Part4
70 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:49:42.44 ID:G0Bbn00r0
女勇者「わー、魔王と同じ反応だぁ」
女神「ちちち、ち ちがいまっ」ワタワタ
女勇者「動揺すると、かえって肯定するようなものですよ? 女神様」
女神「ち、違います! それに…!」
女勇者「それに? あれですか、やっぱり魔王みたいに 憎みあうべき関係の存在同士です、とか言っちゃいますか?」
女神「!? 魔王と憎みあうなんて、絶対に嫌です!!」
女勇者「…………へぇ〜?」ニヤニヤ
女神「はっ!?」
女勇者「やっぱり、本当は魔王の事好きなんでしょう、女神様」
女勇者「救いたいとか言って私なんかの手を借りるくらい必死なわけですし?」
女神「ですから! そのような邪な考えで魔王をお救いしたいと考えているわけではありません! それに
女勇者「それに?」ズズイ!
女神「う……」
71 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:50:19.20 ID:G0Bbn00r0
女神「それに… 」
女神「……彼には、既に愛するものがいるそうですから」
女勇者「あ、それは知ってたんですか。なんだ、私だけが知ってる情報なのかと思いました」
女神「女勇者ひどいです! 知っててけしかけるとか本当にひどい!」
女勇者「でも女神様だって、そんな話をするくらいには親しいんじゃないですか?」
女神「以前… 『愛している者がいるから、ここに居たいんだ』と… そういって彼は、魔王城に一人住むことを私に説得したのですよ」
女勇者「…え? ここって、元々が魔王の城じゃないの? じゃあその前はどこに住んでいたの?」
女神「それは…」
女勇者「……それは?」
女神「……その。あまり個人的な話を勝手にするわけには…」
女勇者「……」
72 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:50:46.89 ID:G0Bbn00r0
女勇者「女神様」ジッ
女勇者「魔王と話をするにも、よくわかんないことがいっぱいで困るんですよね」
女勇者「世の中には、知らないせいで余計なことを言って 相手を傷つけてしまうことも沢山あるんですよ?」
女勇者「というより… 話をする中で、怒らせたり癇に障ることをいってしまって、魔王と私は余計に関係をこじらせた気がするんですよ」
女勇者「魔王を救いたいというのなら。協力してください」
女神「女勇者……」
女勇者「魔王のこと、教えてくれますよね?」
女神「……はい」
73 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:51:50.84 ID:G0Bbn00r0
:::::::::::::::::::
『魔王は、魔王城にくるまではどこに居たの?』
ーー空の国にいました
『え。それって…?』
ーー私や、神様の住む世界です
『魔王なのに?』
ーー彼は元々、悪魔でしたから
ーー空の国にはさまざまな生物が居ます。天使、悪魔、神、女神、閻魔や鬼、妖怪や幻獣…
ーーこの、地の国で忌憚とされる生き物の多くも、空の国の者達でしょう
『そんな…御伽噺みたいな国が…というか、悪魔って…』
74 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:52:33.43 ID:G0Bbn00r0
ーー私と魔王… いえ、悪魔は ちょっとした偶然をきっかけに知り合い、仲良くなりました
『友達だったんだ…』
ーーどう、なのでしょう。そう思っているのは私だけなのかもしれないです…
ーー魔王は私のことを、はじめから嫌っていたのかもしれません
『どうして?』
ーーある日…いつもどおりに声をかけると。突然、とても不機嫌そうに怒鳴られて。
ーー……『来るな』、『俺に近づくな』と
ーー『おまえなんか、もう見たくもないんだ』と… 言われたのです
『そんな…』
ーーそうして、その日の夜をまたぬうちに。悪魔は 地の国に一人で堕ちていってしまいました…
