
今度は自分からしっかと魔王に抱きついてきた
少女「あ、あわわ… お、おねえちゃんがおばけに取り憑かれて帰ってきたよぅ…!」
魔王「おねぇちゃん…? ああ、そうか。兄の恋人ならば、知り合いであったな」
町娘「え… って。 も、もしかして… 少女ちゃん?!」
少女「ひゃ、ひゃあああ! やっぱりおねぇちゃんのおばけ!?」
魔王「いや。おばけなどではなく、こいつは正真正銘……
町娘「どうして少女ちゃんが魔王様の腕の中にいるんですかっ!? 」
魔王「あ、ああ。それはだな……
籠手『なんと! 町娘殿のご友人であったか! ならば今すぐにそちらの少女をお助けしましょうぞ!!」
魔王「なっ」
チャキッ!ザシュッ!
町娘「きゃああ! 剣が! 魔王様、すみません!」
687 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 18:59:44.05 ID:JceRb9if0
魔王「くっ。片手剣とはいえ、面倒な! こいつに剣など握らせるべきではなかった!」
町娘「っ! ごめんなさい、魔王様! 連撃がはいりそうです!!」スチャッ
魔王「 」
少女「えええ!? なんで!? なんで魔王を斬るの、おねえちゃん!? そんなに武道派だったっけ!?」
町娘「ちちち、違います! 違いますよ少女ちゃん!!」
魔王「少女、落ち着け。これはーー……
籠手『魔王殿!!! 御覚悟を!』
魔王「ええいうるさい!!」
町娘「剣がっ! 剣が勝手に!」
少女「だめ!! 駄目だよおねえちゃん!? 自暴自棄になっちゃだめぇぇぇ!!」バタバタ
魔王「〜〜〜〜〜〜〜〜っ おまえら、全員 落ち着けーーー…!!!」
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688 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:00:06.53 ID:JceRb9if0
少女「あはは… 駐在軍の人が宿舎から出てきて、みんなで慌てて逃げたけど…」
町娘「ええ… あの人たちも、たまには仕事をするんですね。助かりました」
魔王(……ただの野次馬だろう…。ましてや、見事に捕まえ損ねていては褒められぬ…)
青年「コントか」
魔王「む。聞いていたのか」
青年「あー… なんかこっちのドタバタ聞いてたら、落ち着いた」
魔王「うむ。俺もあの騒ぎの後、冷静さを取り戻してこちらに出向けた」
青年「……なんか… 変な共感された気がする」
青年「んで、なんなんだ? 町娘のその籠手は…」
魔王「気にするべきは、本当にそこなのか。青年」
町娘「……ふふ。相変わらず、少し抜けているところが見えて安心しました」
青年「それ、俺のことバカって言ってる?」
町娘「少し?」
青年「 」
689 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:01:41.81 ID:JceRb9if0
少女「えっと… そ、それでおねえちゃんは 魔王城につとめることになったんでしょ? 断ったりはしなかったの?」
町娘「もちろんお断りしましたよ」
青年「だよな!!」
町娘「国が違いますから、青年さんの元へ会いに来ては、スパイ容疑をかけられかねないと侍女長様に忠告もされましたし」
魔王「ふん。こちらは諜報などあってないような町。こちらは諜報されても恐れを知らぬ大国だ」
町娘「え、ええ。あまりに強気で…… その、若干押されて承諾に至りました」
少女「強気? なんていわれて説得されたの?」
町娘「あ…えっと。 『この役目だけは、他では至らぬ。お前が必要なのだ』と仰っていただいて…」
少女「!?」
青年「思いっきり口説いてるじゃねぇか!!」
町娘「ま、魔王様は私など見てはいらっしゃいませんよ!」
町娘「この先行くアテのない私をフォローしての言葉だと思ってたのですけど… 違うのですか?」
魔王(少女を万が一にも連れ帰れなかったら困るから、僅かな癒しでも欲したとか言えないな)
690 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:02:08.98 ID:JceRb9if0
魔王「……そのような気遣いはしていない、とだけ断言しておこう」ハァ
町娘「は、はい。優しさを与えられたと思っていた分、少し切ないですが。わかりました」
魔王「俺にも誤解があり、それでおまえにも誤解を与えたようだ。許せ」
町娘「許すもなにも怒ってません…。ですがその、本気でまったく見ていただけてないと実感はしました」
魔王「すまないが、癒せないというのであれば興味が無い」
少女「ちょ、魔王っ!? そんな言い方したらおねえちゃんが…」
町娘「ふふ、いいです。そんな魔王様だから……私も苦しみ少なく、お側に付き従っていられると思えます」
青年「……町娘… 魔王のことが好きなのか…?」
町娘「本当にばかですか?」
青年「ぐっ」
町娘「異性として気にされていなければ… 私も、安心して青年さんのことだけを思っていられるって事ですよ」
魔王「ああ。俺は少女以外はどうでもいい。関心など持っていない」
少女「ま、魔王ってそんな直球なヒトだったっけ…?//」ぁぅ
691 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:02:35.78 ID:JceRb9if0
青年「で、でも。……こいつん所へ行くんだろう?」
町娘「それ、は。……先ほど言ったとおり、この町に残るのは……きっと町にも迷惑をかけますし」
青年「そっか……。 じゃぁ… 俺には… 別れを告げに来たのか?」
町娘「…………」
町娘「……最後に… 一目だけでも、と思ってました」
町娘「こうして言葉も交わせて… かわらぬ態度で接してくれて…」
町娘「本当に、嬉しいんです。青年さん、ありがとうございます」
青年「っ」
町娘「……ふふ。本当の私には四肢も無く、穢れた身… 青年さんには、相応しくないです」
町娘「この町にいたら… きっと。見世物としての私を求めて面倒も起こるでしょう」
町娘「少しでも私を必要としてくれるなら、魔王城で静かに暮らすのがいいと思っています」
町娘「でも……」
町娘「たまには、会いに来てもいいですか? 青年さん……」ニコ
692 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:03:22.22 ID:JceRb9if0
青年「なん… で。 俺のところには… 帰ってこないのか…?」
町娘「……大好きです。ごめんなさい、こんなことになっちゃって…」
町娘「それだけ、ずっと ずっと言いたかった…。ようやく、言えました」フフ
青年「………っ!!!」ガバッ!
