Part5
91 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:07:56.65 ID:G0Bbn00r0
魔王「……まったく。言っている事とやっている事が無茶苦茶だな。危うく、泣きも笑いもできなくなるような事をしておいて」
女勇者「魔王…」
魔王「………こんな景色を俺に見せた所で、帳消しにできるとは思うなよ」
女勇者「え?」
魔王「……やはり、美しいな。この光…愛おしい」
女勇者「……あ… この光… そっか… 何かに似てると思ったら」
魔王「……」
女勇者「月明かり… まるで、すぐ近くにまで月が降りてきたみたい・・・!」
魔王「……ああ。女神の加護をうけた魔力だ…」
魔王「それを光に変えれば、それはただの光ではなく月明かりになる…。 考えたものだな」
女勇者「え? なんで? なんで月明かりになるの?」キョトン
魔王「」
女勇者「? すごくおかしな顔になってるよ?」
92 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:09:16.32 ID:G0Bbn00r0
魔王「お前、俺の事を女神に聞いたくせに、女神のことは知らないのか…?」
女勇者「あ。そういえば、女神様のことって 神様の手下くらいにしか知らないや」
魔王「手下…って お前…」
女勇者「あー・・・ 女神様って なんなの?」
魔王「……女神は…」
魔王「月の化身。女神・アルテミス」
魔王「太陽神・アポロンと対をなす、空と地の世界の、2大守護神だ」
女勇者「……え? アレが…?」
93 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:11:06.18 ID:G0Bbn00r0
::::::::::::::::::::
その後
魔王城 魔王の私室
女勇者「ねえねえー 教えてよー」
魔王「……」グター
女勇者「女神様が月の化身ってことはさ、やっぱ魔王の言ってた『月を愛していたい』ってそういう意味?」ワクワク
魔王「……」グッタリ
女勇者「いやー、女神様が魔王のことを好きなのはわかってたけどさ。ほんとは魔王も女神様のこと好きなんだ?」ワクワク
魔王「……あのな、これでも死に体なんだ。今夜くらいは黙って寝かせてくれ」ハァ
女勇者「パンピー女子として、恋バナって目がなくって」
魔王「女勇者だろうが」ハァ
94 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:11:34.09 ID:G0Bbn00r0
女勇者「いいじゃんいいじゃん、ちょこっと聞かせてくれればいいってば」
魔王「聞かせるような事などない」
女勇者「このやりとりがエスカレートして、魔力が暴走しちゃったくらいなんだよ? 止まると思うの?」
魔王「」
女勇者「悶々として、また暴走したら困るし。ね? 聞かせてよ」
魔王「仮にも勇者ならば、世界崩壊を盾に魔王を脅迫するなっ!!」
女勇者「う」
魔王「ふん。わかったのならば反省しろ」
女勇者「……ごめんなさい」シュン
魔王「……む?」
95 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:12:14.21 ID:G0Bbn00r0
女勇者「……」ショボン
魔王「……」
女勇者「……ごめんね。抑えてもらうために、魔王に痛い思いさせちゃって…」
魔王「……自分でしたことだ、それは構わん」
女勇者「うん。……でも。心配だから… もう、黙ってるから。だから、もうすこしここで看病していっていい?」
魔王「……おまえ… それで、わざわざ俺の部屋までついてきたのか…?」
女勇者「……だめ?」
魔王「……」
女勇者「イヤだった…?」
魔王「……好きにしろと、最初にいってある」
女勇者「魔王」
96 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:13:01.26 ID:G0Bbn00r0
魔王「……それに お前の気配は・・・ 加護のせいか、月の魔力の気配が濃い。 嫌なはずが無い」
