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魔王「ならば、我が后となれ」 少女「私が…?」
Part1

魔王「ならば、我が后となれ」 少女「私が…?」
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1 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/14(水) 13:58:00.84 ID:oIuSJycL0
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魔王城 謁見の間
朝から玉座に座らされ、やたらと幅の広い肘掛に頬杖をついて ただ時間を費やしている
3段低い場所でかしずいている者を眺め見ると、慌てたそぶりで視線を地に落とした
魔王(俺は今、どんな顔をしているのだろうか)
数人ずつ、次々と謁見希望者が前に並べられ それぞれ口早に好きなことを好きなように述べあげていく
「魔王様、わが国で今年16を迎えたばかりの器量のよい娘が・・・」
「竜王の眼とよばれる奇跡の能力をもった我が姪こそ・・・」
「隣王国より親書をもって参りました、貴族の娘たちを集めた舞踏会への是非とも御招待を…」
魔王「……」

2 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/14(水) 13:58:50.97 ID:oIuSJycL0
新王として、魔王の玉座に座するようになって2年
ほぼ毎日のように、謁見を求めるものはこのようなものばかり
成人の儀を終えたばかりの魔王に対し、政治的な交渉手段として捧げられる多くの娘たち
そのどれかを選べば、政治の流れも同時に選ばれる
臣下A「魔王様、そろそろどれか選んでみてはいかがです。よき伴侶、美しき娘を側に置いて子を作るのも この国の安泰のためには必要な……」
臣下B「いえいえ、なにもすぐに后を選べとはいいません。魔王様はまだ若いのですから。ですが国交易が捗らない事には、この国の行く末も……」
顔色を伺うように、どうにか俺の首を縦にふらせようとする臣下たちのやり取りも聞き飽きた
この世界にも、この国の行く末にも 興味などない
先の先王は賢く、強大な力を持ってこの国を支配してきた
その先王の急死により残された莫大な遺産はどう扱おうと手に余るものだった
鍛え上げ、練りこまれたその“力”ですらも 成人の儀…“継承の儀”によって引き継いでしまった

3 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/14(水) 13:59:27.45 ID:oIuSJycL0
そう
俺は最初から 全てを与えられて王になった
望めば、望むものが手にはいる
できないことなどない
従わないものがいるとしても、それを屈服させることすら容易だった
だから 興味などない
いまさらとりたてて 欲しいと手を伸ばす必要もなかった
全てを手に入れてしまったあとは 何を欲しがればいいのかすらわからない
だから決まって 返事はひとつ
魔王「要らぬ」
誰もが隠した溜息は、折り重なって 謁見室に重く沈んだ空気をつくりだした

4 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/14(水) 14:00:23.14 ID:oIuSJycL0
亜寒帯地方に絶対的な支配力を持つ 強大な独裁政治王国、『魔国』
その王位正当継承者…… 『魔王』
そいつは世界にも 権力にも 金にも女にも 何に対しても興味を持てなかった
「やはり、『無欲の魔王』には何を差し出しても無駄なのか…」
誰かの小さな呟きに顔を上げる
数人、慌てて顔を逸らしていた
きっとあの呟きに同意をした者が、悟られまいとしているのだろう
だが無意味だ。そう呼ばれてもなんの感慨すら浮かばないのだから
そう。俺は『無欲の魔王』と呼ばれるほどに
この世界の何もかも「関心の持てない面倒事にすぎない」と、思っていた
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

5 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/14(水) 14:02:43.15 ID:oIuSJycL0
まったり更新していきます 
一回毎の投下量が少なくなると思いますが勘弁してください
途中で一部に、多少の残虐な描写がはいる可能性があります
ご了承ください

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/14(水) 14:35:10.85 ID:jLoxzkb6O
期待

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/14(水) 17:13:32.78 ID:jvhyeX8K0
スレタイに惹かれました。期待してます!

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/14(水) 18:26:08.74 ID:XoTdJsxlO
乙です
激しく期待

13 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:45:45.95 ID:4V70RNmz0
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謁見の間で、例の呟きが聞こえた後
重苦しい雰囲気が張り詰めていた
興味など何ひとつ持たなかったが きっと俺はひどい顔をしていたのだろう
その翌日である今朝 ひきつったような笑顔で臣下から助言があった
臣下B「魔王様。連日の謁見で少々お疲れでしょう…。 今日は謁見希望者も少ない見込みですので、どうぞ休息などお取りください」
「要らぬ」という言葉を掛けられるとでも思ったのか、臣下はそういうやいなや礼をして部屋を出ていった
休息。何をしていいものやらわからないまま、俺は身支度が終わると城を出て敷地内のとある森に足を伸ばした
そこを選んだのに、特別な理由などない
あるとすれば、自然に人気の少なそうな場所を選んでいたというだけ

