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女勇者「……『星空魔王』?」
Part3


44 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:38:16.99 ID:m25dPKqi0
『放っておいて大丈夫だから、星がいいの…?』
ーー星空だけはそこにある。自分で光り続けている。朝日と共に見えなくなっても、雲に姿を隠したとしても
ーーそこに在り続けてくれる。放っておいても大丈夫なのだと、信じられるから
ーーだから、俺は星を愛することに決めたんだよ
『……決めた…』
ーーああ。俺は、星を愛してるんだ
『………』

45 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:40:17.60 ID:m25dPKqi0
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魔王城 女勇者の部屋
女勇者「なんて、魔王は言ってたけど……」
女勇者「星空魔王っていうか、ロマンチック魔王…?」ボンヤリ
女勇者「こんな私が女勇者っていうのも信じられないけど、あの魔王が魔王だってのも相当に信じられないよね…」
女勇者「女神様も、女神ってのがちょっと怪しいかんじするけど」ハァ
ゴロン…
女勇者「……まあ、現実ってそんなもんなのかもね。役職のイメージどおりの人物像なんて、そうそう居ないもんなのかも」
女勇者「……星を愛する魔王、かぁ…」
女勇者「魔王を、救ってほしいって言ってたっけ、女神様…」
女勇者「魔王は、星空をみてると癒されるって言ってた…それならそれでいい気もするけど」

46 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:43:22.72 ID:m25dPKqi0
女勇者「あれ? まてよ?」
女勇者「癒されるって事は…傷ついてる…ってことなのかな?」
女勇者「んー… 確かに星を、あんなに愛しそうな顔をして 愛してるなんていう魔王は病んでるかもしんない」
女勇者「…星の話をしている魔王…少し悲しそうにも見えたしなぁ…」
女勇者「でも… なんだろう。この違和感…」
『俺は、星を愛してるんだ』
女勇者「……あの、魔王の顔は… 愛しさって言うよりも…」
女勇者「………」
女勇者「……やっぱり、よくわかんないや…」

47 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:49:37.66 ID:m25dPKqi0
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翌日 魔王城 食堂
女勇者「ねえ、星が欲しい?」
魔王「……つまらぬ駄洒落はやめてくれ」
女勇者「え? あ、いやいやいや ホシがホシい?みたいな話じゃなくて」
魔王「そのままじゃないか」
女勇者「うーん。いや、欲しいのかなって思って…ほんとに、それだけ」
魔王「……いらない」

48 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:50:18.33 ID:m25dPKqi0
女勇者「だって、愛してるんでしょう?」
魔王「そこにあれば、いいんだ」
女勇者「魔王なんだし。なんかさ、強欲に『出来るものなら手に入れたいな、ククク』とか」
魔王「ない。いらない」
女勇者「えー? 本当にー? でも本当は欲しいとか思ってないの?」
ガタッ!! バンッ!
魔王「しつこい! いらぬといったらいらないのだ!!! 俺には必要ない!!!」
女勇者「」ビクッ
魔王「あ……」

49 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:50:48.71 ID:m25dPKqi0
女勇者「あ、えっと… ごめ」
魔王「……っ」
女勇者「……魔王…?」
魔王「いらないんだ。本当に… 俺には、必要ない」クルッ
カツンカツンカツン…! 
女勇者「……必要ない、って… いらないって…」
女勇者「だって… 愛してるんじゃないの…?」

50 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:54:04.68 ID:m25dPKqi0
中断 続きは明日 >>25-26 thx

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/22(月) 21:20:31.06 ID:kVtb4D8c0

こういう魔王は初めて見た

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/22(月) 22:11:04.50 ID:V/gnkh04O
素敵!

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/22(月) 22:36:19.08 ID:IqO9oUecO

楽しみにしてる

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/22(月) 23:07:16.21 ID:xKglpAG5O


55 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:38:34.50 ID:G0Bbn00r0
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魔王城 魔王の私室
女勇者(あれから、さらに数日…)
女勇者(魔王は、今まで以上に部屋に篭って、空ばかり見ている)
女勇者(夜だけじゃなくて、昼間も、曇りの日も)
女勇者(声をかけても、口をきいてくれなくなってしまった)
女勇者(謝るきっかけを探して、私はなんとなく こうして黙って魔王のそばにいる)
女勇者(持ってきた紅茶を手渡すと、受け取って飲んでくれる)
女勇者(時々、私の顔を見ることもある。相変わらず、黙ったままで)
女勇者(私が話しかけようとしたり…しなくても、しばらくするとまた空を見てしまうけれど)
女勇者(どうしようもなくて、私も空を見ている事が多くなった)

