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僧侶「リア充呪われろ」
Part2


25 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:19:33 ID:kF4YZqcE
僧侶「…続きを」
幻獣「えっ」
僧侶「試練の、続きを」
幻獣「あっはいはいはい試練ですよねーそれじゃいきますねー」
幻獣はバツが悪そうに蹄を二度三度打ち鳴らし、頭をふってこちらに向き直ると――
――嘶き、猛った。額の一角に帯電し、幻獣の纏う空気が膨張する。
幻獣「…手加減をしたい気持ちもありますが、失礼でしょうから」
守護呪文を唱えながら、それとなく頷き、応える。
向こうの幻獣がどうだったかはもうわからないが、こっちのは確かに優しいらしかった。
―――

27 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:20:20 ID:kF4YZqcE
僧侶「――ぜっ…はぁっ…はぁっ…」
幻獣「…よくぞ成し遂げた人の子よ。そなたらになら、武具を手にする資格は充分にあると言えよう」
僧侶「…そりゃ、どうも…」
幻獣「世界の命運をそなたらに託そう。遥か幻獣界から、見守っておるぞ・・・」
倒れた一角獣の体が、光の粒へと変わっていく。
幻獣「…それと、個人的な話ではありますが」
僧侶「?」
幻獣「元気だしてくださいね?」
僧侶「…。」
励ましなのか同情なのかわからない言葉を残して、幻獣は還った。

28 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:21:14 ID:kF4YZqcE
とりあえずは息を整え、雷撃で爛れた傷の治療をすることにした。
僧侶「いってぇー…失礼でもなんでもいいから手加減してくれよ」
一人愚痴る。
荷物の分配を忘れたことに気づいたときは血の気がひいたが、おかげでアイテムをふんだんに使うことができた。
…意図せず勇者側の無事もわかったこともあるが。
僧侶「あー薬草も聖水ももう打ち止めか。補充しとかないとな」
映像の事はあまり考えないようにした。知っていたこととはいえ、目の前に突きつけられるのは少々キツい。
僧侶「よしっ、とりあえずこれで動けるな。まだ先にボスとかいるかもしれないけど、合流すればなんとかなるっしょー」
空元気をだしてみた。暗い洞窟に響いた自分の声が、空しかった。
.

29 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:22:21 ID:kF4YZqcE
―――【合流地点】―――
僧侶(そろそろかな。)
合流地点の扉についたところで、扉の向こうに荒い息遣いを聞いてしまった。
耳をふさぎながらの荷物整理が終わったところで、扉の向こうが静かになったことに気づいた。
取っ手を掴み、必要以上に重そうに、ゆっくりと開ける。
…少し開けても慌てる様子が無いことから、このまま開けきってよさそうだ。
勇者「おう、遅いぞ僧侶。待ちくたびれちまったぜ」
僧侶「ごめん、てこずっちゃってさ。そっちもみんな無事みたいで何よりだよ」
勇者「あんまり遅いもんだからヒヤヒヤしたぜ。女魔法使いなんかずっと心配してたんだからな」
女魔法使い「ちょ、ちょっと勇者!」
何も知らなければ心配してくれた事を喜んでいただろう。
僧侶「ははは」
女魔法使い「もうっ…僧侶くんも来たんだし、先に進みましょうっ」

