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ヘルパー「はじめまして! 私、妖精ヘルパーと申します!」
Part2


23 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 22:52:51.03 ID:JQIR4aY80
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2月……
ぴんっぽんっ♪
俺「………」
ぴんっぽんっ♪
俺「………」
ぴんっ…………ぽんっ♪
俺「……いる。ごめん。はいってきていいよ…」
やっとの思いでそう玄関に向かって声をかける
鍵はかかっていない。かけるような余裕はなかったはずだ

24 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 22:53:36.25 ID:JQIR4aY80
ガチャ…
控えめに、ゆっくりとドアが開いた
ヘルパー「……こんにちは?」
おずおずと声をかけられ、やはり妖精ヘルパーだったかと安心する
俺「ごめん、動けない。はいっていいよ」
ヘルパー「え?! どうしたんですか!?」
俺「靴くらい脱ごうか」
ヘルパー「あぅっ!? ごめんなさい!!」
慌ただしく靴を脱ぎ、今度は丁寧に揃えておく
そのあとマフラーを外しながら、ベッドに駆け寄ってくる
ヘルパー「寝たきり!? もしかして風邪でもひきましたか!?」
俺「いや、ごめん。重度の二日酔い…」
ヘルパー「え……」

25 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 22:55:51.51 ID:JQIR4aY80
俺「今日はもう動けそうにない…なんか本当に悪いけど、帰っちゃってもいいよ…?」
ヘルパー「……よかったぁ。」
俺「なんか予定でもあったの? 無理に来なくていいのn
ヘルパー「あんま、心配させないでください。もう!」
安心したように、彼女はその場にへたりこんだ
少し怒ったような表情を作った後で、コロリと表情をかえて微笑む
俺「………あ。その、ごめんね」
ヘルパー「ふふ。いいですよ! 飲みすぎは注意ですが、楽しく飲めましたか?」
俺「う、うん」
ヘルパー「今日のお昼は、ゆるめの白粥にしましょう。水分とらなくちゃです!」
ベッドの脇に座り込んだ彼女は
にっこりとわらったまま、そういって張り切った声を出した

26 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 22:57:05.56 ID:JQIR4aY80
俺「……あ」
ヘルパー「? どうしました」
俺「ご、ごめん。もしかしてうち、めっちゃ酒臭くない?」
ヘルパー「……言われてみれば。しかもあれですね? …吐きましたね?」
俺「ぐぁ」
激しい後悔と自己嫌悪に襲われ、布団に潜り込んだ
布団の中から、「やっぱり今すぐかえってくれ!!」と叫んでみたが……返事がない
俺「? ようちゃん?」
顔を出してみると、横にいたはずの彼女はいない
荷物だけが残されている

27 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 22:57:32.07 ID:JQIR4aY80
俺「……?」
不審に思っていると、洗面所から水の音が聞こえてきた
戻ってきた彼女の手に持つ物をみて、心臓が止まりそうになる。
俺「ま、まさか?」
ヘルパー「? 清拭しようかと思って」
神様、助けて。

28 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 22:59:22.83 ID:JQIR4aY80
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ヘルパー「身体、起こせますか?」
俺「無理! 絶対無理!」
起こしたら身体を拭かれるんだ
拭かれるっていうことは、脱がされるって言うことだ
わかってて身体を起こすはずがない
ヘルパー「仕方ないですねー」
そういうと、彼女はベッド上の俺に覆い被さってきた
俺「!?」
俺の腕をとり、自分の身体に巻き付ける
俺「ままままままま まって!? 何を……!!」
ベッドの上に膝をつき、反対の脚で身体を挟むようにして…
俺「うわぁぁぁぁぁ!?!?」

29 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:00:50.16 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「よいしょっと」
テコの原理を使うようにして、俺の半身を持ち上げて座らせた
俺「………へ…?」
ヘルパー「ごめんなさい。私、身体が小さいせいで やっぱりうまく移動させるの苦手なんですよ」
ヘルパー「これ、私がアレンジした介助の為の方法なんですよー!」
彼女は得意気に、そういってのけた
俺「……っ ふ、普通に腕を引いたり肩を持ち上げたりすればいいだろ!」
ヘルパー「私の腰を痛めたり、介護者さんの身体がずれて転倒したらいけないじゃないですか?」
俺「へ…ヘルパーか!!」
ヘルパー「ヘルパーですよ!? 今さら、何いってるんですか!?」

30 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:01:47.13 ID:JQIR4aY80
そう文句をいいながら、俺の体から離れた彼女は
……さらに恐ろしい事を口にした
ヘルパー「はい、ばんざーい♪」
俺「するか!!」
文句を言うと、あっさりと袖口を捕まれる
服の中に手を潜り込ませ、腕を引き抜こうと……
俺「さ、させるかぁ!!」
ヘルパー「なんなんですか! 動けないなら文句を言わずに介護されてください!」
俺「そういう問題じゃない!」
ヘルパー「じゃあどういう問題なんですか!」
俺「ど、どうって……」