75 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:53:14.54 ID:G0Bbn00r0
『そ、それで…? 地の国に堕ちるっていうのは、もう帰れないようなものなの?』
ーーいいえ。望めば還れます。ただ、彼はそれを望まない
ーーだから…私が戻ってきて欲しいと思ったところで、無理につれてもいけないのです
『……』
ーーそうして、しばらくの後。私が彼を心配して、地の国へ降りてくることが出来た時には、もう…
ーー悪魔は、その身を闇に変えて。孤独を纏う、魔王になっていました
『孤独を…纏う、魔王…』
ーーただ、一言。『愛している者がいるから、ここに居たいんだ』と私に言って…
ーー彼は、それ以来・・・ 地の国の魔王として… 何百年もここに一人住み続けているのです…
76 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:54:03.58 ID:G0Bbn00r0
:::::::::::::::::::::::
魔王城 女勇者の私室
女勇者(……結局、あれ以上のことは聞けなかった。女神様自身が知らないっていうのもあるけれど、それ以上に時間が無くて)
『すみません、女勇者… 神様にすぐにもどるように言われているのです』
女勇者(神様、ね。女神様に仕事をずいぶんいっぱい押し付けてるみたいだけど…)
女勇者(女神様もほいほい受け持つものだから、結局は時間に終われてばかり)
女勇者(魔王に会いたそうにしてるわけに、来てもすぐに 神様が〜〜って帰っちゃうわけだ)
女勇者(やっぱり、自分で魔王に聞くしかないかな。またぎぎの情報の信憑性なんて、いくら女神様でも あやしいしね)
女勇者(口、聞いてくれない以上… なにか喋りたくなるようなこと言わないとなぁ)
ガタ、バタン…
女勇者「ナイス! 魔王、帰ってきた!」
タタタタタ…
77 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:54:46.90 ID:G0Bbn00r0
:::::::::::::::::
魔王城 エントランス
女勇者「魔王! おかえりなさい」
魔王「……」
女勇者(やっぱり、相変わらずダンマリか…)
女勇者「さっきね、女神様がきてたんだよ」
魔王「……」
女勇者「魔王って、元々は悪魔だったんだってね?」
魔王「」ピク
女勇者(よし、反応あった!)
女勇者「女神様がね、魔王に 空の国に帰ってきて欲しそうだったな〜」
魔王「……」
女勇者「……ちっ、頑固な」ボソ
78 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:55:43.22 ID:G0Bbn00r0
魔王「……」クル
スタスタスタ…
女勇者「! 魔王!」
魔王「……」
スタスタ…
女勇者「魔王。……なんで、女神様のことを避けるの?」
魔王「」ピタ
女勇者「女神様… 今日、魔王が出かけたのを見て『避けられた』っていってた」
女勇者「会いに来ても、最後には魔王に『帰れ』って言われてしまうって」
女勇者「……私が、魔王に 帰れって言われてないのを知って 『いいな』って言ってたよ?」
魔王「…え?」
女勇者(よしっ、反応大! このまま一気に…!)
79 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:56:33.88 ID:G0Bbn00r0
女勇者「本当だよー? あとついでに、女神様に『魔王のこと好きなの?』って聞いといたよー」
魔王「はっ? ばっ…!」
女勇者「女神様ねー、そうやって聞かれてぇー…
魔王「…………」ウズ
女勇者「…………」
魔王「…………」ソワ…
女勇者「…聞きたい?」ニヤ
魔王「」イラ
クルッ スタタタタ
女勇者「うぉっと! 焦らしすぎた!?」
タタタッ ガシ!
魔王「!」
80 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:57:56.02 ID:G0Bbn00r0
女勇者「怒らないでよー! ごめんって! ね?」ウインクッ!