14 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:46:24.89 ID:4V70RNmz0
森を歩いていると、少女の姿をみつけた
魔王(この森に、人間… それも少女が?)
少女は手付かずで自然のままに咲き誇る花々を摘み集めているようだった
俺がいることにも気づかず、油断しきった背を向けてせわしなく花を探しては摘んでいる
魔王「……何者だ。誰の許可を得てこの森に立ち入っている」
少女「!」ビクッ
魔王「話せ」
少女「えっと…あの。花を、あつめていました」
魔王「集めて、どうする」
少女「その… 売るんです」
魔王「……」

15 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:47:18.60 ID:4V70RNmz0
花売りか。身なりからして貧しい子供…
確かにこの森の中でならば多くの花を摘むことも出来るし、他の花売りと場所を競い合うこともないだろう
だが
魔王「この森は俺の森だ。花とはいえ、勝手に持ち出すのを見逃すことも出来ぬ」
少女「……あ… ごめん、なさい」
魔王「……」
少女「……」
少女は目を閉じて、手を両脇に垂らしたままぎゅっと握って棒立ちになった
魔王「どうした」
少女「……え。 あの… 叩かないの…?」
魔王「なんと?」
少女「あの、その。花を盗ったから…」

16 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:53:16.27 ID:4V70RNmz0
少女は緊張した様子で、身体を強張らせていた
口調が時々崩れそうになるのを なるべく丁寧に言い換えようとしている様子も見て取れる
こういった様子は見慣れているのでよくわかる
つまりこの少女は 怯えながらも、俺の機嫌を損ねぬように気を張っているのだろう
誰も彼も、よくもまあそんなつまらぬことを気にするものだ
魔王「…持ち帰ったわけではないし、知らなかったのだろう。知っていて、なお持ち帰りたいならば それなりの事を覚悟する必要はあるかも知れぬが」
少女「……持ち帰りたい、です」
魔王「そうか。ならばその覚悟も頷ける」
少女「でも私は、まだ15で…」
魔王「……?」
少女「あと1年たたねば、身体も売れぬ年齢なのだと聞いています」
魔王「………」

17 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:53:45.15 ID:4V70RNmz0
少女「叩くだけでは足りないなら あと1年まって欲しいです」
魔王「1年待つと、どうなる」
少女「身体で代価をお支払いできるようになります」
魔王「馬鹿な」
少女「え?」
魔王「支払う金がないのはわかる。だが幼いうちは叩かれて許しを乞い、育てば身体で支払うと? 親にそう言われているのか」
少女「私に親はいないの。えっと… 孤児、っていうんです」
魔王「そうであったか。では、誰にそのような生き方を習った」
少女「……町にいる、駐在軍の人に 教えてもらいました」
魔王「なんだと?」
少女「そうして日銭を稼ぐのです」

18 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:54:51.95 ID:4V70RNmz0
魔王「……その金、たいした額にはならないだろう。何を買う」
少女「はい。駐在軍の方からパンをいただくかわりに、その日に稼いだ銭を渡すのです」
魔王「な。 ……お前は、配給品を買っているのか?」
少女「ハイキューヒン…? パンのこと…ですか?」
魔王「………」
首をかしげて魔王の言葉を待つ少女
魔王は国のことに興味はないとは言え 仮にも王の座にある
ともすれば周辺諸国の話も 嫌でも聞かされている
あいまいな記憶をたどり 町の情報を思いだす
人間の町は確かにすぐそばにひとつある
魔国の領地に一番近く、常に警戒の張られている… 貧しく物々しい町だったはずだ
おそらくこの少女、そこの町から来ているのだろう

19 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:58:26.93 ID:4V70RNmz0
魔王(軍の配給品は、王国が農耕をろくに行えない辺境の地に無償で届けていたはず。物は届くが、目は届いていないということか)
自分自身、自国の内情になど目を向けていないのだからそれを責める気にはならない
荒れ果てた土地で、どうにか私腹を肥やしストレスを吐きたい軍の人間の心理も理解できる
だから魔王は、そんな“悲惨な状況を危惧する”ことはしなかった
ただ、目の前の少女にはどこか気をとられる気がした
魔王(生きたくとも、賢く生きる方法をしらない少女…か)
生きることの価値を見出せない魔王にとって
それは同類するものなのか、相反するものなのか
そんな疑問がうっすらと浮かび上がるころには
魔王は既に『自分の役割として自分の敷地内を守る意義』など、どうでもよくなっていた
もとより最初から興味があったわけではない
そうするべきだと言われて、していたことにすぎない… この少女と、同じように