魔王「……空を見上げ、お前の気配を側に感じていると… まるで、月が隣に居るかのように錯覚しそうになる」
女勇者「…それって?」
魔王「……月は、月だ」
女勇者「……うん」
女勇者「今日は… 綺麗な満月だよ」
魔王「……ああ」
97 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:13:36.94 ID:G0Bbn00r0
…その日は、降り注ぐ月明かりの中で 魔王と話をし続けた
しばらくそうして過ごし、いつの間にか魔王は静かに眠りにおちた
私は眠る魔王に布団をかけて、部屋を出た
カーテンは引かなかった
眠る彼に 月明かりが降り注ぐ
女神が、優しく光を振り掛けているようだった
穏やかな眠りがありますように、暖かな夢が届きますように
そんな光を… 祈りを、振り掛けているように見えた
私の気配を、月と紛うと彼は言っていたけれど…
星空魔王、闇夜の魔王
眠る彼には、“本物の”月明かりは見えていないのだろうか
98 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:14:51.00 ID:G0Bbn00r0
::::::::::::::::::::::
魔王城 女勇者の部屋
女勇者「はい。ヒトの恋バナを聞いて、深夜だというのにモヤモヤMAXで眠れないのがこちらの勇者でございます」キリッ
女勇者「……って。何いってんだろ、私…」ハァ
女勇者(まあ… 病むのも仕方ないよねぇ。恋した相手が、人妻だったとわかったんじゃねぇ)
女勇者(しっかし、女神様も罪なヒトだなぁ。夫がいるのに、魔王にあんな態度取るとか)
女勇者(太陽神・アポロンかぁ… 月の女神・アルテミスの、対となる神様)
女勇者(神様から、奥様である女神様を 魔王が奪ったら…そりゃまあ大変なことになるよね)
女勇者(うっかりでも手を出してしまえば、神族戦争の始まりだもん)
女勇者(いつ争いになってもおかしくない関係っていうのは、そういうことだったんだ)
99 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:15:44.37 ID:G0Bbn00r0
女勇者(女神様と出会って、恋をして。自分が、しがない悪魔だからとずっと片思いを募らせて…)
女勇者(それでも我慢しきれなくて、ついに意を決して女神の住む場所に行ったら…)
女勇者(太陽神アポロンが出てきて、『女神は俺のものだ。二度と近づくな』と…言われたわけだ)
女勇者(女神様も、『神様、神様〜』って なにかにつけて神様を一番にするし。そのクセ魔王には気のあるそぶりをするし)
女勇者(そりゃ、諦めるにも辛いし、忘れるに忘れられないし? 地に堕ちるってなもんだよねぇ)ハハハ
女勇者(……うーん。なんかなぁ。普通の昼ドラ並には平凡な修羅場だよね)
女勇者(平凡な修羅場って意味不明だけど。なんかなぁ。やっぱり、中のヒトがいるんじゃないかなぁ)
女勇者(なんていうのかな。魔王と女神と神様って、そういうカンジの修羅場でいいわけ?)
女勇者(……いや、まあでも、実際にそうなっちゃってるわけだしなぁ)
女勇者(これ… どうすんの…? 救うも何も、魔王に女神様のこと忘れさせるくらいしかないじゃん…)
100 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:16:33.65 ID:G0Bbn00r0
女勇者「女神様も…もう、そんな問題ならさ。女勇者でもメイドでもなくて、弁護士か民事裁判官にでも頼めよ…もう…」ハァ
女勇者「疲れた。あと、なんかもうどうしようもなくてグッタリする。寝よう」モソモソ
ゴロン、バサッ
女勇者「………」
女勇者「……あれ? じゃぁ… なんで、勇者じゃなくちゃいけないんだろう…」
女勇者「何か… 間違ってる。何か… 何が…?」
女勇者「……あー… なんでこう、布団に入った瞬間にいろいろ思い浮かんじゃうんだよ〜…」
女勇者「……くぅぅっ 寝れないっ!!!」
女勇者「うあああああああああ 今夜は、徹夜だああああああ!!!!」
バサァッ!!!