魔王「はぁ……なんなんだ、お前は」
女勇者「いやぁだってさー、女の子の話をそうそう簡単に漏らすわけにもいかないんだなぁ〜、コレが」
魔王「俺の話は、勝手に聞いたようではないか」
女勇者「うん。女神様は『勝手に話すわけにはいかない』とかいってたけど、そこは強引に聞きだしたよー」
魔王「な」
女勇者「言ったでしょ? 勇者って、勝手に引き出しを開けて持ってっちゃうんだって。 気をつけなくちゃね?」ニッコリ
魔王「なんの話だ…」
女勇者「ココロの、引き出しの話だよ」
女勇者「勝手に開けて…調べさせてさせてもらいます」ジッ
魔王「な…」
81 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:58:41.18 ID:G0Bbn00r0
女勇者「気にしないんだよね? ……調べていいって言ったのは魔王だよ?」
魔王「……」
魔王「屁理屈を。不審ならば追い出すとも言った筈だ」
女勇者「不審じゃないよ。私は、魔王も女神様も、なんとかしてあげたいだけ」
女勇者「それにね、女神様が言ってたの」
魔王「……何をだ」
女勇者「… 『勇者は、万物を救いに導く運命なんだ』って…」
魔王「救いなど…」
女勇者「求めてるはず。魔王は星に祈るほどだもん」
魔王「……」
女勇者「聞かせて。あなたの話を」ジッ
魔王「……」
女勇者「……聞かせて」
82 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:00:04.94 ID:G0Bbn00r0
魔王「……誰が、おまえになど」
女勇者「〜〜〜〜〜〜〜っ!! 頑固者!!」
魔王「な」
女勇者「根暗!」
魔王「おい」
女勇者「星を愛してるとか、月を愛してるとか、ロマンチック魔王!!!」
魔王「誰がロマンチックだ! 嫌な言い方をするな!!」
女勇者「じゃあ、女々しい魔王!!」
魔王「う」
女勇者「聞かせなさい!!」ギロッ!
魔王「だから、どうしてお前なんかにそんなこと…!!」
女勇者「いいから!! もう、いい加減にいいいいい…」
女勇者「言うことを、聞けえええええええええええ!!」
ブワッ!!
83 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:00:51.31 ID:G0Bbn00r0
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
魔王「っ!」
女勇者「う、うえぇ!? な、なにっ!?」アワワ
魔王「馬鹿か! 興奮して魔力を開放するヤツがどこにいる!!!」
ブオオオオオオオオ!!!
女勇者「ま、魔力なんて 私 知らないよ!」
魔王「ちっ、勇者ならば女神の加護を受けたのであろう!! ソレだ!!」
ブォオオ! ゴオオオオオオオオオオオオ!!!!!
女勇者「そそそ、そうなの!? どうすればいいの、この暴風!?」
84 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:01:40.48 ID:G0Bbn00r0
魔王「コントロールしろ!! 落ち着くんだ! 暴走も過ぎれば、お前の精神まで吸い尽くされるぞ!」
女勇者「こ、コントロールっていったって…!!」
ブオオオオ! ゴオオオオオオオ!!!!
魔王「ちっ…! 面倒くさい事を…!!!!!」グッ
女勇者「ひゃっ!? ままま、魔王!?」
魔王「黙れ! 気を落ち着かせる努力をしろ!!」ギュウウ!!
女勇者「だだだ、抱き、抱きしめっ!?」
魔王「俺の魔力で外から流出を押さえ込む! その間に開放を止めるんだ!!」
女勇者「止めるって言ったって、どうやったら…!!」
魔王「知るか!! 魔力なんて個人差の激しいもの、コントロールの感覚など人それぞれだ!!」
魔王「自分で開放したんだから、自分で蓋をしめるしかない!!」
女勇者「そ、そんなぁぁぁぁぁ!?」
85 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:03:00.16 ID:G0Bbn00r0
ブオオオオオオ! ゴオオオオオオオ!!
ブワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
魔王「っ、くそ…!! 魔力が全開で駄々漏れしているようではないか…!」
女勇者「とまれっ、とまれーーー とまれーーー!?!?」
魔王「こんなにも過ぎた力を、魔力も知らぬ娘に与えるなんて……!」グググ…!!
