Part2
22 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 12:35:51.25 ID:m25dPKqi0
魔王「女神に顔が立たないというのなら、気のすむようにするといい」
女勇者「うん。とりあえず次に女神が来るまではお邪魔してていいかな」
魔王「……女神が来るかどうかの保障はしないがな」
女勇者「え、なんで? 来ると思うけど」
魔王「何故そう思う」
女勇者「だって、女神様って魔王のこと好きそうだったし」
魔王「」
女勇者「え なんでそんな顔するの?」
魔王「……そういう関係じゃない。むしろいつ争いになってもおかしくない緊迫した関係なんだ、俺たちは」
女勇者「あー… そっか、魔王と女神だもんねぇ…」
魔王「わかったら、おかしなことを言うな」
女勇者「あ、うん」
23 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 12:36:58.44 ID:m25dPKqi0
魔王「部屋を用意しておこう。出入りも城内も好きにするといい」
女勇者「ほぼ初対面なのにそれでいいの? ドロボウとかするかもよ?」
魔王「……おかしなやつだな」
女勇者「そうかな。世間一般では普通の感覚だと思う」
魔王「だが、お前は勇者なのだろう? 勇者がドロボウを宣言するのか?」
女勇者「ツボとかタンスとか勝手に開けてアイテムもってっちゃうイメージあるよ?」
魔王「……しばらく世間に関心を払わなかったが、勇者のイメージはそういうものになっているのか」
女勇者「わりと」
魔王「だがまあ、欲しいものがあるならば持っていっても構わない。調べようと何をしようと勝手にするがいい。俺は気にしない」
女勇者「そう、なの?」
魔王「それに、気配くらいわかる。本当に不審ならば追い出すくらいのことはするだろうさ」
女勇者「なんか…魔王って、自分のことなのに他人事みたいに言うんだね」
魔王「……」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/22(月) 12:42:05.25 ID:m25dPKqi0
中断します 次は夕方に貼ります
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/22(月) 13:38:27.92 ID:yji/OX0NO
期待してるぞー
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2014/12/22(月) 13:50:09.04 ID:QHHe1M3A0
待ってるぞー
27 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:19:25.41 ID:m25dPKqi0
:::::::::::::::
魔王城 庭園
女勇者(あれから、1週間)
女勇者(元々、家事をやっていたから魔王城の手入れはそれほど困ったことは無かった)
女勇者(とても広い城だけど、使う部分はほとんどない。台所と、食堂と、玄関と、浴場とトイレ。それから私の部屋)
女勇者(物が少ないし、所々に飾られた装飾品なんかも大きな汚れもないから、ハタキではたけば十分なくらい)
女勇者「魔王は、本当に静かで…時々 同じ城内にいてもいるのかどうか疑わしいくらいだし」
魔王「いるぞ」
女勇者「うひょぁっ!?」ビクッ
28 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:20:51.38 ID:m25dPKqi0
魔王「城内にずっと居たが、居ないと思ったのか」
女勇者「あ、あれ? 私、今の口に出てた?」
魔王「ああ。……ところで何をしているのだ」
女勇者「お掃除おわっちゃったから… お庭を手入れがてら、お散歩してたよ」
魔王「手入れ?」
女勇者「咲ききってる花とか、密集してる花を切ったり。おちてる枝葉を拾ったり」
魔王「放っておいてもよい、そんなもの」
女勇者「でもせっかく綺麗だから。切ったらまずかった?」
魔王「……いや。ほとんどは先代が植えたもの。放っておいてもそこそこ保てているだけの庭だ」
女勇者「ああ…だからあんなに、生えかたにムラがあるんだね」
29 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:22:05.50 ID:m25dPKqi0
魔王「庭弄りがすきなのか」
女勇者「ううん、初めて。初めてだからやりかたはわからないけど、花壇がこんなにあると、なんとなく手を出してみたくなるの」
魔王「そうか」
女勇者「魔王もやる? 花摘み」
魔王「冗談だろう」クルッ
スタスタ…
女勇者「あ… 行っちゃった」
30 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:23:37.49 ID:m25dPKqi0
::::::::::::::
魔王城 城門前
ガチャ
女勇者「あ、魔王。…出かけるの?」
魔王「買い物に行く」
女勇者「買い物かあ、いいなあ」
魔王「行きたいのか?」
女勇者「あ、ううん。昨日の大風で、木の葉すごいんだよ、玄関。掃除したい」
魔王「そんなもの放っておいても、次の大風で無くなるだろう」
女勇者「さては 濡れた木の葉がどれだけ滑るか知らないね、魔王」
魔王「……足元が滑った経験は無いな」
女勇者「身体能力の高さが羨ましい」
31 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:24:20.06 ID:m25dPKqi0
魔王「魔王だからな。枯れ葉を踏んで滑るほどマヌケでもない」
女勇者「勇者のくせに派手に滑ってわるかったね!!」
魔王「滑ったのか」
女勇者「はっ!? ちちちち、ちがうし!! 滑ってないし!」
魔王「……石造りは水はけが悪い。気をつけるといい」
女勇者「う、うん… まぁだから、私は今日はこの枯葉を駆逐するつもりだよ」
魔王「そうか……何か必要なものがあるならついでに買ってこよう」
女勇者「肉」
魔王「……いや、食料は確かに買うが。そうではなく、私物で…」
女勇者「じゃあ、ちょっと贅沢な肉。今日は掃除でおなかすきそうだし、ガッツリな気分なの」
魔王「了承した」
女勇者「よーっし、今夜は焼肉だー がんばるぞー♪」
ザッザッ!