30 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:23:13 ID:kF4YZqcE
勇者「はいはいーっと。女戦士、行くぞ」
女戦士「んにゃぁ…らめぇ、たてないぃ〜…。勇者だっこしてぇ…」
ろれつが回っていない。魔物がいないことがわかってるとはいえ腰抜かすまでヤるかね普通。
女魔法使い「こっこれはねっ!えっと試練の幻獣が麻痺攻撃してきて!治療したけどちょーっと残っちゃったみたいで!」
勇者「しょうがねーなぁ、ほれ。おぶされ」
僧侶「ははは」
勇者が女戦士を背負い、隣に女魔法使いがついて歩く。ぼそぼそと二人でなにやら話しているらしかった。
女魔法使いも麻痺をくらったのか、足どりがおぼつかなかった。
その日の宿で齧ったパンは、なんだか味が薄かった。
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31 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:24:21 ID:kF4YZqcE
―――【荒廃した村】―――
あれからいくつかの城、町、村を周った。情報を得ながらの手探りの旅だが、魔王軍の拠点の数、出没する魔物の強さから、
魔王の棲み処に近づいている事を感じていた。
――そんな最中訪れたとある村は、酷く荒廃していた。
踏み荒らされた畑、焼け落ちた建物。壊されたバリケードをくぐって村へ入ると、埋葬すらできずに並べられたままの遺骸。
女戦士「酷い…こんなのってないよ…!」
故郷の国が嫌でも思い出される。
村の中心部にある教会に生き残った村人達が立て篭もっていた。
話を聞いて回ると、つい最近になって近くに魔王軍の拠点が作られたらしく、その攻撃に晒されるようになったらしい。

32 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:25:20 ID:kF4YZqcE
勇者「行くぞ。いますぐにでも連中の息の根をとめてやるッ!」
勇者が今にも走り出さん勢いで言う。自分とて、こんな村の状況を見て看過できるはずがない。
だが、ここまでの山越えで体力を消耗していたし、物資にも乏しかった。
僧侶「ちょい待ち、勇者。今は皆疲労が溜まっているし、一旦ここで休ませてもらってから――」
言った後で後悔しても遅いが、次の言葉の前に胸倉を掴まれた。どうやら地雷を踏んでしまったらしい。
勇者「いつ魔物が攻めてくるかもしれないんだぞ!?そんな悠長な真似はできない!」
僧侶「ぐっ…気持ちはわかる。わかるけど状況を見てよ。こんな状態じゃ下手したらこっちも…」
勇者「…気持ちがわかるってのか!お前なんかに!!ふざけるな、俺たちがいままでなんのために――」
僧侶「勇者。」
精一杯勇者の目を見据える。勇者は完全に頭に血が上ってしまっている。慎重に、言葉を選びながら問いかける。

33 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:25:50 ID:kF4YZqcE
僧侶「気持ちならわかる。わかるさ。…何年この四人で過ごしてきたと思ってるんだ。
   平和な村がこんな目に遭わされて何も思わないはずがない。魔物を憎む心だって同様だ」
勇者は黙って聞いている。まだ肩で息をしてはいるが、少しは落ち着いてくれたようだ。
僧侶「普段の勇者なら例え一人でも攻略できると思う。だけど、消耗しているのは勇者、君だって同じだ。
   もしすぐに魔物が攻めてくるとしても、村に滞在するなら防衛だってできる。
   明日までに準備を整えよう。体調、装備を整えた上で、なるべく迅速に攻略するんだ。」
勇者「…。」
掴んでいた手が離される。無言のまま睨みあうこと数秒。
勇者「明日の"早朝"だ。それ以上は待てねぇぞ。
   …少し外で風にあたってくる」
吐き捨てると、教会の外へと出る。少し間を開けて女戦士が後を追う。
ゆっくりと、聞こえないよう息を吐く。

34 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:26:21 ID:kF4YZqcE
女魔法使い「思いとどまってくれたね」
僧侶「うん…気持ちは、本当に痛いほどわかるんだけどね」
お前なんかに、か。いつ言われてもおかしくないとは思っていたけど、実際に言われるのは心が痛む。
女魔法使い「…勇者のこと、嫌いにならないであげてね」
寂しそうに笑って、女魔法使いも勇者の後を小走りで追っていった。
僧侶「…。」
…彼女の方こそ何もわかっていない。勇者のことを嫌いになるわけなんかない。
勇者の正義感から来る激昂は慣れたものだし、その姿勢は好意的に受け取っている。
でも、だからこそ、だ。
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35 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:26:47 ID:kF4YZqcE
―――回―――
――…なんでお前が泣くんだよ。
  お前の家族はみんな無事だったんだろ?いいじゃんか。
  …平気なわけないさ。でも、父さんも母さんも、おれを守るために戦って死んだ。
  だから、泣いたりなんかしない。
  お前も、女戦士も、女魔法使いだって傍にいてくれるんだから。
  だから、決めた。おれは、魔王を絶対に倒すって――
―――想―――