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/23(火) 08:07:05.78 ID:HkSfljCxO
魔王&勇者乙
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/23(火) 09:38:48.47 ID:DJB+RpLxO
乙
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/23(火) 10:33:53.22 ID:Z6ZAiTlg0
乙
神も悪魔も総殴りにしてOHANASHIしてくれって事なのかねー?
104 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:11:44.02 ID:G0Bbn00r0
>>51-54
>>101-103 thx!
105 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:12:29.25 ID:G0Bbn00r0
::::::::::::::::::::
早朝
魔王城 魔王の私室
女勇者「おはよう、魔王」
魔王「……あ…? 寝てた…?」
女勇者「うん」
魔王「今… 何時だ…?」
女勇者「早朝の魔王時」
魔王「」
魔王「……ふざけてるのか…?」ハァ
106 :
↑訂正 ○4時 ×魔王時 ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:13:52.21 ID:G0Bbn00r0
女勇者「ねえ、魔王?」
魔王「なんだ… 昨夜の疲れと、寝おきで… なんだか、まだ…頭が働いて…」ゴシゴシ
女勇者「私と、恋愛でもしてみる?」
魔王「」
女勇者「無表情で固まるのやめてくれるかな」
魔王「」
女勇者「まあいいや、話続けるね」
魔王「」
女勇者「女神様と神様ってのは確かにお似合いだよ、それはもうしょうがない。早い者勝ちみたいなところはあるよ」
魔王「」
女勇者「でもさ、魔王と女勇者ってのも、結構お似合いだと思うんだよね」
魔王「」
107 :
↑訂正 ○4時 ×魔王時 ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:14:35.20 ID:G0Bbn00r0
女勇者「魔王、いいひとだし。すっごい危ない目にあってまで、私のこと助けてくれたし」
女勇者「愛とかじゃないけど、普通に私 魔王のことは好きだよ?」
魔王「」
女勇者「月を思って星に恋するより、よほど健全だと思うんだよね。だからさ、私と恋をしてみようよ」
魔王「」
女勇者「どう、魔王?」
魔王「」
女勇者「魔王?」
魔王「」
女勇者「おーーーーーい!!! 魔王ーーー!! 帰ってこーーーい!!!!」
魔王「はっ!?」
108 :
↑訂正消し忘れた ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:15:42.51 ID:G0Bbn00r0
女勇者「聞いてた?」
魔王「たぶん!」
女勇者「で、どう?」
魔王「どうもこうもなく、意味がわからない!」
女勇者「えー」
魔王「第一! そんなの無理に決まってるだろう!?」
女勇者「なんで? いいじゃん、魔王のこと好きだよ? 私じゃダメ? 好みじゃない?」
魔王「好ましくなければ毎夜そばに置いておけるか!」
女勇者「いやん//」
魔王「そうじゃなくてだな?!」
女勇者「そうじゃなくて?」
魔王「俺が一体、何百年の間 アイツのことだけ愛してると思ってるんだ! 今更お前になんかに切り替えられるわけ無いだろう!!」
女勇者「何百年…」
109 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:16:23.54 ID:G0Bbn00r0
魔王「第一、他の女に切り替えられるならとっくにそうしてる!! 出来ないから星を愛することにしたんだ!!」
女勇者「代わりってこと?」
魔王「そうだ!! あいつの代わりに… あいつを愛する訳にいかないから! 星を愛することに決めたんだ!!!」
「…………あ、あの… こんにちはー…?」
女勇者・魔王「「!?」」
女神「………あ、えっと。朝早くすみません。何度も、呼び鈴を押したのですが…」
女勇者「女神様… ほんっとに早いね?」
女神「そ、その。昨夜、女勇者の加護の力が使われた気配があったので、心配で…」
女勇者「ああ…それで」
110 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:17:09.50 ID:G0Bbn00r0
女神「お、お二人の声は聞こえてたので…中にいらっしゃるんだと思って、その…」
魔王「き…聞いていたのか?」
女神「そ、その。どうも魔王の強めの声色だったので… 何かあったのかと思って、勝手にここまで…」
女勇者「魔王、なんか興奮しちゃってたもんねえ」
女神「き、聞くつもりがあったわけでは…で、でもその」
魔王「」
女勇者「どのあたりから聞いてたの?」
女神「………そ、その。女勇者の、『魔王のこと、好きだよ? いいじゃん』…の、あたりから…」
女勇者「ほぼほぼ全部だよね、それ」
魔王「」
111 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:17:38.13 ID:G0Bbn00r0
女勇者「魔王、かえってこーい?」
魔王「」
女勇者「ダメだね、何百年も隠してた想いを派手に暴露したショックで完全に死んでる」
女神「死っ!? 魔王、ダメですよ!? 死なないでくださぁぁい!!」ギューー!