20 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/15(木) 13:59:09.21 ID:4V70RNmz0
少女「あ、あの…?」
魔王「ああ、よい。花にも、お前を罰することにも、特に興味はないからな」
少女「え?」
魔王「見逃しておこう」
少女「あ」
俺はそういって、そのまま少女の横を素通りして歩き出した
背後に視線を感じたが、気にもとめずにそのまま立ち去る
その日は、ただなんとなく森を歩き続けてから城に帰った
1日かけて うすぼんやりと心に浮かんだままの自分の疑問を洗い出そうとしてみたが、結局なんの収穫もないまま夜になり、寝所へはいった
魔王(……ふむ。何にも興味はないと思っていたが、まだ自分自身の感情くらいは気になっているものなのかもな)
そんな結論が出たことで、魔王は久しぶりにほんの少しの満足感を得て眠りについた
夢は、見なかった
・・・・・・・
・・・・・
・・・

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/15(木) 14:01:33.52 ID:PNFeHizso
良SSの予感

27 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:08:15.90 ID:2MQxt6/70
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翌日
朝、少し早く目が覚めた
昨夜味わったほんのすこしの満足感。その余韻が残っていたのだろうか
何気なく、朝食をとる前に軽く敷地内を歩いてみる気になった
魔王(とはいえ、やはり人のいる場所は億劫だ)
何気なく城の裏手へ回る
すると小さな石造りの倉庫前で、2人の警備兵が話しこんでいるのが見えた。早朝訓練の後片付けだろう
魔王(…見つかると大仰な挨拶の後、下手すると食堂まで警護されるな。戻るか)
クルリ、と踵を返したときだった
新人警備兵「魔王様って、やっぱ怖いっすね」
ガタガタと槍を束ねながら、警備兵の一人がそう話すのが聞こえた
だれにどう思われようと興味はない。そのまま2歩ほど足を進めてから、ふと立ち止まった

28 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:09:23.50 ID:2MQxt6/70
魔王(……そうだ。自分自身には興味があるのかもしれないと、昨日気づいたばかりではないか)
興味があるのかもしれない
それならば、それを確かめてみるのは悪くない。うまくいけば昨夜のように満足感を得られるかもしれない
そのまま気づかれぬように耳を澄ませてみた
新人警備兵「謁見室で魔王様が焦点を合わせて人を見る所、初めて見たんすよ」
警備兵「俺だって、あの魔王様が誰かを探して睨むようなのは初めてだけどな」
新人警備兵「あの態度で、無言・無表情のまま ゆっくりと視線をあげて…うぅ、思い出しただけでブルっとするっす」

29 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:10:20.47 ID:2MQxt6/70
警備兵「まぁ、何を考えてるかわからない御方だしな。それだけに威圧感があるよな」
新人警備兵「それっすよ! なんかあの魔王様は、視線をあげるのも 客を殺すのも 同じ態度でいきなりヤりそうな末恐ろしさがあるっす!」
警備兵「はは、んなことはいくら魔王様でも……………っ」
新人警備兵「………先輩、今 あっさり想像できちゃったでしょ」
警備兵「し、仕方ねぇだろ! 先王様と同じ能力を持っていて、しかも本当に何考えてるかわかんねぇんだ。怒ってても行動されるまでわかんねぇよ、絶対…」
新人警備兵「そうっすよねー。まあ、自分のところの王様なんで頼もしいっすけどね」アハハ
警備兵「まぁ、来客に対して親しみやすい『魔王様』なんてハクもつかねぇしな」ハハ
魔王(…………で?)
興味を持てるかもしれないと思ったが、勘違いだったようだ
結局、謁見室で過ごした後と同じように溜息をひとつ残し、そのまま立ち去る