36 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:27:28 ID:kF4YZqcE
―――【魔物の拠点】―――
拠点の制圧は順調に進んでいた。
義憤に燃える勇者の力は凄まじいものだったし、女戦士も女魔法使いも気力に満ち溢れていた。
ついていくのがやっとな状態ではあったが、勇者が魔物を蹴散す様に安堵を覚えていた。
昨日の様子から戦力に影響がでるのではと心配だったが、杞憂だったらしい。
女戦士「―――っ勇者!後ろ!」
死角から繰り出された槍が勇者の肩をかすめる。
勇者「…!」
振り返りざまに槍ごと魔物を両断。続けて、女魔法使いの呪文が辺り一帯を薙ぎ払う。
――安心したと思ったらこれか!回復呪文をかけようと走り寄る。
僧侶「勇者!今回復を――」
勇者「必要ねぇよ」
待たずに、自分で肩の傷を治療していた。
勇者「中心部は目の前だ。うかうかしてたら村の方に手が伸びるかもしれねえ。急ぐぞ」

37 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:28:13 ID:kF4YZqcE
…あーそうだった。拗ねるんだわこいつ。
今はとやかく言ってもしょうがない。拠点を潰して、村でささやかな宴でも開けば、機嫌も直るだろう。
勇者「この下、か」
拠点の中心には、石造りの禍々しい祭壇と、地下へと続く階段があった。
それらしい魔物が見つかっていないことや、魔物の士気が下がっていない様子から、この中にボスが潜んでいると考えられる。
女魔法使い「…罠の可能性もあるわね」
女戦士「かのうせい、じゃなくて100%だと思うよ〜」
軽い調子で女戦士が続ける。珍しく同意見だ。そして――
勇者「それでも、行くさ。でなきゃあの村は破滅する」
――勇者がこう言うであろうことも、わかっていた。勇者に軽く睨まれて、肩をすくめてみせる。
僧侶「止めやしないさ。行こう、勇者」
頷くこともせずに階段を降りていってしまったが、もう言わなくてもわかっていることなんだろう。

38 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:29:18 ID:kF4YZqcE
―――【拠点地下】―――
一方的な虐殺だった。
狭い通路のせいで、魔物は数で押せなくなっていた。挟撃される形ではあったが、勇者が相手ではまるで意味を成さなかった。
むせ返るような血の臭いが、あたりに漂う。
破れかぶれの突撃か? 魔物の血に毒素でも含まれているのだろうか?
万一の事を考え、聖水で通路を清めながら進む。と、あれだけいた魔物の攻撃がぴたりと止んだ。
勇者「…何かの布石か?」
女戦士「みんな、倒しちゃったんじゃない?」
女魔法使い「いまのところ、魔力による罠の気配はないわ」
僧侶「…後ろも――」
言いかけて、固まる。今まで進んできた通路が、周りの壁と変わらない石壁で塗りつぶされていた。
僧侶「なっ――!?」

39 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:29:56 ID:kF4YZqcE
勇者「どうし――なんだよ、これ」
女戦士「えっ?!なになにこれ、さっきまで通路だったよね?!」
女魔法使い「そんなっ…魔力は全く感じなかったのに」
動揺。ついさっきまで後ろから襲い掛かる魔物の相手をしていた。目を離したのはほんの一瞬。なのに。
勇者「みんな、下がってくれ……うらあッ!!」
言われるままに壁から離れる。勇者は剣を構え、渾身の一撃を放つ。壁には深い裂け目が刻まれた。
が。
勇者「!」
すぐに元の通りに塞がってしまった。女戦士も加わって連続で斬りつけても、女魔法使いの呪文でも、結果は同じだった。
床や天井、通路の壁面も同様。回復呪文で傷を治すように、傷の周囲からじりじりと再生してしまう。