56 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:39:34.08 ID:G0Bbn00r0
女勇者(こうやって魔王の横に並んで、星空をみあげて、何時間も過ぎていたこともあった)
女勇者(そのうちに、私も『星空勇者』なんていわれてしまうのかもしれない)
女勇者(でも)
女勇者「星を見てると… 今日みたいに明るい星空だと、祈りが届くような気がする。願いをかけたくなるよね…」
魔王「……」ピク
女勇者「一度くらい…ちゃんと、祈ってみようかな」
魔王「……」
女勇者「……お星様…」
女勇者(ほんのすこし謝りたいだけ。魔王の為にどうしていいのかわからないけれど。魔王を救って欲しいと、あの女神様は私に頼んだから)
女勇者(だからどうか、ほんの少しでいいから。私のこのぎこちなく痛む心から、願います。魔王を、救ってあげたいです)
女勇者「どうか。彼に穏やかな心を」

57 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:40:16.54 ID:G0Bbn00r0
魔王「……」
女勇者「……届いたかなぁ…」
魔王「…さあな」
女勇者「魔王…!」 
魔王「ふん」
女勇者「えへへ、届いた! ようやく、口きいてくれたね!」ニコッ
魔王「……祈りたくなる気持ちは、わからないでもないからな。叶うのならば、良いともおもう」
女勇者「ねえ。魔王はどんなことを、祈るの?」
魔王「……この想いが届けばよいと。願いをかける」
女勇者「もしかして…夜の間、星を見て。そう祈っていたの?」
魔王「あの光が見える内に あの光に届けたかった願いをかける」
女勇者「届けたかった…」

58 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:41:00.79 ID:G0Bbn00r0
女勇者「それは、つまり… 届かなかった? 想いが、届かなかった…?」
魔王「……」
女勇者「どんな想いなのか。聞いてもいい?」
魔王「……そんなこと……」
女勇者「声に出さなくちゃ…もしかしたら 星も聞こえないかもしれないよ」
魔王「……」
女勇者「……私は… 口に出したら、叶ったよ。叶えてくれたよ」
魔王「…星がかなえたわけではない。ただの俺のきまぐれだ」
女勇者「それでも・・・口に出せば…。 変わることも、あるかもしれないよ?」
魔王「………」
女勇者「……」

59 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:41:59.08 ID:G0Bbn00r0
魔王「……」
女勇者「……」
魔王「…月を…」
女勇者「……?」
魔王「愛していたい…」
女勇者「……月、を…?」
魔王「……」
女勇者「……?」

60 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:42:29.09 ID:G0Bbn00r0
それから魔王は、本当に口を開かなくなってしまった
まるで… 余計なことを、間違って口に出してしまわないようにするようだった
魔王はただ、いつも いつまでも…空だけを見つめていた
私は
私には、どうしていいかわからなかった
私にできることは、せめて変わらずに過ごすことだけだった
朝になれば朝食を用意し 片づけをし、散歩をし、お風呂でくつろいで
夜になれば、温かな飲み物を持って魔王の部屋に行き 窓辺に立って、星空を見上げた
魔王の機嫌が悪そうなときも
魔王が眠ってしまっているときも
共に横に並んで、星を見上げているときも
私自身が、本当にこのままでいいのかどうか悩んで落ち込んでいるときでさえ
毎日、何があっても変わらないでいることだけを繰り返した
魔王が星に望んだようにすることしか、わからなかった
私はただ、そこに変わらず在り続けることしか… できなかったんだ

61 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:43:36.32 ID:G0Bbn00r0
::::::::::::::::::::::::
1ヵ月後 
魔王城 城門
ピンポーン♪
女勇者「はーい 今でまーす!」
バタバタ…! 
女勇者「どちらさまですかぁー」
ガチャ
女神「こんにちは、女神です」ニッコリ
女勇者「」
バタン

62 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:44:13.01 ID:G0Bbn00r0
<ちょっ、まって! なんでです? あけてぇ!
トントン! トントン!
女勇者(しまった、思わずドアしめちゃったよ! っていうかなんで今更、女神様!!)
<開けて! あけてくださいよぉ女勇者ぁ
女勇者(いや、でもこれは仕方ないよね。こっちが散々、相談したくて女神来ないかなーって待ってたのに…ぜんっぜん音沙汰なかったわけだし)
<女勇者ぁ… どうして? やっぱり魔王城においていったこと怒っているのです?
女勇者(いいかげんようやくふっきれた所で、ひょこっと顔出して。なんか『いや、もう女神はいいかな…』感しかないよ!)
<う… 女、勇者ぁ・・・ グス
女勇者「はっ! もしかして泣く!?」

63 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:44:46.60 ID:G0Bbn00r0
ガチャ
女神「!」
女勇者「…ええっと。……とりあえず、泣かないでくださいね?」
女神「はいっ!!」パァァ
女勇者(……すごく嬉しそうだなぁ…。 女神様、黙ってると美人で、打ち解けると可愛い。卑怯だとおもうんだよね)
女神「女勇者! お元気でしたか?」ニコッ
女勇者「え、あ はい。健康面に異常は無いです」
女神「それはよかったですー」ニコニコ
女勇者(……いやー。いくら神でも、これは不公平だと思うんだよね。可愛すぎるでしょ)
女神「あの、それで女勇者… 魔王は今、どちらに?」
女勇者「あ… そうだ。魔王のことで、相談したい事があったんでした」
女神「相談、ですか?」
女勇者「まあ、今更ってかんじもするんですけど…」
女神「ええ!? どっちなんです!?」

