Part8
166 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/24(水) 07:35:04.70 ID:nwDiYrNv0
神「……女…勇者… 勇者、だと?」ブツブツ…
女勇者「神様……」
神「!」
女勇者「あなた、勇者を… “前の勇者”を、知っていますね?」
神「……っ」
魔王「前の……勇者、だと…?」
女勇者「……聞かせなさい。この世界の理が乱れた原因は… きっと、そこにあるから」
神「世界の…理…?」
女勇者「前の勇者は…どうなったのか。 勇者が、この世界に居なかった理由を」
女勇者「教えなさい」
167 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/24(水) 07:37:57.43 ID:nwDiYrNv0
>>136-139 thx!
次の分で終わりになります 続きは遅くとも25日の朝までに
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 08:17:23.92 ID:zG49KcsQO
おつかれさま!
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 10:13:07.81 ID:nL5Uen2s0
ふぅむ。興味深いですなぁ
乙
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 18:12:16.40 ID:HFTFbRMfO
乙
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/24(水) 19:12:40.18 ID:uLekqlWaO
なんなのこのまおゆうw
新しいなw
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/25(木) 00:11:10.35 ID:6INHw/ToO
おっつ
173 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:39:57.82 ID:ojA/fmKu0
神「……何故… 何故、勇者がいる?」
女勇者「神様の啓示があったと聞いたけど、あなたの指示じゃないの?」
神「知らん、知らないぞ… そんな、そんなこと」ブツブツ
女勇者(……魔王、魔王。ねえ、なんか神様の様子、おかしくない?)コソ
魔王(ああ…… 確かに、これは何か知っていると踏んで間違いないだろう)ヒソ
神「勇者は、勇者は… 神が啓示を授けることで…覚醒するはずなのに… どうして…」ブツブツ
174 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:40:53.84 ID:ojA/fmKu0
女勇者「魔王……どういうことなのかな、これ」
魔王「女神の独断で…お前に勇者としての加護を授けたということだろう」
女勇者「なんでそんな事を?」
魔王「……俺の元に遣わせるつもりだったんだ、神には言えなかったということだろ。十分考えられる」
女勇者「ああ…なるほど」
魔王「実際… お前の魔力が暴走したときに おかしいとはおもったんだ。明らかに魔力の与え方に不手際があったからな」
女勇者「そうなの?」
魔王「……俺も勇者など見たことはないが… 暴走するだけで魔王に致命的ダメージ与えられる勇者とかおかしい」
女勇者「いわれてみると、何そのチート勇者」
魔王「今のお前だ」
女勇者「そうでした」テヘ
175 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:41:25.58 ID:ojA/fmKu0
神「……その娘、本当に勇者なのか…? ありえない」
魔王「疑いたくなる気持ちはわかる」
女勇者「ひどいな! 私は勇者だよ! 私も最初は疑ってたけど、今では自分でそうだってわかるよ!」
魔王「…そうだな。俺も…今は自分が魔王だと、ようやく実感できるようになった」
神「だが、勇者など産まれるわけがない!」
女勇者「だからそれは、女神が勝手に指定して勇者として…
神「そうではない!」
神「勇者は、神から力をあたえられるから勇者になるわけではない…最初から、勇者である必要があるんだ!」
女勇者「……え?」
176 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:42:15.41 ID:ojA/fmKu0
神「だから…お前が勇者であるわけがない…」
魔王「どういうことだ」
神「…勇者が生まれるはずはないんだ」
神「勇者は今も…空の国に在り続けているのだから」
女勇者「え!? 勇者が… ここに、いる?」
魔王「どういうことだ…? 勇者は複数存在するのか?」
神「そんなわけ、あるはずが……!」 ハッ!
神「………っ、まさか」
ダッ!
魔王「! おい、何処にいく!」
神「………!!」
シュタタタタ…!!
魔王「……ちっ。追うぞ!!」
女勇者「う、うん!」
177 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:42:52.16 ID:ojA/fmKu0
:::::::::::::::::::::::
大宮殿 最奥 夏の庭
神「………」ジッ
タタタ…
魔王「…居た! あそこだ…… あの庭の中心!」
女勇者「あんなところで、何を…?」
タタタ…
魔王「……おい、神。一体、何が…」
神「………やっぱり、ちゃんと… ここにいる…?」ジッ
女勇者「……神様?」
神「………」
178 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:43:30.56 ID:ojA/fmKu0
魔王「それは… 木、か?」
神「……ああ。見ての通りだ」
ヒュォ…
女勇者「あ、風が… それに、この匂い…」
魔王「匂い? …ああ、何やら甘い匂いがするな。 その木の、花の香か」
女勇者「さっき… この匂いがしたよ。風が吹いて… そう、それで…」
女勇者「そうだ。それで… もうひとつの違和感に、気付いたんだっけ…」
神「……おまえなのか?」ソッ
木 ……
女勇者「…ねぇ神様、その木は 一体?」
神「………この木は… 彼女は… 」
女勇者(彼女?)