30 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:11:45.09 ID:2MQxt6/70
朝食を終え、謁見室の玉座につくと 周囲には普段以上に緊張した空気が漂っていた
あの警備兵と同じく、周囲は一昨日の空気をまだ引きずっているようだった
魔王(なかば無理やりに俺に1日の休息を取らせておいて、自分たちが気分転換できていないとは)
魔王(…仕方ないか。あの警備兵達が言っていた通りなのだとしたら、気づかぬ内に威圧的なことをしたようだしな)
これまでは謁見の間、魔王は大抵 頬杖をついて何もない空間をぼんやりと見つめていた
飽きると足を組み、意味もなく靴先を眺めたりする程度しか反応しない
横柄な態度であることは自覚していたが
自分がどう見られるかにすら興味が持てない魔王にとってはどうでもよかったのだ
普段は、謁見者が通され挨拶の口上を述べあげても その格好のまま無言で小さく頷く程度だったのだが…
魔王(何もしないがゆえ、些細なことをするだけで注目されてしまう、か。……困るほどのこともないが、愉快でもないな)
魔王(なにより、いちいち このように過剰反応されるようだと後々が面倒そうな…)

31 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:12:34.35 ID:2MQxt6/70
自分は今、関心や興味を払っているのだろうか。それともその“振り”をしているのだろうか
その疑問が脳裏をよぎった時、昨日と同じ感覚を思い出した
魔王(つまり、俺自身が自分をどう思うのかには興味があるようだ)
せっかく立ち止まってまで聞いた話だ。少しは役立ててみるのもいいかもしれない
これから少し反応を返してみよう。それで余計な面倒事が減れば僥倖、変わらぬなら止めればいいだけの話…
そんな結論を出すためだけに、随分と時間を消費していたらしい
「……というのも、身内ながら聡明な娘でして。今日は是非とも魔王様のお知恵に触れさせていただきたいとつれてまいりました…。どうぞ娘にも、謁見のご許可を」
気がつけば既に、臣下は今日の1組目の謁見希望者を入室させていた
その男は挨拶の口上を終え、謁見理由を既に述べていたようだ。今は要望を出し、控えて魔王の反応を待っている

32 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:13:34.38 ID:2MQxt6/70
臣下たちはいつも通り、僅かな魔王の反応を見逃すまいと 沈黙して両隣に立つのみ
魔王はさっそく自分の出した結論に従って見ることにした
といっても、突然に言葉など出てくる訳もなく…
魔王「ああ」
なるべく穏やかな表情で視線を投げかけ、そう一言呟くだけで終わった
だが謁見室にいる全員の心をざわめかせるには充分だったようだ
臣下B(魔王様が、返答なさるとは。これはもしや ついに興味を持たれたか…)
臣下A(初めての好反応! ええいこの者、期待に沿うだけの娘とやらを連れてこいよ…!!)
男「は…ははっ!! え、謁見の許可を頂き……畏れ多くも、魔王様のお目に触れることができ、娘も光栄と存じまする…!!」
男が立ち上がり、興奮してうわずった声で 従者に娘を連れてはいるよう指示をする
それと同時に他の謁見希望者などからざわめきが立ち上り、一瞬で室内は期待と動揺に包まれた

33 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:16:09.71 ID:2MQxt6/70
臣下B「鎮まれ! 魔王様の御前なるぞ!」
声を荒げて鎮静を図る臣下Bこそ、興奮の色を隠せていない
「お待たせしました!」という誇らしげな男の一声
そのすぐ後に連れられてきた娘に誰もが注視したその瞬間、ようやく場の雰囲気が収まり、皆が一斉に息を飲んだ
魔王(なるほど、美しい)
魔王の前まで優雅に歩み寄り、ゆったりと辞儀をする令嬢
長くしなやかに、腰まで伸びた金糸のような頭髪がスルリと落ちる
次いで、控えめだが充分に練られたと思われる感謝の言葉を述べあげる
落ち着いた、清涼な川の流れをおもわせるような声
実際、ある者は水をかぶったかのように興奮を収めていたし、また別のある者はすっかり心溺れて魅了されていたようだった

34 : ◆OkIOr5cb.o :2015/01/16(金) 09:17:37.96 ID:2MQxt6/70
謁見室内の雰囲気に気をよくしたのか、娘を連れてきた男は上機嫌で語りだす
男「この娘、記憶力にとても優れておりまして…」
魔王(ほう)
男「一度読んだ話などを、ずっと覚えていられるのです。それも大量に」
魔王「それは見事だ。では何か話してみるがよい」
控えて頭を下げたままの令嬢に声をかけたつもりだったが
横にいた男に口を挟まれるほうが早かった
男「いえいえ、魔王さま」
魔王「?」
男「せっかくならば、この娘の記憶力をしっかりとご覧頂きたいと存じます」
魔王「……ほう。つまりどうしたいのだ」
男「どうぞ、夜 お眠りになる際などにお呼びいただければ。眠る前に子守唄のように話をさせていただきましょう。この娘、朝まででも続けていられまするゆえ…」
魔王「…………」