魔王「……」
32 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:25:12.61 ID:m25dPKqi0
::::::::::::::
魔王城 浴場
女勇者「お風呂掃除〜♪」
女勇者「広いから、意外と大変。でもこのめちゃくちゃでっかいブラシは助かる」
女勇者「よいっしょっと」
チャッ、ダダダッ
女勇者「ぐーーるぐーる。すっごいおおきなクレープを焼くみたいだよね、この掃除の仕方」
女勇者「浴槽が丸いと、こんなふうに掃除できるんだなぁ」
女勇者「女勇者とかになったとはいえ、やっぱ元々が家事手伝いだし。なんか馴染むよね」
女勇者「っていうか勇者じゃなくて、メイドでもよかったんじゃないかな、私」
女勇者「それにしても……魔王も 毎日こんな風に掃除してたのかと思うと切ないなー」
魔王「してない」
女勇者「おおっと! 居たの、魔王」
33 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:25:45.56 ID:m25dPKqi0
魔王「時々しか浴槽を使わなかった」
女勇者「シャワー派?」
魔王「清められれば問題が無いからな」
女勇者「せっかくこんなに大きなお風呂があるのに、もったいないよ」
魔王「掃除にしろ湯を張るにしろ、その時間のほうがもったいない」
女勇者「そんなもんかなぁ…」
魔王「湯に浸かるのが好きなのか」
女勇者「家のお風呂ではそうでもなかったけど、ここのお風呂は特別! 広くて泳げるくらいだし、楽しいよ!」
魔王「そうか」
女勇者「魔王も一緒に入る?」
魔王「」
女勇者「冗談だよ」
魔王「まあ、そうだろうな」クルッ
スタスタ…
女勇者(動揺するならともかく、本気で困った顔されると女の子として傷つくんだけどなぁ…)
女勇者「ま、襲われるよりいいけど」
34 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:26:48.03 ID:m25dPKqi0
:::::::::::::::
魔王城 魔王の私室
トントン
「……」
女勇者「魔王、部屋にいるの?」
「……」
女勇者「魔王? はいるよ?」
ガチャ
魔王「……」
女勇者「あ、やっぱり居た。返事くらいしてくれてもいいのに」
魔王「……」
女勇者「…? そんな窓辺に立って、何してるの?」
魔王「……」
女勇者(……空? ああ、星を見てるのかな)
35 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:27:24.70 ID:m25dPKqi0
魔王「……何か、用か」
女勇者「あ、気づいてたんだ」
魔王「用件はあまり聞いていなかったが。気配には気づいていた」
女勇者「聞いてなかったもなにも、用件なんか言ってないよ」
魔王「……では、用件を」
女勇者「庭で咲いた花を持ってきたの」
魔王「花を?」
女勇者「うん。大きな百合が、見事に咲いていたの。部屋の賑やかしになるとおもって」
魔王「……」
女勇者「魔王の部屋、ちょっと寂しすぎるよ。絢爛豪華にしろとはいわないけどね」
魔王「そうか」
女勇者「うん」
魔王「……」
女勇者「……」
36 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:28:12.20 ID:m25dPKqi0
女勇者「……いつからそうやって、星を見てるの?」
魔王「さて。今が何時かによるな。最初に星が出たのは見た」
女勇者「星が出たのが18時だとして、今もう22時だけど」
魔王「では、4時間ほどだな」
女勇者「……」
魔王「……」
女勇者(こうやって、話していても… ずっと空を見上げたままなんだなぁ…)
女勇者「……花。おいておくね」
魔王「ああ」
女勇者「……」クル
テテテ…
女勇者「…」チラ
魔王「……」
女勇者(……いつまで見てるつもりなんだろう…?)