40 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:30:54 ID:kF4YZqcE
勇者「なんだかわからんが、えらく厄介な仕掛けみたいだな」
女魔法使い「そうね…こんなタイプは経験もないし、魔力を感じないのにこんなに強力な封印なんて…」
似たような罠は経験していた。器械仕掛け、魔物の擬態、幻覚呪文等。どれも『選ばれし者』の力の前には無意味だった。
例外的に幻獣等による強力な魔力での封印はあったが、その場合は事前に女魔法使いが察知できていた。
…頭を抱えたくなる。ただでさえ狭い通路なのに、退路を塞がれたとあっては。
女戦士「ねぇ、悩んでもしょうがないんだし…前に進んでみない?」
おずおずと、女戦士が提案する。
勇者「…そうだな。ボスを倒せば通れるようになるか、ただの石壁にもどるかもしれん。
   この先に更に罠があるかもしれんが、進むほかに手立ては無いしな」
できれば退路を確保しておきたかったが仕方が無い。
こうして足止めをくらっている間にも、村が危険に晒されているかもしれない。
女魔法使いも同意し、先に進むことにした。耳鳴りがするほど静かな行軍だった。
―――

41 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:31:37 ID:kF4YZqcE
一時間ほど進んでみたが、一向に景色が変わることはなかった。
それどころか、この通路はどこまで進んでも直線で、地上ならば山を一つ越えるほどの距離を歩いていることになる。
勇者「くそっ!どうなってんだこれ!」
勇者が苛立つのも仕方が無い。女戦士に普段の快活さは見当たらず、ただ無言で歩いている。
女魔法使いとは罠について考察を重ねていたが、どれもピンとこず、いつの間にか黙ってしまっていた。
勇者「おい、僧侶!後ろは見ているだろうな!術をかけた魔物が付かず離れずでついてきているかもしれん」
振り返り、目を凝らしてみる。松明の明かりの先には黒しか見えていない。
言われずとも、先ほどからかなり小まめに後方は確認している。進んできた通路の空間がひろがってる――
はず、なのだが。違和感。

42 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:32:26 ID:kF4YZqcE
僧侶「…。」
無言で踵を返し、歩き出す。まさか、気のせいであってくれ。
十数歩進んだところで、足を止める。驚いて追いかけてきた足音も、ピタリと止んだ。
勇者「うそだろ、おい」
女魔法使い「そんな…っ」
女戦士「なんで、また」
壁が、あるはずの黒を塗りつぶしていた。
.

43 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:32:49 ID:kF4YZqcE
―――回―――
――よう、また来てるんだな。
  お前もあきもせずよく来るよなー。退屈でしょうがないよ、教会なんて。
  …え?おれ?
  べつに、神父になりたいなんて思わないけどさ。
  ほら、戦士が回復呪文を使えたら…サイキョーじゃね?
  あっ!笑っただろ!いまにみてろよ、すっごい呪文覚えてやるんだからな――
―――想―――

44 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:33:28 ID:kF4YZqcE
女戦士のすすり泣く声が暗闇に響く。
勇者がなだめてはいるが、その顔にも不安と焦燥の色が見て取れる。
女魔法使い「…壁を調べてみましょう、僧侶くん。この状況をなんとかしないと」
頷いて応える。元より頭脳労働は後衛の務めだ。とりあえず、思いついた方法を試していく。

45 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:33:51 ID:kF4YZqcE
@、壁を睨んだまま後ろ歩きをする。
  結果、持っている松明の光が壁に届かなくなった時点で、壁の位置は前進していた。
A、松明を壁の付近に設置し、壁が明かりで見えている状態で@。
  結果、かなりの距離を進めたが、松明の燃料が切れた瞬間、壁は前進。燃料の切れた松明は消滅。
B、Aで充分な距離をとった状態で、壁が見えているうちに全員が通路の先を向く。
  結果、@と同等の距離まで壁は前進し、付近に設置した松明は消滅。
僧侶(…四人まとまって行動していたのは正解だった。松明のように消滅していたらと思うとゾッとしない。
   壁が動く条件は…『通路の暗さで壁が見えなくなると見えないままギリギリの位置まで前進してくる』ってとこか。
   壁を見る人数を変えてみても、一人でも壁を見れていれば壁は動かない)
僧侶(壁が"見えている"状態なら先に進めるみたいだけど…
   Aで進んだ距離も拠点の外に出るほどだし、松明を全部消費してまで試すのは怖いな)

