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ヘルパー「はじめまして! 私、妖精ヘルパーと申します!」
Part3


44 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:24:56.65 ID:JQIR4aY80
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ぴんっぽん♪
気の抜けたドアチャイムが鳴る
俺「はーい!」
ガチャ。
ヘルパー「こんにちは! 私、妖精ヘル………っ」
俺「はい! 待ってたんだ!」
ドアを開けた瞬間に、突き出したのは小さな鉢植えだった
ヘルパー「え、これは…?」

45 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:25:37.67 ID:JQIR4aY80
俺「今日、何の日か知ってる? 」
ヘルパー「え…。その、もしかしてバレンタインデーのこといってますか?」
俺「正解! だからほら、プレゼント」
ヘルパー「ホワイトデーにマシュマロとかじゃなく?」
俺「バレンタインに鉢植え。駄目?」
ヘルパー「だ、だめじゃないです! でも、なんで……?」
俺「まあまあ、とにかく入って!」
部屋に入った彼女が、テーブルの前で立ち止まった
鉢植えにつけられたリボンと同じ柄のリボンがまかれた小箱に視線が注がれている
ヘルパー「あ、あの?」
俺「……プレゼント。開けてみて?」
ヘルパー「私に…?」

46 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:26:29.46 ID:JQIR4aY80
困惑したまま、そっとリボンを外す彼女
小さな箱から取り出される、さらに小さなネックレス
ヘルパー「こ、これは?」
俺「……俺も知らなかったんだけどさ。日本くらいなんだってさ」
ヘルパー「何がですか…?
俺「女の子が、男にチョコ渡す習慣」
ヘルパー「え…」
俺「海外では、性別を問わずに好きな人に花をわたしたりするみたい」
俺「なんか、むしろ男が女の子にー、みたいなのもあるみたいだよ」
ヘルパー「え、あの」
俺「だから、その。こじつけっていわれりゃそれまでなんだけど…」
俺「こんな機会でもなきゃ、言えそうになかったから」
ヘルパー「あの、私……!」

47 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:27:11.97 ID:JQIR4aY80
俺「好きだよ、ようちゃん。いつもありがとう」
俺「これからは俺のヘルパーなんかじゃなくて、彼女として…一緒にいてくれないかな」
ヘルパー「…………っ」
俺「……駄目かな」
ヘルパー「ごめ…ん、なさい……っ」
俺「っ」
ヘルパー「私…」
俺「あ…ごめん。そう、だよね。はは…なんか、勘違いしてた」

48 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:28:38.43 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「私…」
俺「いいんだ! ようちゃんにしてみりゃ仕事なのに、なんか俺、ほんと何を勘違いして…はは」
ヘルパー「私、嘘ついてました!!」
俺「え?」
ヘルパー「私… 妖精なんかじゃないんです!!」
俺「それはわかってるよ」
ヘルパー「騙してました! 妖精ヘルパーだって!」
俺「いや、だからそこは騙されてねぇよ? ナメてる?」

49 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:29:38.13 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「仕事なんかじゃ、ないんです」
俺「へ……  あ、ああ。あー、そっか。うん」
俺「まあ仕事じゃないにしろ、なんか事情があってやむなくこんなことを…と?」
ヘルパー「………」
俺「なんか、つい聞かずにいたけど… 教えてくれるのかな…」
ヘルパー「……………」
ヘルパー「私…の、せいなんです」
俺「?」
ヘルパー「脚。不自由になった原因……私のせいなんです」
俺「え……」
それから、ゆっくりと彼女はいろいろ教えてくれた。

50 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:34:12.24 ID:JQIR4aY80
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男「お。○○高の制服だ」
ヘルパー「え」
男「カワイー。ねぇ、ちょっと見せてよ」ニコニコ
ヘルパー「あ、あの。私急いでるので…」
男「いいじゃん、褒めてやってんだし」グイ
ヘルパー「その、やめて」
男「いいからさ。こっちおいでよ」
「何?」
「女子コーセー。よくない?」
「ばーか、変態かよ」
「あ、俺、結構すきだわ」
「だろ? どうよ」
「いいねー」

51 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:35:04.05 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「あ、あのっ」
「お前興味ないなら、立ち番しててよ」
「は? ……まぁいいけど。早く終わらせろよ?」
「わーかってるって」
ヘルパー「ちょ……」
「あ、俺もパスするわ。あんま好みじゃないし」
「あいよー」
ヘルパー「あの… 私、やめっ」
男「うるせーな。殴られたい?」
ヘルパー「っ!」

52 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:36:30.62 ID:JQIR4aY80
男「うひゃー、スカート長め。稀少生物?」
ヘルパー「ほんとにやめ…!!!」
男「黙ってろよ 」
ヘルパー「!!」
男「叫んだらー、見られちゃうよー?」ニヤニヤ
ヘルパー「………っ」
男「だいじょぶだいじょぶ。俺、結構やさしい方だからさ」
ヘルパー(誰か、助けて…!)
<……!
<………っ
<……
<ガシャン