バタン
魔王「……花か。 ……いい匂いがするな」
37 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:30:29.82 ID:m25dPKqi0
:::::::::::::::::::
魔王城 厨房
女勇者(あれからさらに1週間。魔王はどうやら毎晩、空を見ているらしい。どうにも静かだと思っていたら、日中はほとんど寝ているみたいだった)
カチャカチャ… トポポ
女勇者(まあ、魔王っていうだけで 確かにいかにも夜型っぽいけどね)
カタ、トン
女勇者(でも、だからといって夜に何かしているのかといえば…部屋で、星を見ているだけ)クル
女勇者(夜中、ずっと窓辺に立って星を見ているだけの魔王…)
テクテク
女勇者(で、なんとなく声もかけづらいし。とりあえず温かい飲物を持って、夜になると日参しているわけで)
テクテク
女勇者(置いてそのまま黙ってでてくるのもおかしいし。いつもなんとなく10分くらい一緒に星を見てる)
トントン
女勇者(でも、その間はずっと無言だし。っていうか魔王、部屋に入っても声かけてきたりもしないし)
ガチャ
女勇者「確かにあれじゃ、魔王が『星空魔王』なんて呼ばれるのもわかるよね」
魔王「は?」
女勇者「え?」
38 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:31:15.86 ID:m25dPKqi0
女勇者「……あれ? いつの間にか魔王の部屋に居た」
魔王「……」
女勇者「日ごろの習慣って怖いね」
魔王「いや、まあ… 温かな飲物を毎夜運んでくれるのは感謝してもよいが」
女勇者「あ、ちゃんと気づいてたんだ。朝にはカップがさげられてるから、飲んだのかどうかすら知らなかったよ」
魔王「飲んでいた」
女勇者「よかった、無駄でもなかったみたいで」ニコ
魔王「……だが、俺の事は気にせずともよい」
女勇者「ん。まあ、自分の分もいれて持ってきてるしね。寝る前にあったかいの飲むと、よく寝れるし。静かに星を見るのもリラックスできるから」
魔王「……そうか」
女勇者「今日は、星を見てないんだね」
魔王「ああ。曇り空でな、降り出しそうだ。朝には止むだろうが」
女勇者「なにその天気予報」
魔王「毎夜、空を見ているとな。わかるようになる」
女勇者「さすが、星空魔王だね」
39 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:32:29.14 ID:m25dPKqi0
魔王「……さっきも言っていたが。なんだ、その『星空魔王』というのは」
女勇者「え? 魔王の通称じゃないの?」
魔王「知らぬ」
女勇者「え、もしかしてあれかな。影でそういわれてるだけとか、なんかバカにしたような意味合いの通称だったのかな。バラしちゃマズい系?」
魔王「誰がそんな呼び方をするのだ?」
女勇者「女神様」
魔王「」
女勇者「しまった! 星空魔王っていうのが悪口だとしたら、これじゃ告げ口じゃんっ!」
魔王「……いや、いい。事実だ、誹謗中傷というわけでもない。気にならないさ」
女勇者「『星空魔王』」
魔王「なんだ」
女勇者「返事しちゃうんだねー」
魔王「からかっているのか?」
40 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:33:37.72 ID:m25dPKqi0
女勇者「ううん。でもなんで…そんな風に言われるほど、星を見てるのかなーって」
魔王「……」
女勇者「……今日は、お茶とお菓子もあるんだ」
女勇者「星を見ないならさ…… たまにはゆっくり 話でもどう?」
魔王「……」
女勇者「星の話でも、聞かせてほしいな」
魔王「……ああ」
魔王「星の話でいいのなら。付き合おう」
女勇者「うんっ」
41 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:34:34.77 ID:m25dPKqi0
::::::::::::::::
『星、好きなの?』
ーーああ。愛してる
『どんなところが?』
ーー癒してくれる
『見てるだけで?』
ーー想うと、癒される
『想う? 何を?』
ーーあの星空は、朝を迎えれば静かに消えて見えなくなる。それを想う
42 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:35:53.33 ID:m25dPKqi0
『月も、そうだよね』
ーー………月は違う
『? 月も見えなくなるよね?』
ーー月は、居なくなるんだ
『居なくなる…?』
ーーそう。この地球の裏側に回って。目の前から居なくなる
『星は、違うの?』
ーー星空は見えないだけで、そこに居続けてくれる
『ああ…。あ、でも 星は、流れるじゃない』
ーーそうだな
『それでもいいの?』
ーーそれが、いい。墜ちても墜ちても、尽きることなく星空は輝く
ーーそれを見ると、安心する
43 :
◆OkIOr5cb.o :2014/12/22(月) 20:37:28.31 ID:m25dPKqi0
『月も… 次の夜には、出てくるよ。毎晩、空には出てくるよ』
ーー出て来ても、満ち欠けする。変わらないから、星はいいんだ
『お日様は? 変わらないよ、出てくるのは日中だけど』
ーー陽は… 好きなものではない。必要なものだ
『お日様、嫌い?』
ーー難しいな。あれが無いと困る。月がな
『月が…?』
ーー知っているか。月は自分では輝けないのだ
ーー星は、自分で燃えてくれる。放っておいても大丈夫だと思える
ーー月は、太陽が居ないと輝けない… 太陽が居なければ、月は困り悲しむだろうな