46 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:34:40 ID:kF4YZqcE
女魔法使い「…これも、試さなければならないわね」
取り出したのは、斑蜘蛛糸。洞窟から脱出する為のアイテムだが、もしこれが使えないとなれば――
――意識的に避けていた。心のどこかで、攻略を諦めさえすれば体勢を立て直すことができると思っていた。
結果。糸はどこにも反応することがなく、ただ垂れ下がるのみ。
続けて、女魔法使いが唱えた脱出呪文も無効。
女魔法使い「――これじゃ魔物のボスを倒すどころか、ここから出られないかもしれない」
顔が青ざめている。無理もない。出られなければ即ち――

47 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:35:40 ID:kF4YZqcE
女戦士「やだっ!!しにたくないっ!!」
ごく小声で呟いただけだったが、女戦士にも聞こえてしまったようだ。勇者もなんと声をかけていいのかわからない様子だ。
女戦士「しにたくないっ…しにたくないよぉ…」
嗚咽だけが静寂に響く。女魔法使いも爪を噛みながら必死に思考しているようだが、顔は浮かない。
僧侶「…。」
まだ、試していない方法がある。女魔法使いも、勇者も気付いていないはずがない。
成功の保障なんてないし、事態が悪化するだけかもしれないけれど、これは自分から言い出さないと絶対に実行できない。
――やるしか、ないんだよなぁ。
僧侶「この旅の、目的はさ」

48 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:37:10 ID:kF4YZqcE
ほの暗い通路で、全員の目がこちらを見る。
僧侶「魔王を倒すことじゃない?
   でもそれってさ、きっと勇者の力じゃないと達成できない」
勇者「…何を」
僧侶「逆に言えば、勇者さえ生きていれば魔王はかならず倒せる」
  「他の三人はそれを全力でサポートする役割。立ち回り」
  「それが、その身を犠牲にすることでも「――僧侶っ!!」
勇者が大声で遮る。女魔法使いと女戦士は、ただこちらを見ている。
…その厚かましさが羨ましい。
僧侶「C、一人を壁の前に置き、壁をずっと見続ける。他三人は前進する。」
―――

49 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:37:59 ID:kF4YZqcE
壁は、人に"見えている"間はそこにある。では、そこに誰かが居座り続けたらどうなるか?
僧侶「説明を始める前に、試しておきたいことがあるんだ。
   勇者、奥の通路に向けて火矢を一本撃ってみて」
壁、天井、床はいくら調べたところで壊せない事くらいしかわからなかった。残すは目の前の暗闇について。
言われるままに勇者が火矢をつがえる。狭い通路とはいえ、勇者の腕前があれば相当先まで見通せるはずだが――
勇者「――今の、明らかに10mも飛ばずに消えたよな」
少しだけ頭の中を整理する。少し間をあけたところで、話し始めた。
僧侶「Aの方法で前進することはできたけど、今まで進んできた距離を考えるとこの方法で脱出できるかはかなり怪しい。
   今火矢で試したことでわかるように、通路の空間それ自体にも仕掛けがあるみたいだ。」
  「進んだという認識が狂わされているのか、空間を歪められているのか。
   何にせよどんな仕組みでこの罠が作用しているか考えても情報不足で埒が明かない。」
  「…だから、この罠がそもそも何の為にあるのか考えてみたんだ」
  「当然仕掛けたのは魔物。目的は『選ばれし者』の足止め、あわよくば消滅。もしくは"戦力を削ること"」

50 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/14(火) 03:38:15 ID:OMWJIFw6
いい感じに心が黒くなれるな