31 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:03:48.21 ID:JQIR4aY80
自分の部屋で二人きり
ベッドの上
半裸にさせられようとして、服に忍び込む小さな暖かい手
唐突に抱きつかれて動揺しまくっている心臓
それになにより、二日酔いで回りきらない馬鹿な頭と身体が………
俺(やばい… たっちゃった……)
気が付けば、最悪な状況に陥ってしまっていた
自己嫌悪に、思わず頭を抑えてしまう
ヘルパー「吐いたんですよね? それにお酒だけじゃなくてタバコの匂いもしますよ。綺麗にした方がいいですって」
俺「じ、自分でやるよ」
ヘルパー「身体も起こせない人が何いってるんですか、もう」
俺「こ、こういうのはよくないんじゃないかな!」
ヘルパー「え? ……あはは! やだ、何考えてるんです?」
俺「」
ヘルパー「襲ったりしませんから、安心してください」アハハ!
俺(逆だよ! 襲いそうだから不安がれよコンチクショウ!)

32 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:04:32.42 ID:JQIR4aY80
ヘルパーの技術とやらは大したものだった
わざと腕を突っ張ったり頑固に抵抗してみたりもしたけれど…
ヘルパー「秘技・X脱がし!!」
俺「なんで服脱がせるのに抱きつくの!?」
ヘルパー「効果としては、転倒防止と、暴れる腕を抑えるという立派な……」
俺「介護スキルって攻撃力高いんだね!!」
ヘルパー「そうでしょうとも! 私は有能ですからね!」
俺「『察する』スキルは0だけどな!!」
ヘルパー「つべこべいわずにほら、拭きますよー」
俺「ま……」
肩に手を添えられ、暖かなタヲルで撫でられる
撫でた側から、じんわりとした温もりがあり、続いて空気に触れてひんやりとする
ぞくりと鳥肌が立つ
俺(あかん。なんかいろいろ誘発される)

33 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:06:00.68 ID:JQIR4aY80
反対の腕で彼女の手を掴み、制止させた
精一杯にかっこつけて、微笑みながら 余裕ぶって声を出す
俺「……大丈夫。風呂、はいってくるよ。ありがとな」
ヘルパー「そうですか?」
彼女はきょとんとして、手を止め 周りを片付けはじめてくれた
そう、最初から堂々と断ればよかったのだ
あまりに動揺しすぎて、正攻法を忘れるなど……
俺(ふ。これで一応、危機回避。あとはどうにかして元気すぎるバカ息子を……)
ヘルパー「じゃあ、入浴介助の準備してきますから待っててくださいね♪」
俺「」

34 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:06:48.72 ID:JQIR4aY80
その時、俺の脳内では妙な物が思い浮かんでいた
清拭『…ふふふ…、我をたおしても…まだ、ニュウヨクカイージョ様が…』
俺『な…なんだと…貴様が真の敵ではなかったのか!』
清拭『ふふふ…愚かなやつめ、また会おう…』
俺「ま、まて!」
ヘルパー「どうしました?」
俺「はっ」
ヘルパー「入浴介助の準備できましたよ?」
俺「更なる試練が待ち受けてるとか、ヘルパーって強敵すぎる」
ヘルパー「なんですかそれ」
俺「気にしないで」ハァ

35 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:08:37.77 ID:JQIR4aY80
風呂場まで、手を引かれて連れて行かれる
そこで俺はもう一度、先ほどと同じように 堂々と入浴介助を断った
ヘルパー「じゃあ入浴見守り程度にしておきましょうか」
もちろん、堂々と断った
ヘルパー「ただでさえ脚が悪いに、ふらついた二日酔いの身体なんて危ないですから駄目ですね」
そして、正論で断られた
脳内で繰り広げまくって止めないままにしておいた、ヘルパー魔王vs勇者との戦い
ニュウヨクカイージョは手強かったが、無事に試練を乗り越えた
九九や素数を数えるよりよっぽど効果的だ
装備が腰巻き一枚の勇者だなんて、あまりに情けないとおもったのが決め手だったろうと思う
俺(お婿にいけない)ハァ

36 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:10:44.25 ID:JQIR4aY80
ともあれ、無事に?風呂を終え着替えをして部屋に戻った
疲れきってベッドに入った頃には 二日酔いも随分と醒めていた
ベッドで横になりながら、リラックスする
寝巻きとして出されたティーシャツに柔らかな綿パンは肌触りもいい
俺(…着替えめんどくさいからって、ついつい普段着で寝ることばっかだったしな・・・)
ヘルパー「はい、どうぞ」
俺「ありがと…」
出されたお茶には氷も入っていて、身体中に染み渡る
ヘルパー「遅くなっちゃいましたね、急いでお粥つくりますから」