女勇者「! 魔王、口から血が…!?」
魔王「くっ! いいから… 早く、押さえろ…!!」
女勇者「でもっ!」
魔王「純粋な魔力を身体に打ち込まれてるようなもんなんだ…! 押さえてくれればそれで終わる!!」
女勇者「だ、だって! どうやって押さえられるかわかんないもん!!」
魔王「いいからやるんだ!!」
86 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:03:55.41 ID:G0Bbn00r0
女勇者「〜〜っ魔王!! 私のことはいいから、魔王は離れて、この暴風のあたらない安全な場所に…!
魔王「馬鹿を言うな!!」
女勇者「」ビクッ
魔王「魔王の魔力で押さえ込んでも、押さえきれていないほど暴走している魔力風なんだぞ!?」
女勇者「え…?」
魔王「俺が、抑えるのをやめたら… 地の国が、一瞬で吹き飛ぶぞ…!!!!」
女勇者「そ、そんな……!?」
魔王「ぐっ…」ゲホ
女勇者「魔王!!」
魔王「早く、しろ…! 破壊神にでも、なるつもりか、女勇者…!!」
女勇者「!!」
87 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:04:51.59 ID:G0Bbn00r0
魔王「俺も…魔力なんて、ろくに使った事が…無……」グラッ
女勇者「魔王!? しっかりして!! 血が…!!」
魔王「……っ」ギュウウ…!
女勇者「や、やだよ。こんな、ワケわかんないまま暴走して…みんな死んじゃったりしたら・・・!」
魔王「……っっ」
女勇者「やだよ…! そんなことになったら…!」
女勇者「だって。だって、私は… 私は!!」
『月を… 愛していたい』
女勇者「願いを… 叶えてあげたいだけなんだよおおおおおおお!!」
バシュンッ!
女勇者「!!!」
88 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:05:31.01 ID:G0Bbn00r0
シュオオオオオオッ… ヒュオオ… シュワァァ…
女勇者「とま、った…?」
魔王「……」グラッ
女勇者「魔王!!」ガシッ
魔王「……ようやく、止めたか… 遅い…」グタ…
女勇者「ご、ごめ・・・ でも、なんで…?」
シュワ…
キラキラキラ……
女勇者「え… 何、これ…。 すごい。 光が・・・どんどん降ってくる…?」
魔王「……放出された魔力、だ…」
89 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:06:04.97 ID:G0Bbn00r0
女勇者「すごい… 外まで、ずっと…! 夜なのに、すごく明るい! 見て、魔王!!」
魔王「それだけ魔力が漏れていたってことだ・・・この光の全て、お前の持っていた魔力なんだぞ…」
女勇者「え。 こ、これ 放っておいても大丈夫!?」
魔王「ああ… 大丈夫だろう。暴走は止まっているのだから」
女勇者「そ、そっか… よかったぁぁ…」ヘナヘナ
魔王「……」グタリ
女勇者「でも… なんで止まったんだろう。なんであの暴風が光に…?」
魔王「……本当に、魔力のことを知らないんだな」
女勇者「さっぱり。むしろ、魔力って言葉すら聴きなれないよ」
魔王「」
女勇者「……これ… どうなってるのか、教えてくれる・・・?」
90 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 06:07:14.76 ID:G0Bbn00r0
魔王「……魔力は、高密度のエネルギー・・・ ただそれだけの、純粋な“力”だ。 」
女勇者「力…」
魔王「目的を持たない力は、暴走すればただ振るわれるだけの“暴力”だ」
女勇者「……あの、暴風のことね」
魔王「ああ。お前の場合は、その力を抑えるのではなく、流れる道を作ったんだろう」
女勇者「道…?」
魔王「……一度、暴走を始めた魔力に目的を持たせて、コントロールしたのだ」
女勇者「目的、って」
魔王「……自分で言っていただろう。覚えていないのか」
女勇者「……」
『願いを… 叶えてあげたいだけなんだよおおおおおおお!!』
女勇者「あ…」