青年は、姿勢を改めて
地に頭を擦りつけた
少女「……え、えっと。 お、おにいちゃん?」
町娘「青年さん……?」
魔王「……土下座? なんのつもりだ」
青年「町娘のことを后にするつもりがないなら、どうか俺に譲って欲しい! 諦めてくれ!」
魔王「ほう?」
町娘「!? 青年さん!?」
693 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:03:47.94 ID:JceRb9if0
青年「頼む、この通りだ!」
青年「おまえ……あんた、いや ええと。魔王さんがコイツにかけただけの弁済などはできないかもしれないけど…」
青年「だけど何か 他のものと引き換えてもいい! そうだ、俺自身と引き換えてもいい!! だからどうかその娘を譲ってくれ!!」
魔王「……話を聞いていなかったのか。この町に戻れば、こいつはーー
青年「俺が… 俺が、何と引き換えようとおもっても…」
青年「どんな手をつかってでも、俺の横に置いておきたかった! そんな娘なんだ!!!!」
町娘「青年さん…………」
青年「この国にいられないというなら、俺がこいつをつれて国を出る!」
少女「お兄ちゃん!?」
青年「なんの保証も無い! 生活だって今よりキツくなるかもしんねぇ!!」
青年「でも、そうでもしなきゃ、もうこいつは俺の元には来ない…!」
青年「あんたんところに居場所があったら、俺はそれすらできねぇんだ!!!」
青年「最後のチャンスなんだ!! 頼む……っ! 頼む!!」
少女「……おにいちゃん…」
694 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:04:14.55 ID:JceRb9if0
魔王「……おまえは、この娘がそんなにもほしかったのか」
青年「ああ! そうだ!!」
青年「何度も何度も商人の元に通ったが、会わせてすらもらえなかった!」
青年「見に行かなかったんじゃねぇ! 見にいくこともできなかったんだ!!」
町娘「!」
青年「見世物小屋にしのんだこともあったが、盗賊扱いされ牢にも何度も入れられた!」
町娘「!! そんな… 私、そんなこと知らな……!」
青年「ほんの一言でも、伝えて欲しいと何度も頼んださ! だが、声を届けることすらも出来なかった!!」
青年「取り戻すどころか…… ただ、ただ言葉を届けることさえ……!!」
町娘「でも… どうして? 知っていたでしょう…? 私は本当にひどい姿で…!」
青年「悔しかったよ!!」
町娘「っ」
青年「怒りだって収まりようがなかった!!」
魔王「……」
695 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:04:54.68 ID:JceRb9if0
青年「でも、でも……!!」
青年「町娘が悲しんでいる姿や、苦しんでいる姿を、誰かの笑いものにするのは許せなくて…!!」
青年「生きているならば…… どうにか、助けてあげたかった…っ! 俺が、どうにか、癒してあげたかった…!」
青年「…そりゃ…もう、駄目かもしれないとすら思ってしまったことも、あるし……負けそうになったりもしたけどさ…っ」
町娘「青年、さん…」ポロ…
青年「でも、もし 町娘が耐えらんなくなって、俺の声も届けらんなくなって、救ってあげれなかったとして…」
青年「でも それでもせめて、その死体だけでも売ってくれって 頼むつもりでいたんだ…」
青年「手厚く供養するだけでも、何か少しは救いになるかもんないって…」
少女「お兄ちゃん… そんなつもりで…ずっと、たくさんのお金を溜めてたの…?」
青年「そんなことまで、考えるくらい…… 俺は、町娘のことを…ずっと……!」
町娘「せいね…… っく、ひっく」
魔王「……」
少女「おにいちゃん…」
696 :
◆OkIOr5cb.o :2015/02/23(月) 19:05:22.37 ID:JceRb9if0
青年「でも、今!! こうして、目の前にいるんなら! 俺の声が届くんなら!!」
町娘「ひっく…… ひっく」
青年「愛してる! 俺のそばに帰ってきて欲しい!!」
町娘「……そんな ……だって、私 本当に すごく酷い身体で……っ」
青年「関係ねぇ! 俺は町娘のことを、愛してるんだ! それだけは信じてくれ! 頼む!」
町娘「私、私、こんな… こんな…」ひっく、ひっく・・
青年「死体になってても、絶対に俺の元に戻すって決めてたんだ! 生きて戻ったなら、どんだけ側においておきたいか! わかるか!?」
町娘「だって……そんなの、信じられな…」…ひっく……
青年「町娘!」
少女「……魔王」ヒソヒソ
魔王「? どうした、少女」
少女「すこし… 二人だけにしてあげない?」
魔王「……おまえが、そう望むのなら」
少女「えへへ。ありがと、魔王」