37 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:11:11.09 ID:JQIR4aY80
飲みきったグラスを受け取り、台所にいく彼女
しばらくすると、くつくつと米の煮立ついい香りがする
ほんの少し、味噌の香りも…
俺(白粥じゃなくても食べられそうって判断したのかな)
俺(確かに、なんだか腹が減ってきた気も……)
カツコツと、鍋を木べらでかき混ぜる音に 眠気を誘われた
俺(意外と……ほんとに、いろいろ見てくれてんだな……)

38 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:12:22.82 ID:JQIR4aY80
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目が覚めたら、夜だった
テーブルに、メモ。それから一揃えの食器
『気持ち良さそうに寝れたみたいなので、明日はきっと気持ちよく起きられますね! おやすみなさい!』
暖めやすいようにか、鍋にいれられたままの粥
細かく形を揃えて刻まれた野菜に、卵がおとされていた
火にかけると、ほんのりと味噌の香りがして食欲を刺激する
もちろん、その粥は香りだけではなく 味だって美味しかった
でも…
俺「………一緒に、食べたかったな」ボソ
冷えきった部屋で、彼女が残した粥だけが暖かかった。

39 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:15:42.65 ID:JQIR4aY80
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ヘルパー「え? 木曜日は居ないんですか?」
俺「うん、だからその… こなくていいからね」
俺はそういう風に話を切り出した
台所で昼食の支度をしていた彼女は、火を止めてこちらへ歩み寄る
ヘルパー「どこか出掛けるなら、付き合いますよ?」
俺「いや、いいんだ。一人でいけるし」
ヘルパー「そう……ですか」
俺「………」
なんとなく、気まずい沈黙が流れる
俺は本題を切り出すために、意を決して声を出した
俺「そ、それでさ!」
ヘルパー「?」

40 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:16:16.88 ID:JQIR4aY80
俺「もしよかったら、来週だけ 曜日をずらして来てもらったりできないかな…」
ヘルパー「え……」
俺「もちろん都合もあるだろうし! ってか来なきゃいけないわけじゃないんだろうから、無理は言わないんだけど!」
ヘルパー「あ、その。私……」
俺「ご、ごめん! ほんと、無理なら断って!?」
ヘルパー「……えへへ」
俺「へ? なんで笑……」
ヘルパー「〜〜〜〜っ」
俺「は!? 泣いてる!? まって、どうして?? ごめん、ほんとに、嫌なら全然……っ」
ヘルパー「違……っ」
俺「へ……?」
黙ったまま、彼女は泣き続けた
どうしようもなくて、ごめんとしか言えない
それでも泣き続ける彼女を、俺も撫で続けていた

41 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:16:58.72 ID:JQIR4aY80
ヘルパー「来るの…」
俺「?」
ヘルパー「来るの、やっぱり迷惑がられてるのかなって思ってて」
俺「え…」
ヘルパー「さっき、キャンセルっていわれて 急に『やっぱり』って不安になっちゃって…」
俺「………」
ヘルパー「でも、キャンセルじゃなくて、別の日にして来てって言われるとか思ってなくて」
ヘルパー「無理しないでとか、逆に気まで使ってくれて……」
俺「……」
ヘルパー「い、いひひっ! なんかいきなり嬉しくなって、いきなり涙腺崩壊しちゃいましたっ!」
無理に…… 無理矢理に、
大きく笑顔をつくっておどける彼女
抱き締めたくなる衝動は抑えて、穏やかに伝える

42 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:19:44.56 ID:JQIR4aY80
俺「迷惑なんか思ったことないよ」
ヘルパー「……」
俺「一番最初に君が来たときも…動揺はしたけど。追い出す気もなかったし」
俺「………今は、ようちゃんが来てくれるのが一番の楽しみだ」
ヘルパー「えへへ… よかったですっ」
そういって笑う彼女の目からは、もう一度涙が流れた
話をきいた限り、嬉し涙だと思ってしまうだろう?
だから、どこか寂しげにも見えたその時の彼女の様子に
俺が気を払わなかったのも仕方ないじゃないか

43 : ◆OkIOr5cb.o :2015/02/14(土) 23:20:44.72 ID:JQIR4aY80
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木曜日の約束を土曜にずらしてもらった。
木曜日は一人で昼間から買い物にいった
狭い店では、邪魔くさそうな目でみられたけど あまり気にならなかった
俺はゆっくりと買い物を楽しんで
それで、満足感にひたりながら帰ってきたんだ
俺「はは。週末が待ち遠しいなんて、どれくらいぶりだろう」
帰ってからも、どこか俺は興奮したように落ち着かなかった
そして、待ち遠しい土曜日がやってきて………