53 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:38:09.47 ID:JQIR4aY80
「あ? なんかうっせーな」
「誰か来たかー?」
「ほら。見られてさ、やるのとかもありかも。連れてこよか?」
ヘルパー「〜〜〜〜っっ!!!」
<ドガシャッ!
<キキィィィィィ!
<「キャァァァァァ!!」
「な、なんだ?」
「なんかやばくね? 事故ったみたいな音したぜ?」
「まじかよ…」

54 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:38:36.24 ID:JQIR4aY80
「っ、おい! 逃げるぞ」
「何したんだよおまえら…」
「知らねーよ! 邪魔そーなやつが来たから小突いたら、道路に転がってったんだ!」
「げ、まじで事故?」
「やばいって。そっちの通り、人集まってきてる」
「うっざ…」
「パト来そうだぜ。さっさと行かなきゃやべえ」
「ちっ」
タタタタタ……
ヘルパー「………え… たす、かった……?」

55 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:41:37.09 ID:JQIR4aY80
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俺「……・・・」
ヘルパー「私……その時、動転しちゃってて…出ていけなくて」
ヘルパー「でも、結果として。あなたが来てくれて、絡まれて、事故にあったから…… 私が助かったんです…」
俺「そ、それで あんとき、俺は絡まれたのか…」
ヘルパー「私… どうしていいかわからなくて…」
ヘルパー「その、後からあの事故で、足を不自由にしちゃったって聞いて…」
俺「あー…」
ヘルパー「私のせいで… 脚、不自由にしちゃったのに。助かりました、ありがとうなんて言えなくて…」
俺「は、はは。そりゃまあ、確かに言いにくそうだね…」

56 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:44:07.94 ID:JQIR4aY80
俺「でも、俺、結構平気だったよ?」
ヘルパー「あの…」
俺「元々がインドアな人間だったし… 脚はそりゃ、不自由だけど」
俺「まあヤンキーに絡まれた時点で運のつきと思ってたし」
俺「半殺しとか、あるいはもっとひどい怪我とかもありえただろうけど。事故ってことで保険もきいたし?」
ヘルパー「あ、あの」
俺「しんどいのもあったけど、別にそこまで精神的に響かなかったしさ」
俺「……うん。俺のこの片足で、ようちゃんの事を守れてたとか」
俺「ちょっと、うれしいかも。なんてな? あはは」
ヘルパー「〜〜〜〜〜〜〜っ」
彼女は顔をくしゃくしゃにして、泣くのを堪えているようだった
事情はだいたいわかった。俺は慰め半分、詫び半分で 彼女の頭を撫でてやる

57 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:45:06.60 ID:JQIR4aY80
俺「それで、謝罪のつもりで通ってくれてたんだ? …ありがとな」
ヘルパー「あ…」
俺「ごめんなー? 謝罪するつもりとかできてんのに、振らせるとか 俺ってさいてーな……」
ヘルパー「違うんです!」
俺「は?」
ヘルパー「違うんです! そうじゃないんです!」
俺「え、まだこれ以上なんかあんの…?」
ヘルパー「私… 前に、お話したことあるんです。覚えて、ないみたいですけど…」
俺「え、まじで? いつ?」
ヘルパー「あの事件から、一年くらい後。私…会いにいったんです」
俺「ごめん… 覚えてないや。俺、なんかいってた?」
ヘルパー「『脚…、不自由じゃないですか?』って、聞いたんです」
俺「ケンカうって来たのかよ……」

58 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:46:12.89 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「そ、その。どう話しかけたらいいかわかんなくて!」
俺「あ、ああ。そりゃそうか…」
ヘルパー「そしたら…。『ヤンキーに絡まれて、これですんで良かった』って…笑ってました」
俺「うわー…成長してないんだな、俺」
ヘルパー「すごく…救われたんです」
俺「救われた?」
ヘルパー「きっと、あの事件のこと、恨んで根にもってると思ってたので…」
俺「なるほど。原因になった自分としては、罪悪感かんじちゃってたんだ?」
ヘルパー「はい……」
俺「…………」
俺「ばーか」
ヘルパー「えっ」

59 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:47:11.89 ID:JQIR4aY80
俺「ようちゃんだって、被害者じゃん」
ヘルパー「あの……」
俺「そりゃ、その。女の子としては『これだけで済んで良かった』とは思えないくらい怖いひどいことされたんだろうけど…」
俺「今、元気でいてくれて。それくらいですんで、良かっ……
ヘルパー「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
俺「うっわ!? まだ泣く!?」
ヘルパー「よか… 良かったです! あのとき、ほんとに怖かったんです!」
俺「………うん」