神「目覚める前に、俺が殺してしまった… "勇者"だ」
179 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:44:41.45 ID:ojA/fmKu0
女勇者「なっ!?」
魔王「神が…勇者を殺した!?」
女勇者「ちょ、ちょっとまって? 勇者ってヒトに限るわけではないの!?」
魔王「確かにそうだ… さすがに 木が勇者だなどと言われても…」
神「…木に変えたんだ。元々は、美しい娘だった…艶やかな王女だった。勇者であることを知らなかった」
魔王「……ちょ、待て」
女勇者「意味がわからない」
魔王「展開がついていけない」
女勇者&魔王「「………三行で頼む」」
神「お前ら、神の人生を舐めんなよ?」
180 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:45:15.94 ID:ojA/fmKu0
:::::::::::::::::::::
大宮殿 “夏の庵”(夏の庭に面する部屋)
コト
神「粗茶だが、飲むといい… とてもじゃないが 今は争う気になれない。ひとまず休戦させて欲しい」
魔王「……で。何故、座敷に座っているのだ 俺たちは」
女勇者「なんか初めて魔王城に行った時のこと思い出す」
魔王「……」
女勇者「あー… いや、まあ。ほら、女神の家なんだしさ? 一応 前進ってコトで…」
魔王「奪いにきたんだぞ? 意気込みはどうしてくれる?」
女勇者「うん、わかるよその理不尽さ。多分、これも世界の理がおかしいせいじゃないかなー…」ハハハ
魔王「またそれか…」ハァ
181 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:46:01.76 ID:ojA/fmKu0
神「……」
女勇者「と、とにかく… 休戦を申し込むってコトは 少しは勇者について話す気があるんだよね?」
神「……」
魔王「話す気がなく、そうしてぼんやりと庭木を見つめているだけだというのなら… その間に、女神はもらっていく」
女勇者「魔王」
魔王「俺はそのために来た。穏便にすんでよかろう… 世界の理を直すというのならお前は好きにするといい」
神「……先ほどから言っていた、その理とは 何のことだ」
女勇者「あ… えっと それは」
182 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:46:32.40 ID:ojA/fmKu0
魔王「…こいつの妄言だ」
女勇者「妄言じゃないってば! 」
神「……話せ。内容によっては、勇者についても話そう」
女勇者「……」
女勇者「…証拠はなくて… 私の頭の中の空論なの。だけど体感で理解できる、そんな“世界の仕組み”のこと…です」
神「世界の…仕組み?」
女勇者「う。神様相手に世界の仕組みを話すとか…。釈迦に説法もいいとこだよ、緊張する」
神「……俺は太陽神で、創世の神ではない。気にするな」
女勇者「……そうなの?」
神「ああ」
女勇者「ん… じゃあ…。 聞いて」
183 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:47:18.74 ID:ojA/fmKu0
:::::::::::::::::::
私はそれから、自分の言葉や感覚でしか伝えられないことを
四苦八苦しながら言葉に代えていった
物事が進むにつれて伴う 不条理さや違和感
“自分らしさ”と“与えられている能力”のバランスの悪さ
“自分らしく、自分の役割を演じることで その不条理な違和感が消える”ということ…
歯車が噛み合わない理由は、うまく機能するために必要な役割の人物が揃っていなかったからではないか
『勇者が居ない』
それが、全ての均衡を崩し…
多くの事象に、不自然な影響をあたえているんじゃないか
……そしておそらく、勇者と対になるはずだった魔王が、一番の影響の受けていた…
だけれどそれは、私が勇者となることで解消したような気がした…
184 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:48:12.63 ID:ojA/fmKu0
だけど、まだ狂っている歯車がある
それはきっと、神様に影響を与える歯車
そうなんだ
私は話をしながら、新しく気がついたことがあった
魔王と勇者と 神と女神
その魔王つは、きっと2対同士の バラバラな二組ではなく…
魔王対の輪のように繋がっていた
魔王ー勇者ー神ー女神ー魔王ー勇者ー神ー女神……
感情、能力、行動、存在
それら全てを お互いがお互いを支えることで…抑えることで 成り立たせる
アクセルとブレーキのように “力”を正しく運用するための 必要機能
そうだ
何故、気づかなかったのだろう
だって、おかしいじゃないか
魔力を… 力を持つものならば、たやすく願いが叶ってしまう世界だなんて。
神や魔王や、勇者や女神みたいな 大きな力を持つものが… 好き放題に出来てしまう世界だなんて
そんな、これ以上に理不尽な世界な世界って 無い