64 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:45:32.79 ID:G0Bbn00r0
女勇者「とりあえず、中へどうぞ。お茶でも淹れさせてもらいますよー」
女神「ふふ。すっかりこの城に慣れたようですね」ニコニコ
女勇者「正直、魔王より私のほうがこの城を活用してます」
女神「ま、ご冗談を。女勇者が魔王城を乗っ取るつもりですか?」クスクス
女勇者「現状、ほぼそんな感じです」
女神「え」
女勇者「魔王、ここ1月ほど ほとんど自室から出てないんで」
女神「なに、なんで なんでです!? どういうことなんですかっ!?」
女勇者「いや、だから。お茶入れますんで、来賓室いきましょう」
女神「〜〜〜はやく行きましょう!」

65 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:46:28.32 ID:G0Bbn00r0
::::::::::::::::::::::
魔王城 来賓室
女神「コホン。それで…相談というのはどういった事なのでしょうか」
女勇者「女神様、どうしていつも 微妙にキャラ作るの?」
女神「女神として、ナメられるわけにいきませんから!」
女勇者「あ、元々のキャラがナメられるようなキャラだってのは気づいてるんだね」
女神「そ、そんなことはどうでもいいのです! 相談について早く聞かせてください!」
女勇者「あ、うん。えっと… あれ、何から話せばいいのかな…」
女神「魔王、お部屋からでてこないのですか?」
女勇者「あ、そうなの… なんか、ずっと空を見てる。前は晴れた夜に星を見るだけだったんだけど…」
女神「なんだ…そのことですか。 いえ、魔王は以前からそうしていましたよ」
女勇者「うん… 星空魔王っていう意味、よくわかったよ」

66 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:47:07.63 ID:G0Bbn00r0
女神「……いつからか気がついたら。ずっと星を見ているようになっていたのです、魔王は」
女勇者「うん。でも、最近は 曇りや雨の夜も、昼間でさえもずっと空ばかり見ていて…本当に、寝食以外はそれしかしてないんだよねー…」
女神「ええ!?」
女勇者「さすがに… 身体によくないだろうと思って。声をかけたりもしたんだけど…」
女神「…もしかして。口を、利いてくれないのですか?」
女勇者「え なんでわかるの?」
女神「やっぱり…」
女勇者「そういえば、女神様 魔王に拒まれているって言ってましたっけ…」
女神「……ええ」
女勇者「魔王も、女神様とはいつ争いになってもおかしくない関係だっていってたしなー」
女神「……魔王が… そんなことを?」
女勇者「うん」
女神「……」

67 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:47:47.54 ID:G0Bbn00r0
女勇者「でも、女神様? 私が始めてこの城に来たときは 普通に会話していましたよね?」
女神「そうなのです。…いつも、久しぶりに会うと、やさしい言葉を掛けてくれたりするのです」
女勇者「なら、別に拒まれているなんてこと
女神「でも!!」
女勇者「……女神様?」
女神「……少し、ゆっくりと話していると。段々と口数が減ってきて…。苛立ったようなそぶりを見せたり、何か言いかけてやめてしまったり」
女勇者「魔王が…?」
女神「・・・それで…最終的にはいつも 『帰ってくれ』、と。一言だけ言われてしまうのです」
女勇者「……あとは、口をきいてくれないんですね」
女神「…きっと、そうして魔王が耐えていてくださるから・・・争いにならずに済んでいるのでしょう…」
女神「本当は、魔王の中では…」
女神「私は…いつ争いになってもおかしくない“敵”なのですね…」
女勇者「……」

68 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:48:34.13 ID:G0Bbn00r0
女神「女勇者も… 帰ってくれと、言われてしまいましたか?」
女勇者「え? 言われてないよ?」
女神「え」
女勇者「毎晩、お茶を持って部屋に行って 一緒に空を見てるよ?」
女神「」
女勇者「黙ったまんま、喋らないけど…。 前は、それでも少しは話をしてくれたんだけどね」
女神「……いいな…」ボソ
女勇者「え?」
…ッタタタタ、ガチャ、バタン…
女勇者「……? あれ、今の音…」スクッ
窓 バタン

69 : ◆OkIOr5cb.o :2014/12/23(火) 05:49:09.95 ID:G0Bbn00r0
女勇者「……あ、やっぱりだ。魔王が外に出てった音だったんだね」
女神「魔王が…」
女勇者「久しぶりに部屋を出てきたと思ったら。どこに行くんだろ?」
女神「魔王… 私が来たのに気がついて、避けたのではないでしょうか」
女勇者「え? ええ… まさかぁ」
女神「だって…」
女勇者「……」
女神「……」
女勇者「……前にね、魔王には否定されちゃったんだけどさ」
女神「?」
女勇者「女神様って、魔王のこと好きだよね」
女神「」