女勇者「……女神様、ほんとにヒドイよねー」ハァ
女神「え、えええ!?」
その後、魔王は
意識が戻ると逃げ出そうとして私にみぞおちアッパーをくらわされオチて、
気がつくと女神に看病をされていることでまた意識を飛ばし、
また目覚めては逃亡しようとして… という流れを 散々くりかえしてくれた
112 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:18:32.76 ID:G0Bbn00r0
:::::::::::::::::::
魔王城 魔王の私室
女勇者「ふ。最終手段だよ、こうなったら」
魔王「目が覚めたら、小人の国に辿り着いたガリバーのようになっていた」
女神「ま、魔王を床に鎖を打ち込んで拘束するなんて…」オロオロ
女勇者「だって、目が覚めるたびに逃げ出すのをアッパーで昏倒させてたんじゃ、流石にそのうち内臓痛めて死んじゃうんだよ? いいの?」
女神「……やむをえない最終手段です…許してくださいね、魔王」
魔王「この鎖が、明らかに女神の魔力で作られた特別なものだとわかってしまうんだが」
女勇者「まぁまぁ」
女神「あの…」
魔王「……」プイ
113 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:19:18.16 ID:G0Bbn00r0
女勇者「魔王」
魔王「……」
女神「……あの」
魔王「……帰れ」
女神「っ」
魔王「帰れ、と言っている」
女神「〜〜〜〜〜っ」
タタタタタ……!
女勇者「あっ、女神様!?」
魔王「……」
114 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:20:02.62 ID:G0Bbn00r0
女勇者「魔王!! なんで!?」
魔王「……仕方ないだろう。とても冷静でいられる気分でもない、余計なことを言うよりはマシだ…」
『あいつは渡せない。…俺のものだからな。わかったら二度と女神に近付くな、近づけばどうなるか…わかるだろう?』
魔王「…いつだったか 神に言われた言葉は重かった。本気なのがわかっている」
女勇者「……」
魔王「ふむ。女神が遠くまで行ったようだ、これでようやく鎖が解けるな」カチャ・・・
女勇者「魔王… 神様のこと、憎い?」
魔王「…いや。前にも言っただろう… 嫌いだとか、憎いだとか そういうんじゃないんだ。難しい」
女勇者「……前に・・・ そっか、神様は、太陽…」
魔王「…あいつがいなければ… 女神が、困る。嘆き悲しむだろう」
女勇者「魔王…」
115 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 13:21:37.28 ID:G0Bbn00r0
魔王「それに… 神に、近づくなといわれたときに…俺は“羨ましい”と思ってしまったんだ。妬みだなんて、最初から負けを認めているようなものだ」
女勇者「羨ましい…?」
魔王「…羨ましいとおもった。せめて神に負けない力があれば…奪えたのだろうかと。あいつは俺のものになっていた可能性もあったのだろうかと」
魔王「そう血迷い、願ってしまったんだ…。 だから俺は…悪魔は 魔王になった」
女勇者「魔王になるって… どうやって…?」
魔王「…魔力を、使った」
女勇者「魔力を・・・?」
魔王「強く、ただがむしゃらに。力が欲しいと願った」
魔王「明確な目的を持たない魔力は暴走し… この地の国を、吹き荒らした」
女勇者「!」