185 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:48:54.25 ID:ojA/fmKu0
私が勇者としての役割を正しく演じることで ようやくこの世界の理は修復した
それが、違和感の消えた正体だったのだろう
そして、もうひとつ…しなければならない大事なことがある
直すだけじゃ、駄目だったんだ。あたりまえだ
動かさなくちゃいけない
壊れて止まった車を治しても、エンジンをかけなければ動き出せない
そのために必要なものがある
私は 神様の見つめる視線のその先を追う
一本の木は 風に揺れて甘い香りを届けた
女勇者「きっと。前の勇者が その鍵を握っているままなんだ」
186 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:49:38.36 ID:ojA/fmKu0
::::::::::::::::::::::
神「……」
魔王「……」
女勇者「どうかな、神様」
神「……力の均衡…存在の均衡。確かにいわれてみれば あって当然であろう」
女勇者「じゃあ 勇者のことも、教えてくれる…?」
神「……」
フワ… ヒュゥ……
女勇者「あ… 風が…。また、甘い匂いがするね」
ヒュゥ…ヒュゥ…
魔王「…ああ。いい匂いだ」
ヒュゥ ヒュゥ ヒュゥ
神「これは彼女の匂い。甘くて、優しく淡い… そんな女性だったのだ」
女勇者「神様」
神「…いいだろう。彼女のことを…勇者のことを教えてやろう」
187 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:50:13.69 ID:ojA/fmKu0
ヒュゥゥ! ビュゥゥ!!
女勇者「う、うん。ソレは嬉しいんだけど この匂いってさ 淡い…かな。 なんか若干 濃くない?」
ビュォォォ!!
魔王「…確かに。濃いというか…甘ったるすぎないか?」
ビュォォォォォォオォォ!! グォオオオオ!!
女勇者「っていうか! 風! 強すぎるでしょ!? なんなの一体!?」
ゴォォォォオ!!! メシメシメシ…ッ
魔王「なんだ急に!? いくらなんでもこんな強風…!」
神「! 木が、木が折れてしまう!!」
女勇者「えっ だってあれ、勇者さんなんじゃ…」
ヒュゴオオオオオオ! ブオオオオオオオ!!!!!
188 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:50:48.18 ID:ojA/fmKu0
魔王「! これは…もしや、魔力風!?」
神「な、まさか!? 誰が!?」
女勇者「〜〜〜き、決まってるでしょ!? こんっだけの甘い匂いをさせる魔力の持ち主なんて…!!」
神「!!」
魔王「まさか! 本当に、あの木が…!?」
女勇者「木になってしまった今、魔力風と匂いで ずっと何か伝えようとしていたんだわ…」
女勇者「そうなんでしょう!! 先代勇者!!」
ヒュゴォッ!!!! バキィィィ!!!
魔王「!! 木が、割れて…!」
神「なんてことだ!!」
189 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:51:14.86 ID:ojA/fmKu0
ドロ・・・ ドロリ……
神「…! 樹液が…!」
魔王「う… これは。 ひどく甘い、匂い、が… グッ」クラッ
女勇者「…っ 何コレ…? なんだか、ぼーっと… す、る…?」
ドサッ
魔王「勇者! っ、う… 徐々に…香を強められていて… 油断した、か…」
ドサッ
神「……姫… なんで…」フラッ…
ドサッ
『………………』
190 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:51:56.85 ID:ojA/fmKu0
::::::::::::::::::::
…… 甘い香のする場所 ……
女勇者「う… ここ、は・・・?」
魔王「……なんだ? 何か、強い魔力の気配が充満している…?」
神「……この匂い…」
?「あら 余計なヒトを巻き込んじゃったかしら」
魔王「! 誰だ!?」
神「姫!!」
女勇者「えっ 姫って何!? どーゆーこと!?」
姫勇者「そちらの二人、はじめまして。あたしはペルシア王の娘姫…そして “先代勇者”よ」
女勇者「姫…?」
姫勇者「そうよ」フフン
191 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/25(木) 11:52:33.97 ID:ojA/fmKu0
女勇者「カジテツ?」
姫勇者「は?」
神「彼女は……正真正銘の姫君だ… 態度を改めよ」
魔王「な…」
女勇者「え、ええ? お姫様相手にどういう態度とればいいかなんてわかんないよ?」
神「ふん、小娘が。道理で礼儀のひとつもなっていないと言うもの。この我の前における数々の無礼についても…
姫勇者「アポロンうざい。 何その喋り方?」
神「」
女勇者「う、うわあ」
魔王「ど、同情くらいならしてやってもいいぞ…」