60 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:47:57.18 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「怖くて…っ 脚、駄目にさせちゃったのに!! 私、おかげで助かったって思っちゃってて…っ!」
俺「うん」
ヘルパー「そんな自分、最低だっておもってたのに 笑って気にしないで、これで済んでよかったなんていってくれて…っ!」
俺「うん」
ヘルパー「私、嬉しくて… それで、ヘルパーになったんです! 誰かの為や、何かの為に犠牲になってくれた 脚や腕に恩返ししたくて!」
俺「腕?」
俺「………いや、俺。腕は無事だよ?」
ヘルパー「ほ、他にもきっといるから… そういう何かで、手足が不自由な人……」
俺「……え? もしかしてほんとにヘルパーなの?」
ヘルパー「ヘルパー歴、一年足らずの新人ヘルパーです!」
俺「わ、わお」

61 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:49:44.12 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「……いつか、うちの施設に来てくれたらなって思ってました」
俺「あー… いや、そういうの使う気なかったから…」
ヘルパー「はい。来てくれたら、一生懸命やろうと思って、ここから一番近い施設を選んで働き出したのに…」
俺「ま、まじで? なんかその、気にせず自立しててごめんな…?」オロオロ
ヘルパー「い、いえ。それは素晴らしいことなんですけど」アワワ
俺「あー…コホン。 それで、直接うちに…来ることにしたの?」
ヘルパー「……はい」
俺「『妖精』名乗ってでも?」
ヘルパー「ぐっ」
俺「……」
ヘルパー「だって… 他に、やりかた思い付かなくて」
ヘルパー「私を助けてくれた、その脚に どうしても恩返ししたくて」
俺「そこは、『俺に恩返ししたい』って言ってほしかったかなー… 脚って…」ハハ
ヘルパー「はっ!?」

62 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:50:41.22 ID:JQIR4aY80
俺「……そういや、脚のマッサージは毎回やたらと入念だよね」
ヘルパー「う」
俺「若干、脚フェチなんじゃないかなとか思ってた」
ヘルパー「う」
俺「……あのさ。とりあえず… 聞いていいかな」
ヘルパー「は、はい」
俺「ヘルパーじゃなくて… 彼女じゃ、だめ?」
ヘルパー「え…」

63 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:53:33.07 ID:JQIR4aY80
俺「気にして、ないんだ。だから、恩返しとかしなくていいからさ」
俺「……恩人じゃなくて… ただの男として、告白を受け取ってくれない?」
ヘルパー「あ、あの」
俺「好きだよ。それで駄目なら、もちろん断ってくれればいい」
俺「恩人とか、気にしないで。俺のことそのまま見て…… それで、答えてほしい」
ヘルパー「私……!!!」
俺「好きだ。そばにいてほしい」
ヘルパー「ーーーーーー!」

64 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:55:25.36 ID:JQIR4aY80
:::::::::::::::::::::::::::
と、いうわけで
あれから数年がたち、そんなこっぱずかしい過去を思い返している俺がいる
俺の前にあるこのやたら立派な木が、その時の鉢植えだったりするわけだ
俺「………なんか、あっという間にでかくなったな」
俺「あれから、もう何回目のバレンタインかなぁ」
<ただいまー
俺「お。帰ってきた」
<もー! 今、犬のうんちふんだーーー! 
俺「……おいおい…」

65 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:56:59.91 ID:JQIR4aY80
<さいあくだよー! へるぷーーー!
俺「何がヘルプだっつの。どっちがヘルパーなんだか…… よいしょっと」
<あーん! まさに、ウンが悪いってやつだよー!!
俺「つまらんこと言ってんなよ…… はいよー! 今行くーー!!」
玄関先にいくと、にこにことした明るい笑顔があった
それから、元気いっぱいに響く挨拶も、昔から変わらない
「ただいま! 今かえりました!」
「おかえり。 ……それだけで済んで、よかったね」
「………えへへ。うん!」
:::::::::::::::::::::::::
おわり

66 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:58:05.18 ID:JQIR4aY80
バレンタインSSでした
今日中の投下が間に合ってよかったと思います
皆様に、甘い一夜がありますように

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/02/15(日) 02:24:01.15 ID:CvtnwZzPo
俺こーゆーお話大好きだわ
乙乙

68 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/15(日) 07:59:02.58 ID:gV/9ROqDO
訂正です
>>1
×走行していた 軽車両にあてられて
○走行してきた 軽自動車にあてられて
…うちの地元でしたら、馬に轢かれることもあるんだよ!とミスの言い訳をしておきます

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/02/15(日) 08:41:32.27 ID:2XMJOdDc0
乙!

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/02/15(日) 12:13:23.75 ID:AUnWRsagO
乙です